バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
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高コスパなだけじゃない!45万円以下で購入できるスズキ「ジクサー250」は操る楽しさも抜群にいい

近年のバイクは、安全装備の充実や高性能化などで価格が上昇傾向にあるため、「バイクに乗りたい」と思っても、価格がハードルとなることも少なくない。今回紹介するのは、250ccクラスにおいて圧倒的な低価格のスズキ「ジクサー250」。45万円以下で購入できる価格の安さもさることながら、走行性能も高い評価を得ているモデルだ。その実力を試乗でじっくり確かめてみた。

スズキの油冷エンジンといえば「GSX-R」シリーズ

「ジクサー250」は、スズキとしては実に14年ぶりとなる油冷エンジンを搭載したモデル。とはいえ、その油冷エンジンは新たに開発されたもので、過去の油冷エンジンとはまったく異なる特性となっている。

新しい油冷エンジンを搭載した「ジクサー250」

新しい油冷エンジンを搭載した「ジクサー250」

そんな新型の油冷エンジンを解説する前に、過去のスズキの油冷エンジンについて振り返っておきたい。油冷エンジンといえば、1980年代からスズキが大排気量モデルに搭載していたものを思い出すバイクファンも多いだろう。高性能エンジンの水冷化が進む中、スズキは油冷の独自システムで他メーカーのスポーツモデルに対抗。特に、1,052ccの油冷エンジンを搭載し、130PSを発揮した「GSX-R1100」(1986年発売)は、当時、“世界最速の市販車” として大きな話題を集めた。つまり、この時代の油冷エンジンは高性能を追求するために生まれたものだったのだ。

市販車としては当時の世界最速となる265km/hをマークし、大きな話題を集めた1989年式「GSX-R1100」

市販車としては当時の世界最速となる265km/hをマークし、大きな話題を集めた1989年式「GSX-R1100」

油冷エンジンで始ったスズキのフラッグシップモデル「GSX-R」シリーズだが、1990年代に転換期を迎える。当時のスーパーバイクレースにも参戦していた「GSX-R750」が1992年に水冷エンジンを搭載し、翌年には「GSX-R1100」も水冷化。これまで油冷エンジンで他メーカーの水冷エンジン搭載モデルに対抗してきたものの、やはり高性能化するには限界があり、水冷エンジンへと舵を切ったのだ。しかし、この時代の油冷エンジンにファンが多かったことから、油冷エンジンはストリート向けのモデルに搭載され続けることに。だが、その油冷エンジンも、2006年に発売された「バンディット1200/S」を最後に姿を消してしまう。

新開発の油冷エンジンを搭載した「ジクサー250」

その後、約14年の時を経てスズキに油冷エンジン搭載モデル「ジクサー250」が登場する。1980年代の油冷エンジンは、高温になるシリンダーヘッド周辺にオイルを噴射してオイルクーラーで冷やすシステムで、いわば空冷エンジンに近い設計だったのに対し、「ジクサー250」に採用された新しい油冷エンジンは、シリンダー周辺にもオイル通路を設けて積極的に冷却に活用する「SOCS=Suzuki Oil Cooling System」と呼ばれる、水冷エンジンに近いシステムとされた。

「東京モーターショー2019」に展示されていた「ジクサー250」の新型油冷エンジン。エンジンの見た目も空冷フィンの刻まれていた過去の油冷エンジンとは異なり、一見すると水冷エンジンに近いものとなっている

「東京モーターショー2019」に展示されていた「ジクサー250」の新型油冷エンジン。エンジンの見た目も空冷フィンの刻まれていた過去の油冷エンジンとは異なり、一見すると水冷エンジンに近いものとなっている

性能的にも水冷エンジンに勝るとも劣らないスペックに仕上がっており、水冷2気筒エンジンを搭載している同社の250ccスポーツモデル「GSX250R」が最高出力24PSのところを、ジクサー250は最高出力26PSと上回っている。GSX250Rのメーカー希望小売価格が581,900円(税込)であることを考えると、ジクサー250(メーカー希望小売価格448,800円/税込)のコストパフォーマンスの高さは相当なものだ。

