自動車ライターのマリオ高野です。
今回紹介するのは、プジョー「208GTライン」。筆者の大好きな「MT(マニュアルトランスミッション)」搭載車ではありませんが、総合的にとてもすばらしいコンパクトカーなので、AT車ながら取り上げてみました。
フルLEDの3本爪をモチーフとしたヘッドライトやデイライトまわりのデザインは、ライオンの牙を連想させる個性的なもの
まず、最近のプジョー車はいずれも秀作ぞろいであり、コロナ禍にあっても好調な販売を記録し続けています。2021年3月の国内販売台数は1,911台(前年同月比151.1%)ということで、これは過去10年で最高台数、過去20年でも歴代2番目の記録とのこと。
プジョー車のブレイクといえば、今回紹介する「208」の前身にあたる「206」シリーズが2000年代初頭に大人気を博したことが思い出されます。今のプジョー人気にも208が大きく貢献しているのですが、208以外のSUV系モデルの人気も高く、206のみがよく売れていた時代とは異なる状況ですね。
先日はプジョー車のフルラインアップ試乗会に参加し、最近のプジョーが日本でよく売れる理由を実感。とりわけ208シリーズは誰にでも幅広くオススメできるので、今回ピックアップしました。
プジョー208は、内外装のデザイン、走り、コンフォート性、居住性(実用性)、燃費、先進性、そして輸入車としてはギリギリ手ごろだと思える価格など、すべての項目で高得点をマークする万能車なのです。
見た目はボリューム感がありますが、今時のクルマとしては本当にコンパクトカーなサイズで日本の狭い道でも苦になりません
リヤまわりの灯火類のデザインや光り方もハイセンスを感じさせます
小径ステアリングが特徴的な「3D i-Cockpit」と呼ばれる内装
一見、奇抜さを表現したようにも感じますが、乗れば乗るほどドライバーフレンドリーであることを実感。運転環境はとても適切です
走り好きのクルマオタク視線から申し上げると、山道でのファン・トゥ・ドライブ度と高速ダイナミクス性能の高さにはホレボレするばかり。日本やドイツのコンパクトカーにはない独自の内外装センスや、先進性を高めながらも、昔ながらの骨太な乗り味を伝統的に守り続けているところも大変好印象です。
コーナリング時には“ネコ足”と呼ばれる、プジョー車ならではの粘り気ある接地感をともないつつ、きついカーブも思いのままにグイグイ曲がる気持ちよさに浸ることができました。中年世代以上のクルマ好きなら、思わずニンマリしてしまう感覚です。
高速巡航は快楽タイムのひとつ。鉄壁な安定性と適度なダイレクト感に包まれながら低燃費で巡航できます
典型的な今時の高効率ユニットである3気筒1.2Lターボエンジンは、よくあるダウンサイジングエンジンのように実用トルクが豊かなだけではなく、高回転域まで回したときの快感度も意識的に高められており、古参のクルマ好き諸兄姉からも文句は出ないでしょう。ただし、スポーツモード時に発せられるいかにも電子的だと感じる演出音については好き嫌いが分かれるところ。
個人的にはそれが208シリーズ唯一のネガ要素となりますが、まったく大した問題ではありません。
高速巡航ではいとも簡単にリッター20km以上の燃費を記録できますし、動力性能を積極的に発揮させても極端に悪化しないところにも感心しました。
出力特性、回転フィーリング、燃費など、オタク気質のクルマ好きもうなる秀逸なユニットです。スポーツモード時の演出音は好みが分かれるところ
乗り心地については、「GT」よりもアルミホイールのサイズがひとまわり小さくなる実用グレード「Allure(アリュール)」のほうがより好ましいのですが、シートの出来は「GT」のほうがフランス車らしいボリューム感を備えているので、グレード選びは少し難しいところ。
「GT」のシートは「フランス車=シートが秀逸」との先入観を持つ人も納得の出来のよさ。「Allure」のシートも悪くはありませんが、少し平凡な印象です
小型車ながらデザイン性の高さにより路上での存在感が強く、リアデザインからは高級感すら感じさせます
フル電動車版の「e208」もラインアップされるなど、動力性能の選択肢が多彩なことも最近のプジョー車の魅力と言えるでしょう。
走りオタク気質のクルマ好きとしては、やはり総合的にはガソリンエンジン搭載の「GT」を選びたくなりますが、乗り心地とシートの質感にこだわる人は、実際に試乗して自分の琴線に触れるほうを選んでください。
この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。