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“ランエボ”譲りの技術も!三菱 新型「トライトン」が2024年2月に発売

2023年12月21日、三菱自動車はピックアップトラックの三菱「トライトン」を、2024年2月15日に発売すると発表した。日本市場には約12年ぶりの再導入となる。グレードラインアップは2種類で、価格はGLSグレードが4,980,800円、GSRグレードが5,401,000円(いずれも税込み)だ。

2023年7月に世界初公開され、「ジャパンモビリティショー2023」にも展示された三菱新型「トライトン」が、2024年2月15日にいよいよ日本で発売になる

2023年7月に世界初公開され、「ジャパンモビリティショー2023」にも展示された三菱新型「トライトン」が、2024年2月15日にいよいよ日本で発売になる

今回、新型「トライトン」の商品担当者へ話を聞くことができたので、概要などをお伝えしよう。また、併せて「ジャパンモビリティショー2023」へ出展されていた「D:Xコンセプト」についても、当記事の後半にご紹介したい。

シャシーからエンジンまであらゆる部分を刷新

「トライトン」とは、1978年に発売された「フォルテ」をルーツとする1トンピックアップトラックだ。「フォルテ」から数えると、45年間で5世代にわたって約570万台が生産され、世界約150ヵ国で販売されてきた三菱の世界戦略車になる。

そして今回、発売される新型「トライトン」は、内外装のデザインからシャシー、ラダーフレーム、エンジンまで刷新される。ちなみに、日本で販売予定のボディタイプはダブルキャブで、駆動方式は4WDのみ。

ピックアップトラックである新型「トライトン」は、後部に広大な荷室が備えられている

ピックアップトラックである新型「トライトン」は、後部に広大な荷室が備えられている

搭載エンジンは、新開発の4N16型クリーンディーゼルエンジンで、回転数と負荷に応じて2つのタービンを協調させることで、全回転域で高出力を発揮する2ステージターボシステムを採用している。204psの最高出力と、約1,500rpmからフラットに発生する470N・mの最大トルクによって、実用域での応答性にすぐれたトルクフルな走行を可能としているという。組み合わされるトランスミッションは6速スポーツモードA/Tになる。

「パジェロ」に代わり三菱を代表するクルマにしたい

そもそも、「トライトン」はなぜ日本へ再導入されるのだろうか。三菱 商品戦略本部 チーフ・プロダクト・スペシャリストの増田義樹さんによると、「かねがね、日本に導入したいと思っていました」とのこと。「見た目はもちろん、『パジェロ』の性能を引き継いだ四駆性能や耐久、信頼性のすべてが三菱を代表するクルマだからです」。

三菱 商品戦略本部 チーフ・プロダクト・スペシャリストの増田義樹さん

三菱 商品戦略本部 チーフ・プロダクト・スペシャリストの増田義樹さん

また、2006年あたりに「トライトン」をスポットで導入して以降、継続販売の要望も強くあったそうだ。今回は、それらの声に応えるとともに「現在、『パジェロ』がありませんから、それに変わるような存在にしたかったのです。オフロードを楽しめるクルマは、日本のラインアップには欠かせません」と言う。

先代の弱みを克服しながら強みを強化

新型「トライトン」の開発にあたって、まずは先代モデルについて振り返ってみたという。先代(日本への導入車は先々代)の弱みを克服するという視点において、グローバルでは競合車に対して少し幅が狭かったことがネックとなっていたようだ。ピックアップとしては、小回りが効いて軽快に走れるという魅力を差別化したのだが、市場からはピックアップであればもう少し車幅は広めで、外から見た時のスタンスのよさが求められたのだそう。

そこで、新型はシャシーフレームを幅で50mm、前後方向もホイールベースを伸ばして、居住空間の確保とともに見た目のプロポーションを改良した。それに伴って、フロントマスクの押し出し感も強くした。

新開発のラダーフレームは、先代モデルよりも剛性を高めながらハイテン鋼の採用比率を増加させることで重量増を最小限に抑えているという

新開発のラダーフレームは、先代モデルよりも剛性を高めながらハイテン鋼の採用比率を増加させることで重量増を最小限に抑えているという

また、今回は2世代ぶりにプラットフォームを刷新したことにより、「これから10年、あるいは20年くらい使われても大丈夫なように、性能を引き上げました。ねじり剛性や曲げ剛性は、動的性能などのドライビングパフォーマンスのほとんどを決める要素ですので40%から60%へと、1.5倍くらいにしたのです。衝突安全性も、次世代くらいまでカバーできるレベルとなっています。さらに、サスペンションのストロークもしっかり伸ばすとともに、パネ下の軽量化をすべて行いましたので、安定性や操縦性も向上し、板バネなのに乗り心地がものすごくよくなっています。荷物を積まずに、後席に乗って結構バンピーなところを走ってもなり衝撃吸収、ショック吸収にすぐれています」。