249ccの油冷単気筒エンジンは、26PS/9,000rpmの最高出力と22Nm/7,300rpmの最大トルクを発揮

249ccの油冷単気筒エンジンは、26PS/9,000rpmの最高出力と22Nm/7,300rpmの最大トルクを発揮

油冷であることを見分けるポイントは車体左側にあるオイルクーラー。水冷のラジエーターと比べるとずいぶんコンパクトだ

油冷であることを見分けるポイントは車体左側にあるオイルクーラー。水冷のラジエーターと比べるとずいぶんコンパクトだ

カウルレスのネイキッドデザインの車体は、アップライトなハンドルに大きめのLEDヘッドライトを装備。切り上がったような作りのテールカウルは、ヨーロッパなどで人気の高いストリートファイター系を思わせる。そもそも、ストリートファイター系と呼ばれるカスタマイズがヨーロッパを中心に広まった当初、ベースモデルとして人気が高かったのがGSX-Rシリーズ。海外で「ジクサー」と呼ばれていた愛称を車名とした「ジクサー250」が、ストリートファイター系のデザインとされたのは文脈に沿った妥当な選択と言えるだろう。

LEDを3つ重ね合わせたようなヘッドライトは、ネイキッドらしいスタイルの中にもアグレッシブさを感じさせる

LEDを3つ重ね合わせたようなヘッドライトは、ネイキッドらしいスタイルの中にもアグレッシブさを感じさせる

車名も入るサイドのシュラウドは尖ったデザイン

車名も入るサイドのシュラウドは尖ったデザイン

テールカウルも斜めに切り上がったシャープな造形。ストリートファイター系カスタムでよく見られたものだ

テールカウルも斜めに切り上がったシャープな造形。ストリートファイター系カスタムでよく見られたものだ

アップタイプのパイプハンドルだが、グリップ位置はそれほど高くない

アップタイプのパイプハンドルだが、グリップ位置はそれほど高くない

コンパクトなデジタルタイプのメーターには、速度の上にバータイプのタコメーターが表示。シフトインジケーターも装備されている

コンパクトなデジタルタイプのメーターには、速度の上にバータイプのタコメーターが表示。シフトインジケーターも装備されている

タンデムシートはコンパクトなため、座り心地はあまり期待できなさそう。タンデムグリップのデザインはシャープなイメージだ

タンデムシートはコンパクトなため、座り心地はあまり期待できなさそう。タンデムグリップのデザインはシャープなイメージだ

排気口が縦に2つ並ぶマフラーは迫力がある

排気口が縦に2つ並ぶマフラーは迫力がある

実際に試乗した人たちからの評価が特に高いのが、足回り。スペック的には、41mm径の正立式のフロントフォークにシングルディスクのブレーキを備えたごくごく一般的なものだが、グリップ性能がよく剛性が高いラジアルタイヤを装備しているのがポイントだ。バイアスタイヤよりもコストは高いラジアルタイヤを標準タイヤにしている点から、走行性能に対しては手を抜かないという姿勢が感じられる。

正立式のフロントフォークに、BAYBLE製のシングルディスクブレーキを装備。もちろん、ABSも標準装備される

正立式のフロントフォークに、BAYBLE製のシングルディスクブレーキを装備。もちろん、ABSも標準装備される

リアには、スイングアームマウントのフェンダーを装備。150/60R17サイズのラジアルタイヤを履いている

リアには、スイングアームマウントのフェンダーを装備。150/60R17サイズのラジアルタイヤを履いている

細身のスポークを採用したアルミ製のホイールは見た目のデザインもよく、いかにも軽そう

細身のスポークを採用したアルミ製のホイールは見た目のデザインもよく、いかにも軽そう

コスト削減の跡を感じた唯一の装備がサイドスタンド。パイプを潰したようなシンプルなデザインだ

コスト削減の跡を感じた唯一の装備がサイドスタンド。パイプを潰したようなシンプルなデザインだ

ライディングが上手くなりそうな走行性能

ジクサー250が発売されたのは2020年3月で、すでに発売から1年以上過ぎている。実は、当初「価格を抑えた250ccモデル」という印象が強く、それほど興味を引かれなかったため試乗しなかったのだが、続々と耳に入ってくる、試乗した人たちからの評価が想像以上に高かったことを受け、今回試乗することに。なかでも走行性能はすこぶる評判がいいので、街乗りのほか、高速道路やワインディングでがっつりテストしてみた。

車体サイズは2,010(全長)×805(全幅)×1,035(全高)mmと、250ccクラスにしてはコンパクト。足つきは良好で、身長175cmの筆者がまたがると両足のかかとまでしっかり接地する

車体サイズは2,010(全長)×805(全幅)×1,035(全高)mmと、250ccクラスにしてはコンパクト。足つきは良好で、身長175cmの筆者がまたがると両足のかかとまでしっかり接地する

