マリオ野の人生 Fun To Drive

軽トラの運転に快楽はあるのか!? ダイハツ「ハイゼットトラック」を山道でテスト

「軽トラックはスポーツカーの1種」だと考えるライター、マリオ高野です。

昔から、軽トラック/軽バンのスポーツ性に注目するクルマ好きは少なくありません。軽トラックは、軽量コンパクト、後輪駆動が基本で、屈強な車体剛性を持つなど、“スポーツカー”にとって大事な要素をたくさん備えているからです。

軽トラックは、昭和のモータリゼーションを初期のころから支え続けたなど歴史も古く、長年に渡り「効率よく荷物を運ぶ」というシンプルな目的に特化して性能が研ぎ澄まされてきた、世界的にも稀有な存在でもあります。

そんな軽トラックの中でも最新鋭モデルのダイハツ「ハイゼットトラック」をワインディングロードに持ち込み、「ファン・トゥ・ドライブ性を味わう」という視点から試乗。新型「ハイゼットトラック」は、予想以上に痛快な走りが楽しめたので、それを報告します。

※2024年1月30日に国土交通省の立会試験などの結果、道路運送車両法の基準に適合していることが確認されましたので、記事として掲載します。

今回の試乗車は「エクストラ」の4WD。CVT車で134万2000円。二輪駆動ならCVT車でも118万8000円という安さは健在

今回の試乗車は「エクストラ」の4WD。CVT車で134万2000円。二輪駆動ならCVT車でも118万8000円という安さは健在

乗り心地は良好

現行型のダイハツ「ハイゼット」は、2022年に実施された大幅な改良によって総合性能が上がっているので、まずは乗り心地が存外に良好でした。軽トラック特有の硬めのサスペンションとタイヤにより、空荷状態では、路面の凹凸を乗り越える際に多少ハネ気味となりますが、旧型モデルと比較すると「ガタピシ感」は大幅に低減されています。

ハシゴ形状の屈強なラダーフレームから乗員が乗るキャビンに伝わる振動や騒音は、軽トラックとしては十分許容できるものでした。新型の「ハイゼットトラック」なら、軽トラックに初めて乗る人でも、乗り心地については大きな違和感を抱くことはないでしょう。

ボンネット部分がないので、車体の前端がドライバーにかなり近いレイアウト。さらに最小回転半径は3.6mと短く、狭い道でも取り回しは抜群です

ボンネット部分がないので、車体の前端がドライバーにかなり近いレイアウト。さらに最小回転半径は3.6mと短く、狭い道でも取り回しは抜群です

リヤのサスペンションは、重荷時も安定するリーフスプリング式。空荷だとやや硬くてハネ気味ですが、荷重が増した際の安定感は高くなります

リヤのサスペンションは、重荷時も安定するリーフスプリング式。空荷だとやや硬くてハネ気味ですが、荷重が増した際の安定感は高くなります

荷重移動を意識してコーナリング

山道でカーブに差しかかると、ややスローなステアリングギヤ比を持つトラック特有の穏やかな反応を示し、ステアリングの遊びと呼ばれる不感帯部分の大きさを感じます。乗用車のスポーツモデルの反応と比べると、一見頼りなく感じるものの、その分クルマの挙動はゆるやか、かつ唐突なものがないので、ドライバーはすぐに順応できる範囲にあります。

タイヤのサイズは145/80R12と、これまたパッと見は実に頼りない雰囲気ですが、「80/78N LT」という耐荷重が高められた小型トラック用タイヤなので、独特の硬質な接地感をともないます。グリップ感はあまり高くないものの、トラック用の小さく硬いタイヤを、路面にしっかり押しつけるための荷重移動を意識しながらコーナリングするのはなかなか痛快で、軽トラック以外のクルマでは味わえない面白さが得られるのでした。

軽トラックでも衝突回避支援ブレーキ機能などの運転支援システムが装備されます。今回試乗した上級グレード「エクストラ」は「ADB(アダプティブドライビングビーム)」が備わるなど、装備の充実度の高さにビックリでした

軽トラックでも衝突回避支援ブレーキ機能などの運転支援システムが装備されます。今回試乗した上級グレード「エクストラ」は「ADB(アダプティブドライビングビーム)」が備わるなど、装備の充実度の高さにビックリでした

軽トラックの場合、空荷だと後輪の荷重が少なくなるため、荷台に重量物を積載して後輪の荷重がある程度増した状態がベストバランスではありますが、エンジンの搭載位置が車体の中央寄りなので、基本的な重量バランスは良好、そもそも自動車としての基本的な運動性能の素性はよいと言えます。

乗員2名と割り切ったレイアウトなので、荷台の面積は広大

乗員2名と割り切ったレイアウトなので、荷台の面積は広大

特筆すべきはCVT!

そして、新型ハイゼットの走りで特筆すべきは、ATミッション。後輪駆動のFRの軽トラックでは初めてCVTと呼ばれる無段変速機を採用しています。

RR(リヤエンジン・リヤドライブ)の軽トラックでは、かつて旧世代のスバル「サンバー」がCVTを採用したことがありましたが、軽貨物車の過酷な負荷に対する耐久性に難があり、CVTをやめて3ATに変更したなど、軽貨物車のATミッションにCVTは不向きとされていたのです。一般的に、軽自動車のCVTは従来のATよりも全高が大きくなってしまう問題もありました。

しかし、新型「ハイゼット」ではミッションユニットの全高を従来のAT並みにすることに成功し、これを克服。また、CVTの変速フィールを嫌う人がよく指摘する「滑り感」についても劇的に改善しています。

スポーツ性を楽しむにはMTのほうがよい、という向きには5MTも用意されているので、ご安心を。

内装の仕立ては、軽トラックとしては不満のない質感。4WDは3モードを選択できる電子制御式で、CVTでもスーパーデフロック機能を備えます

内装の仕立ては、軽トラックとしては不満のない質感。4WDは3モードを選択できる電子制御式で、CVTでもスーパーデフロック機能を備えます

シートだけは従来型とあまり変わらず、座面、背もたれともに薄っぺらく、長時間でのドライブはつらくなるのだけが残念なところ

シートだけは従来型とあまり変わらず、座面、背もたれともに薄っぺらく、長時間でのドライブはつらくなるのだけが残念なところ

見えませんが、エンジンの真上に人が乗るキャブレイアウト。フロントタイヤもほぼ真下にあるので、独自の運転感覚が味わえます

見えませんが、エンジンの真上に人が乗るキャブレイアウト。フロントタイヤもほぼ真下にあるので、独自の運転感覚が味わえます

エンジンはNAのみなので、高速道路では常に非力感がぬぐえませんが、車体の動きは高速でも安定します。空荷であれば、ワンボックス型の軽バンと違って横風にさほど弱くないので、高速巡行向きとも言えます

エンジンはNAのみなので、高速道路では常に非力感がぬぐえませんが、車体の動きは高速でも安定します。空荷であれば、ワンボックス型の軽バンと違って横風にさほど弱くないので、高速巡行向きとも言えます

さらに、4WDの走破性能もきわめて高いので、4WDなら本格的なオフローダーとして楽しめる魅力も見逃せません。雪道でもチェーンを巻けばかなり走破性能が高いなど、悪天候下での安定性の高さも特筆レベルの魅力となります。

総じて、軽トラックの最新モデル、ダイハツ「ハイゼットトラック」は、クルマ好き、運転好きのドライバーに広くおすすめできる万能的な実用車と呼べるのでありました。

この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。

マリオ高野
Writer
マリオ高野
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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