フロントにはダブルウィッシュボーンサスペンションが採用されており、アッパーアームの取り付け部を上方とすることでストロークを確保。接地性と乗り心地を向上させている

フロントにはダブルウィッシュボーンサスペンションが採用されており、アッパーアームの取り付け部を上方とすることでストロークを確保。接地性と乗り心地を向上させている

同時に、強みもさらに伸ばしたという。三菱と言えば、四駆技術として「パジェロ」から引き継がれている「スーパーセレクト4WDII」がある。これは、4Hモードにしてもセンターデフが作動してタイトコーナーブレーキング現象が出ない三菱特有の技術だが、今回はそれを踏襲。さらに、路面によって切り替えられる4つの走行モードを7つに増やすことによって、「よりきめ細かく、ぬかるみやスノー、氷上においても、しっかりとタイヤがグリップしてくれるようにトラクションコントロールをセッティングしました」。

新型「トライトン」には、「NORMAL」「ECO」「GRAVEL」「SNOW」「MUD」「SAND」「ROCK」の7つのドライブモードが搭載されている

新型「トライトン」には、「NORMAL」「ECO」「GRAVEL」「SNOW」「MUD」「SAND」「ROCK」の7つのドライブモードが搭載されている

もうひとつ、「AYC(アクティブヨーコントロール)」も採用されている。これは、ブレーキ制御などでコーナーリング時に内側のブレーキを摘まむことでヨーをスムーズに出す機能で、「ランサーエボリューション」で培った技術だ。それを「トライトン」にも搭載し、低ミュー路のコーナーリング時にフロントが逃げるアンダーステアを解消。ステアリングを切ったぶんだけ、しっかりと曲がれるようにしたのだ。

新型「トライトン」には、コーナー内側の前輪に弱くブレーキをかけることで旋回性を向上させる「AYC(アクティブヨーコントロール)」が新たに採用されている

新型「トライトン」には、コーナー内側の前輪に弱くブレーキをかけることで旋回性を向上させる「AYC(アクティブヨーコントロール)」が新たに採用されている

世界戦略車として使い勝手まで徹底的に追及された

エクステリアの特徴としては、まずは押し出し感の強いフロントフェイスが挙げられる。三菱車のフロントフェイスといえば「ダイナミックシールド」と呼ばれるフロントフェイスのデザインがあるが、新型「トライトン」ではそれを進化させて、ヘッドライト周りの黒いガード部分によって表現されている。

新型「トライトン」のフロントフェイスは、プロテクターなどが組み合わせられた最新の「ダイナミックシールド」の造形が採用されている

新型「トライトン」のフロントフェイスは、プロテクターなどが組み合わせられた最新の「ダイナミックシールド」の造形が採用されている

そのうえで、「強く見えるクルマとして、外観の見た目は筋肉質で力持ちなんですが、やはりハートがあるやさしさが備わっていることを求めたのです。ドアハンドルもごつく見えますが、触ると使いやすいものとなっています」と説明する。そのドアハンドルは、大きな手に大きな作業用の手袋をしていてもしっかりと握ることができるような配慮もなされている。

インテリアは、Aピラーを立てることでドア開口を広く取って乗降性を向上。シートポジションは、ヒップポイントを20mm高くしてアイポイントを高めに設定することで、ボンネットなどの見切りが見やすいように配慮されている

インテリアは、Aピラーを立てることでドア開口を広く取って乗降性を向上。シートポジションは、ヒップポイントを20mm高くしてアイポイントを高めに設定することで、ボンネットなどの見切りが見やすいように配慮されている

新型「トライトン」は、まさに三菱のグローバル戦略車であり、その使用用途は多岐に上る。だからこそ、力強さとともに使いやすさまで徹底的に追求されているようだ。日本の道路事情では、少々サイズが大きいかもしれないが、見切りがよさそうなので運転はしやすいだろう。「ハイラックス」にどこまで対抗できるのか、期待したい。

将来の「デリカ」をイメージした電動クロスオーバーMPV

そして、もう1台ご紹介したいのが、「ジャパンモビリティショー2023」に出展されていた電動クロスオーバーMPVの「D:X Concept」だ。未来の「デリカ」をイメージした、三菱らしい冒険心を呼び覚ましてくれるようなコンセプトカーである。

