“弾丸”試乗レポート
【弾丸試乗レポート 第57回】クラス王者の「セレナ」をついにとらえた!

新型「ノア」&「ヴォクシー」販売絶好調の理由とは?

2014年1月20日より、トヨタの人気ミニバン「ノア」と「ヴォクシー」の新型モデルが発売となった。発売以降、驚異的な売り上げを記録している、この兄弟車の魅力に迫るため、モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏が、試乗と開発者インタビューを行った。その様子をレポートしよう。

発売以降、販売好調の新型「ノア」と「ヴォクシー」。パワートレインは、どちらもハイブリッドと2リッターのガソリン・エンジンを用意する。ハイブリッド車はFFの7人乗り、ガソリン車はFFと4WDがあり、7人乗りと8人乗りがラインアップされる。写真は「ノア」のハイブリッド車

ライバルとの熾烈なシェア争いを展開する5ナンバー枠ミニバンたち

フルモデルチェンジで3代目に進化したトヨタの「ノア」と「ヴォクシー」。このモデルが属する5ナンバー枠のボックス型3列シートのミニバンは、月間2万台をコンスタントに売り続ける堅調なマーケットだ。その2万台の枠を、トヨタ「ノア」、「ヴォクシー」、日産「セレナ」、ホンダ「ステップワゴン」、マツダ「ビアンテ」という面々が奪い合ってきた。ここ最近のマーケットの勝者は、日産の「セレナ」であり、つい最近も日産から「『セレナ』が、6年連続で年間のミニバン国内販売台数ナンバーワンを獲得」というリリースが出されたばかりだ。それに対して、トヨタは「『ノア』と『ヴォクシー』を合計すると、うちがナンバー1だ」と主張していたが、2013年は2台の合計でも「セレナ」に届かない状況になってしまった。

しかし、新型のモデルチェンジを経て、「ノア」と「ヴォクシー」の反撃が始まった。なんと、発売1か月で、目標の8,000台の7倍以上となる約61,000台もの受注を獲得。車名別販売ランキングでも2014年3月に「ヴォクシー」が6位を獲得し、8位の「セレナ」を上回ったのだ。

ミニバンの王道を行く堂々としたデザインで、ラグジュアリー感を漂わせる「ノア」

ミニバンの王道を行く堂々としたデザインで、ラグジュアリー感を漂わせる「ノア」

取り扱いはトヨタカローラ店となる

取り扱いはトヨタカローラ店となる

スポーティーな雰囲気の「ヴォクシー」は、“毒気”のあるカッコよさと力強さが表現されている

スポーティーな雰囲気の「ヴォクシー」は、“毒気”のあるカッコよさと力強さが表現されている

取り扱いはネッツ店

取り扱いはネッツ店

低床フロアの採用など優れたパッケージングで広く使いやすい空間を創造

それではライバルを凌駕した新型「ノア」と新型「ヴォクシー」のアウトラインを見ていこう。開発のコンセプトは「Spacious FUN Box 家族の夢を丸ごと載せるFUN、Utility、Nenpiの良いハコ」というもの。運転が楽しく、快適で広い室内、使い勝手のよさ、エコ性能をすべて備えたスペースミニバンだというのだ。

セリングポイントは3点。ハコとしての使いやすさとエモーショナルさを印象づけるデザイン。新開発した低床フラットフロアが提供する広い室内と乗降性のよさ。そして、クラス初となる本格ハイブリッドの導入と燃費性能を向上させたガソリン車によるエコ性能だ。

つまり、格好よくて、使いやすくて、燃費がよい、というもの。ミニバン・ユーザーのニーズを外さないことが、好調な初期受注を生んだ理由といえるだろう。ちなみに、初期受注約61,000台のうち、ハイブリッド車は約23,000台。2リッターガソリンエンジン車のFFモデルが218万円〜260万円なのに対して、ハイブリッド車は285万円〜297万円と高額な価格設定でありながらも、3分の1以上のシェアを獲得したことは、現在のガソリン価格高騰や燃費性能を背景とした、ハイブリッド人気の高さの表れといえるだろう。

