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「プラド」後継のトヨタ「ランドクルーザー250」登場! “2つの顔”を持つ意味は!?

トヨタは、新型「ランドクルーザー250」を、2023年8月2日に世界初公開した。同モデルは、日本ではこれまで「ランドクルーザープラド」という車名で呼ばれていたが、今後はほかのラインアップと揃えられ、「ランドクルーザー250」へと変更される。発売日は、2024年前半の予定だ。

新型「ランドクルーザー250」は、2タイプのフロントフェイスが用意されているのが大きな特徴だ(その理由については後述)

新型「ランドクルーザー250」は、2タイプのフロントフェイスが用意されているのが大きな特徴だ(その理由については後述)

ランドクルーザー250の製品画像
トヨタ
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新型の原点は「ランドクルーザー40」

新型「ランドクルーザー250」の開発に当たっては、豊田章男会長が述べる “原点回帰”がキーワードになっている。

新型モデルのエクステリアデザインを担当したトヨタ Mid-size Vehicle Company MSデザイン部主査の渡邊義人さんは、「ランドクルーザー40」によって初めて一般ユーザーに多く認知されたことを踏まえ、「原点回帰」という言葉を次のように解釈したと言う。「世界中で圧倒的に売れているSUVはライトデューティーモデルですが、その役割としては『ランドクルーザー40』が最も近いのです。そこで、『ランドクルーザー40』を原点と考えました。いまだに、このクルマがないと生活ができない、物資が運べない、医療が成り立たないという地域があります。命を預けて、信頼できる。それが、『ランドクルーザー』の原点です。では、いま何がその信頼に足るのかを解釈することが、原点回帰でした」。

1960年に発売されてから、24年もの間販売されたロングセラー車の「ランドクルーザー40」

1960年に発売されてから、24年もの間販売されたロングセラー車の「ランドクルーザー40」

それを踏まえて、渡邊さんは「悪路では、足元なども含めた視界のよさが安心感につながる」ことから、新型ではベルトラインを30mm下げた。さらに、Aピラーを室内側に引いて立て気味にすることで、良好な視界だけでなく運転席からのボンネットの見え方なども重視したと言う。

また、ヘッドライトを内側へ少し寄せることによって、たとえば森の中で立木にフロントサイドをヒットしても、ヘッドライトを割れにくくするなどの配慮がなされている。

「ランドクルーザー250」のサイドイメージ。前席を中心にベルトラインが低くデザインされ、前後のコーナーの角がそぎ落とされることで、狭い場所などでの取り回し性を向上させている

「ランドクルーザー250」のサイドイメージ。前席を中心にベルトラインが低くデザインされ、前後のコーナーの角がそぎ落とされることで、狭い場所などでの取り回し性を向上させている

ヘッドライトは、破損リスクを考慮して高く中央へ寄った

ヘッドライトは、破損リスクを考慮して高く中央へ寄った

トヨタ初のスタビライザー制御技術も新たに採用

デザインだけでなく、シャーシや制御技術の開発にも力が注がれた。「ランドクルーザー」シリーズ・チーフエンジニアの森津圭太氏は言う。

「本モデルの開発に当たって、「プラットフォーム」「動的性能」「動力性能」の3つを重視しました。「プラットフォーム」については(ランドクルーザーの哲学である)信頼性、耐久性、悪路走破性を継承し、さらに進化させました。お客様に長く、安全に使っていただけるように、300系と同じ「GAFプラットフォーム」を採用し、悪路走破性を格段に向上させています」。

ホイールベースは、3列SUVとしての居住性と悪路走破性を両立させるのに最適な、「ランドクルーザー」の黄金比とも言われる2,850mmとされ、2〜3列目のカップルディスタンスと荷室が拡大されている。

「ランドクルーザー250」には、2列シート車と3列シート車が用意される。画像は3列目シート

「ランドクルーザー250」には、2列シート車と3列シート車が用意される。画像は3列目シート

また、新型モデルは扱いやすさにも注力している。世界各国の非常に厳しい衝突安全性などの規制をクリアしながらも、従来モデルからフロントオーバーハングを短縮させた。これを成し遂げるために、高剛性化と軽量化を両立できる新溶接技術を用いて、プラットフォームのフロント部分を刷新している。

続いては「動的性能」だ。フロントサスペンションは、ハイマウントのダブルウィッシュボーン式、リアサスペンションは新開発されたトレーリングリンク車軸式サスペンションの採用によって、オフロードでのタイヤの接地性が従来型より格段に高められている。また、サスペンションのジオメトリーを見直すことによって制動時の姿勢を改善させ、ブレーキシステムユニットを刷新するとともにサイズを拡大することによって、さまざまな条件下において安定してブレーキングできるようになったという。

パワーステアリングは油圧式から変更され、電動パワーステアリングを採用することで扱いやすさを向上させている。さらに、「SDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism)」と呼ばれる新たな制御技術を、トヨタブランドとして初採用している。同システムは、スイッチ操作によってフロントスタビライザーの効果をオン、オフできるもので、オフロード時の悪路走破性と乗り心地、オンロード時の操縦安定性を両立させているという。

