バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
ツーリング性能とオフロードの走破性が向上した新型に試乗

これぞ真のアドベンチャーモデル! オフロードでも積極的に楽しめるホンダ「CRF250 RALLY<s>」

ラリーマシンのようなルックスに、長距離ツーリングも快適にこなせる性能を備えた人気の250ccクラスのアドベンチャーモデル、ホンダ「CRF250 RALLY」が2020年11月にフルモデルチェンジされた。今回は、この新型に新たに追加された「CRF250 RALLY<s>」に試乗。標準モデルよりもサスペンションストロークを伸長し、オフロードの走破性を高めたCRF250 RALLY<s>の実力を街中や林道でじっくり確かめてみた。

“RALLY専用”に設計された新型「CRF250 RALLY」

近年、長距離ツーリングを快適にこなせる「アドベンチャーモデル」が人気を集めているが、この系統のルーツにあるのが長距離ラリーで活躍したマシン。荒れた道を1日で数百kmも走破するラリーマシンは、まさに“アドベンチャー”をイメージさせる。今回紹介する「CRF250 RALLY」も、その流れを受けたマシンだ。2017年に登場した初代モデルは市販のオフロードバイク「CRF250L」をベースにしながら、ダカールラリーなどにも参戦するワークスラリーマシン「CRF450 RALLY」を思わせる左右非対称のLEDヘッドライトやカウルを備え、アドベンチャー色を強調。さらに、ベース車よりもストロークを伸ばしたサスペンションを採用しており、オフロードの走行性能も高めた仕上がりとされた。そんな初代「CRF250 RALLY」には、筆者もいち早く試乗している。オンロードもオフロードも乗りやすく、それでいてラリーを疾走するライダーのような気分にもなれる試乗体験ができた。

2017年に発売された初代「CRF250 RALLY」

2017年に発売された初代「CRF250 RALLY」

<関連記事>ラリーマシンのアグレッシブさをツーリングに持ち出せる250ccのホンダ「CRF250 RALLY」

外観イメージは継承しているため、冒頭の新型と2017年に発売されたモデルを比べてもそこまで大きな違いはないように見えるが、新型はフレームから新設計されている。9年ぶりにベース車である「CRF250L」が「CRF250 RALLY」と同タイミングでフルモデルチェンジしたことを受けての刷新ではあるが、ガソリンタンクやハンドル、シートなど多くの装備が“RALLY専用”に設計されているのがポイントだ。CRF250Lのバリエーションモデルではあるものの、より“ラリー色”が高められたと言える。そんな新型「RALLY」には、標準モデルとサスペンションストロークの長い「<s>タイプ」がラインアップ。<s>タイプは新型に追加された新たなタイプだ。

前後のサスペンションストロークやシート高、車体の長さや高さなど細かい部分は異なるが、標準モデル(写真上)も<s>タイプも基本構造は同じ

前後のサスペンションストロークやシート高、車体の長さや高さなど細かい部分は異なるが、標準モデル(写真上)も<s>タイプも基本構造は同じ

「CRF250 RALLY<s>」の車体をチェック!

今回取り上げるのは、サスペンションストロークが長い<s>タイプ。従来モデルよりフロントが10mm、リアが20mm伸長され、前後とも260mmとなったことで荒れた道での走破性が高まった。ABSが標準装備されているものの、リアはキャンセルできるので、オフロードマシンらしくリアタイヤをすべらせて向きを変えることもできる。エンジンは、評価の高い水冷4ストロークDOHC249cc単気筒をベースにしたもの。「RALLY」の特性を引き出せるよう、吸排気系のチューニングが施されている。

CRF250 RALLY<s>のサイズは2,230(全長)×920(全幅)×1,415(全高)mmで、重量は152kg

CRF250 RALLY<s>のサイズは2,230(全長)×920(全幅)×1,415(全高)mmで、重量は152kg

CRF250 RALLYの特徴である左右非対称の2眼LEDヘッドライトなど、フロントフェイスのイメージは従来モデルからのものを踏襲。同社のラリーマシン「CRF450 RALLY」と共通するイメージだ

CRF250 RALLYの特徴である左右非対称の2眼LEDヘッドライトなど、フロントフェイスのイメージは従来モデルからのものを踏襲。同社のラリーマシン「CRF450 RALLY」と共通するイメージだ

見るからに脚長となったフロントフォーク。ホイール径はオフロード車では一般的な前21インチ、後18インチだ

見るからに脚長となったフロントフォーク。ホイール径はオフロード車では一般的な前21インチ、後18インチだ

従来比20mmストロークがアップしたリアサスペンション

従来比20mmストロークがアップしたリアサスペンション

ブレーキは2019年からABSが標準装備となっている。ウェーブタイプのディスクは従来モデルと同じ

ブレーキは2019年からABSが標準装備となっている。ウェーブタイプのディスクは従来モデルと同じ

メーター横にリアのABSをキャンセルするスイッチを装備

メーター横にリアのABSをキャンセルするスイッチを装備

カウルに覆われていて水冷単気筒のエンジンは見えないが、従来モデルより搭載位置が20mm高くなっている。クランクケースの形状も一新され、オフロード走行に重要となる最低地上高が従来比30mm高まった