セリングポイントの筆頭であるデザインは、「ノア」が「ミニバンの王道をゆく堂々感」、「ヴォクシー」は「毒気のあるカッコよさ」をそれぞれに表現しているという。どちらも、なるべく大きく力強いハコであることをアピールしている。実際に、全幅は先代モデルと同様ながら、全長は先代モデルよりも100mm拡大して大きくなっている。

全長を100mm伸ばした分だけ、2列目シートと3列目シートの膝まわり空間を拡大。なんと、サードシートでは従来型比で+100mmも膝まわりが広くなっているのだ。また、プラットフォームを低くフラットなものにすることで、全高を25mm下げながらも、室内空間の高さを60mmも拡大。クラストップの車内高1,400mmを実現している。さらに、車幅は先代モデルと同じでありながらも、荷室幅(3列目シートを跳ね上げた状態での荷室の幅)は先代から+200mmとなる1,100mmとしている。2列目シートと3列目シートの居住性が拡大するだけでなく、荷室も広くなっているのだ。

また、低くフラットなフロアとしたことで、路面から室内床までの段差も小さくなった。スライドドアの乗り込み口の段差360mmはクラス最小。さらに。スライドドアのスライド幅をクラストップの805mmに拡大した。低いステップと広い開口部によって、優れた乗降性を手に入れているのだ。ちなみに、荷室フロアの開口部下端も下げられており、荷物フロアの高さは先代モデルより−60mmの500mmに。これもクラス最小で、荷物の出し入れが容易になっている。

シートは7人乗りと8人乗りの2種類。7人乗りでは、2列目シートに810mmものスライド量を持たせた。これは先代モデル比+300mmで、もちろんクラストップ。めいっぱいシートを下げると、ベビーカーも楽ラク置ける広々スペースを生み出すことができるのだ。8人乗りでも、2列目シートには580mmのロングスライド機構を装備。座面をチップアップして前方へスライドすることで、広い荷室空間を作り出すこともできる。

7人乗りは2列目シートに左右独立型のキャプテンシートを採用。810mmもの前後スライドが可能なことに加え、横移動も可能となる

8人乗りの2列目は、中央に収納式アームレストを装備したベンチシートが採用される。ベンチシートは6:4分割可倒式で、580mmのスライドに対応

2列目を前方へスライドさせ、3列目を両サイドへ跳ね上げると、ご覧のような広大な空間が出現する。全長や室内高の拡大、低床フラットフロアによる恩恵は大きく、先代モデル以上に使い方の幅が広がった

パワートレインは1.8リッターのハイブリッドと2リッターのガソリン・エンジンの2種類。ハイブリッド・ユニットは、「プリウスα」のものを流用、チューニングして使用している。システム合計出力は100kW(136馬力)で、JC08モード燃費は23.8km/lを達成。二次電池のニッケル水素電池はフロントシート下に納めることで、居住性や荷室スペースへの影響をゼロとしている。2リッターのガソリン・エンジン車には新開発のSuper CVT-iを組み合わせた。トヨタの持つCVTで、もっとももワイドな変速比を持つ新型CVTと、アイドリングストップ機能などにより、ガソリン車でもJC08モード燃費は16.0km/lを達成した。さらに4WDモデルでも15.0km/lというすぐれた数値を実現しているのだ。

ハイブリッド・モデルは、1.8リッターの73kW(99馬力)/142Nmのエンジンと、60kW(82馬力)/207Nmのモーターを組み合わせたハイブリッド・システムを搭載する。システム合計出力は100kW(136馬力)。JC08モード燃費は23.8km/l

採用されるハイブリッド・システムは「プリウスα」のものをベースとする。広い室内空間とラゲッジスペースを実現させるため、モーターはフロントシートの下に収納した

ミニバンにフィットするハイブリッドのメリット

続いて、試乗してのインプレッションを紹介しよう。まずは「ノア」のハイブリッド・モデルから乗り込んでみた。ドライバーズシートに座って感じるのは、視界の広さだ。メーターフードが下げられているだけでなく、両サイドのボディのベルトラインも下げられている。フロントピラーも先代よりも30mm細くなり、三角窓も広くなっている。広々とした視界が確保されれば、大きな車体のクルマを運転するという不安が軽減されることだろう。