「ランドクルーザー250」には電動パワーステアリングが採用されており、さまざまな路面状況における操縦のしやすさや、疲れの少ないステアリングフィールを実現している

「ランドクルーザー250」には電動パワーステアリングが採用されており、さまざまな路面状況における操縦のしやすさや、疲れの少ないステアリングフィールを実現している

国内モデルはガソリンとディーゼルの2種類

3つ目の「動力性能」だが、日本にはディーゼルエンジンとガソリンエンジンの2種類が導入される。ディーゼルエンジンは従来型の2.8リッターターボ「1GD-FTV」が採用されている。最高出力は204ps、最大トルクは500Nmを発生させ、Direct Shift-8ATと組み合わされる。今回は、ターボチャージャーが新規開発されており、内部構造の小型化や高効率化によって、エンジン出力を維持しながらアクセルに対する高レスポンス化を実現している。

「オフロードから高速走行まで、すべての加速域で高いコントロール性を実現しています。ディーゼルのパワフルな走りと扱いやすさ、さらに運転の楽しさをお客様に提供いたします」と森津さん。

もうひとつのガソリンエンジンは2.7リッターの「2TR-FE」で、6 Super-ECTが組み合わされる。最高出力は163PS、最大トルクは246Nmを発生させる。

フロントフェイスが2種類作られた理由

一般的に、機能に特化したデザインだと、どうしても冷たいデザインになりがちだ。そこで新型では2つのこだわった部分があるという。まずひとつめは、フロントフェイスが2種類設けられたことだ。

「ランドクルーザー250」には、角目と丸目の2種類のフロントフェイスが用意されている

「ランドクルーザー250」には、角目と丸目の2種類のフロントフェイスが用意されている

渡邊さんによると、「お客様が多様化しており、170か国、もしかすると『カローラ』よりも多い地域で販売するとなると、フロントフェイスが1種類のみというのは難しいのではと感じました。『250』は、わりとモダンな『300』と『70』の間、まさにランクルの中央に打って出ています」とのこと。

フルモデルチェンジなので、まずは大きく印象が変わる角目のフロントフェイスにチャレンジしたとのこと。こちらは、社内での評価も高かったが、渡邊さんらはそこで満足はしなかった。後に変化球で“丸目”も出してみたところ、社内は大いに盛り上がったのだとか。

「基本的には、角目のデザインで勝負しました。ですが、お客様のことを考えると、懐かしさが感じられる丸目に、うれしさを覚える方もいらっしゃいますよね。若い方でも、古い『ランドクルーザー』をとてもいいと言って買ってくださる方がいらっしゃいます。若い方に丸目は新鮮に映るでしょうし、往年の方には丸目こそ『ランドクルーザー』と言ってもらえるような顔も揃えたかったのです」(渡邊さん)。

さらに、もうひとつのこだわりがある。フロントグリルの「TOYOTA」のロゴだ。通常、トヨタ車は「T」をモチーフにしたエンブレムが採用されているが、「ランドクルーザー250』は文字になっている。渡邊さんが「上層部に、プロフェッショナルなトヨタのクルマの証という意味で使わせてほしいと、直談判しました。これこそ、本当に信頼の証しだと思っていますので、どうしても復活させたかったのです」と語っていたのが印象的であった。

新デザインは“機能美”がコンセプト

渡邊さんによると、新型には従来の「ランドクルーザー」のモチーフなどは取り入れておらず、そのうえで、新型モデルのデザインコンセプトをひと言で表すと「機能美」だと言う。「飾り立てたり、形のための形であったりという意識はありません」とのことだ。

その一例が、フェンダー。通常、フェンダーを張り出させるのはスタンスよく見せるという意図が大きい。もちろん、新型モデルにもその意味が含められてはいるが、それ以上に重要なのが、前後のタイヤの位置を、サイドウィンドウから顔を出すだけで明確に把握できる点にある。一歩間違えばがけ下に転落……そこまでいかなくとも、スタックするような状況が常に付きまとうような場所をも走り抜けられるクルマだから。それだけ過酷な条件を想定してデザインされているということだ。

過酷な走行環境を想定してデザインされている「ランドクルーザー250」。フェンダーなどを含めたサイドデザインも、運転席からのぞきこめば前後タイヤの位置がすぐにわかるように配慮されている

過酷な走行環境を想定してデザインされている「ランドクルーザー250」。フェンダーなどを含めたサイドデザインも、運転席からのぞきこめば前後タイヤの位置がすぐにわかるように配慮されている

したがって、サイドウィンドウの下端も先代比で30mm下げられ、クルマの姿勢が把握しやすいよう水平基調とされている。それは、インテリアも同様だ。物理スイッチが、ダイヤル式を含めて多く取り入れられ、とっさのときに目視しなくても操作できるようになっている。

また、スクリーンの下には段差が設けられており、画面をタッチする際にはそこへ手首を固定して操作できるといった配慮がなされている。シフトレバーも同様で、その上に手首を置いて物理スイッチを操作できるように考慮して開発されているのだ。

「ランドクルーザー250」のインテリア(上)と「モードセレクトスイッチ」。目視しなくても操作できるように、ダイヤルタイプとなっている ※写真は海外仕様の左ハンドルモデル

「ランドクルーザー250」のインテリア(上)と「モードセレクトスイッチ」。目視しなくても操作できるように、ダイヤルタイプとなっている ※写真は海外仕様の左ハンドルモデル

日本市場では、ボディサイズが大きく、フェンダーも張り出しているため少々取り回しがしにくいときもあるかもしれない。だが本来、「ランドクルーザー」は未開の地とも言えるような、過酷な状況下で扱われることが想定されている。そのようなことを考えると、自分や家族を守ってくれる安心できる道具として「ランドクルーザー」を手元に置きたくなるというのもわかるし、そのように思わせてくれるクルマこそが信頼できるブランドなのだろうと思う。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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