バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
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重い塊を操る楽しさ! 多様なバイクのスポーツ性を感じたハーレー「XL1200CX ロードスター」

ゆったりとしたポジションで低速トルクの太いエンジンの鼓動を感じながら、まっすぐ延びた道を走る。多くの人がハーレーのバイクに抱いているイメージはそうしたものだろう。そんなハーレーのラインアップの中でも、コーナーが連続するような道も楽しめる運動性能を備えているのが「スポーツスター」シリーズ。2016年4月に登場した「XL1200CX ロードスター」(以下、ロードスター)は、シリーズ最高のスポーツ性能を誇るモデルと言われている。さっそくロードスターにまたがり、その魅力とハーレーの意図する“スポーツ”とはどのようなものなのかを確かめてみた。

専用設計で運動性を高めたエンジンと足回り

ロードスターの車体設計における大きなポイントは、前19インチ、後18インチのホイールサイズだろう。「スポーツスター」シリーズの他車種はすべてリアホイールが16インチで、フロントは21インチか16インチ。リアを小径とすることで後ろが下がった車体姿勢とし、直線での安定感と足付き性を向上させている。それに対して、ロードスターではリアホイールをインチアップすることにより前輪荷重を高め、旋回性のよさを目指した。また、エンジンにおいては排気量こそシリーズ上位モデルと同様の1,201ccだが、専用のセッティングが施され101Nmの最大トルクを4,250rpmで発揮。これは同シリーズの同排気量モデルと比べても14Nm高い数値となる。

サイズは全長2,185mmで、ホイールベースが1,505mmとなっている。車量は259kg

フロントには、19インチのホイールと120/70サイズのタイヤを採用。フロントブレーキは2ピストンキャリパーのダブルディスクで、強力なストッピングパワーを確保する

ロードスターの特徴であるリアホイールは18インチで、タイヤサイズは150/70。リアブレーキは、フロントブレーキと同様の2ピストンキャリパーが採用されている。リア・サスペンションにはプリロードの調整機構も搭載

やや下に向かった形状のパイプハンドルにより、ハーレーにしては前傾なライディングポジションを作り出す

やや下に向かった形状のパイプハンドルにより、ハーレーにしては前傾なライディングポジションを作り出す

国産スーパースポーツと比較すると、ビックリするほど前方にステップがある。それでもハーレーの既存モデルの中では、かなり後ろの位置。また、左右に大きく張り出しているのも特徴だ

ハーレー伝統の空冷V型2気筒エンジンだが、ロードスターが属する「スポーツスター」シリーズに搭載されるのはアルミニウムのシリンダーとヘッドを採用した「Evolution」と呼ばれるタイプ。出力が高められたセッティングとなっている

エンジンの駆動力をベルトで後輪に伝えるベルトドアライブを採用。従来はリアのスプロケットが日本仕様だけ大きく重くなっていたりしたが、当モデルでは本国と同じ仕様となった

上下に2本並んだショットガンタイプのマフラーには、ブラックの遮熱板を装着。歯切れのよい排気音を奏でる

上下に2本並んだショットガンタイプのマフラーには、ブラックの遮熱板を装着。歯切れのよい排気音を奏でる

43mmの太さで剛性感も十分な倒立式のフロントフォーク

43mmの太さで剛性感も十分な倒立式のフロントフォーク

2016年以降、細身タイプとなったグリップは、日本人の手でも握りやすく操作性もいい。左右の手に割り振られたウインカーの操作ボタンはハーレー独特のものだ

コクピットの中央にひとつだけ搭載されたメーターは、アナログ表示の回転計とデジタル表示の速度計を組み合わせている

「スポーツスター」シリーズらしいデザインを継承した、小ぶりな12.5Lのタンク

ロードスターの名が刻まれたエアクリーナーボックスには、専用のグレーのパウダーコーティングが施されている

シートは、タンデムライドに対応しつつもホールド性がいい

シートは、タンデムライドに対応しつつもホールド性がいい

試乗で実感! ハーレー独自のスポーツ性にハマった!!

