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ホンダから低価格の新型SUV「WR-V」が2024年に発売! 250万円以下でライバルを猛追

ホンダは、2024年春に日本で発売予定の新型SUV、「WR-V」(海外名「エレベート」)を国内で初披露した。正式な発表は、2023年12月が予定されている。今回は、新型「WR-V」の商品企画や内外装デザインについての取材会が行われたので、明らかになったことをお伝えしたい。

新型「WR-V」は、迫力のあるエクステリアデザインや広々とした室内空間を確保しながら、200万円台前半から購入できる価格の安さが魅力的なSUVだ

新型「WR-V」は、迫力のあるエクステリアデザインや広々とした室内空間を確保しながら、200万円台前半から購入できる価格の安さが魅力的なSUVだ

ちなみに、「WR-V」の開発はタイにあるホンダR&Dアジアパシフィックを中心に行われた。つまり、アジア地域においても「WR-V」(エレベート)は販売される。製造はインドだ。(2023/11/17 一部テキストを修正いたしました[編])

車両価格は200〜250万円あたりに収まりそう

現在、ホンダの日本市場におけるSUVのラインアップは、「ZR-V」と「ヴェゼル」の2車種のみになる。SUV市場は未だ拡大基調にあるが、その中でもスモールSUV、たとえばトヨタ「ヤリスクロス」やダイハツ「ロッキー」などの販売台数が顕著に伸びている。だが、ホンダは同価格帯におけるラインアップが存在しなかったことから、「WR-V」の日本導入にいたったという。

ライバルメーカーにおける低価格なスモールSUVに対抗するため、新たに導入される「WR-V」。画像のグレードは「Z+」(後述)で、ボディカラーは「イルミナスレッド・メタリック」

ライバルメーカーにおける低価格なスモールSUVに対抗するため、新たに導入される「WR-V」。画像のグレードは「Z+」(後述)で、ボディカラーは「イルミナスレッド・メタリック」

また、「フィット」などのコンパクトカーからSUVへ乗り換えるにあたり、「ヴェゼル」では価格が高いということなどから他メーカーへの流出も多くあったようである。そのような理由から、「ZR-V」や「ヴェゼル」でカバーできていない価格帯へのSUV投入は、喫緊の課題だったのだ。

注目の価格については、今回は公表されなかったのだが、スモールセグメントの価格帯がおおよそ250万円以下なので、「WR-V」の車両価格はおそらく200〜250万円の範囲内に収まるだろう。「ヴェゼル」の最量販グレードである「e:HEV Z」が約300万円であることを考えると、「WR-V」は大幅に車両価格が下がることになる。

それを実現できたのが、選択と集中だ。パワートレインはガソリンのみ、駆動方式はFFだけに絞ることで、開発期間の大幅な短縮や開発コストの低減が可能となった。また、必要十分な安全運転支援システムも搭載されているという。ちなみに、サイドブレーキは「EPB(エレクトリックパーキングブレーキ)」ではなく手動式で、「アクティブクルーズコントロール」は渋滞時に完全停止せず、「シートヒーター」が省かれるなど、徹底したコストダウンも図られている。その背景には、車両価格を抑えることによって、ユーザーのショッピングリストから外されることを避ける狙いがありそうだ。

室内空間の広さも大きなメリットに

では、競合車と比較した「WR-V」の強みとは何だろうか。まずは価格の安さに加えて、室内空間の広さが大きなメリットになる。「WR-V」のボディサイズは、全長4,325mm、全幅1,790mm、全高1,650mm、ホイールベースは2,650mmになる。たとえば、「ヴェゼル」は全長4,330mm、全幅1,790mm、全高1,580mm、ホイールベースが2,610mmなので、全高を除けば2車種はほぼ同じようなボディサイズだ。

「WR-V」のボディサイズは、全高などをのぞけば「ヴェゼル」とほぼ同じような大きさだ

「WR-V」のボディサイズは、全高などをのぞけば「ヴェゼル」とほぼ同じような大きさだ

さらに、「WR-V」はSUVらしいパッケージのおかげで、「ヴェゼル」よりも大幅に広い458リットルの荷室容量が確保されている。そして、後席も頭上空間や左右方向、足元などが広々としている。また、「ヴェゼル」のように後席を倒したときにダイブダウンするのではなく、背もたれが倒れる仕様にすることで座面を分厚い形状で作り込めたことなどによって、後席へ快適に座ることもできる。