カウルに覆われていて水冷単気筒のエンジンは見えないが、従来モデルより搭載位置が20mm高くなっている。クランクケースの形状も一新され、オフロード走行に重要となる最低地上高が従来比30mm高まった

マフラーのデザインは大きく変わっていないが、排気サウンドは従来よりもパルス感を強調しているという

マフラーのデザインは大きく変わっていないが、排気サウンドは従来よりもパルス感を強調しているという

RALLY専用に設計されたパーツ類により、従来モデルよりもツーリングでの使い勝手も向上している。ガソリンタンクの容量が2Lアップして12Lとなったことで、長距離ツーリング時の給油の頻度を減らすことが可能に。さらに、ハンドルにはインナーウェイトを装備して振動吸収製を高め、ステップにはラバーを装備して足のすべりやすさを抑制。シートの幅も、長時間載っていてもお尻が痛くない設計となった。

容量が12Lとなり、ボリュームを増したタンク周り。無給油での航続距離は400kmを超える

容量が12Lとなり、ボリュームを増したタンク周り。無給油での航続距離は400kmを超える

シートの幅はベース車よりも広く設計されている。ツーリング志向をより高めた仕上がりだ

シートの幅はベース車よりも広く設計されている。ツーリング志向をより高めた仕上がりだ

細かい部分だが、シートの取り付けボトルが荷がけフックを兼ねた形状となっている

細かい部分だが、シートの取り付けボトルが荷がけフックを兼ねた形状となっている

CRF250 RALLY専用設計のハンドル。アップライトな乗車姿勢を実現させる形状となっている

CRF250 RALLY専用設計のハンドル。アップライトな乗車姿勢を実現させる形状となっている

ハンドルガードが装備されているのは、従来モデルと同じ

ハンドルガードが装備されているのは、従来モデルと同じ

スピードと回転数を表示するデジタルメーターは形状を一新し、ギアポジションインジケーターや燃費計を追加。文字サイズを17mmから23mmに大型化するなど、視認性も向上させている

スピードと回転数を表示するデジタルメーターは形状を一新し、ギアポジションインジケーターや燃費計を追加。文字サイズを17mmから23mmに大型化するなど、視認性も向上させている

ステップにはラバーを追加。ギア比もエンジン特性に合わせ、街乗りやオフロード走行で多用する1〜5速ギアをローレシオ化し、高速で使う6速ギアをハイレシオ化している

ステップにはラバーを追加。ギア比もエンジン特性に合わせ、街乗りやオフロード走行で多用する1〜5速ギアをローレシオ化し、高速で使う6速ギアをハイレシオ化している

従来モデル同様に小物入れも装備されているが、容量はやや小さくなり、形状も変更されている

従来モデル同様に小物入れも装備されているが、容量はやや小さくなり、形状も変更されている

オフロードで走りたくなる走行性能を試乗で体験

設計を見だけでも、CRF250 RALLY<s>はツーリングでの快適性を向上させつつ、オフロードの走行性能もアップさせていることが想像できる。その乗り味を試すため、街中から高速道路に入り、林道まで足を伸ばしてみた。

身長175cmの筆者の場合、両足つま先の拇指球が接地するくらい。885mmというシート高(標準タイプは830mm)から想像するより、足付き性は悪くない。車体のバランスもいいので、信号待ちなどでは片足でも不安感はなかった

身長175cmの筆者の場合、両足つま先の拇指球が接地するくらい。885mmというシート高(標準タイプは830mm)から想像するより、足付き性は悪くない。車体のバランスもいいので、信号待ちなどでは片足でも不安感はなかった

エンジンをかけると、パルス感のある元気のいい排気音が耳に届く。先代モデルのヒュンヒュン回るような排気音より、新型のほうが個人的には好み。かつて、空冷エンジンを搭載していた頃のホンダのオフロードモデル「XR」シリーズを思い起こさせるような歯切れのよさを感じる。そして、クラッチレバーを握ると、驚くほど操作が軽い。アシストスリッパークラッチを新たに採用することで、クラッチの操作荷重が約20%低減されたというが、感覚的にはもっと軽くなった印象。信号待ちなどで、ニュートラルに入れずに握りっぱなしにしていても疲れないほどだったので、長距離ツーリングではかなり恩恵がありそうだ。

新採用のアシストスリッパークラッチは、クラッチの操作が軽くできるようになるだけでなく、シフトダウン時にエンジンブレーキによるリアタイヤのホッピングを防ぐ効果もある

新採用のアシストスリッパークラッチは、クラッチの操作が軽くできるようになるだけでなく、シフトダウン時にエンジンブレーキによるリアタイヤのホッピングを防ぐ効果もある

街中を走行している際に感じられたのは、常用回転数でのトルクを増したエンジン特性。5速までのギア比を低くしたことも相まって、それほどアクセルを開けなくても幹線道路などでラクに巡航できる。前方を走る自動車との車間を少し詰めたい時にも、軽くアクセルをひねるだけで加速でき、街乗りでのストレスはない。ただ、ストロークが長い<s>タイプのサスペンションは、やや前後のピッチング挙動が大きいように感じた。

ストップ&ゴーが多い街中では、ストロークの長いサスペンションは挙動の大きさが気になる場面も。早くオフロードに行きたい!

