バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
国産スクーターとはひと味違うデザインと乗り味

レーシングカラーのベスパ「Sprint 150 Racing Sixties」のキビキビした走りが気持ちいい!

「ローマの休日」や「探偵物語」といった数々の映画やドラマに登場し、そのルックスでも人気を博すイタリアンスクーターのピアッジオ「ベスパ」。70年以上の歴史を持ち、今でもその伝統にのっとった車体作りを続けている。その中でも、1960年代のレーシングシーンをオマージュしたカラーをまとった「Racing Sixties」シリーズはひときわ目を引く存在。今回は、スポーツベスパに装備されることの多い角型ライトを持つ「Sprint 150 Racing Sixties」に試乗してみた。

伝統を受け継ぐ車体に60年代のレースシーンをイメージした配色を採用

ベスパの初代モデル「VESPA 98」が登場したのは1946年のこと。もともとは航空機メーカーだったピアッジオ社が、第二次世界大戦後に航空機の製造を禁じられたことを機にスクーターの製造に着手したのが始まりだ。そのスクーターには、片持ち式のフロントサスペンションをはじめとする数多くの部分に、航空機の製造に用いられていた技術が応用された。現行モデルにも受け継がれているスチールモノコック製のボディも、航空機のボディに使われていたモノコック構造を転用したものだ。

今回紹介する「Sprint 150 Racing Sixties」も、そうした技術や伝統を受け継いでいる。「Sprint 150 ABS」をベースとした車体には、1960年代から続く個性的な角型のヘッドライトを装備。もちろん、ボディはスチールモノコック製だ。そして、「Racing Sixties」という名称から感じられるように、60年代の優美だったレースシーンを思い起こさせるデザインとされたのも特徴。シンプルな2色を使った配色や、当時のスポーツカーのようなゴールドメタリック仕上げのホイールなど、特別感と高級感あふれる仕上がりとなっている。とはいえ、レトロさを前面に出すのではなく、独自のアレンジと流行を取り入れることで、クラシカルな意匠にスポーティー感が融合したスタイリングを実現したという。

サイズは1,852(全長)×680(全幅)mmで、重量は130kg

サイズは1,852(全長)×680(全幅)mmで、重量は130kg

1963年発売の「Vespa GL」に採用されて以来、多くのモデルに採用されてきた角型のヘッドランプ。ベース車である「Sprint 150 ABS」にはメッキモールが装備されているが、Sprint 150 Racing Sixtiesはブラックとされ、より引き締まった印象となった

1963年発売の「Vespa GL」に採用されて以来、多くのモデルに採用されてきた角型のヘッドランプ。ベース車である「Sprint 150 ABS」にはメッキモールが装備されているが、Sprint 150 Racing Sixtiesはブラックとされ、より引き締まった印象となった

グリーンの車体にイエローのストライプを施したカラーリングは、1960年代のレースで活躍した4輪車に多く用いられたもの。その後、バイクのレースシーンでも見られるようになった配色だ

グリーンの車体にイエローのストライプを施したカラーリングは、1960年代のレースで活躍した4輪車に多く用いられたもの。その後、バイクのレースシーンでも見られるようになった配色だ

Sprint 150 Racing Sixtiesには「グリーン」のほか、「ノチェンツァホワイト」もラインアップ。こちらも同年代のレーシングマシンを意識したカラーリングやグラフィックを追求している

Sprint 150 Racing Sixtiesには「グリーン」のほか、「ノチェンツァホワイト」もラインアップ。こちらも同年代のレーシングマシンを意識したカラーリングやグラフィックを追求している

車体後方にもイエローのストライプが差し込まれている。テールランプの形状はクラシカルだが、光源はLED

車体後方にもイエローのストライプが差し込まれている。テールランプの形状はクラシカルだが、光源はLED

フラットなフットスペースには、ブラックのスリットが入る。これもベスパの伝統を感じる意匠だ

フラットなフットスペースには、ブラックのスリットが入る。これもベスパの伝統を感じる意匠だ

肉厚で座り心地のよさそうなダブルシート。縁に施されたホワイトのパイピングがクラシカルな雰囲気を高める

肉厚で座り心地のよさそうなダブルシート。縁に施されたホワイトのパイピングがクラシカルな雰囲気を高める

シート下にはフルフェイスのヘルメットを収納できるボックスを用意※写真のヘルメットはジェットタイプ

シート下にはフルフェイスのヘルメットを収納できるボックスを用意
※写真のヘルメットはジェットタイプ

古くからのベスパを知る人は2ストロークエンジンと手元で変速するハンドシフトを特徴として記憶しているかもしれないが、現行モデルはすべて4ストロークエンジンとなり、排出ガス規制に対応するとともに良好な燃費も実現している。スクーターとしての性能や操作性は大幅に向上しているものの、コックピットのデザインなどは伝統的なベスパのイメージを踏襲しているので安心してほしい。

かつては左手側のグリップにハンドシフトが装備されていたが、現行モデルはリアブレーキレバーが配されるのみ。グリップは国産車に比べると太めだ。なお、グリップにはベスパのロゴが刻まれ、スイッチ部はメッキ仕様とするなど、雰囲気を盛り上げる細かい工夫が施されている

かつては左手側のグリップにハンドシフトが装備されていたが、現行モデルはリアブレーキレバーが配されるのみ。グリップは国産車に比べると太めだ。なお、グリップにはベスパのロゴが刻まれ、スイッチ部はメッキ仕様とするなど、雰囲気を盛り上げる細かい工夫が施されている

