自動車ライターのマリオ高野です。
近年、記録的な大雨による災害の増加にともない、クルマの水没事故も増加。ドライブ中の水難事故リスクが高まりました。
車高の高いSUVや、本格的な悪路走破性能を備えた四輪駆動車でも、水位が1メートル以上になるとなす術もなく流され、やがて水没してしまいます。報道などを見ていると、今後も強力な台風や洪水による災害に見舞われるリスクは増すと予想されています。
筆者のクルマの運転歴は27年になりますが、水没の危機に遭遇した経験は過去に2〜3度あります(幸い水没は免れました)。
そこで、たとえわずかでも、水害から助かる可能性を高めるための防災アイテムを車内に常備したいと考えました。万が一の場合、クルマが水没するのはどうしようもありませんが、ライフジャケット(救命胴衣)があれば、クルマから脱出した後に命が助かる可能性は高くなるかもしれません。
上半身に浮力を発生させる胴衣があれば、強い流れのある水の中でも溺れるリスクは大幅に低くなることを実感しました(※安全が確認できる場所で撮影しています)
手頃な値段で買えるライフジャケット(救命胴衣)の浮力などの効果、実用性はどの程度なのかチェックするべく、水害に見舞われた状況を想定し、やや流れの速い川で安全性をしっかり確認しながら、ライフジャケット(救命胴衣)の効果を試してみました。
今回選んだライフジャケット(救命胴衣)はこちら。
「オーシャンC-2型 TYPE A」と呼ばれる小型船舶用救命胴衣です。3,000〜4,000円ほどで買えるライフジャケットはたくさんありますが、国土交通省型式承認認定品(JCI検定品)であることに信頼性の高さを感じて選択しました。
値段やサイズ、デザインなど、総合的にかなりすぐれたライフジャケット(救命胴衣)だと実感しました
本製品がアピールしている以下の4つのポイントに注目です。
・とっさのときに、簡単に着用できること
・十分な浮力があること
・遭難時に自分の位置を知らせる装備があること
・浮遊物などがぶつかり穴が開いても浮力を維持できること
これは、まさに筆者が求めていた要件でもあり、愛車に常備したかったものと言えます。
フリーサイズながら胴回りは120cmまで、適応体重は90kgまでとあり、巨大な体躯をお持ちの方には、ちょっとキャパ不足だと思われます
視認性の高いオレンジ色。国交省認定品の型式承認番号は第3670号ということです
錆びにくい樹脂製ジッパー、自己の位置を知らせるためのホイッスル、夜間の安全性を高める反射テープ、サーチライトの光を反射する再帰反射材が両肩に装備されます
浮力は、国土交通省基準の浮力7.5kgを上回る8.7kgとのこと。厚さ約35mmの浮力体は、多少損傷しても浮力を失わず、衝撃などから身体を守る効果も期待できます
テストを実施した場所は、渓流によくある川遊び場。流れの強さは家族連れが普通に川遊びを楽しめる程度ですが、一部にはそこそこ流れが強く、大人でも足が川底に届かない場所もあります
まず、着用するのは極めて簡単。予備知識がなくても直感的に着用できますし、身体へのホールド感も良好でした。手足の動きを制限することはなく、濡れても陸上で重さを感じることはありません。
着用はいたって簡単。一般的なベストを着用する感覚と同じなので、緊急時にもすぐ着用できそうです
川の中に入ると、一般的な浮き輪やレジャー用のフローほどの浮力感はありませんが、上半身を浮かせる効力は確かに発揮されます。どんな姿勢をとっても首から上は常に水面上にとどまるので、全身が沈むことや、水を飲んでしまうことによる精神的パニックを防ぐ効果は高いと感じました。
試しに全身の力を完全に抜いて、水の流れに身をゆだねても、身体はおおむね垂直した状態が保持されました。一次的に気を失ったりしても、そのまま溺れる可能性は低いのではないかと感じました。
足を水面近くにする姿勢をとっても身体は転覆せず、首から上は水上にとどまります(※安全が確認できる場所で撮影しています。以下同)
着用した状態で泳いでみると、やはり身体の動きに制限はなく、上半身に浮力が働いているため、ないよりはあるほうが圧倒的にラクです。
濁流に流されることを想像すると、頭部が障害物に衝突する危険は回避できないと思いましたが、胸部は保護材で守られているので、やはり、ないよりはあるほうが怪我をするリスクが低減される可能性は高いでしょう。
着用したまま平泳ぎをすると、浮力がある分、身体への負担は小さくなりました
もがいたり、脱力したりしてみましたが、やはり常時首から上が沈まないのがいいです。泳ぐのが苦手な人でもパニックになりにくいでしょう
水底に足がつく状態でも、上半身に浮力があると安定を保ちやすく、体力の消耗を抑えることができると実感しました
全身を脱力させても、身体は垂直方向に浮く作用が持続します
「立ち泳ぎ」的な動きが取りやすいのも、水中では有効だと感じました
強めの水流にあらがう場合の体力消耗を抑える効果も高そうです
上半身に浮力が働くと、足元で踏ん張る力が発揮しやすくなります
一時的に全身が沈むことがあっても、首から上はすぐに浮上します。有事の際に助かる可能性が高くなることを身体で実感しました
救命胴衣のオレンジ色が、川や山の中、または夜間でも周囲からの視認性を高めてくれます
本来は小型船舶用なので、海上レジャーへの備えとしてもオススメです
胸元のポケットに収納されるホイッスルは緊急時にもすぐ使用できます
実際に遭遇する洪水の脅威はこんな程度では済まないのでしょうが、少なくとも溺れるリスクはかなり低減されるはずなので、有事の際に着用する価値は極めて高いと感じました。
着用すると周囲からの視認性は高く、体温を保持する効果もあるので、山の中での遭難など、洪水以外の危機的状況下でも役立つこともあるでしょう。
ドライブ中に起こりうる不測の事態への遭遇に備え、愛車に常備しておくことをオススメします。
同じ状況で、空気でふくらませて浮力を発揮するタイプのライフジャケットも試してみました
強い肺活量を必要とせず簡単にふくらみました。女性や子供でも使用できるでしょう
上半身を浮かせる効果は高く、溺れるのを防ぐことはできそうです
泳ぐ動きにも支障がなく、体力の消耗を抑える効果がありそう
ただ、身体を垂直に保つ効果はやや低いのが惜しまれました。漂流物などから胸部を守る効果も期待できますが、破れてエアが抜けるとすべての効果を失うので、その点は不安材料となります
今回のテストでは「オーシャンC-2型 TYPE A」の有効性を確認