ストップ&ゴーが多い街中では、ストロークの長いサスペンションは挙動の大きさが気になる場面も。早くオフロードに行きたい!

続いて、高速道路へ。高速巡航では、ラリーマシンのようなカウルが付いていることのありがたさを感じる。上体が起きた姿勢のオフロード車はもろにライダーが風を受けてしまうが、CRF250 RALLY<s>は、少し前傾姿勢をとると上体に当たる風圧が大幅に低減。長い距離を走る場合、疲れが大きく違ってくるポイントだ。

大きなバイザーのあるオフロードヘルメットは高速で風を受けると首が疲れるので、少し前かがみになるだけで風圧を避けられるのはありがたい

大きなバイザーのあるオフロードヘルメットは高速で風を受けると首が疲れるので、少し前かがみになるだけで風圧を避けられるのはありがたい

RALLY専用に設計されたシートも、かなり快適。オフロード車のシートは、オフロードでの操作性を優先した細いタイプが多いため、お尻が痛くなりやすい。その点、CRF250 RALLY<s>のシートは全体をしっかり受け止めてくれるほどの広さがあるので、長時間座っていても苦にならない。そんな座り心地のシートに座り、高速道路のカーブにさしかかった際には、内側のシートに荷重することで曲がるきっかけを作ることもできる。ただし、タイトなコーナーでは、オフロードマシンらしくリーンアウトの姿勢でシート外側の角に座るようなポジションのほうが扱いやすく、よく曲がる印象。ツーリングバイクのように見えても、CRF250 RALLY<s>がオフロードを出自としていることが感じられる部分だ。

座り心地がよく、荷重もしやすいシート形状。オンロードマシンのようにシートの内側に荷重しても、曲がるきっかけを作れる

座り心地がよく、荷重もしやすいシート形状。オンロードマシンのようにシートの内側に荷重しても、曲がるきっかけを作れる

タイトなコーナーでは、リーンアウトのフォームで扱うほうが軽い動きでバンクさせやすい

タイトなコーナーでは、リーンアウトのフォームで扱うほうが軽い動きでバンクさせやすい

そして、念願のオフロードに到着。よくある砂利敷きのフラット林道だが、こういう道にくると<s>タイプの長いサスペンションが本領を発揮する。少し大きめの石を踏んでも軽くいなすように動き、路面が掘れているような場面でもショックを受け流してくれるのだ。中回転域でのトルクが増したエンジン特性もオフロードにマッチしており、ついついアクセルを開けたくなるが、まだ序盤なので慎重にいきたい。だが、車体の挙動が素直なこともあり、だんだんとペースがアップ! ちょっとスピードを落とそうとした際も、ABSのおかげでツーリングペースでは安心してブレーキを握ることができた。

ラリーライダーのようなスタンディングの姿勢もとりやすく、オフロード性能は期待以上だった

ラリーライダーのようなスタンディングの姿勢もとりやすく、オフロード性能は期待以上だった

スクリーン越しに見ると単なる砂利道を走っているだけでも、ラリー気分が盛り上がる

スクリーン越しに見ると単なる砂利道を走っているだけでも、ラリー気分が盛り上がる

あまりの走りやすさに少し路面の荒れた脇道にも入ってみたが、それでも不安のない走行性能はさすが!

あまりの走りやすさに少し路面の荒れた脇道にも入ってみたが、それでも不安のない走行性能はさすが!

試乗を終えて

長距離ツーリング向きのバイクは排気量の大きなアドベンチャー系マシンが人気だが、今回、CRF250 RALLY<s>に試乗して、やはり日本国内の道には250ccくらいの排気量がちょうどよさそうだと感じた。もちろん、高速道路を長時間移動するような時は大排気量車のほうが余裕があり、疲れは少なくて済む。だが、大排気量車の場合、一般的なオフロード走行ではパワーを持て余しがち。また、いざという時に片足で支える自信がなく、積極的にオフロードを楽しむライディングができなかったりするものだ。その点、CRF250 RALLY<s>は、オフロードで感じる車重が圧倒的に軽く、ライダーはアグレッシブにライディングを楽しむ気分になれる。低中回転域でのトルクを増した特性のエンジンにより積極的にアクセルを開けたくもなるが、大排気量車のように大きなパワーでタイヤが空転する心配もない。さらに、車重が軽いので狭い道でのUターンもしやすく、それが狭い道に入っていこうと思う冒険心にもつながる。CRF250 RALLY<s>は、ライダーの心のリミッターを解き放ってくれる“真のアドベンチャーモデル”と言えるかもしれない。

低中回転域での力強さを増したエンジン特性のマシンで、田舎っぽい道を流すのも気分がいい

低中回転域での力強さを増したエンジン特性のマシンで、田舎っぽい道を流すのも気分がいい

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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