レビュー

再上陸を果たした「ヒョンデ(Hyundai)」。日本で販売される2車種に試乗

韓国の自動車メーカーであるヒョンデ(旧呼称:ヒュンダイ)が、2022年に日本の乗用車市場へ再上陸を果たした。

韓国の自動車メーカー「ヒョンデ」(Hyundai)が、日本で再び乗用車を販売する。今回、最初に導入される電気自動車の「アイオニック5」(左)と、水素自動車の「ネッソ」(右)の2台に試乗した

韓国の自動車メーカー「ヒョンデ」(Hyundai)が、日本で再び乗用車を販売する。今回、最初に導入される電気自動車の「アイオニック5」(左)と、水素自動車の「ネッソ」(右)の2台に試乗した

アイオニック5の製品画像
ヒョンデ
3.60
(レビュー5人・クチコミ157件)
新車価格:479〜589万円 (中古車:―円
ネッソの製品画像
ヒョンデ
-
(レビュー-人・クチコミ-件)
新車価格:776万円 (中古車:―円

まずは、電気自動車の「アイオニック5」と水素自動車の「ネッソ」の2車種について、2022年5月から受注受付が開始され、同年7月からデリバリーが始まっている。今回、そのアイオニック5とネッソにそれぞれ試乗することができたのでレポートしたい。

日本に商機あり

ヒョンデはグローバルで販売を展開しており、2021年の販売台数は約390万台(2021年度で388万台)と、日産を上回る規模となっている。日本では、2001年から2010年までにいくつかの車種が導入されていたのだが、販売が振るわずに撤退。そのため、今回は再上陸という経緯となっている。

身の回りのものを見てみると、多くのものが韓国製であることに改めて気付く。さらに、K-POPや韓流ブームなどのエンターテインメントなども踏まえると、よい商品と適切な価格帯ならチャンスはあるのではないか。そういった考えの元に、日本への再導入に踏み切ったと言う。

また、今回は若い世代をターゲットとしており、だからこそインターネットを中心とした販売手法が採られている。若い世代であれば過去のヒュンダイを知らず、初めて接する人たちも多いことだろう。そのため、よりニュートラルな視点で接してくれるのではという期待も感じられた。

2022年7月30日、神奈川県横浜市港北区に「Hyundai カスタマーエクスペリエンスセンター横浜」がオープンした。1階には展示、納車、試乗車のほか、2022年9月から稼働予定のZEV専用整備工場が、2階にはブランド展示スペースや顧客ラウンジが設置されている

2022年7月30日、神奈川県横浜市港北区に「Hyundai カスタマーエクスペリエンスセンター横浜」がオープンした。1階には展示、納車、試乗車のほか、2022年9月から稼働予定のZEV専用整備工場が、2階にはブランド展示スペースや顧客ラウンジが設置されている

購入方法については、インターネットでのオンライン販売が中心になるが、日本の各主要都市には店舗も置かれる予定となっており、すでに横浜には2022年7月30日にHyundaiカスタマーエクスペリエンスセンターが開設されている。同センターでは、ネット販売を補完することも目的のひとつとなっている。さらに、同センターはヒョンデのサスティナブルな観点で室内空間が表現されており、リサイクル素材などが積極的に採り入れられている。ヒョンデの世界観が味わえるとともに実車も展示されており、試乗や商談が可能で、車検整備なども含めたメンテナンスも行われる予定だ。

個性の強いデザイン

では、日本へ導入される2車種のデザインから見てみよう。特に、アイオニック5のほうは特徴的だ。

「アイオニック5」は、ジョルジェット・ジウジアーロによる1974年型の「ポニーコンセプト」をオマージュした、個性的なデザインが採用されている

「アイオニック5」は、ジョルジェット・ジウジアーロによる1974年型の「ポニーコンセプト」をオマージュした、個性的なデザインが採用されている

“アイオニック”はヒョンデのサブブランドのことで、EV専用モデルとされている。そこで、同車はアイオニックとしてのアイデンティティをまとった新しいクルマとしてデザインされた。

ヒョンデのデザインは、“ファミリールック”という考え方が用いられている。「マトリョーシカのように、みんな同じ形でサイズ感を変えて車格を出すのではなく、たとえばチェスの駒はそれぞれ違う形、違う役割がありますよね。それらが集まって、ひとつのチームになります。ヒョンデとしては、それを大事にしているのです」と話すのは、ヒョンデモビリティジャパン R&Dセンター デザインチームの占部貴生さんだ。それは、アイオニックシリーズも同様とのこと。