「WR-V」の魅力のひとつが、広々としていてゆとりのある後席空間だ

「WR-V」の魅力のひとつが、広々としていてゆとりのある後席空間だ

ラゲッジルームは、後席を倒すと段差ができるが、そのぶん後席の座り心地に配慮されている

ラゲッジルームは、後席を倒すと段差ができるが、そのぶん後席の座り心地に配慮されている

「WR-V」は、価格帯こそスモールセグメントに属するのだが、ボディサイズの小ささという点については少々厳しいように思える。だが、そのあたりはホンダも気づいており、取り回しのしやすい良好な視界確保に腐心したようだ。

本田技術研究所 デザインセンター パッケージ担当の黒崎涼太さん

本田技術研究所 デザインセンター パッケージ担当の黒崎涼太さん

パッケージを担当した、本田技術研究所 デザインセンター パッケージ担当の黒崎涼太さんによると、「車両感覚がつかみやすい、スクエアでスッキリとした視界を実現しています」とのこと。具体的には、ボンネットの先端が見えやすく、また運転席から左前方のボンネットを確認しやすくすることで、車両感覚をつかみやすくしているという。また、最低地上高も195mmが確保されているので乗り降りしやすく、未舗装路や段差などを気にする場面も少ないだろう。

ホンダの“RV”という意味を込めて

「WR-V」は、海外では「エレベート」という車名で販売されている。では、日本ではなぜ「WR-V」という車名なのだろうか。

本田技研工業 日本統括部 商品ブランド部 商品企画担当の佐藤大輔さんによると、「WはWinsomeという英単語で、楽しさや快活さという意味になります。『WR-V』のユーティリティーの高さを活用して、お客様に楽しんでもらいたい。アクティブになって、さまざまなところへドライブしていただきたいという思いを込めています。また、『ZR-V』や『CR-V』などのように、『エレベート』よりもホンダの“RV”だという認知につながりやすいことから、『WR-V』という車名にしました」とのことだ。

SUVらしいたくましさを内外装に表現

「WR-V」のエクステリアデザインは、「ヴェゼル」とは大きく異なるSUVらしい、マッシブな外観だ。コンセプトは、“MASCULINE&CONFIDENT”。自信にあふれる、たくましさを演出しているという。ひと目でわかる、分厚いボディによる安心感。そして、スクエアなロングノーズによる堂々とした風格。さらに、高い重心と水平基調なリアデザインによって、力強い佇まいが表現されている。

ボリューム感があり、堂々とした風格を漂わせるフロントフェイス

ボリューム感があり、堂々とした風格を漂わせるフロントフェイス

インパネは水平基調で、すぐれた視界によって運転のしやすさを追求。また、細部ではエアコンのアウトレットをはじめとするシルバー加飾や、ピアノブラックのアシスタントパネルなどで上質感を高めつつ、オーナーの自信につながるようなたくましさも感じられるようにデザインされている。

インテリアデザインは、やわらかなパッドで包まれたような、安心感のある空間が演出されている

インテリアデザインは、やわらかなパッドで包まれたような、安心感のある空間が演出されている

シフト前のカップホルダーは、飲み物などに触れる際にシフトノブと干渉せず、取り出す際に指がかからないように開口を広げるなどの細かな配慮もなされている

シフト前のカップホルダーは、飲み物などに触れる際にシフトノブと干渉せず、取り出す際に指がかからないように開口を広げるなどの細かな配慮もなされている

荷室床面は、実は開口部から若干下がった位置にある。たとえば、重い荷物などを載せ降ろしする際には腰に負担がかかりやすいように思えるのだが、この点について黒崎さんは「後席シートを倒すと、段差ができてしまいます。そこで、床面をフラットにする用品展開やDIYなどで工夫できる余力を残しています」とコメントする。つまり、車両としてはできるだけ広い荷室空間を確保し、もしフラットにしたいなどの必要があれば、ユーザー自身で工夫を施せるようにしているとのこと。確かに、荷室が深ければ大きな荷物を載せることもできるだろう。

新型「WR-V」の荷室床面は、開口部から少し下がっていてフラットではないものの、そのぶん多くの荷物を積み込むことができる

新型「WR-V」の荷室床面は、開口部から少し下がっていてフラットではないものの、そのぶん多くの荷物を積み込むことができる

グレードは3種類を展開

グレードラインアップは、「X」「Z」「Z+」の3つだ。「X」に対して「Z」は、LEDフォグランプや17インチアルミホイールが追加される。「Z」に対して「Z+」は、グリルがベルリナブラック塗装になり、ルーフレールガーニッシュやドアガーニッシュのシャープシルバー塗装、クロームメッキアウターハンドル、シルバードアモールディングが追加される。

