MT(マニュアルトランスミッション)車の楽しさを伝えるためには、MT好きの女性を増やすことが重要だと考えるライター、マリオ高野です。
AT限定免許を取得するも、やがてクルマの運転により深く向き合いたくなり、限定を解除してMT車に乗ろうとする女性は少なくありません。今回登場する深山幸代さん(モデル兼ライター)もその1人。
深山幸代さんがイキイキとして運転する様子は、ぜひ動画でご確認ください
以前、公道でMT車デビューを果たし、MTの楽しさを体感してもらいました。その様子はこちらの記事でご確認ください。
MT車の楽しさを本当に実感できた結果、彼女の中で「自分の愛車にはスタイリッシュなMT車を選びたい!」という思いは高まったものの、新車のMTは選択肢が少なく、中古のMTのスポーツカーの多くは相場が異様に高くなっている状況にあります。
スタイリッシュなMT車を所有するハードルはなかなか高いのが現実なのですが、本人の願望はまだ冷めてはおらず、MT車デビューをしただけで終わってしまうのはあまりにも惜しいため、再びMT車の楽しさを味わってもらうことにしました。
新車で買えるMTは選択肢が少ないとはいえ、日本車メーカーは頑張ってくれています。2023年末に発売されたスズキの新型「スイフト」にはMTの設定が継続! 玄人筋からの評価が高いこともあり、ぜひとも深山さんにMT「スイフト」の楽しさを味わっていただきましょう。
今回の試乗車は「HYBRID MX」。1.2リッターエンジンは低速トルクが豊かでMT初心者にも扱いやすい特性です
「スポーツ」ではない実用グレードにもMTの設定を残してくれたスズキには感謝しかありません!
前回のデビュー戦から1年以上経つので、MTの基本操作からおさらい。平坦な道では、アクセルを踏まずアイドリング状態からクラッチを繋ぐだけでもスムーズな発進ができることなどを思い出してもらいました。
深山さんはAT車の運転には慣れており、クルマの運転そのものに関しては初心者ではないので、MTの操作で多少モタつくことはあっても、危険な状況に陥るリスクは低いことが再確認できます。
免許取得の直後からMT車の運転に挑戦するのもすばらしいと思いますが、まずはAT車でクルマの運転の基礎を身につけてからMTの操作に挑むのもおすすめです。かくいうMT車好きの筆者も、最初に買ったクルマはATだったので、MTへの乗り換え時に、路上でそれほど悩まずに済んだ思い出があります。
久しぶりのMT車について感想をたずねてみると……。
1年6か月ぶりの運転となるのでエンスト覚悟で臨みましたが、クルマを走らせることができて安心しました。MT車に乗ったのはこれまで4台ですが、改めてMTの楽しさを実感しました。もっと思いどおりに走らせたいです
とのことでした。客観的に見ても、走り出してすぐに以前覚えたことを思い出せている様子です。前回と同じく、シフトダウンの操作が最も難しいようです。シフトレバーの操作時に目線が移動してしまう癖はなるべく早めに直したいところですが、これは時間をかけて慣れるしかありません。
今回は試せませんでしたが、交通量の少ない高速道路を一定その速度で巡航しながら、3速から5速の間を何度も変速する練習をするのもシフト操作を早めに慣れるためのコツとして覚えておいてください。
試乗車のパーキングブレーキは電動式ではなく、サイドブレーキを手動で操作するタイプ。今や貴重なレイアウトです
スムーズな変速を身につけるには経験を積むしかなく、短時間の試乗でMT車の操作を完全にマスターするのは不可能ながら、それでも深山さんは「シフトフィール」や「エンジンフィールのダイレクト感」という、MT車の運転で得られる大きな魅力をしっかり味わえた様子にて、企画としては大成功。
少し長めのストロークと感じましたが、どこのギアに入れたいのかわかりやすかったです。クラッチは軽いので、楽に踏めてストレスフリーでした。ただ、クラッチのつながるところが想像よりも手前になるので、その感覚をつかむまでに時間がかかりました。
と、新型「スイフト」についての印象を語っていました。実用車らしい、ややストローク量が多めのシフトながら操作はしやすいことを実感しています。クラッチに関しては、メーカーや車種ごとに多少の違いがあるものですが、誰もがすぐに順応できるものなので、心配はないでしょう。
運転席:MT車は運転姿勢の適切さが求められるので、自分の体格に合わせやすいかどうかが重要
そして今回は、昔からMT運転の難関として立ちはだかる「坂道発進」についても挑戦してもらいました。広めの駐車場内のわずかな勾配で、スタッフが周囲の状況に十分注意しながら実施しております。
MT車の坂道発進は、アクセル/クラッチ/サイドブレーキの3種類の操作を同時に行う必要があり、左右の足と左腕を同時に使う難しさがあります。これもマスターするには場数を踏んで慣れるしかないのですが、最近のクルマは坂道発進用のブレーキホールド機能が付いていることが多いので、サイドブレーキに関してはクルマ側が助けてくれるようになりました。昔よりはハードルが低くなっていると言えます。
教習所ではサクッとできたのに、今回は何度挑戦しても下がってしまい悔しかったです。「スイフト」はホールド機能があるので、ブレーキを離しても2〜3秒下がらずにキープしてくれ、それが安心できるポイントでした。
というコメントから、彼女もブレーキホールド機能の便利さを実感したようです。
さらに、MT車に乗るとクルマの性能や個性がより濃厚に味わえるメリットについても再認識。
以前乗ったホンダ「N-ONE」は「RS」グレードだったこともあり、走りは軽快プラスキビっとしていてハンドルには少ししっかりとした感覚がありました。今回の新型「スイフト」の走りは、軽快さプラスやさしさがあり、ハンドルは安心感のある軽さでした。また、見慣れたサイズ感なので、久しぶりのMT車でもクルマの大きさを心配することなく運転に集中できたので、比較的いつもどおりに近い感覚で運転ができました。運転中の車内はとても静かで快適でした。
クルマそのものの安心感や扱いやすさが印象に残ったようです。
クルマの運転により深く向き合うことにより、タイヤのグリップ感など、ミッションの操作とは関係のない部分の感覚もよりしっかり味わえるようになります
最近のATも性能やフィーリング面で不満を感じることはありませんが、やはり「クルマとの一体感」では今もなおMTのほうがより濃厚に感じられます
本人としては「もっとスムーズに変速できるようになりたい!」との思いが前回以上に強まった様子ですが、MTの変速操作は、何十年やってもすべての操作を100%完璧にできると言い切れる人はいないものなので、そこは過度に気にせず、どんどん慣れてほしいと思います。
より深く運転操作に向き合えることで、クルマそのものの性能や個性もより味わえる。つまり、クルマのことはさらに好きになれるのがMTの魅力です。
この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。
写真:島村栄二