アイオニックは、4つのアイデンティティによってデザインされているが、そのひとつである「パラメトリックピクセル」は最も特徴的だ。デジタル画像の最小単位であるピクセルを並べ、3Dにアレンジしていくことで「表現が豊かで、デジタルですがアナログチックに見えます。たとえば、昔の8ビットのゲームを思い起こさせるような、新しいけれども親しみがあるイメージです」と占部さん。

「アイオニック5」のヘッドランプやリアコンビランプなどには、「パラメトリックピクセル」と呼ばれるデザインが採用されている

「アイオニック5」のヘッドランプやリアコンビランプなどには、「パラメトリックピクセル」と呼ばれるデザインが採用されている

アイオニック5で例をあげると、ヘッドライトやリアコンビランプ、インテリアではドアトリムなどに採り入れられており、アイオニックシリーズであることを主張している。

「アイオニック5」のフロントイメージとリアイメージ

「アイオニック5」のフロントイメージとリアイメージ

そしてもうひとつ、アイオニック5のデザインにおいて大きな特徴となっているのが、サイドに描かれたZの文字のような強いキャラクターラインだ。最近では、面で個性を主張するクルマが多い中で、アイオニック5のデザインは特徴的なキャラクターラインによって個性が演出されている。この意図はいくつか考えられるが、最も効果を発揮しているのはスタンスをよく見せていることだろう。フェンダーを張り出せば、クルマのスタンスはよく見えるので簡単だ。しかし、自動車はさまざまな要件があるので、そう簡単にできるものではない。そこで、アイオニック5ではフロントドアからリアホイールに向かうキャラクターラインによって、フロントフェンダーを強調。同時に、その上面の部分でリアフェンダーを強調し、あたかもフェンダーが張り出しているかのように見せているのだ。また、その上面はリアにスタンスがかかっている様子を効果的に見せているのも特徴的だ。

少し物足りない「ネッソ」

では、走り始めてみよう。まず、最初は水素自動車のネッソから試乗した。

「ネッソ」のフロントエクステリアとリアエクステリア

「ネッソ」のフロントエクステリアとリアエクステリア

SUVのフォルムを纏った外観は、外連味もなく無難なデザインに見える。言い方を変えると、特に大きな冒険もなくシンプルだ。逆に言えば、飽きのこないデザインとも言えるかもしれない。

「ネッソ」のインパネやスイッチ類は、近年の国産車や輸入車などと比べると、多少古さを感じさせるものだ

「ネッソ」のインパネやスイッチ類は、近年の国産車や輸入車などと比べると、多少古さを感じさせるものだ

室内に入ると、一昔前の設えとなっている。センターコンソールは高く、そこへ物理スイッチがこれでもかと配されており、正直何がどこにあるのか大いにとまどってしまった。このあたりは、もう少し整理が必要と感じた。また、加飾のシルバーはあまり品質感が高いとは思えず、プラスチッキーに感じさせてしまっているのは残念なところだ。

シフトスイッチは、センターコンソール右側に配されており、中央上がP、下がN、右がRで左がDという十字形になっている。RとDは大きいスイッチなのでそれほど間違うことはないだろう。

「ネッソ」の試乗イメージ

「ネッソ」の試乗イメージ

ステアリングコラムの右側に移されたウインカーレバーを操作しながら、一般道へ走り出すと、アクセル開度に対してトルクの出方が過敏で、少々乗りにくく感じる。本当にわずか数センチ、靴の重さプラス程度に踏み込んだくらいでも、結構な勢いで加速するのだ。では、中高速域でもパワフルなのかというと、そうではない。たとえば、料金所から加速して高速道路の本線に合流する際、最初は非常にパワフルだと思ったのだが、そこからさらにアクセルを踏み増しても、最初の勢いに見合ったパワーとトルクが得られず、肩透かしを食らった気がする。ちなみに、駆動用モーターの最高出力は163PS(120kW)、最大トルクは395Nmなので、パワフルではなく標準的とも言える数値だ。したがって、アクセル開度によって少し早めに力が出るようにセッティングし、非力さを感じさせないようなセッティングを取っているものと思われる。

ボディ全体の剛性は、さすがに高くがっしりとした印象だ。ただし、ボディが固いためか相対的にステアリングの取り付け剛性は少々低く感じられた。これは、長距離などを走る際の直進安定性にも関わる部分なので、いずれしっかりと走らせてチェックしてみたいところだ。

「ネッソ」の試乗イメージ

「ネッソ」の試乗イメージ

市街地や高速道路などを走らせた際の乗り心地は若干固めで、多少タイヤがバタつく印象はあるものの、前述のとおりボディはしっかりしているので、それほど疲れは感じない。ブレーキのフィーリングは、サーボの圧力が高いためか結構カツンとききがちで、コントロールには気を遣う。ステアリングフィールは自然で気になることはなかった。ドアミラーはドアにマウントされていないので、特に右前方に死角が発生してしまっていた。シートはもう少しホールド性が高いほうが好ましい。特に、腰の下回りのサポートがもう少しあるととても楽になりそうだ。

