レビュー

2024年秋発売のスズキ新型SUV「フロンクス」に先行試乗!ちょうどよいボディサイズと上質な内外装が魅力

スズキから、新型クロスオーバーSUV「フロンクス」が、2024年秋に発売される。2024年7月中旬時点では、詳細なグレード構成や価格は未定なのだが、販売店では「8月1日になれば、価格などの詳細が明らかになると思う」と言う。

「フロンクス」は、インドで生産、販売されているSUVだ。現地では、「NEXA(ネクサ)」と呼ばれる上級ブランドとして扱われている。

インドでは、全長が4mを下まわると税金が安くなるため、「フロンクス」のボディはコンパクトだ。ボディサイズは、全長が3,995mm、全幅は少しワイドだが1,765mmに収まり、全高も1,550mmとSUVの中では低く、立体駐車場を使いやすい。最小回転半径は4.8mなので、混雑した市街地でも運転しやすいだろう。

スズキ「フロンクス」のフロント、リアエクステリア。ボディカラーは、「セレスティアルブルーパールメタリック」。写真はモノトーンカラーだが、ルーフやピラーがブラックの2トーンカラーもラインアップされる

スズキ「フロンクス」のフロント、リアエクステリア。ボディカラーは、「セレスティアルブルーパールメタリック」。写真はモノトーンカラーだが、ルーフやピラーがブラックの2トーンカラーもラインアップされる

ちなみに、「フロンクス」のほかに立体駐車場が使いやすい高さに全高を抑えたSUVは、マツダの「CX-3」や「CX-30」、レクサスの「UX」や「LBX」など、一部の車種に限られている。そのため、「フロンクス」は貴重な存在とも言えるだろう。インドで生産されている海外向けの車種ではあるが、立体駐車場が多く混雑した日本の道路環境にも適したボディサイズだと思える。

今回は、そんな「フロンクス」を発売前に先行試乗したのでレビューしたい。

質感の高さが随所に感じられる外観デザイン

まず、試乗する前に外観と内装の印象からお伝えしよう。「フロンクス」の外観を実際に見ると、Webサイトに掲載されている写真などよりも質感が高く感じられた。これは、外装パーツの細部に至るまでしっかりと作りこまれているからだろう。

灯火類は、近年のデザインの流行に沿ったシャープなLEDヘッドランプや、一文字のテールランプなどが採用されている

灯火類は、近年のデザインの流行に沿ったシャープなLEDヘッドランプや、一文字のテールランプなどが採用されている

ボディを側面から見ると、ルーフが後方へ向かって下がっていくクーペデザインが採用されている。また、筋肉を表現したたくましい前後フェンダーによって、SUVらしい力強さも表現されている。

ホイールは、閉じた形状のスポークによって堅牢さを表現。タイヤサイズは、16インチ(195/60R16)だ

ホイールは、閉じた形状のスポークによって堅牢さを表現。タイヤサイズは、16インチ(195/60R16)だ

ボルドーやブラック塗装で上質さを感じさせるインテリア

運転席に座って前方を見ると、ボンネットが視界に入り、ボディの先端や車幅がわかりやすい。側方視界は、SUVとしては平均的だが、後方視界はクーペ風の外観デザインを採用しているため、それほど見やすくない。ボディがコンパクトなので、取り回しそのものはしやすいのだが、後方視界は少し見づらいので、気になる方は販売店の試乗車などで確認してみるとよいだろう。

インテリアは、ボルドーの表皮やパールブラック塗装のパーツなどが随所にあしらわれており、質感が高く感じられる。また、助手席前には金属フレームが表現されたシルバー加飾によって、SUVらしい力強さもデザインで表現されている。

メーターはオーソドックスなタイプなので視認性がよく、インパネ中央のディスプレイも見やすい。また、ATレバーは前後にスライドさせる方式で扱いやすく、スイッチ類の操作性も複雑なものは無いので扱いやすいだろう

メーターはオーソドックスなタイプなので視認性がよく、インパネ中央のディスプレイも見やすい。また、ATレバーは前後にスライドさせる方式で扱いやすく、スイッチ類の操作性も複雑なものは無いので扱いやすいだろう

後席が広く座り心地は快適

前席の座り心地は、体重の加わる背もたれの下側や座面のうしろがしっかりと作りこまれているので、長距離を移動するときにも疲れにくいだろう。ただし、座面の左右にあるサポートは、もう少し硬めに仕上げてあるほうがよさそうだ。ワインディングでコーナーを曲がるときに、座面の端が歪んで着座姿勢が崩れやすかったからだ。

ヘッドレストやショルダー周りなどにボルドー色が用いられており、高級感のあるフロントシート

ヘッドレストやショルダー周りなどにボルドー色が用いられており、高級感のあるフロントシート

後席は、全長が4m以下のSUVとしては足元空間が広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ分だ。全長が約500mm長い「カローラクロス」などに相当する。「フロンクス」は、全高が1,550mmと低く、頭上空間はSUVとしては少し狭めだが、それでも握りコブシが半分程度は収まるので、4名乗車でも窮屈ではないだろう。また、後席は座り心地が快適だ。背もたれは角度が少し立っているものの、座面にボリューム感があるので座り心地がよい。インドでは、「フロンクス」は上級ブランドとして扱われているため、後席に座る機会も多いことが想定されている。そのため、後席の居住性を考慮した開発がなされている。