「D:X Concept」は、MPVならではの便利で快適な室内空間と、SUVならではの高い走破性を兼ね備えているコンセプトカーだ

「D:X Concept」は、MPVならではの便利で快適な室内空間と、SUVならではの高い走破性を兼ね備えているコンセプトカーだ

コンセプトは、「絶対安全大空間×絶対走破性」。これは、「デリカ」の特長である広い室内空間と高い安全性を継承しつつ、さらに未来のカタチとして「絶対安全大空間×絶対走破性」をデザインコンセプトに、大空間キャビンとそれを守るプロテクティブボディが施されている。

キャビン前方からDピラーまで続くサイドウインドウグラフィックと、堅牢なDピラーによって、デリカらしさとともに広大な室内空間が表現されている

キャビン前方からDピラーまで続くサイドウインドウグラフィックと、堅牢なDピラーによって、デリカらしさとともに広大な室内空間が表現されている

室内空間は、ワンボックスタイプの広い空間に、乗員すべてがゆったりと過ごせるスペースが確保されている。上下動や回転するパノラミックシート、および開放感のある広々とした視界をもたらすフロントウィンドウとシースルーボンネットによって、今までにない“宙に浮いたような”運転体験を可能とするエアリアルコックピットを実現しているという。

シート全体を上下動させて、体格に合わせた見晴らしのよい着座位置に設定できるパノラミックシートを全席に採用。また、休憩時などには後方に回転させることで、乗員全員で会話を楽しめる室内空間を作りだせるという

シート全体を上下動させて、体格に合わせた見晴らしのよい着座位置に設定できるパノラミックシートを全席に採用。また、休憩時などには後方に回転させることで、乗員全員で会話を楽しめる室内空間を作りだせるという

広大な室内空間とSUVらしい目線の高さを両立

コンセプトのひとつである、「絶対安全大空間」とはどのようなものなのだろうか。三菱 第一車両技術開発本部 CTE UX(ユーザーエクスペリエンス)の平野茂知さんによると、「乗員の配置を前側に寄せて、ノーズのないパッケージにするとともに、ウインドウシールドが比較的早く始まるという特徴があります。そうすることで、3列目シートであっても、しっかりと前後のスペースが取れるようにしています」と説明する。

右が三菱 第一車両技術開発本部 CTE UX(ユーザーエクスペリエンス)の平野茂知さん、左が三菱 デザイン本部 デザイン戦略担当の安井淳司さん

右が三菱 第一車両技術開発本部 CTE UX(ユーザーエクスペリエンス)の平野茂知さん、左が三菱 デザイン本部 デザイン戦略担当の安井淳司さん

同時に、「高いアイポイントも重視しました。地上高を高くすることで見通しがよく、楽しくワクワクする運転体験を提供したいという狙いがあります。また、そういったシートのレイアウトの特徴としています」と言う。具体的には、シートの高さ方向の調整代を従来よりも100mm多く取ることで、全高が上がってるそうだ。

このようなレイアウトを取った理由について平野さんは、「他社のSUVでも、高い地上高と高い目線で荒れた路面を楽しく走れて、しっかりした視界を確保しているコンセプトのクルマが出てきました。ですが、三菱の『デリカ』もそのような特徴を持っていますので、広大な室内空間を強みとしてSUVに負けない目線の高さを大空間でも維持したかったのです」と話す。つまり、「デリカ」の強みをさらに伸ばしたのだ。

歴代「デリカ」の特徴をリスペクトしながら取り込む

「D:X Concept」は、デザインも個性的だ。三菱 デザイン本部 デザイン戦略担当の安井淳司さんは「このモノフォルムプロポーションは、2代目、3代目のスターワゴンを想起させるようです。それは、日欧全員のデザイナーもなんとなく『デリカ』だとなり、そこへアイコニックなものを感じているようです」と話す。

「D:X Concept」のリアエクステリア

「D:X Concept」のリアエクステリア

「D:X Concept」のヘッドライトやテールランプのTシェイプなどは、「トライトン」と同様に車幅を広く見せて、どっしりとした印象を与えている。このような細部にわたるこだわりが、次期「デリカ」にも生かされていくのだろう。

全体のプロポーションやキャビンの作り方などには歴代「デリカ」のイメージを取り入れているところがあるので、次期型もきっとこの印象をうまく踏襲していくに違いない。

(写真:中野英幸、内田千鶴子、価格.comマガジン編集部)

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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