イベントレポート

日産 新型「フェアレディZ」の日本仕様を初公開!伝統の「Z432R」モチーフのカスタムモデルも

日産は、「東京オートサロン2022」において、新型「フェアレディZ」の日本仕様、および往年の名車「Z432R」をモチーフとした「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」を初公開した。

「東京オートサロン2022」で初公開された、日産 新型「フェアレディZ」の日本仕様

「東京オートサロン2022」で初公開された、日産 新型「フェアレディZ」の日本仕様

「東京オートサロン2022」で初公開された、日産 新型「フェアレディZ」をベースに制作されたカスタマイズモデル、「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」

「東京オートサロン2022」で初公開された、日産 新型「フェアレディZ」をベースに制作されたカスタマイズモデル、「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」

フェアレディZの製品画像
日産
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(レビュー48人・クチコミ2269件)
新車価格:524〜696万円 (中古車:29〜1848万円

今回、この2台のデザイナーへそれぞれのこだわりなどについてインタビューしたので、その詳細をお届けしよう。

「フェアレディZ」は、日本人の思想で作られたスポーツカー

日産 新型「フェアレディZ」と、日産グローバルデザイン本部 第二プロダクトデザイン部 プログラム・デザイン・ダイレクターの入江慎一郎さん

日産 新型「フェアレディZ」と、日産グローバルデザイン本部 第二プロダクトデザイン部 プログラム・デザイン・ダイレクターの入江慎一郎さん

新型フェアレディZのデザインは、過去のモチーフがふんだんに採り入れられながらも、現代的なエクステリアへと仕上げられている。そこで、日産グローバルデザイン本部 第二プロダクトデザイン部 プログラム・デザイン・ダイレクターの入江慎一郎さんに、なぜこのデザインが採用されたのかなどについてうかがった。

新型フェアレディZが、なぜ過去のモチーフを採り入れているのかについて、入江さんは「正直、いろいろと悩みました」と告白する。「どのようにすれば、新しさに加えて歴代のフェアレディZが背負ってきた伝統を新型モデルで表現できるのか、いろいろと試行錯誤しました」と振り返る。

入江さんは、「フェアレディZのコアなファンの方々は、ノスタルジーを非常に愛しています。それは、彼らが所有してきたフェアレディZであり、もしくは彼らのお父さんやおじいちゃんが持っていたフェアレディZでありますが、これに憧れ、みずからも所有したいという思いを持っておられる方が多くいらっしゃいました。フェアレディZはスポーツカーですから、そういったコアなファンの方々に向けて、モノづくりを進めることにしたのです」。同時に、もうひとつ要因があったという。それは、「我々、日産の社員がフェアレディZに込める熱意や情熱です。それらと、コアなファンの皆さんの思いが一致したのです」と語る。

通常、デザイナーはみずからの手で新たなデザインを提案することが慣習となっている。しかし、新型フェアレディZに関しては違ったわけだ。新型モデルのデザインテーマは、「過去のフェアレディZの中にあるのです。そこから、伝統と最新のテクノロジーの融合につながりました」と入江さん。そこで、過去のフェアレディZのモチーフを用いながら、現代のテクノロジーでなければ生まれないデザインへと仕上げられていったのだ。

日産 新型「フェアレディZ」のリアコンビランプ

日産 新型「フェアレディZ」のリアコンビランプ

その例を、入江さんは2つあげてくれた。ひとつは、リアコンビランプだ。「Z32」などに代表されるような、オーバル形状で黒いベゼルの上に載っているデザインだが、これを新型ではLEDで表現し、さらにレイヤーによって二重に見せているのだ。入江さんは、「近未来的かつモダンな処理で伝統を再現し、生まれ変わるようなイメージを持たせています」と言う。

日産 新型「フェアレディZ」のヘッドランプ

日産 新型「フェアレディZ」のヘッドランプ

もうひとつは、ヘッドランプだ。初代フェアレディZには「アウターレンズ」が採用されており、ヘッドランプが点灯した時に、そのアウターレンズによってリフレクションを作り出していた。それを、新型では上下のシグネチャーランプを用いることによって再現している。入江さんは、「かつてのモチーフを、いまのテクノロジーで解釈しながらデザインし直しています。かつてのフェアレディZのエッセンスがふんだんに込められていますので、どこから見てもフェアレディZにしか見えないエクステリアに仕上がっているのです」とコメントする。

日産 新型「フェアレディZ」のルーフに沿ったシルバーのキャラクターラインは、日本刀がモチーフとなっている

日産 新型「フェアレディZ」のルーフに沿ったシルバーのキャラクターラインは、日本刀がモチーフとなっている

ただし、これまでのフェアレディZにはなかった特徴もある。それは、ルーフラインに沿ったシルバーのキャラクターラインだ。入江さんは、「私たちはこれを刀や、日本刀と呼んでいます。新型フェアレディZのルーフは黒いので、マッドシルバーのアクセントを入れることによって、スロープダウンしている美しいルーフのシルエットや、全高の低さなどを感じられるようにしています」と語る。日産は、ジャパニーズDNA、日本を感じさせるようなデザインを積極的に採り入れており、このルーフラインなどは海外において大いに好評を博すに違いない。また、「フェアレディZ自体が、日本人の思想で作るスポーツカーというのが、初代から受けつがれている魂なのです。フェアレディZは、日本そのものとも言えますね」と入江さんは語る。