ベスパらしさを損なわないコックピット。クラシカルなイメージのアナログ式メーターには小さめのバイザーが装備され、レーシングイメージを高める

ベスパらしさを損なわないコックピット。クラシカルなイメージのアナログ式メーターには小さめのバイザーが装備され、レーシングイメージを高める

フロントの左側にデュアルアクション油圧式サスペンションとブレーキを装備。現行モデルらしくABSも搭載される

フロントの左側にデュアルアクション油圧式サスペンションとブレーキを装備。現行モデルらしくABSも搭載される

フロントは片持ち式のサスペンションで支持される。ホイールがゴールドにペイントされているのも、車体色とのバランスがいい

フロントは片持ち式のサスペンションで支持される。ホイールがゴールドにペイントされているのも、車体色とのバランスがいい

リアホイールもゴールド。マフラーはコンパクトだが静音性は高く、排気音は静か

リアホイールもゴールド。マフラーはコンパクトだが静音性は高く、排気音は静か

空冷4ストローク単気筒SOHC 3バルブの「i-get」と呼ばれるタイプのエンジンは、走行性能と良好な燃費を両立する。排気量は154.8cc で、12.9PSの最高出力を発揮。変速はCVTとなっている。

空冷4ストローク単気筒SOHC 3バルブの「i-get」と呼ばれるタイプのエンジンは、走行性能と良好な燃費を両立する。排気量は154.8cc で、12.9PSの最高出力を発揮。変速はCVTとなっている。

見た目だけじゃない! 乗り味もイケてる!!

ベスパはクラシカルなスタイリングが人気なスクーターだけに走行性能について言及されることは少ないが、かつてはレースやラリーにも参戦しており、実は、走りの評価もなかなか高い。その走行性能を街中で確かめるとともに、高速道路でも体感してみる。

欧州車だが、足つき性は良好。シート高は790mmあるもののシートが左右に絞られた形状となっているため、身長175cmの筆者の場合、両足のかかとがしっかり接地した

欧州車だが、足つき性は良好。シート高は790mmあるもののシートが左右に絞られた形状となっているため、身長175cmの筆者の場合、両足のかかとがしっかり接地した

走り出しても排気音はとてもジェントルだが、想像以上に機敏な加速が味わえる。12.8 Nmの最大トルクを発揮するエンジンは十分な低速トルクを持っているようだ。国産のスクーターに比べると出だしはややマイルドなものの、伸びるように加速しギクシャク感も少ないので、個人的にはSprint 150 Racing Sixtiesのほうが好み。特にストップ&ゴーの多い街中ではストレスが少なく、景色を楽しみつつ適度な風を感じながら走行できた。

街乗りで乗りやすいエンジン特性でありながら、アクセルを大きめに開ければ機敏な加速を体感できる

街乗りで乗りやすいエンジン特性でありながら、アクセルを大きめに開ければ機敏な加速を体感できる

幹線道路や高速道路で少し元気よくアクセルを開けると、流れの速い道でも交通の流れをリードできる。高速道路では100km/hで巡航しても余裕があり、さらに、車体の安定性も高い。伝統のスチールモノコックボディの剛性感が伝わってくる乗り味だ。これなら長距離のツーリングも苦にならなそう。

ほかの車をリードできる余裕あるパワー感。高回転の伸びも気持ちいい

ほかの車をリードできる余裕あるパワー感。高回転の伸びも気持ちいい

そして、街乗りに使うことの多いスクーターらしく小回りのよさも上々。国産のスクーターよりもハンドリングは軽快で、狭いコーナーやUターンでの取り回しも良好だ。街中を流しながら、気になる店を見かけたらUターンして戻るというような使い方がスムーズに行える。

街中の細い道でのクイックなハンドリングが楽しい。スピードを出していなくても操っている感覚が味わえる

街中の細い道でのクイックなハンドリングが楽しい。スピードを出していなくても操っている感覚が味わえる

スピードが乗るコーナーは、高い安定感のおかげで不安感なく車体を傾けられる

スピードが乗るコーナーは、高い安定感のおかげで不安感なく車体を傾けられる

試乗を終えて

すぐれた剛性を持つスチールモノコック製ボディのおかげで高い安定感を感じつつ、小回りもきくので、街中を走るだけでも相当楽しい。出だしの加速が車体を押し出すようなものではなく、エンジンの伸びを感じられる加速感であったのも個人的には好みだ。そして、高速道路に入ると想像以上の安定感とパワフルさに驚かされた。やや上体が起きた乗車姿勢のため体に当たる風の抵抗は大きいものの、シートの座り心地がよいこともあって長距離走行しても疲れは少ない。普段は通勤や街乗りを中心に使い、休日にはちょっと足を伸ばしてツーリングを楽しむことも十分できる。

また、国産車にはない存在感を放つデザインは並ぶものがない大きな価値。実際、筆者が試乗している際も道行く人からの注目をかなり感じた。なお、Sprint 150 Racing Sixtiesも属する「Racing Sixties」シリーズには、丸目ライトを備えた「GTS Super 150 Racing Sixties」(155cc)と「GTS Super 300 Racing Sixties」(278cc)もラインアップされている。水冷エンジンを搭載し、前後にディスクブレーキを装備するなどのスペックは異なるものの、このマシンは、個人的には丸目と角目のどちらのスタイリングが好みかで選んでもいいと思う。

「GTS Super 150 Racing Sixties」と「GTS Super 300 Racing Sixties」のサイズは1,950(全長)×740(全幅)×1,190(全高)mmで、重量(150/300)は140/160kg

「GTS Super 150 Racing Sixties」と「GTS Super 300 Racing Sixties」のサイズは1,950(全長)×740(全幅)×1,190(全高)mmで、重量(150/300)は140/160kg

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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