レビュー
ベースは人気のN-BOX

“商用車”とあなどるなかれ!? ホンダ「N-VAN(6MT)」で山道を駆けてみた

自動車ライターのマリオ高野です。

本来は商用車として使われるクルマでありながら、乗用車的な装備が整った上級グレードは普段乗りのクルマとして十分な快適性が得られ、なおかつMT(マニュアルトランスミッション)が選べるということで、マニア層から大注目の軽自動車、ホンダの「N-VAN」。これを山道で走らせてきました。

パッと見は普通の「N-BOX」のように見えるので、対向車から見ても商用車がきたという印象はないでしょう

パッと見は普通の「N-BOX」のように見えるので、対向車から見ても商用車がきたという印象はないでしょう

乗用車ベースなので質感は高い

大人気の超ハイトワゴン「N-BOX」をベースに、装備やリヤシートを簡素化したクルマだけあって、業務用の需要に応える積載性などを備えながらも、昔ながらの軽ワンボックス車よりも各部の質感や走行性能が圧倒的に高く、快適性もおおむね文句なし。

MTが選べるのはNAエンジン仕様のみであり、標準タイヤも、サイズ、銘柄ともにいかにも業務用という低価格なもの。クルマに詳しい人の目には、商用・業務用のクルマであることがすぐにわかってしまいますが、逆に道具として割り切れる潔さがあり、通好みの渋めの選択肢として一目置かれることもあるでしょう。

黄色や赤といった派手なボディカラーがよく似合うので、合理的で知的なファニーカーという雰囲気も醸し出せます。

ターボエンジン車でMTが選べないのは残念ですが、トルクの細いエンジンのほうがMTを駆使する必要性は高まるので、これはホンダの狙い、あるいは良心なのかもしれません

ターボエンジン車でMTが選べないのは残念ですが、トルクの細いエンジンのほうがMTを駆使する必要性は高まるので、これはホンダの狙い、あるいは良心なのかもしれません

タイヤサイズは145/80R12と、日本で買える四輪車の中では最小クラスですが、その分ランニングコストは激安!

タイヤサイズは145/80R12と、日本で買える四輪車の中では最小クラスですが、その分ランニングコストは激安!

N-VAN 商用車の製品画像
ホンダ
3.94
(レビュー38人・クチコミ859件)
新車価格:127〜187万円 (中古車:68〜309万円

自動車の運転に正面から向き合える

N-VANの走りは、非力なNAエンジンと小さなサイズの業務用タイヤということで、高速走行ではやや頼りなさを覚えますが、その分、一般的な超ハイトワゴンより軽量なことが強みに。遅くてふにゃふにゃしているわりには基本骨格がしっかりしているので、骨太感にあふれたたくましさもあり、乗っていて不安になったり、わびしい気分になったりすることはありません。

むしろ、運転が好きな人なら「限られたパワーやグリップ力を引き出しながらスムーズに走らせる」ことに挑み甲斐があると、ヤル気が出るでしょう。手に負えない高性能車より、自動車の運転という行為に正面から向き合う意欲が湧いてくるようなところがあります。その意味では、ある程度運転経験を積んだ人向けのクルマと言えるでしょう。

エンジンパワーとタイヤのグリップ感が乏しく、背が高いので横風にも弱く高速巡行はあまり得意ではありませんが、トップギヤが高めなので、静粛性や快適性は従来の軽ワンボックスよりも圧倒的にすぐれます

エンジンパワーとタイヤのグリップ感が乏しく、背が高いので横風にも弱く高速巡行はあまり得意ではありませんが、トップギヤが高めなので、静粛性や快適性は従来の軽ワンボックスよりも圧倒的にすぐれます

床が低いので、トランスポーターとしての機能は従来の軽ワンボックスよりもすぐれる面があります。リヤシートの作りは簡素なので、後席に人を乗せる機会が多い場合は慎重に選びましょう