飾っておきたくなるほどのデザインのよさ

日産 新型「フェアレディZ」のエクステリア

日産 新型「フェアレディZ」のエクステリア

さて、2020年9月に発表された新型フェアレディZのプロトタイプから、今回はどのように変化したのだろうか。筆者が見る限り、市販車のデザインのほうがよくなっているように見えると入江さんに問うてみると、笑いながら「通常、ショーカーっぽいプロトタイプのほうがデザインはよくて、生産車になったら残念になったという意見をもらうことがほとんどなんですよね。しかし、今回はめずらしく逆なんですよ(笑)」と言う。そして、「実は、デザインはほぼいじっていないんです。たとえば、ドア下の黒い部分がプロトタイプではカーボンでできていたり、若干タイヤが大きかったり、サイドウォールにホワイトレターが入っていたりしていたのが新型では変更されていますが、そのくらいです」と明かす。さらに、プロトタイプは一品ものなので、生産車よりも面の平滑さやパーティングラインの隙間などの作り込みもできていたのだという。

では、何が違うのだろうか。入江さんは、こう分析する。「実際にラインで流すときに、台数が少ないということもありますので、工場の人たちが1つひとつていねいに組んで作り上げて、磨いて、色を塗っているんですね。つまり、人の温もりが宿っているので暖かく見えるし、より作り込まれたように見えるんじゃないでしょうか」。そして、「工場の皆さんには、頭が下がるぐらいに頑張っていただき、無理をたくさん言わせていただいたので」とも語った。

入江さんは、「僕は、30年近くクルマ作りをしていますけれど、新型フェアレディZは初めてガレージに飾っておきたいと思ったクルマなのです。ある時、クルマを何げなくリアスリークォーター(斜め後ろ)から眺めていたんですけど、『あ、これちょっとガレージに飾っておきたいかも』って思った瞬間があったんです。長いデザイナー人生の中で、それは初めての感覚でした。スポーツカーなどは、走ってなんぼじゃないですか。ですので、いままで飾っておきたいっていう感覚はなかったので、そういう意味でも今までにない仕上がりを感じていたのかもしれないですね」と、新型フェアディZのデザインに大いに満足している様子だった。

伝統的な魅力を新型のカスタマイズモデルとして表現

日産「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」と、日産 グローバルデザイン本部 アドバンスドデザイン部 主幹の森田光儀さん

日産「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」と、日産 グローバルデザイン本部 アドバンスドデザイン部 主幹の森田光儀さん

ここからは、もう1台の「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」について、日産 グローバルデザイン本部 アドバンスドデザイン部 主幹の森田光儀さんに話をうかがってみよう。

前述のとおり、新型フェアレディZは過去のヘリテージを大切にしながらデザインされている。入江さんも話していたように、長い歴史があるということは、多くのファンにとってさまざまな年代のフェアレディZに思い入れがあるということでもあると容易に想像がつく。そこで、フェアレディZ CUSTOMIZED PROTOでは、そこを思い切り絞り込み、伝説ともいわれる初代フェアレディZの「Z432R」がモチーフとされた。それは、オレンジのボディカラーやマフラーが縦二連式になっていることからもわかる。森田さんと筆者はほぼ同年代であることもあって、筆者には、フェアレディZ CUSTOMIZED PROTOを見た瞬間に、そのモチーフがZ432Rだと見て取れたのだ。

日産「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」

日産「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」

森田さんは、このカスタムモデルの狙いについて、「新型フェアレディZの方向性のひとつとして、カスタマイズにおける究極の姿をイメージしたらこうなるのではないか、という1例です。真正面から見ると、新型フェアレディZと比較してグリルの上下が別になっていて、その間に水平のキャラクターラインが入っています。これは、どちらかというと昔のクルマの形なのです。すべて水平にして、そこから立体を展開し、えぐってエアダムを出すという、昔のレーシングカーっぽい印象もあります。それを、気持ちよく作ったらどうなるかというトライになります」と言う。

サイドの黒いストライプも、バンパーからサイドを通ってリアホイールに抜けていくイメージを演出している。オーバーフェンダーも装着され、全高はサスペンションが20mm下げられ、タイヤは275幅から285幅へとサイズアップしている。トレッドも、片側で30mm広げられた。「ミニマルなデザインが今のトレンドですので、オーバーフェンダーもボディにきれいになじませていくのが普通ですが、あえて後付けのものの力強さやパワフルさなど、昔からあるクルマの記号性や普遍的な価値に訴えたかったのです。新型フェアレディZは、それらを実現するのにもっともいい素材でもあります」とコメントした。

つまり、「市販車とは、少し異なる魅力を訴求したかったのです。従来の、クルマらしさの価値みたいなものを強調していったらどうなるのかということで、軽量で高性能な鍛造ホイールの新型モデルに対し、カスタムモデルではパワー感や力強さを感じさせるような、そしてどこかで見たことがあるような雰囲気を持っています」と森田さん。

今後、フェアレディZ CUSTOMIZED PROTOはアクセサリー商品として「たとえば、バンパーやホイール、リアスポイラーなどをパッケージとして用意できれば、新型フェアレディZを購入いただいたお客様が装着して、ご自身の思いが込められたフェアレディZを作ることができます。まだ決まってはいないのですが、今後の反響を見てぜひそういったことも考えていきたいですね」とのことだった。新型フェアレディZは、カスタムパーツの充実などにも期待できそうだ。
(Photo:内田俊一)

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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フェアレディZの製品画像
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