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フォルクスワーゲンが「ティグアン」「ゴルフ」など新型を一挙発表!輸入車市場トップを狙う

フォルクスワーゲンジャパンは、2024年後半から日本で発売される5台の新型車を発表した。具体的には、クロスオーバーSUVの「ティグアン」とステーションワゴンの「パサート」がフルモデルチェンジ。コンパクトSUVの「T-CROSS」と、ハッチバックの「ゴルフ」、ステーションワゴンの「ゴルフヴァリアント」がマイナーチェンジされる予定だ。

当記事では、これら新型車の内外装やパワートレインなどの詳細のほか、導入時期のスケジュールなどについてもお伝えしたい。

フォルクスワーゲンは2024年後半から発売される新型車を一斉に発表した

フォルクスワーゲンは2024年後半から発売される新型車を一斉に発表した

「T-Cross」は追加装備で実質値下げのグレードも

まずは、マイナーチェンジされる「T- Cross」から。2024年7月6日から予約注文がすでに始まっており、同年9月末の出荷開始とともに、ショールームで実車を見ることも可能になる。

「T-Cross」は、2019年に全世界で発売されたのち、5年で世界累計120万台を超えるヒット車となった。日本においても、3年連続で輸入SUV登録台数ナンバーワンを記録している。

人気となっている最大の理由は、コンパクトで扱いやすいボディサイズと豊富なカラーバリエーションにあると言う。ちなみに、マイナーチェンジ後のボディサイズは、全長4,140mm(先代比+25mm)、全幅1,760mm、全高1,575mm(同-5mm)、ホイールベースは2,550mm(いずれもTSI Active、TSI Styleの数値)と、先代から全長は少し伸びたものの、それほど変わっていない。

エクステリアは、水平基調のLEDマトリクスヘッドライト「IQ. LIGHT」が新たに採用されたことに注目だ。ヘッドライトに搭載されている複数のLEDライトが、周囲の状況を検知して配光をコントロール。対向車の眩惑などを避けながら、前方を明るく照射してくれて、夜間走行時の安全性を高めてくれる。

また、リアにはX型に光る3Dデザインのリヤコンビネーションランプが新たに用いられるなど、新鮮さを感じさせるエクステリアデザインが採用されている。

ボディカラー数は全8色と変わらないのだが、グレープイエロー、クリアブルーメタリック、キングズレッドメタリックを新たにラインアップすることで、さらに個性あるカラーバリエーションとなった。

「T-Cross」のフロント、リアエクステリア。ボディカラーは、新色の「クリアブルーメタリック」

「T-Cross」のフロント、リアエクステリア。ボディカラーは、新色の「クリアブルーメタリック」

また、インテリアの質感も向上している。「beatsサウンドシステム」と呼ばれるプレミアムサウンドシステムがStyleとR-Lineにオプション設定されているほか、ダッシュボードは細部まで高い質感を追求したソフト素材を採用。シートヒーターも、StyleとR-Lineへ新たに標準装備された。

「T-Cross」のインテリア。ダッシュボードにソフトパッドが採用されるなどによって、質感が高められている

「T-Cross」のインテリア。ダッシュボードにソフトパッドが採用されるなどによって、質感が高められている

安全運転支援システムは、同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist」が全グレードに標準装備されている。

■新型「T-Cross」のグレードラインアップと価格
TSI Active:3,299,000円
TSI Style: 3,599,000円
TSI R-Line:3,895,000円
※価格はすべて税込

価格は、エントリーグレードの「TSI Active」が329万9,000円、「TSI Style」が359万9,000円、トップグレードの「TSI R-Line」が389万5,000円。「TSI Active」には、ハイビームアシストやトラベルアシストが搭載され、「TSI Style」には「IQ. LIGHT」などが追加されているので車両本体価格は若干上がっているものの、装備代を含めると実質的には値下げになる。「TSI R-Line」は、車両本体価格も399万8,000円から10万円値下げされたうえに、「IQ. LIGHT」などが追加されている。ただし、「Park Assist」と「Side Assist Plus」については、オプション設定に切り替えられていることに注意したい。

内外装を刷新して人気のパワートレインを採用した「ティグアン」

次は、3代目にフルモデルチェンジされる「ティグアン」だ。2024年9月から予約受付が開始され、同年11月以降に出荷開始の予定と言う。価格については、現在本社との交渉中とのことで明かされていない。

「ティグアン」は、力強いデザイン性や高い安全性、そして荷室の広さなどのユーティリティ性など、機能性の高さが高く評価されているSUVだ。2019年には、クリーンディーゼルのTDIと四輪駆動の4MOTIONを組み合わせたパワートレインを導入したところ、非常に好評だったという。

