“弾丸”試乗レポート
ワゴンらしい機能性と落ち着いたドライブフィールが特徴

サイズとプレミアム度がアップした「MINIクラブマン」は異色のMINI?

2015年9月25日より、小型ステーションワゴン「MINIクラブマン」の新型モデルが発売開始となった。新しいMINIクラブマンは、どのようなクルマなのか? モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

シリーズのアイデンティティを維持しつつ利便性を高めた新しい「MINIクラブマン」とはどんな車なのだろうか?

“1台ですべてをまかなえるクルマ”を実現するためにサイズと車格がアップ!

新型のMINIクラブマンが、2015年9月25日から日本での発売が開始となった。9月15日のフランクフルトモーターショーで世界初お披露目されてから、わずか10日後。MINIブランドがいかに日本市場を重視しているかがうかがえるようなスピード感だ。

MINIクラブマンとは、クラシックMINIの時代から存在する派生モデルだ。小さなMINIの後ろに荷室を設けたミニ・クラブマン・エステートとして1969年に誕生。BMW時代のMINIとしては、2007年に最初のモデルが誕生。スタイリッシュさと機能性を融合するシューティングブレークであった。今回のモデルは、その第2世代となる。

新世代となった新型MINIクラブマンの最大の特徴はサイズアップしたことだ。従来のプレミアム・スモール・コンパクトからプレミアム・コンパクトに変更されている。「スモール」がとれたのだ。クラス移行の理由は、「MINIユーザーの6割がクルマを複数台所有している。つまりMINIだけでは不便と考えているユーザーが存在するのでは。そこに対して、これ1台ですべてをまかなえるMINIを用意すればよいのではなかろうか」「MINIのユーザーの約半数が、より大きなクルマからの乗り換え。MINIに、もう少し大きいクルマが存在すれば、新規顧客を開拓できるのでは」とBMWジャパンは説明する。確かに、すでに充実しているMINIのバリエーションを、さらに拡大するにはサイズ拡大という手法もありだろう。

歴代モデルを並べてみると、ボディが大きくなったことがよくわかる

歴代モデルを並べてみると、ボディが大きくなったことがよくわかる

実際のサイズアップは、旧型と比べて全長で290mm、全幅を115mm、全高を30mm拡大。全長4270×全幅1800×全高1470mmとなっている。これはVWゴルフとほとんど変わらない寸法だ。ボディ拡大にあわせて、従来は2+1という左右で異なる数のドアであったのを、オーソドックスな5ドアに改められている。サイズアップは、2シリーズのFFプラットフォームを流用することで実現している。

旧型と比較して290mmも長くなった全長。ワゴンとして実用的サイズに落ち着いた

旧型と比較して290mmも長くなった全長。ワゴンとして実用的サイズに落ち着いた

ボディのサイズアップに伴い、従来は左右で異なる2+1枚のドアだったが、一般的な4枚ドアに改められた

ボディのサイズアップに伴い、従来は左右で異なる2+1枚のドアだったが、一般的な4枚ドアに改められた

ちなみに搭載されるエンジンも2シリーズと同じ。1.5リッター3気筒ターボと2リッター4気筒ターボの2種類が用意された。1.5リッターがベーシックなMINIクーパー・クラブマン(344万円)で、2リッターが上級のMINIクーパーS・クラブマン(384万円)となる。

1.5リッターのユニットは、最高出力100kW(136PS)/ 4400rpm、最大トルク220Nm/1250〜4300 rpmで、6速ATと組みあわされて、JC08モード燃費は17.1km/lというスペック。2リッターは、141kW(192PS)/5000rpm、280Nm/1250〜4600rpmでMINI初の8速ATと組み合わされ、JC08モード燃費が16.6km/l。驚くほどの数字ではなく、必要十分といったところだろう。

今回検証したのは1.5リッター3気筒ターボエンジンを備えるベーシックモデルのMINIクーパー・クラブマン

今回検証したのは1.5リッター3気筒ターボエンジンを備えるベーシックモデルのMINIクーパー・クラブマン

従来のMINIのイメージを守りつつも質感をアップ

プラットフォームとパワートレインをBMW2シリーズと同じとしながらも、デザインは従来のMINIそのもの。丸目のライトと六角形のグリルや低くストレートに後方に伸びるルーフといったMINIのアイコン的デザインを踏襲。インテリアもベーシックな3ドアMINIと同じく円形を基調とした。ただし、グルリと車体一周にわたって窓際にクロームのモールが走るようにキラキラとした加飾が目につく。室内にも数多くのクロームパーツが配されている。サイズだけでなく、上質感という意味でも一段上を狙っているのだろう。