床が低いので、トランスポーターとしての機能は従来の軽ワンボックスよりもすぐれる面があります。リヤシートの作りは簡素なので、後席に人を乗せる機会が多い場合は慎重に選びましょう

室内の雰囲気も、基本はN-BOXそのもの。多少簡素化されてはいますが、やはり従来の軽ワンボックスと比べると圧倒的に乗用車的です

室内の雰囲気も、基本はN-BOXそのもの。多少簡素化されてはいますが、やはり従来の軽ワンボックスと比べると圧倒的に乗用車的です

シフトフィールは、同じホンダの軽自動車「N-ONE」と比べるとやや安っぽい手応えながら、決して悪くはありません。ストローク量、節度感ともにMT好きのドライバーがガッカリすることはないでしょう

シフトフィールは、同じホンダの軽自動車「N-ONE」と比べるとやや安っぽい手応えながら、決して悪くはありません。ストローク量、節度感ともにMT好きのドライバーがガッカリすることはないでしょう

クラッチは軽くて扱いやすいのですが、着座環境は普通のイスに座っているように膝下が垂直になるので、MT派のドライバーが好んで行うヒール&トゥはやりにくい姿勢となります。ただ、このハンデをくつがえしてスムーズな技が披露できるようになれば、ドライバーとしてのレベルも上がることでしょう

クラッチは軽くて扱いやすいのですが、着座環境は普通のイスに座っているように膝下が垂直になるので、MT派のドライバーが好んで行うヒール&トゥはやりにくい姿勢となります。ただ、このハンデをくつがえしてスムーズな技が披露できるようになれば、ドライバーとしてのレベルも上がることでしょう

初心者のドライビング技術のトレーニングにもなる

N-VANは、運転経験者向きのクルマとはいえ、初心者に全く不向きというわけでは決してありません。運転初心者にとっては、もっとエンジンパワーがあったほうが合流などで助かるので安全だったりしますが、このクルマで運転を覚えながら、限られた性能を引き出したり、フワフワした動きをコントロールするコツをつかむのは、ドライバーとして大変有意義だと思います。

将来さらに力があるクルマに乗り換えた際に、あらゆる操作がとてつもなくラクになり、とてもスムーズに走らせることができるはずです。

背は高いながらも乗用車のN-BOXがベースなので、低床フロアのアドバンテージは走行中にも生かされます。従来の軽ワンボックス車よりは、高速巡行時にフラフラしません

背は高いながらも乗用車のN-BOXがベースなので、低床フロアのアドバンテージは走行中にも生かされます。従来の軽ワンボックス車よりは、高速巡行時にフラフラしません

山道では、わずかにペースを上げただけでカーブのたびにタイヤが鳴き、車体の傾きも大きくなりますが、性能をめいっぱい引き出せているという充実感は満点。これはこれで立派なスポーツドライブだと感じながら、一般的なスポーツモデルとは真逆の、滋味深い世界が広がる感動が得られたのでした。

このクルマを山道で活発に走らせるには、エンジンがもっとも力強いトルクを発揮する回転域を常にキープすることが求められるので、どんなクルマよりもMTで走らせる意味があります。しかも6速が選べる系のワンボックスはほかにあり得ないので、MT操作が堪能し尽くせるマシンだとも言えるでしょう。ただボンヤリ走らせると遅くてふにゃふにゃしているだけになってしまうので、ドライバーのやるべき仕事が多いとも言えます。

自動運転時代がすぐそこまできているというのに、エンジンの回転数やら選択するギヤのことやら、車体が傾く動きやらをいちいち意識しながら手動で操作し続けなければならない。これはもはやひとつのエンタメであり、運転が好きな人にとってはありがたみさえ覚える、なかなか稀有なクルマだとしみじみ思いました。

この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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N-VAN 商用車の製品画像
ホンダ
3.94
(レビュー38人・クチコミ859件)
新車価格:127〜187万円 (中古車:68〜309万円
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