インテリアデザインはモダンな印象だ。コンソール中央にあるカーナビは8型ワイド。十分に大きいけれど、オプションには9型ナビまで用意されているというから驚く。ナビ画面の上にあるカラーのマルチインフォメーションディスプレイも、新世代のクルマという印象を強める。

ツートンとなったモダンなインパネ周り。グレードによっては黒一色も用意される。コンソール中央には8型ワイドの大型のカーナビが装備され、その上部に、4.2型カラーのマルチインフォメーションディスプレイが設置される

ハイブリッド・モデルのセンターメーターは、オプティトロン式で視認性にすぐれている。スピードメーターの左には、ハイブリッドの用のパワーメーターを装備する

試乗した「ノア」のハイブリッド・モデルには、センターコンソールトレイに置くだけ充電「Qi(チー)」が標準装備されていた。スマートフォンをはじめ、携帯電話、デジカメなどの充電がケーブルレスでできるので非常に便利だ

走り出しはハイブリッドならではのEVモード。スッと静かな動きに合わせて、アクセルを踏み込んでいくとエンジンが始動するが、その切り替えは非常にスムーズで音量も小さい。そして、加速感の力強さは意外なほどであった。静かでスムーズ、そして力強い印象は、速度域を上げても変わらない。エンジンとモーター駆動をこまめに切り替えながら走るのはトヨタのハイブリッド・システムの常であり、「プリウス」などでは、主体的な運転をしたいドライバーの意思と、クルマとの動きに若干の乖離があり、違和感を覚えることもあった。しかし、エンジン音の遮断を熱心に実施したであろう、今回の「ノア ハイブリッド」では、エンジンとモーターの切り替えに対する違和感はほとんどない。それよりも、モーター・アシストのある力強い加速や、トヨタのハイブリッドらしいスムーズさ、静かさといったメリットのほうを強く感じることができた。

マルチインフォメーションディスプレイには、ハイブリッド・システムのエネルギーモニターをはじめ、エアコンの設定や時計など、さまざまな情報が表示される。「ノア ハイブリッド」はエンジンとモーターの切り替えが非常にスムーズで、違和感を覚えることなく快適なドライブが楽しめた

さらに、今回の試乗の印象をよくしたのがクルマ本来の動きだ。グラリと倒れるような不安な動きがないだけでなく、路面の段差などによる突き上も上手にいなされている。直進性能も良好で、ハンドルを握っていて不安を感じることがほとんどない。これは、違和感のないパワートレインと、素直で安心感の高いハンドリングのおかげだろう。

その走りの好印象は、ガソリン・エンジンを搭載する「ヴォクシー」に乗り換えても変わらない。ハイブリッドと比べるとエンジンの振動が存在するだけ、ガソリン・エンジン車の静粛性は不利だ。またモーター・アシストが存在しないためトルク感も、もうひとつ細い。しかし、アクセルを踏み込んでエンジンを快活に回したときの元気さは、ガソリン車のほうが上。高速道路など、速度域の高いところでは、ガソリン車の方がキビキビと走るだろう。どちらがよい悪いというよりも、キャラクターの違いと見るべきだ。

競争の激しい5ナンバー枠3列シートミニバンの戦いを勝ち抜くために、「見た目のよさ/広い室内/燃費のよさ」でライバルに勝る! という高い理想を掲げて進化した「ノア」と「ヴォクシー」。しかも、実際にハンドルを握れば、安心感の高い、ハイレベルな走りを披露してくれるのだ。これなら、冒頭で触れた驚異的な販売台数も当然の内容と言えるだろう。あえて注文をつけるとすれば、今どきは、軽自動車にも採用されている衝突被害軽減自動ブレーキの設定がないことくらい。その1点だけが、新型「ノア」と「ヴォクシー」の欠点ではないだろうか。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン「動画」まとめページ
ページトップへ戻る