ルーフラインなどシルエットでMINIシリーズらしさを演出している

ルーフラインなどシルエットでMINIシリーズらしさを演出している

丸目のライトなどMINIらしさをつかさどるデザインモチーフは積極的に取り入れられている

丸目のライトなどMINIらしさをつかさどるデザインモチーフは積極的に取り入れられている

ハッチゲートのドアハンドルやロゴなどメッキされた部分は多い

ハッチゲートのドアハンドルやロゴなどメッキされた部分は多い

プレミアム感という意味では、装備に凝ったものが数多く用意された。オプションになると価格的にバカにならない8.8インチのワイドカラーディスプレイとナビゲーション・システムは標準装備に。パーキングブレーキは電動になった。ドア・トリム内にはLEDイルミネーションを内蔵。ドアミラー下のLEDライトで、地面にMINIのロゴを照射する仕掛けも。ライティングによりエンターテインメントが楽しめるというわけだ。また、観音開きするリヤのスプリットドアはイージー・オープナー機能を備える。センサーのあるバンパー下に足を入れることで、スプリットドアを自動で開けることができるのだ。

さらに、衝突回避・被害軽減自動ブレーキや駐車のステアリング操作をアシストするパーキング・アシスト、ヘッドアップディスプレイといった先進装備も用意。レザーシート、電動シートといった上級モデルらしい装備も選べる。エントリーカーではなく、プレミアムカーとしての装備が揃っているのだ。

MINIのロゴを照射するギミックも用意されている

MINIのロゴを照射するギミックも用意されている

半透明のディスプレイに情報を投影するヘッドアップディスプレイを搭載可能

半透明のディスプレイに情報を投影するヘッドアップディスプレイを搭載可能

観音開きするリヤのスプリットドアはイージー・オープナー機能を備える

観音開きするリヤのスプリットドアはイージー・オープナー機能を備える

維持されたのはMINIの世界観。変わったのはコンフォート寄りのドライブフィール

続いて、実際のクルマに触れて走らせた印象を報告したい。

写真で見るMINIクラブマンは、従来からあるMINIと、それほど変わらないように思える。しかし、実物は、ワイドで低く、より長い。運転席に座れば、さらにその印象は強くなる。横方向にはたっぷりあるけれど、窓は上下に狭い。黒を基本にした内装色もあるだろう。覗き穴から外をうかがうような気分になる。非常に個性的な雰囲気だ。

3気筒エンジンは振動面で4気筒に不利であるけれど、試乗したMINIクラブマンの1.5リッター・ユニットは、ほとんど不快さを感じさせなかった。試乗直後こそ、「アイドリングで、ちょっとガサガサするな」と思ったけれど、走りだしてしまえば、ほとんど気にならない。信号待ちなどでは、アイドリング・ストップするのも不快さを遠ざける理由だろう。

パワー・フィールはスペックなり。アクセル操作に対するレスポンスはよいけれど、速すぎず遅すぎず、必要十分といったところ。また、MINIシリーズといえばキビキビとした動きが特徴だが、MINIクラブマンの振る舞いは、もう少し鷹揚だ。乗り心地もフラットで、路面の凹凸からのショックをうまくいなしている。ステアリングは、直進状態の座りがよく、微小な操舵にもしっかりと反応する。ドライバーがその気になれば、しっかりと応えてスポーティにも走らせることができるだろう。クルマとドライバーに一体感があり、個人的に好みの味付けだ。

ぱっと見た印象は換わらないが、大型化したボディでコンフォートに振った味付け

ぱっと見た印象は換わらないが、大型化したボディでコンフォートに振った味付け

黒を基調にした内装は、MINIシリーズらしさが色濃く残っている

黒を基調にした内装は、MINIシリーズらしさが色濃く残っている

上下にタイトで左右は広い室内の雰囲気は独特。室内からの眺めは、覗き穴から外を見ている感じがする

上下にタイトで左右は広い室内の雰囲気は独特。室内からの眺めは、覗き穴から外を見ている感じがする

リアシートの居住性は明らかに向上しており、4人がきちんと座れるだけの空間が確保されている

リアシートの居住性は明らかに向上しており、4人がきちんと座れるだけの空間が確保されている

リアシートは40:20:40の分割可倒式がオプションで用意される

リアシートは40:20:40の分割可倒式がオプションで用意される

キビキビとしたフレッシュな走りがMINIのイメージだとすれば、MINIクラブマンは、そのイメージの中で、もっともコンフォートな味付けに振っている。人や荷物をたくさん載せる使命を持つMINIクラブマンとしては、ごく当然な選択だと思う。MINIというルックスを気に入りつつも、コンフォートに走りたいという人におすすめだ。

MINIのルックスとワゴンとしての機能性を両立させている、落ち着いたクルマだ

MINIのルックスとワゴンとしての機能性を両立させている、落ち着いたクルマだ

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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