そこで、新型ではTDI 4MOTIONを復活。また、「ティグアン」初となる48Vマイルドハイブリッドシステムを採用した1.5Lエンジンがラインアップ(FFのみの設定)されるのも、大きなトピックのひとつになる。

エクステリアは、先代で好評だったSUVらしい力強さが踏襲されるとともに、フロントフードの高さをアップ。いっぽう、空力にも気を配り、先代のCd値0.33から0.28へと向上させて、燃費や静粛性に貢献する。

「ティグアン」のフロント、リアエクステリア。先代から外観デザインが刷新されており、ヘッドライトやグリル、テールランプなどはより直線基調の強いデザインとなっている

「ティグアン」のフロント、リアエクステリア。先代から外観デザインが刷新されており、ヘッドライトやグリル、テールランプなどはより直線基調の強いデザインとなっている

センターコンソールに配された「ドライビングエクスペリエンスコントロール」(全グレードに標準装備)は、オーディオの音量などのほかドライブモードにもダイレクトにアクセスでき、かつ直感的に操作できる機構という

センターコンソールに配された「ドライビングエクスペリエンスコントロール」(全グレードに標準装備)は、オーディオの音量などのほかドライブモードにもダイレクトにアクセスでき、かつ直感的に操作できる機構という

ボディサイズは先代とほぼ同一ながら、ラゲッジスペースは37L拡大されて652Lになった(後席を倒した際には最大1,650Lと、1,655Lからやや減少)

ボディサイズは先代とほぼ同一ながら、ラゲッジスペースは37L拡大されて652Lになった(後席を倒した際には最大1,650Lと、1,655Lからやや減少)

従来モデルから設定されていた「LED マトリックスヘッドライト」は、さらに進化した「IQ. LIGHT HD」をEleganceとR-Lineに標準装備。片側 19,200 個の高精細なマルチピクセル LED を搭載し、従来よりも細かな制御が可能になった。

また、今回のフルモデルチェンジによって、プラットフォームがこれまでの「MQBアーキテクチャー」から「MQB evoアーキテクチャー」へと進化。それにより、アダプティブシャシーコントロールの「DCC」が「DCC Pro」となっている。これまでは、1バルブのショックアブソーバーだったが、伸び側、縮み側が独立したオイル回路の2バルブ方式となったことで、従来の機構では不可能だった別々の減衰力をコントロール可能としている。結果として、より緻密な制御が可能になり、乗り心地や走行安定性が向上しているという。

エンジンラインアップを変更しインフォテインメントを強化した「ゴルフ」

マイナーチェンジされる「ゴルフ」「ゴルフヴァリアント」は、いわば8.5世代と言える。日本への導入は2024年9月ごろから予約受付が開始され、2025年1月に正式に発表される見込みだ。価格については、「ティグアン」と同様に現在本社と交渉中とのことだった。

今年で50周年を迎える「ゴルフ」は、1974年に発表。ジョルジェット・ジウジアーロのデザインによる初代は、コンパクトハッチバックのスタンダードとして瞬く間に市場に浸透し、現在にいたっている。これまで、全世界の累計販売台数は3,700万台以上、日本においても100万台を超える販売台数を記録している。

新型は、内外装デザイン、デジタルインターフェイス、そしてパワートレインがポイントになる。

エクステリアは、最新のライティングテクノロジーに注目したい。マトリクスLEDの「IQ. LIGHT」は、最長照射距離500mを誇るハイパフォーマンスメインビームを搭載。また、日本へ導入されるフォルクスワーゲン車としては初となる、イルミネーション付きのエンブレムも特徴的だ。

「ゴルフ」GTIグレードのフロント、リアエクステリア。フロントのイルミネーション付フォルクスワーゲンエンブレムは、日本初採用のものだ

「ゴルフ」GTIグレードのフロント、リアエクステリア。フロントのイルミネーション付フォルクスワーゲンエンブレムは、日本初採用のものだ

インテリアは、新世代のデジタルインターフェイスが採用されている。「MIB4」と呼ばれるそれは、12.9インチのタッチスクリーンを生かすように設計。さらに、ユーザーインターフェイスも新しいものとなった。温度調整などが行えるタッチスライダーは、バックライトが設けられるなどで夜間の視認性が向上している。

「ゴルフ」GTIグレードのインテリア

「ゴルフ」GTIグレードのインテリア

また、「MIB4」には「IDA(アイダ)ボイスアシスタント」と呼ばれる、音声による操作機能が搭載されている。インフォテインメントやエアコンなど、多くの車両機能を声でコントロールができるようになった。ちなみに、デフォルトでは「Hello, IDA(ハロー・アイダ)」もしくは「Hello, Volkswagen」で起動するが、起動コマンドは任意の言葉に変更が可能だ。