ネッソには、さまざまな装備が盛り込まれている。一例として、アプリでさざ波や雨の音が再現されるものが搭載されていたり、ウインカーを付けるとメーター内にブラインドスポットモニターが表示されるなどの工夫が盛り込まれている。

総じて、今FCVを積極的に購入したいというユーザーにとっては大きな選択肢のひつつとなり得るだろうが、たとえば内燃機関からの乗り換えを考えると、ネッソにはもうひとつ大きな魅力が足りないと感じた次第だ。

デザインも走りも競争力のある「アイオニック5」

いっぽう、アイオニック5のほうは一転して、大いに魅力あふれるクルマへと仕上がっていた。試乗したグレードは、最上級のラウンジAWDだ。

「アイオニック5」のフロントフェイス

「アイオニック5」のフロントフェイス

デザインは、これまで述べたようにかなりエッジのきいたものだが、ここまで潔いとかえって好印象につながる。まるで、コンセプトカーのようなデザインを成立させているということは、それだけデザイン力や製造能力が高いということも言えそうだ。

「アイオニック5」のインパネ周り

「アイオニック5」のインパネ周り

「アイオニック5」のメーターは液晶タイプになっている

「アイオニック5」のメーターは液晶タイプになっている

それはインテリアも共通で、エクステリアほどには尖ってはいないものの、最近流行りの大型画面風のメーターパネルは見やすく、スイッチ類も整理されており、必要と思われる場所に配されているのが好印象だ。また、さまざまなところにソフトパッドが設けられており、実際に触ると見た目ほどやわらかくはないが、温かみを感じさせてくれる。

「アイオニック5」のフロントシート

「アイオニック5」のフロントシート

シートは、ネッソと比較して掛け心地は遥かによく、インテリア全体としても広々感を感じるものだ。また、運転席にもオットマンが装備されているので、充電中などでリラックスした姿勢を取ることが可能だった。

「アイオニック5」の走行イメージ

「アイオニック5」の走行イメージ

走り始めると、ネッソよりもとても小気味よく走り、全体的に素早い印象だ。アイオニック5のカタログ上の重量は2,100kgで、ネッソは1,870kgなので明らかにアイオニック5のほうが重いのだが、モーターの出力は305ps、605Nmなので、圧倒的に出力、トルクともにアイオニック5のほうが上回っていることが大きな要因だ。

出力の出方は、ネッソほどは激しくはないが、どちらかといえばアクセルペダルの踏み始めのトルクの立ち上がりは急なほうになる。だが、そのあたりさえ気にしなければ、後は自然で違和感を覚えることはほとんどないだろう。そこで、走行モードをEcoにしてみると、若干アクセルペダルのレスポンスが鈍くなり、とても走りやすくなった。決して遅くはないクルマなので、普段使いはEcoモードで十分だろう。また、腰高感もなく、きびきびとした走りを楽しめた。

「アイオニック5」の走行イメージ

「アイオニック5」の走行イメージ

ステアリングフィールに関しては、少々違和感が残った。速度域によって重さが変わる設定になっているのだが、そのセッティングが意外と粗く、コーナーを曲がりながら加速すると、途中で重さが変わってしまう時があったのだ。もちろん、危険な域までは達することはないが、それでも気になるのは事実である。

ステアリングコラムから生えているシフトレバーだが、押し込んでP、上側にひねってD、下側にひねるとRのポジションを選択できるが、通常のシフトレバーは押し込む方向がR、手前に引くとDなので、そのパターンからすると逆に感じてしまい、しばらくとまどうことになった。また、ネッソと同様に、アイオニック5もドアミラーはドアマウントではないため、市街地での右左折時には少々注意が必要になる。

市街地を走っていての乗り心地は、荒々しさはまったくなく、高いボディ剛性と相まって足がうまく動いている印象だ。そこから、高速道路などで速度域を上げていくと、255/45R20という大きなタイヤサイズも影響して若干バタつき気味にはなるものの、大きく快適性が損なわれることはなかった。

ヒョンデが日本へ参入してからしばらく時間が経ち、納車も本格的に始まってきているようだ。日本車と比較して、特にアイオニック5にかぎって言えば大きく劣っている点はなく、その個性的なデザインは魅力にも十分なり得るものであり、品質も高い。現在、ネットを中心に販売しているが、はたして新規(と言っていいだろう)参入においてどこまでブランドを訴求できるのか、大いに注目したい。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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