リアホイールを大径化することで後ろの車高を高め、やや前傾のポジションで前輪荷重を増やす。そして、それを受け止める剛性の高い倒立フォークを装備。これは現行の多くのスポーツモデルに採用されている設計思想に近いものであり、いやがおうでもコーナリング性能に対する期待が高まる。パワーアップされたエンジンと相まって、どのような走りを体感できるのだろうか。街の中や高速道路、そして軽めの峠道を走行してみた。

実際にまたがってみると、それほど前傾姿勢はキツくない。下に垂れたハンドルも、ちょうど握りやすい位置に来ている印象だ。また、リアの車高が高くなったことで、シート高も785mmと同シリーズの他モデルに比べて60mm以上アップしているが、身長175cmの筆者でも両足がしっかりかかとまで着く

ハーレーにしては前傾のポジションであることと存在感のある太い倒立フォークの印象から、コーナーではしっかりと前輪に荷重して……と考えがちだが、実際に走ってみると、その乗り方では思ったほど曲がってくれない。予想に反したハンドリングに試行錯誤してみたものの、結局、腕の力を抜いて、ハンドルにはできるだけ体重をかけずにステップへの加重で車体をバンクさせて曲がるというバイク操作の基本に立ち返った乗り方にしてみると、259kgの重めの車体でも軽々と傾く。そして、車体がバンクするのに合わせて負荷のかかっていないフロントがスムーズに切れ込み、さっきまでとは別物のような旋回力を発揮してくれた。タンク形状の関係でニーグリップはできないが、上半身の力を抜いて下半身でバイクをコントロールするという基本を思い出させてくれる特性だ。

ステップに思い切り体重をかけると、重い車体が予想以上に軽快にバンクする

ステップに思い切り体重をかけると、重い車体が予想以上に軽快にバンクする

車体が傾くと、それに追従するように前輪が自然にイン側に向くという、バイクの基本の動き。その大切さを思い出させてくれた

寝かせた状態からアクセルを開け、1,201ccのV型2気筒エンジンのトルクを感じながら立ち上がっていくのも楽しい。不等間隔爆発のエンジンはトラクションにすぐれ、しっかりと路面に伝わってくるエンジンが爆発するパワーの感触を得ながらコーナーをクリアできる。ハーレーのマシンはよく“鉄の塊”に例えられるが、その重い塊を意のままに操りながらワインディングを駆け抜ける感覚はまさに“スポーツ”と言えるだろう。

大排気量2気筒の強力なトルクが地面を蹴り出すような加速感も、ロードスターの魅力のひとつ

大排気量2気筒の強力なトルクが地面を蹴り出すような加速感も、ロードスターの魅力のひとつ

試乗を終えて

重い車体をステップへの加重で傾けてマシンの持つ旋回性能を引き出し、トルクを感じながら立ち上がる。その一連の操作がうまく連動すると、重い鉄の塊が自分の思い描いたラインどおりに曲がっていく。国産のスーパースポーツに比べるとスピードは決して速くはないが、操っている本人は間違いなくスポーツをしている感覚を楽しめる。

以上が、試乗を終えて一番に感じたこと。正直、試乗前に想像していたものとはまったく違うものだったが、それはいい意味での裏切りだ。たとえるならば、最近のスーパースポーツの走りはスピードと正確性を競う野球の投球のようなスポーツ性なのに対し、ロードスターは同じ投てき系のスポーツでも“重いものをいかに意のままに操るか”という砲丸投げのようなもの。正確な比喩ではないかもしれないが、同じ“バイクに乗る”というスポーツでも、そのくらい方向性が異なる。

ロードスターは最新のスポーツバイクよりもブレーキが劣るほか、シフトレバーをガッチャンと蹴るようにしてギアを入れる変速操作などガサツに感じる部分も少なくない。これらの要素はスピードと正確性を競うならマイナス要素かもしれないが、重いバイクを意思どおりに動かすという方向性では“味”に感じられるから不思議だ。バイクの基本的な操り方を身につけたい初心者から、スピードを出すだけではないスポーツライディングのあり方を体験したいベテランライダーまで幅広いライダーに乗ってみてほしい。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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