画像のグレードは「Z」で、ボディカラーは「メテオロイドグレー・メタリック」

画像のグレードは「Z」で、ボディカラーは「メテオロイドグレー・メタリック」

インテリアは、「Z」と「Z+」はファブリックと合成皮革のコンビネーションシートに本革巻ステアリングが採用されている。「X」は、シート生地やセンターコンソールアームレストがファブリック生地となり、ステアリングはウレタン樹脂になる。

SUVらしい存在感をさらに高めてくれる純正アクセサリー

新型「WR-V」は、純正アクセサリーにも注目したい。「“ハイクオリティタフネス”をテーマに、『WR-V』を所有する喜びをさらに高めるエクステリアアイテムと、日々の暮らしからレジャーまで『WR-V』をアクティブかつタフに使えるユーティリティーアイテムを提案します」と話してくれたのは、ホンダアクセス 純正アクセサリー 開発責任者の水上寛之さん。特に、エクステリアにおける純正アクセサリーは、もうひとつの「WR-V」を作ろうというほどの意気込みである。

新型「WR-V」純正アクセサリー装着車と、ホンダアクセス 純正アクセサリー 開発責任者の水上寛之さん

新型「WR-V」純正アクセサリー装着車と、ホンダアクセス 純正アクセサリー 開発責任者の水上寛之さん

そのエクステリアの中でも、最も特徴的なのはフロント周りだ。メッキのアクセントと、力強い縦基調のグリルデザインによって、上質感や存在感を醸し出すフロントフェイスに仕上げられている。

縦型フロントグリルのほか、グリルの下回りを囲むようなシルバー加飾も純正アクセサリーパーツだ

縦型フロントグリルのほか、グリルの下回りを囲むようなシルバー加飾も純正アクセサリーパーツだ

純正アクセサリーの「フロントロアーガーニッシュ」は、ノーマルのシルバーガーニッシュに追加で装備するため、存在感がさらに際立つ

純正アクセサリーの「フロントロアーガーニッシュ」は、ノーマルのシルバーガーニッシュに追加で装備するため、存在感がさらに際立つ

また、下回りのシルバーの加飾によって、「下回りをしっかりと支えるような、より強靭なボディを演出するようにこだわっています」と水上さんは語る。そのほか、サイドロアやリアロアガーニッシュはSUVらしいタフさが表現されており、エキパイフィニッシャーやフェンダーガーニッシュ、ブラックエンブレムなど、ディテールの質感を高めるアイテムも多数用意されている。

サイドやリアバンパーに、純正アクセサリーのシルバーガーニッシュを装着することでクルマ全体が引き締まり、SUVの力強い印象がさらにアップする。ちなみに、画像の車両にはエキパイフィニッシャー(標準マフラーの先端に後付けするドレスアップパーツ)を装着

サイドやリアバンパーに、純正アクセサリーのシルバーガーニッシュを装着することでクルマ全体が引き締まり、SUVの力強い印象がさらにアップする。ちなみに、画像の車両にはエキパイフィニッシャー(標準マフラーの先端に後付けするドレスアップパーツ)を装着

いっぽうのインテリアは、アクティブでタフに使い倒せるユーティリティーアイテムを用意。荷室のデッドスペースを活用して、「ちょっとした手回り品を収納しておけるストレージボードや汚れを気にせず使い倒せるラゲッジトレイ、シートバックソフトトレイなどを用意しています」と述べる。

小物などを置いておいて、サッと取り出せる「ストレージボード」は、アウトドアなどの際に役立ちそうだ

小物などを置いておいて、サッと取り出せる「ストレージボード」は、アウトドアなどの際に役立ちそうだ

近年は、装備過多により不満を募らせるユーザーも一定数いることだろう。装備を省く代わりに車両価格を下げてほしいなど、さまざまな要望が出ていることも事実だ。ホンダとしては、SUVのラインアップ強化によって取りこぼしているユーザーに対応したいという思いがあり、それがユーザーの要望と一致した結果として「WR-V」が生まれたのだ。

最後に、「WR-V」のターゲットユーザーはミレニアル世代と子離れ世代の2つの層になる。特に、ミレニアル世代は「コスパを重視し、安くてよいものを使いたい。同時に、本質的によいものを見極める目を持っています。そして、アクティブに気兼ねなく、自分らしく使いたい」という価値観を持っていると佐藤さんは言う。

だが、筆者は「WR-V」にはもうひとつ訴求できる層があるように感じられた。それは、小さな子どもがいる家庭だ。育児にお金がかかり、かつ荷物も多い。近年、ミニバンや軽自動車の価格が上昇していることを踏まえると、「WR-V」は室内や荷室は広く、車両価格は安いので彼らのニーズにピッタリとあてはまるように思えるのだ。実際に「WR-V」が発売されると、想定以上に幅広い層に受け入れられる素地があるように感じられた。

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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