リアシートもフロントシートと同様にボルドー色の表皮が用いられている

リアシートもフロントシートと同様にボルドー色の表皮が用いられている

ひとつ注意したいのが、後席の乗降性だ。前席は問題ないのだが、後席は天井が低く、後方へ向けてルーフを下降させているデザインなので、乗り降りの際には頭を下げることになる。もし、後席に座る機会の多い同乗者の身長が高いようなら、気を付けたいところだ。

「フロンクス」は、全長が4m以下で、さらに後席の足元空間を広く確保しているので、荷室の床面積についてはそれほど広くはない。荷室の天井も低めで、リヤゲートを寝かせているので背の高い荷物も積みにくい。したがって、SUVとしての積載性は低めなのだが、コンパクトな5ドアハッチバックと同等の実用性を備えている。リヤゲートの角度を寝かせているので、ヒンジが前寄りに装着されているため、縦列駐車のような狭いスペースでも開閉できる。

「フロンクス」のラゲッジルーム。リアシートを寝かせると少し傾斜ができるもののフラットになる

「フロンクス」のラゲッジルーム。リアシートを寝かせると少し傾斜ができるもののフラットになる

クルマとの一体感が得られて運転が楽しくなる

今回は、「フロンクス」でコーナーが連続するクローズドコースを試乗した。

全高が1,550mmに抑えられていることもあって、SUVの割に重心が低く、走行安定性が高い。また、クルマの向きがステアリング操舵に対して、正確に変わっていく。たとえば、先がきつく回り込んでいるようなブラインドコーナーであっても外へ膨らみにくく、狙った位置をトレースしながら走ってくれる。また、走りが不安定になりがちな下りコーナーでも、後輪がしっかりと踏ん張ってくれるので安心感を覚える。

「フロンクス」は、ドライバーとの一体感が感じられて運転の楽しさが味わえるクルマだ

「フロンクス」は、ドライバーとの一体感が感じられて運転の楽しさが味わえるクルマだ

1.5L直列4気筒エンジンにマイルドハイブリッドシステムと6速ATを搭載しながら、車量を1,070kgに抑えたことも、「フロンクス」の走行安定性がすぐれている理由のひとつだ。

エンジン性能は、最高出力が100PS(6,000rpm)、最大トルクは13.8kg-m(4,400rpm)。パワフルではないものの、実用回転域の駆動力に余裕があって扱いやすいエンジンだ。エンジン特性としては、4,000rpmを超えると加速力が活発になる。ATは、CVTではなく6速の有段式なので、パドルを使うと気持ちよく変速できる。

素直なエンジン特性とすぐれた走行安定性によって、パワフルではないもののワインディングを楽しく運転できる

素直なエンジン特性とすぐれた走行安定性によって、パワフルではないもののワインディングを楽しく運転できる

「フロンクス」は、走りの満足度は高いのだが、乗り心地については少々硬めだ。路面の細かな凹凸を拾いやすく、段差では相応の突き上げ感があることに注意したい。時速50kmを下まわる低速域では、特に硬さが感じられる。「フロンクス」は燃費を向上させるため、指定空気圧が前輪側は250kPa、後輪側は220kPaと高めに設定されているのも、原因のひとつだ。そのため、たとえば快適性を重視するタイヤに交換して、空気圧を230kPa、210kPa程度に下げれば、乗り心地は改善されるだろう。

質感や運転フィール、使い勝手や安全性をバランスよく両立させている

「フロンクス」の価格については、記事掲載時点では正式に発表されていないのだが、装備を充実させながらもコンパクトなSUVなので、おそらく250万円を少し下まわるくらいの価格ではないかと筆者は予想する。ライバル車は、NAガソリンエンジンを搭載するコンパクトSUVのホンダ「WR-V Z+」(248万9,300円)や、トヨタ「ヤリスクロス Z」(243万5,000円)などだろう。

「フロンクス」は、「WR-V」に比べるとボディが小さく、後席の広さや荷室容量は下まわる。その代わり、内装が上質で、動力性能にも余裕を持たせている。つまり、実用重視なら「WR-V」、趣味性や質感も大切に考えるなら「フロンクス」という選択になるだろう。

「ヤリスクロス」も「フロンクス」に近いクルマなのだが、後席の狭さがネックだ。身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先空間は、「ヤリスクロス」は握りコブシ1つ半に留まる。「フロンクス」は2つ分、「WR-V」は2つ半なので、それらに比べると「ヤリスクロス」の後席は少し窮屈だ。また、運転感覚も異なる。「フロンクス」は、高速道路などの直進性を含めた走行安定性において勝っている。その代わり、「ヤリスクロス」はクルマの動きが機敏なので、都市部や市街地などをひんぱんに走るのには向いている。軽快さを求めるなら「ヤリスクロス」、広くて快適な居住空間と落ち着いた運転感覚を味わうなら「フロンクス」になるだろう。

「フロンクス」は、先進安全技術も進化している。衝突被害軽減ブレーキは、右左折時にも作動するタイプで、車間距離を自動制御できる運転支援機能は、先行車に続いて追従停車した後も、電動パーキングブレーキを自動的に作動させて停車状態を継続できるものだ。

「フロンクス」は、内外装の質感の高さ、楽しさを味わえる運転フィール、安心感の高い走行安定性や先進の安全装備などをバランスよく両立させることで、選ぶ価値の高いクロスオーバーSUVへと仕上げられていると言えるだろう。

渡辺陽一郎
Writer
渡辺陽一郎
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト
記事一覧へ
桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×