イベントレポート

かつて世界を席巻したスバルの「ラリーカー」に思いを馳せる!

2021年4月9日〜11日の期間、千葉の幕張メッセにおいて「オートモビルカウンシル2021」が開催された。同イベントは、貴重なヘリテージカーの展示や販売などがメインなのだが、それ以外にもヘリテージカーに関する各種イベントや、主催者の興味深いテーマによる車種展示なども催されていた。

今年の主催者におけるテーマ展示は、「時代を進めたラリーカーの戦闘美」と題され、スバルや日産、ランチアやフィアットなど、歴代のラリーカーが展示されていた。そのうち、当記事では特に日本で人気を誇った、スバルのラリーカーについてご紹介しよう。

「オートモビルカウンシル2021」で展示されていた、スバルのラリーカー「インプレッサ555WRC」(左)と「インプレッサWRC」(右)

「オートモビルカウンシル2021」で展示されていた、スバルのラリーカー「インプレッサ555WRC」(左)と「インプレッサWRC」(右)

スバルによって展示されていたラリーカーは、1998年の「インプレッサ555WRC」と、2008年の「インプレッサWRC」の2台だ。当時、スバルはブランドイメージを高めるべく、1988年4月にモータースポーツ活動の統括部門である「STI(スバルテクニカインターナショナル)」を設立。STIは、WRC(世界ラリー選手権)へ本格的にチャレンジするため、イギリスの「プロドライブ」と提携してマシンを開発し、1990年からWRCのトップカテゴリーであったグループAへの参戦を開始した。その後、スバルは2008年にWRCの活動を終了するまで、いくつものマニュファクチャラーズタイトルやドライバーズタイトルを獲得し、世界におけるスバルの知名度を大きく引き上げたのである。

インプレッサ555WRC(1998年)

スバル「インプレッサ555WRC」

スバル「インプレッサ555WRC」

水平対向4気筒エンジンとフルタイム4WDという、スバルが長く培ってきたコア技術で、WRCを席巻した「インプレッサ」。今回、展示されていたのは、1998年のラリー・サンレモに出場した「インプレッサ555WRC」だ。

スバル「インプレッサ555WRC」

スバル「インプレッサ555WRC」

同マシンは、エースドライバーのコリン・マクレーがドライブ。SS3でのパンクで遅れてしまったが、その後の猛追によって3位に入賞した。この年、マクレーは第4戦のポルトガル、第6戦のツール・ド・コルス、第8戦のアクロポリスで優勝し、ドライバーズ、メイクス両選手権でリードしていたものの、その後、三菱の「ランサーエボリューション」を駆るトミー・マキネンに3連勝を許し、前年まで3年連続で守ってきたマニュファクチャラーズタイトルを逃してしまった。しかし、最終戦では電子制御の油圧式セミATが試験的に搭載されるなど、翌年に向けて積極的な開発が行われていた。

スバル「インプレッサ555WRC」

スバル「インプレッサ555WRC」

搭載エンジンは水平対向4気筒シングルターボで、1994cc、最高出力300ps、最大トルクは48.0kg-mを発揮していた。

なお、スバルはこの前年となる1997年から、2ドアの「インプレッサリトナ」をベースとしたWRカーを投入しており、マニュファクチャラー部門3連覇を達成。それを記念して、「インプレッサ22B-STIバージョン」が400台限定で販売された。500万円を超える高価格にもかかわらず、2日間で完売したことは当時大きな話題となった。

インプレッサWRC(2008年)

スバル「インプレッサWRC」

スバル「インプレッサWRC」

2005年以来、勝利から遠ざかっていたスバル。前シーズンまではマシンの戦闘力が劣っており、またサスペンションセッティングなどもうまくいかずに苦戦していた。そこで、満を持して、2008年シーズン途中の第7戦アクロポリスから投入されたのが、ハッチバックの「インプレッサWRC」だ。

スバル「インプレッサWRC」

スバル「インプレッサWRC」

「S14」というコードネームで呼ばれた、WRCマシンとしては同社初のハッチバックで、エアロダイナミクスが追求されていた。エンジンやサスペンションなど、信頼性の高いものはキャリーオーバーされていたが、それ以外は軽量でコンパクトな新型ギアボックスやダンパーなど、新しいパーツが採用されていた。

スバル「インプレッサWRC」

スバル「インプレッサWRC」

エースのペター・ソルベルグによるS14のデビュー戦では、いきなり2位に入賞。1年ぶりに表彰台に立ったほか、クリス・アトキンソンは最終日に最速ステージタイムを記録するなど、高い戦闘力を見せつけた。しかし、その後はセッティングがうまくいかずに苦戦する。ただ最終戦で、ある程度の方向性が見えたため、翌年の2009年に期待がかかった……はずだった。当初、スバルでは2009年までWRCを継続する予定だったのだが、リーマンショックに端を発する経済危機によって、1年前倒しで活動を終了してしまったため、2008年がスバルとして最後のWRC参戦となってしまったのだ。

だが、スバルはモータースポーツ活動を忘れてはいない。現在も、「SUBARU BRZ GT300」でSUPER GTシリーズに参戦しているほか、全日本ラリー選手権に「WRX STI」で戦い、そこで得られた知見は、積極的に市販車へとフィードバックされている。

なお、同展示ブースにはスバルのラリーカーのほかにも、グループBで活躍したランチア「ラリー037 エボリューション2」「フルヴィアクーペ1.6HF」「ストラトス HF Gr.4」、フィアット「131アバルトラリー」といったイタリア勢のほか、ダットサン「ブルーバード1600SSS」「240 Z」「バイオレットGT」などが展示され、いずれも当時の戦歴を持つ個体であることもあって、エンスージアストたちの熱い視線を集めていた。

ランチア「ラリー037 エボリューション2」

ランチア「ラリー037 エボリューション2」

ランチア「フルヴィアクーペ1.6HF」

ランチア「フルヴィアクーペ1.6HF」

ランチア「ストラトス HF Gr.4」

ランチア「ストラトス HF Gr.4」

フィアット「131アバルトラリー」

フィアット「131アバルトラリー」

ダットサン「ブルーバード1600SSS」

ダットサン「ブルーバード1600SSS」

ダットサン「240 Z」

ダットサン「240 Z」

ダットサン「バイオレットGT」

ダットサン「バイオレットGT」

[写真:内田俊一、内田千鶴子]

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
記事一覧へ
桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×