“弾丸”試乗レポート
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雪上・氷上で驚きの走りを見せた! 日産「ノートe-POWER」と「リーフ」の意外な実力

厳寒の長野において日産の試乗会が開催された。雪や氷の上で日産車を走らせ、その走行安定性能や操縦性能を体感するというのが目的。厳しい環境と路面で特に、意外なポテンシャルを発揮したのが2台のモーター駆動車だ。その実力をモータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

日産が毎年行っている氷上試乗会。今年は、「ノート e-POWER」と「リーフ」という、日産を代表するモーター駆動車が予想外の実力を披露したのだ

路面状況が悪いほどクルマ本来の姿が見えてくる

外気温はマイナス。日陰の峠道を走ると車内の外気温計にはマイナス7℃が表示される。日産氷上雪上試乗会の会場となったのはそんな長野県・蓼科のワインディングと凍結した女神湖の湖上の特設コースだ。白樺林を切り裂くように伸びるワインディングは、路面だけでなく周囲も真っ白。交通量の少ない裏通りの道はザクザクと凍っており、意外と走りやすいが、逆に交通量の多い表通りは、溶けた雪が凍ったアイスバーンがちらほら。同じ雪道とはいえ、路面グリップには注意が必要だ。いっぽうで凍結した女神湖の特設コースは、恐ろしいほど滑る。しかも何度も走り込むことで、氷は磨かれ、さらにツルツル。一度、コース上でクルマから降りてみると、あまりの滑りやすさに、歩くどころか立っているのがやっとというほど。最新のスタッドレスタイヤも、これほどの低ミューは想定外だろう。

そうした足場の悪い状況でクルマを走らせるのは、そのクルマ本来の姿を見たいからというのが理由だ。実のところ、最新のタイヤの性能は素晴らしく、路面状況が悪いと、重量バランスのいびつさやサスペンションの動きの悪さなど、クルマの欠点もある程度はカバーできてしまったりする。しかし、雪道や氷上といった、極端なまでにグリップの悪いところでは、あまりタイヤの働きに頼ることができない。だからこそ、氷上や雪上での試乗会が開催されるのだ。

長野県・蓼科のワインディングと女神湖の湖上の特設コースを使った試乗メニュー。特に、女神湖の湖上コースは、立っているのがやっとなほどのツルツルのコンディションだ

雪のワインディングで「リーフ」が大健闘

まず、雪のワインディングを「Xトレイル」で走り出す。さすがSUVだけあって、確かなトラクション性能にフラットな乗り心地。全体に動きがゆったりとしており、雪道でもナーバスにならずに走ることができた。
続いてEVである「リーフ」に乗り換える。個人的には、厳寒地にリーフは不利だと思う。暖房に電力を食われるし、電池を保温する必要もある。そうした走りとは関係ない部分に電力を振り分けざるを得なくなれば、その分、航続距離が減ってしまうからだ。
ところが、走り出してみるとリーフが意外なまでに雪道を得意とすることに気づいた。まず、トラクション性能がいい。FFなので、4WDのXトレイルと比べれば、タイヤはスリップするのだが、それでもグイグイと車体を加速させる。上り坂でも、なんの不満もない。

リーフは重量級かつ低重心を生かし、雪道を力強く加速する。FF駆動車が不利なはずの雪の上り坂さえ、ものともせずに走り抜けた

「e-ペダル」によるワンペダル走行も雪道走行で非常に便利だった。e-ペダルは、アクセルペダルを戻したときに、強い減速G(回生ブレーキ)が発生するのが特徴だ。そのため、アクセル操作ひとつで、加速から減速〜停止までが可能となる。また、加速から減速に転じるときに、ペダルを踏みかえる必要がない。一瞬で加速から減速、逆に減速から加速と操作することができる。これが雪道で役に立つ。通常のクルマならば、ペダルを踏みかえている最中は加速も減速もなく、いわばクルマが滑走している状態になる。その一瞬は、クルマが不安定なコントロールの外にあることを意味する。ところがe-ペダルならば、その不安定な一瞬がないのだ。さらに、リーフは、車体の下に重い二次電池を搭載するため、重心が低い。そのため前後輪がズルズルと滑るという状況でも扱いやすいのだ。ぐらりとロールして、その後に急に滑り出すような突飛な動きをしない。動きが予測しやすく、カウンターステアひとつで姿勢を戻すのも楽。予想外の雪道での走りのよさを見せてくれたのだ。

電動パワートレインは氷上でもすぐれた走りを見せてくれた

雪道走行の後は氷上での走行だ。凍った女神湖に雪を使ってコースを作る。周回路、定常円、スラロームという3種のコースを、「Xトレイル」、「ノートe-POWER」、「GT-R」、「スカイライン」、「ジューク(4WD)」、「リーフ」の各車種で走った。
完全なるアイスバーンの上ということで、SUVであり4WDであるXトレイルもジュークも、そうやすやすとは走ることができない。しっかりと前輪に荷重をかけて、じっくりとステアリングを切らなければ、コース内に留まることさえ難しい。
驚かされたのはGT-Rであった。雪道や氷道に最も遠い存在のようであるが、意外と狙ったとおりに走らせることができる。ありあまるパワーゆえに、盛大にホイールスピンして、なかなか加速しないが、それでもドライバーの意思の通りにクルマの向きを変える。スポーツカーとしてのすぐれた重量バランスやサスペンションといった資質と熟成された駆動システムのおかげだ。いっぽう、ヘビー級でパワフルな後輪駆動車であるスカイラインは、このようなシチュエーションがつらい。コントロールはできるけれど、本当にゆっくりとしか走れないのだ。

氷上のテストコースは磨きこまれたツルツルのアイスバーンだったので、4WDのXトレイルでも、コースアウトせずに走りきるのはなかなか難しい

大パワー車は氷上走行では不利になりやすいが、GT-Rはホイールスピンこそ見せるものの、高い操縦性を発揮した

加速と減速をアクセルワークだけで行えるノート e-POWERは、無駄な滑走を抑えられるので氷上走行の安定性にすぐれる

そして、ここでも意外な走りを見せてくれたのがノートe-POWERとリーフという、2台のモーター駆動車だ。軽量なノートe-POWERはGT-Rにも負けない勢いで元気に加速してゆく。日産のモーターのトルク制御は1秒あたり1万回という単位だという。内燃機関には到底望めないその緻密な制御によって、滑りやすい氷上で抜群のトラクションを発揮したのだ。さらにリーフは低重心。しかもリーフのeペダルは減速時に、後輪のブレーキまで併用している。その結果、リーフは加速がよいだけでなく、コーナーワークにもすぐれていた。スカイラインどころか、GT-Rさえ上回る自在さで、氷上を駆け巡ったのだ。厳寒の氷上という厳しい環境で見せたリーフの実力は、予想以上に高いものであった。

この雪上・氷上性能はとても魅力的だ。モーター駆動車を雪上・氷上性能の点から注目することはこれまでほとんどなかったが、今回の試乗では、モーター駆動車の予想もしなかった潜在能力と明るい未来を予感させるに十分なものだった。

低重心かつ、電子制御ならではの緻密なトルクコントロールを行うリーフは、GT-Rを上回る氷上走行の安定性を見せ付けた

ノート e-POWERの氷上走行性能もリーフに負けていない。立っているのもやっとな氷上コースを勢いよく走り回った

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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