2023年12月8日、ホンダ「オデッセイ」が一部改良を実施し、日本での再販をスタートさせた。
2021年に日本での販売を終了していたホンダ「オデッセイ」が、2023年12月8日に再販を開始する。今回の一部改良では、2列目キャプテンシートの電動化や「BLACK EDITION」と呼ばれる新グレードの追加などが特徴的だ。画像のグレードは、「e:HEV ABSOLUTE」(ボディカラーはプラチナホワイト・パール)
5代目となる現行型は、2021年12月末に狭山工場が閉鎖となった影響を受け、日本市場向けのモデルは終売となっていた。だが、今回は中国からの輸入車という形で再販されることになった。およそ2年ぶりの国内販売復活となる新型「オデッセイ」は、単に再販したというワケではなく、時代に即した進化や改良がなされている。今回は、そんな新型「オデッセイ」の詳細についてチェックしていきたい。
■新型「オデッセイ」のグレードラインアップと価格
e:HEV ABSOLUTE:4,800,400円
e:HEV ABSOLUTE・EX:5,000,600円
e:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITION:5,164,500円
※価格はすべて税込
※駆動方式はすべてFF
新型「オデッセイ」のグレードは、「e:HEV ABSOLUTE(アブソルート)」「e:HEV ABSOLUTE・EX」、「e:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITION」の3グレード構成になる。
新型「オデッセイ」の搭載エンジンは、全車2リッターの2モーターハイブリッド「e:HEV」へと統一された
グレード名に「e:HEV」とつくことからわかるように、パワートレインは全車2Lエンジンと2モーターを組み合わせたハイブリッドモデルになる。ちなみに、旧型で存在していた2.4Lガソリンエンジン仕様は消滅している。
乗車定員は、8人乗り仕様が無くなり、全車2列目キャプテンシートの7人乗り仕様のみとなっている。これらの変更については、「オデッセイ」を選ぶユーザーの多くがハイブリッドモデルの7人乗り仕様をチョイスしているという事実が影響しているそうだ。
そして今回、新たに登場した「BLACK EDITION」は、旧型で最上級グレードであった「ABSOLUT・EX」をベースとして、内外装の随所にブラック加飾を採り入れたモデルとなっている(詳細は後述)。
車両本体価格は、「e:HEV ABSOLUTE」が4,800,400円、「e:HEV ABSOLUTE・EX」が5,000,600円、「e:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITION」が5,164,500円と、ついに「オデッセイ」にも500万円超のグレードが登場した。
ただ、新型と旧型の「ABSOLUTE・EX」同士を比較すると、本来オプションだった本革シートが標準化され、2列目キャプテンシートは4ウェイパワーシートとなり、エレクトリックギアセレクターに減速セレクター、USBチャージャーの増設など、ユーティリティー面でレベルアップしているのに加え、「Honda SENSING」の高性能化や内外装のブラッシュアップなど、単に値上がりしただけでなく、ホンダのフラッグシップミニバンとして深化したと言ってもいいかもしれない。
今回の一部改良では、個性的なスタイリングと上質になった室内空間、そして先進安全装備の進化や「Honda CONNECT」の採用など、“時代に即した進化”が大きな変更点となっている。
そもそも、旧型の5代目「オデッセイ」は、2020年11月にフロントマスクを一新する大掛かりな改良を実施しているのだが、そのおよそ1年後にいったん終売となったこともあり、今回は改良後のフロントマスクがベースとなっている。
新型「オデッセイ」に採用されている新デザインのフロントグリルは、メッキを減らしつつ開口部を拡大させることで、プレミアム感やワイド感を強調している
新型のフロントグリルは、開口部上段を拡大してグリルがさらに大きくなり、メッキにアクセントを持たせた立体表現になることで、ワイド感と高級感をさらにアップ。そして、グリルに備わるHマークを前方に配置することで、ノーズからの突き出し感を強めて、横から見たときの迫力とボリューム感もプラスされている。
新型「オデッセイ」のインテリア。加飾などを黒基調で統一することによって、引き締められた印象を醸し出す
インテリアにおいては、旧型では一般的なレバー式だったシフトが、快適にシフト操作できる先進的なエレクトリックギアセレクターへ変更しており、合わせてパドル操作でアクセルオフ時の減速感調整が可能となる減速セレクターを搭載している。