パワートレインは、これまでActiveグレードにあった1.0L eTSIエンジンが廃された。その代わり、2種類の出力を持つ1.5L eTSI 48V マイルドハイブリッドシステム(85kW/116PS または 110kW/150PS)と、2.0L TDI クリーンディーゼルエンジン。そして、GTIには2.0L TSI 195kW/265PS エンジンがラインアップされる予定だ。

9年ぶりにフルモデルチェンジされる「パサート」

フルモデルチェンジされる「パサート」は、初代から現在まで、世界累計で3,400万台が販売されているフォルクスワーゲンの基幹車種だ。新型は、本国と同様にセダンが廃止され、ステーションワゴンのみとなった。

予約受付は、2024年9月に開始。出荷開始日は、「ティグアン」より若干遅れて2024年11月下旬〜12月初旬あたりになりそうだ。

およそ9年ぶりにフルモデルチェンジされる「パサート」。フロントフェイスは「ゴルフ」に近いデザインとなり、一文字のテールランプも特徴的だ

およそ9年ぶりにフルモデルチェンジされる「パサート」。フロントフェイスは「ゴルフ」に近いデザインとなり、一文字のテールランプも特徴的だ

日本には、1.5Lガソリンエンジンを組み合わせた48Vマイルドハイブリッドの「eTSI」(FWD)と、2Lディーゼルエンジンの「TDI」(四駆の4MOTIONのみ)。そして、初のプラグインハイブリッドモデル「eHybrid」が導入される。

「eHybrid」 は、「eTSI」をベースにやや低い圧縮比など細かなチューニングを施し、システム総合出力は 150kW/350Nm(欧州公表値)を発生。19.7kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載されており、EV走行は120km超(WLTCモード、欧州計測値)を実現しているという。

「パサート」と言えば、室内空間の広さが魅力のひとつだ。50mm長くなったホイールベースによって、キャビンスペースは特に後席が拡大されている

「パサート」と言えば、室内空間の広さが魅力のひとつだ。50mm長くなったホイールベースによって、キャビンスペースは特に後席が拡大されている

全長は130mm長くなった(4,915mm)が、その恩恵がラゲッジルームにも表れている。リアシートを倒した際の積載量は、先代の1,780Lから新型では1,920Lに拡大している(写真はリアシートを立てている状態)

全長は130mm長くなった(4,915mm)が、その恩恵がラゲッジルームにも表れている。リアシートを倒した際の積載量は、先代の1,780Lから新型では1,920Lに拡大している(写真はリアシートを立てている状態)

プラットフォームは、「ティグアン」と同様に「MQBアーキテクチャー」の進化版である「MQB evo アーキテクチャー」を採用。そして、アダプティブシャシーコントロール「DCC」も同様に「DCC Pro」へと大幅な進化を遂げている。「パサート」は、この技術を用いることで、本来相反するダイナミックな走行と快適な乗り心地を高いレベルで両立していると言う。

メルセデス・ベンツを抜いてトップに返り咲きたい

最後に、フォルクスワーゲンジャパンの今後の戦略についてまとめておこう。大きくは、内燃機関モデルと、IDシリーズを中心とした電動化モデルの2つを柱に進めていくという。電気自動車は、電動ミニバンの「ID.BUZZ」と呼ばれるモデルが2025年末に導入予定となっており、「ポロ」に近いボディサイズの「ID.2 ALL」も導入予定と言う。

最後に、フォルクスワーゲンは(T-Crossを除き)価格も決まっていない今の段階で、なぜ多くの新型車の発表に踏み切ったのだろうか。それは、2024年後半に向けて販売攻勢の“のろし”を上げることで、買い替え需要をうながしたいからのようである。「発売を知っていれば、待っていたのに」と言うことを避けたいのがひとつ。そして、もうひとつはあらかじめ告知しておくことで、ある程度の需要を探ろうというのも目的のひとつとしてありそうだ。

フォルクスワーゲンは、近年新型車の発売がほとんどなく、あまり話題にも上っていなかったというのが現状だった。そこで、認知度を一気に引き上げていきたいという目論見だろう。

また、「T-Cross」の価格などを鑑みると、ほかの新型車も大幅な値上げはあまりなさそうと筆者は考えている。このような戦略から見えてくるのは、輸入車市場トップの奪還だ。ここしばらくは、メルセデス・ベンツが単独ブランドでトップを快走している日本の輸入車市場。メルセデス・ベンツの2023年4月〜2024年3月期は約5万1,000台であるのに対して、フォルクスワーゲンはおよそ3万2,000台と差を付けられている。そこで、価格を抑えて魅力的なラインアップを再構築することで、逆転を狙いたいものと考えられる。まずは、「T-Cross」以外の価格がどうなるのかに注目したい。

(写真:価格.comマガジン編集部、フォルクスワーゲンジャパン)

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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