ステップに足を乗せると、ヒザだけでなく内ももからかかとまでが吸い付くように車体にフィットする。下半身でのコントロールするバイクでは、このフィット感は重要な要素だ

ステップに足を乗せると、ヒザだけでなく内ももからかかとまでが吸い付くように車体にフィットする。下半身でのコントロールするバイクでは、このフィット感は重要な要素だ

下半身と車体との高いフィット感は、フレームがフラットになるようなカバーが装備されているおかげだ

下半身と車体との高いフィット感は、フレームがフラットになるようなカバーが装備されているおかげだ

前後に移動できる幅はそれほど大きくないが、段差などがないスムーズな形状なのでスムーズに移動でき、それぞれの位置での収まりもいい

前後に移動できる幅はそれほど大きくないが、段差などがないスムーズな形状なのでスムーズに移動でき、それぞれの位置での収まりもいい

エンジンをかける時に感じたのは、近年のスズキ車では標準的な装備になっている「スズキイージースタートシステム」の利便性。通常のセルボタンはエンジンがかかるまで押し続けなければならないが、スズキイージースタートシステムはワンプッシュすれば、エンジンがかかるまでセルスターターが動き続けてくれるのだ。

最近のバイクはエンジンがかかりやすいので通常のセルスターターでもそれほど問題には感じないが、ボタンを押し続けなくていいのは些細なことだがありがたい

最近のバイクはエンジンがかかりやすいので通常のセルスターターでもそれほど問題には感じないが、ボタンを押し続けなくていいのは些細なことだがありがたい

クラッチをつないで走り始める。エンジンは非常にフラットで扱いやすい。逆に言えば、個性がないとも言えるくらいだ。アクセルを開ければ開けただけパワーが取り出せるが、パワーバンドのような盛り上がりはなく、排気音も静か。空冷エンジンのような迫力ある排気音を響かせていた過去の油冷エンジンが個性的だっただけに、当時の印象を持つ人がジクサー250に乗ると拍子抜けしてしまうかもしれない。

250ccの単気筒としてはパワフルなエンジン。扱いやすい特性で、スムーズに車体を加速させることができる

250ccの単気筒としてはパワフルなエンジン。扱いやすい特性で、スムーズに車体を加速させることができる

ただ、このエンジン特性はコーナーリング、特にコンパクトに曲がるような場面では非常にありがたい。曲がりながらトルク変動によって車体がギクシャクしてしまうようなことがなく、少しずつアクセルを開ければ必要なパワーを欲しい分だけ取り出すことができる。サスペンションも硬すぎず、よく動くが、その動きはダンピングでコントロールされているような特性。スーパースポーツモデルのようにスパッと向きが変わる鋭さはないものの、車体がコンパクトなうえにサスペンションの出来がいいため、思った以上にコンパクトに曲がることが可能だ。意図した通りのラインで(場合によってはそれより小さく)曲がれるので、自分のライディングが上手くなったように感じられる。

街中の交差点などでは、リーンアウト気味の姿勢をとればコンパクトに曲がれる。この姿勢でも下半身と車体のフィット感は高い

街中の交差点などでは、リーンアウト気味の姿勢をとればコンパクトに曲がれる。この姿勢でも下半身と車体のフィット感は高い

内側に腰を落とすような高速コーナーでも車体との一体感は高く、安心して曲がれた。上手な人が乗れば、すごく速く走れそうだ

内側に腰を落とすような高速コーナーでも車体との一体感は高く、安心して曲がれた。上手な人が乗れば、すごく速く走れそうだ

横方向の移動もしやすいので、腰をズラしてのコーナーリングもしやすい

横方向の移動もしやすいので、腰をズラしてのコーナーリングもしやすい

試乗を終えて

ジクサー250はコストパフォーマンスの高さが注目されるが、実際に乗り回してみると、それだけにおさまらない魅力に気付かされる。バイクを操るうえで重要な意味を持つ車体との一体感が高く、エンジンやサスペンションの特性にも変なクセがないため扱いやすさが抜群にいい。意図した通りに車体が動いてくれるのでライディングが上手くなったように感じられ、さらには、上達していけそうな気持ちにもなる。経験の浅い初心者や久しぶりにバイクに乗るリターンライダーはもちろん、ある程度の経験はあるがもっと上手くなりたいというライダーにもうってつけのモデルだろう。

バイクを操っているような感覚が得やすいので、コーナーのたびに「次はもっとコンパクトに曲がれるかも」と考えてしまい、気付けばずいぶん走り回ってしまった。このように、普通に街中を走っているだけでも存分に楽しむことができる。バイクに乗る楽しさの本質に触れられるモデルかもしれない

バイクを操っているような感覚が得やすいので、コーナーのたびに「次はもっとコンパクトに曲がれるかも」と考えてしまい、気付けばずいぶん走り回ってしまった。このように、普通に街中を走っているだけでも存分に楽しむことができる。バイクに乗る楽しさの本質に触れられるモデルかもしれない

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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