また、ナビゲーションは11.4インチ、または9インチのディーラーオプションナビが装着可能となったほか、市販のDIN規格のナビやオーディオなども装着できるのは、音響などにこだわりを持つユーザーにとってはうれしいポイントと言えるだろう。
オットマンとリクライニングの電動機能、シートヒーターが内蔵された4ウェイパワーシートは、全車標準装備だ
そして、最も大きな進化ポイントと言えるのが2列目キャプテンシートの刷新だ。オットマンとリクライニングを電動化することで、細やかな角度調整が可能となっただけでなく、シートヒーターを内蔵することで2列目シートの快適性を大幅に向上。
さらに、2列目アームレストには小物などを置けるミニトレーやType-CのUSBチャージャー、2列目シートセンターテーブルなども装着され、フラッグシップミニバンにふさわしい2列目シートとなったことが特筆すべき点となっている。
先進装備については、「Honda SENSING」が旧型の単眼カメラ&ミリ波レーダーからフロントワイドビューカメラ&ソナーセンサーになったことで、検知範囲や検知対象物が増え、夜間の歩行者や自転車、右折時の対向車に交差車両までが衝突被害軽減ブレーキの対象となった。
また、近距離衝突軽減ブレーキや急アクセル抑制機能、オートハイビームといった新たな機能が追加されただけでなく、従来のアダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システムなどのスムーズさや性能も向上している。
そしてコネクティッドサービスにも対応したことで、「Honda CONNECT」対応ナビを装着することで、緊急通報ボタンの使用やエアバッグ展開時自動通報機能などが使用できるほか、地図の自動更新やリモートでのドアロックの開閉、エアコン操作、カーファインダーなどさまざまなサービスを利用することができるようになった(別途月額利用料が必要)。
ブラッククロームメッキのフロントグリルや、ブラックスモークレンズのリアコンビランプなどが特徴的な新グレード「e:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITION」
今回、新たに追加された「BLACK EDITION」は、「e:HEV ABSOLUTE・EX」をベースに、グリルやドアハンドル、ロアーガーニッシュ、リアライセンスガーニッシュ、エンブレムなどのメッキ部分をブラッククロームメッキとし、ミドルグリルベースやグリル奥の塗装、ドアミラーキャップ&ベースをブラック化。
さらに、ホイールをマットベルリナブラック塗装とし、ヘッドライトリフレクターの天面もブラックアウトするなど、名前のとおり黒で統一されたシックでスポーティーな出で立ちとなっている。
「e:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITION」は、助手席前の木目調パネルが黒木目となっているなど、インテリアにおいても黒にこだわったグレードだ
インテリアにおいても、グレー系のカラーとなるピラーやルーフライニングをブラック化し、木目調パネルは黒木目に、ステアリングの加飾にピアノブラックを採用し、インナードアハンドルはプラチナクロームメッキとすることで、クールで引き締まった室内空間を実現しているのが特徴だ。
価格はベースから約16万円のアップとなるが、あとからこれらの変更を実施しようとすれば、とてもこの金額で収まるワケはないので、メッキギラギラのミニバンが苦手な人や、スポーティーでクールなスタイルを求める人にとってはおすすめのグレードとなりそうだ。実際、事前受注ではおよそ6割弱のユーザーが「BLACK EDITION」を選択しているとのことだ。
私事で恐縮ではあるが、筆者は初代「オデッセイ」を所有している。その感覚からすれば、「新型『オデッセイ』は立派になったな」と言うのが偽らざる印象だ。
左が新型「オデッセイ」で、右が筆者の初代「オデッセイ」
ただ、初代オデッセイは現在のようにフラッグシップミニバンではないばかりか、当時はまだステップワゴンすら生まれていなかった時代の車両であることを考えれば、時代の流れと共に「オデッセイ」が果たすべき役割が変化していくのは至極当然のことで、その変化を否定するつもりはない。
全体的に立派になり、スライドドアを備えるなどキャラクターは変わってしまってはいるが、改良前のモデルで味わうことができた、ミニバンらしからぬスポーティーな走りを実現しながらも、後席乗員へネガティブな印象を与えない絶妙な足回りは継続ということで、「オデッセイ」らしさは引き継がれていることは間違いない。
実際、「オデッセイ」を購入しているユーザーは歴代を乗り継いでいるオーナーも少なくないようで、少なくとも今回の取材によって、歴代オーナーが乗ってガッカリするような仕上がりにはなっていないことを窺い知ることができたと言えるだろう。
(Photo:島村栄二)