ステランティスジャパンは、フィアットの高性能車ブランド「アバルト」初の電気自動車、「アバルト500e」の発売を発表した。
「アバルト500e」は「フィアット500e」をベースに、アバルトならではのチューニングが施されたモデルで、発売日は2023年10月28日。グレードや価格、主なスペックについては以下のとおりだ。
「アバルト 500e」のボディタイプは、ハッチバック(右)とカブリオレ(左)の2種類がラインアップされる
■「アバルト500e」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込
-ハッチバック-
Abarth 500e Turismo Hatchback:6,150,000円
Abarth 500e Scorpionissima Hatchback(限定モデル):6,300,000円
-カブリオレ-
Abarth 500e Turismo Cabriolet:6,450,000円
Abarth 500e Scorpionissima Cabriolet(限定モデル):6,600,000円
■「アバルト500e」の主なスペック
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3,675×1,685×1,520mm
ホイールベース:2,320mm
車重:1,360kg(ハッチバック)1,380kg(カブリオレ)
モーター最高出力:114kW(155ps)/5,000rpm
モーター最大トルク:235Nm/2,000rpm
1充電当たり走行距離(WLTCモード):303km(ハッチバック)294km(カブリオレ)
アバルトといえば、まずはパフォーマンスに注目するのは当然のことで、それは「アバルト500e」でも同様だ。「低中速域における、気持ちのよいドライビングの実現にフォーカスして開発しました」と説明するのは、ステランティスジャパンでフィアット・アバルトブランドのプロダクトマネージャーを務める阿部琢磨さん。
最高出力は155ps(「フィアット500e」は118ps)、最大トルクは235Nm(同220Nm)で、「都市部とワインディングロードの両方で、より速く、よりエキサイティングなドライビングを提供します」と話す。
その結果、0-100km/h加速は7秒と、ハイパフォーマンスモデルである「アバルト695」とほぼ同じタイムを記録。さらに、20-40km/h、40-60km/hの中間加速においては、「アバルト695」よりも約1秒早いタイムをたたき出しているのだ。
1,360kgの軽量な車重(ハッチバック)に、最高出力155ps、最大トルク235Nmを発生させる強力な電動モーターを搭載。さらに、前後重量配分の改善(57:43)や60mmのトレッド拡大によって、気持ちのよい加速とクイックなハンドリング、高い走行安定性を発揮する
ちなみに、充電については急速充電器の「CHAdeMO」に対応。1 充電あたりの走行距離は、ハッチバックが303km、カブリオレが294km(いずれもWLTCモード値)となっている。
アバルトならではの特徴のひとつとして、エキゾーストノートがあげられる。だが、電気自動車である「アバルト500e」には当然エンジンがなく、排気音もない。そこでアバルトは、「レコードモンツァ」と呼ばれる、マフラーから発せられる図太く乾いたエキゾーストノートをリアルに再現した「サウンドジェネレーター」を独自開発した。
「選任のサウンドデザイナーチームによって、6,000時間以上かけて開発しました」と阿部さんは言う。その音質は、「アイドリングの太い低音とともに、アクセルの踏み込み量にリンクして音質が変化します」とのことだ。
アバルトブランドの象徴とも言える「レコードモンツァ」のエキゾーストノートを忠実に再現するため、独自の「サウンドジェネレーター」を開発。加速すると、内燃エンジンを備えているかのような排気サウンドが奏でられるという
さらに、開発にあたっては「加減速やブレーキング、高速コーナーリングなど、さまざまなドライビングシーンのエキゾースト音を録音しました。アクセル開度や加減速G、さまざまなシチュエーションにリンクした違和感のないサウンドジェネレーターは、車両後方内側に設置した耐水性の口径200ミリのウーハーから発せられます」と述べ、「ダイナミックな運転とスピード、アクセル開度とリンクしたサウンドとともに、今までの電気自動車にはない唯一無二のドライビングを提供します」と自信を見せる。
ちなみに、「サウンドジェネレーター」はステアリングホイールに備えられているスイッチによって、オン、オフが可能となっている。
「アバルト500e」ならではの特徴としてあげられるのが内外装だ。まず、外観はフロントバンパーやリップスポイラーなどにアクセントカラーが配されるとともに、大径の18インチアルミホイールを履かせることでスポーティーなイメージを強調させている。
18インチのダイヤモンドカット アロイホイールは、サソリの爪からインスパイアされたデザインが採用されている
その独特なスポーク形状は、「ホイールの真円度を際立たせつつ、車両側面から見たバランスをすぐれたものとしています」と阿部さん。また、フロントエアダムは機能性だけでなく、サソリの足をイメージした独特の形状が備わっている。
さらに、フロントグリルに記されたABARTHの文字は、ダークチタングレーであしらわれる。これは、「パフォーマンスの革新、楽しさと持続可能性の結合を表すブランドの象徴として初めて採用しました」とのこと。
もうひとつ、サイドエンブレムも特徴的だ。「稲妻の放電によって描かれたかのような新しいデザイン」で、アバルトブランドの変革を示すための新しいシグネチャーロゴができたのだそう。
フロントバンパーのエアダムは、サソリの足からインスピレーションを得たデザインが採用されており、エアロダイナミクスの向上も図られている
インテリアは黒ベースながら、ブルーとイエローのダブルステッチが所々に配されており、クロームのドアシルも特徴的だ。また、アルカンターラの採用によって、全体的に質感の高い内装となっている
室内にも、サソリの爪をモチーフとしたものは随所にある。たとえば、ステアリングホイールだ。過去、ラリーシーンで用いられた3本スポークをオマージュして、ななめ上から見るとそのスポークが爪に見えるような工夫が施されている。
かつてのラリーマシンを参考に、2本スポークではなく3本スポークを採用することでスポーティーなクルマであることを印象付けているという
シートは、エンボス加工が施されたヘッドレストと一体型形状となっており、背もたれには新しいサソリのロゴデザインが配されている
ステランティスジャパン代表取締役社長の打越晋さんは、「アバルトは、パフォーマンスを軸とした商品作りをしてきており、従来のガソリンエンジンに加えて、今回新たに電気自動車の『アバルト500e』をラインアップに加えました。このコンパクトレーシングカーが次のステップへ一歩上がるために、格好のパワートレインがモーター駆動であり、そして電気自動車なのです」と話す。
「アバルト500e」とステランティスジャパン代表取締役社長の打越晋さん
さらに、アバルトブランドのCEOであるオリヴィエ・フランソワ氏も、「電動化を進める理由はただひとつ、それは最高のパフォーマンスを追求することです」とコメントしていたと打越さんは明かす。「最高のパフォーマンスを追求するという目標は、70年にわたって継続してきました。今後も、アバルトは常にパフォーマンス、レーシング、スリルを追い求めながら、お客様に感動を与えていきたいと考えています」。電気自動車であるからと言って、アバルトの本質そのものは変わっていないことを強調した。
打越さんによると、日本におけるアバルトの販売台数は、2022年にグローバルで母国イタリアを抜いて世界ナンバーワンになったという。非常に重要なマーケットである日本市場において、「アバルト500e」がどこまで販売台数を伸ばすのかに期待したい。
写真提供:ステランティスジャパン株式会社