レビュー
カシオの楽器には電卓の技術が応用されている

受け継がれる“電卓のDNA”。カシオのハイスペック電子キーボード「CT-X5000」

「デジカメ」のブームを生み、「G-SHOCK」で腕時計の世界を席巻した日本メーカー、“カシオ計算機”(CASIO)。その名の通り、元は計算機(電卓)の会社なわけだが、今やその技術力が多岐にわたる分野に浸透しているのは、皆さんもご存知の通りだ。

それは、趣味性の高い“楽器”の分野でも同じ。最新モデルのハイスペック電子キーボード「CT-X5000」を体験してみると、ここにもカシオのモノづくりのDNAが垣間見えた。“楽器メーカーではない”という立ち位置を逆手に取った、チャレンジングな電子キーボードの魅力をご紹介しよう。

多分野で展開されているカシオの製品群

多分野で展開されているカシオの製品群

新しく登場した電子キーボードのハイエンドモデル「CT-X5000」。2018年4月13日発売予定

楽器メーカーじゃないからできる挑戦

カシオは、1980年にキーボード型の電子楽器「カシオトーン 201」を発売して以来、この分野で35年以上の経験がある。リーズナブルで持ち運びがしやすい電子キーボードや、10万円を切る価格帯の電子ピアノ「Privia(プリヴィア)」は、ピアノ入門者が手軽に買えるシリーズとして定着している。

さらに2015年には、ドイツの名門ピアノブランド“ベヒシュタイン”と協業し、30万円台の高級電子ピアノを開発したことでも話題になった。カシオの担当者に話を聞いてみたところ、「楽器専業ではない」というのがひとつの強みのようだ。

カシオトーンの初代モデルも、「誰もが音楽と親しめ、簡単に演奏が楽しめる楽器」というコンセプトありきで具体化したものだった。「楽器専業ではないから、逆に思い切った製品企画ができる」のだという。

入門者向けのエントリーモデル「Privia PX-770」。ハンマーの自重によるアクション機構を備えていたり、鍵盤を弾く強さによる音の強弱の表現に対応していたり、入門モデルでもしっかりとグランドピアノの弾き心地の再現にこだわった作りになっている

「CELVIANO(セルヴィアーノ) Grand Hybrid」は、「ベヒシュタインの弾き心地と音を再現すること」を目指して開発された高級電子ピアノ。世界中でアワードを獲得している。価格.comの製品ページでも、クチコミ評価が高く、満足度ランキングでは上位をキープ

プロも納得するような、高音質のキーボードを開発

ベヒシュタインとの協業によって電子ピアノのハイグレード機を作り上げたカシオが、「次は高音質な電子キーボードを作ろう」と企画したのが、今回の新モデルCT-X5000である。

カシオのコンシューマー向け電子キーボードといえば、値ごろ感が人気で、価格.comの売れ筋ランキングでも常に上位に入っている。そんな入門者向けカテゴリーの製品に、あえて“ハイエンドな高音質設計”を投入するというのは、またしても思い切ったチャレンジだ。

CT-X5000の鍵盤数は61鍵。本体サイズは948(幅)×116(高さ)×384(奥行)で、重量は約7.0kg。あくまでもコンシューマー向けの電子キーボードとして、趣味で音楽を極めたい大人層に向けてアピールする

その鍵を握るのは、新しい「AiX音源」!

そのコンセプトは、「プロも納得できる本格サウンド」。グランドピアノやストリングスなどのアコースティック楽器、そしてエレクトリックサウンドに至るまで、キーボードで徹底的に本格再現することをめざして開発された。これまでの電子ピアノ開発で培った技術を投入し、録音からサンプリングまでを新しく行った「AiX音源」を内蔵するのが特徴だ。

内部には、800種類の音色と235種類のリズムを備え、15〜20万円クラスの製品に採用されるような高性能DSPを搭載。その多彩なサウンドを、高品位に再現できるようにしている。

また、出力音声のクオリティを高めるために、スピーカーボックスも新しく設計されている。大型マグネットを使用した自社開発のバスレフ型スピーカーを採用し、アンプ部は15W+15Wの高出力を確保した。

バスレフ構造によって低音の再現性を高めているスピーカーボックス。音響システムを通さないスタンドアローンの状態でも、かなり臨場感の高いサウンドを実現している。もちろん、外部スピーカーと接続したり、ヘッドホン出力することも可能

そのサウンドについては、ぜひ以下の公式動画を参照されたい。

ハイスペックでシンセのように使える機能性

またCT-X5000は、多彩な音色をコントロールパネルで簡単に切り替えることが可能で、シンセサイザーのような多機能性を備えている。上の動画のように、バンド演奏や音楽制作にも活用できるスペックなのだ。

音色やリズムの設定を最大128セット登録できる「レジストーション」のほか、思いついたフレーズを録音できる「フレーズレコーダー」、最大42のパートをコントロールできる「ミキサー」機能にも対応する。MIDIシーケンサーを使用し、オリジナル曲の録音も可能。USBメモリーの接続も行えるので、CT-X5000で制作した音声データを保存して受け渡すこともできる。

コントロール系統と視認性の高いディスプレイを備えるコントロールパネル

コントロール系統と視認性の高いディスプレイを備えるコントロールパネル

各種ボタンとジョグダイヤルを使って、簡単に音色の切り替えが可能。音色やリズムを編集・記録したり、思いついたフレーズを録音したりできる「フレーズレコーダー」を使い、記録した音源をワンタッチで呼び出したりできる。17トラックのMIDIシーケンサーを使用すれば、最大10曲までのオリジナル曲を録音可能

鍵盤の下には、効果音モードにした場合のさまざまな音色が割り当てられている。各音色を鳴らしてみたところは、以下の動画を参照のこと

鍵盤の横にはピッチバンド機能を備えていて、弾きながらピッチコントロールもできる

鍵盤の横にはピッチバンド機能を備えていて、弾きながらピッチコントロールもできる

インターフェイスには、サスティングペダルやエクスプレッションペダルを接続できるアサイナブル端子を装備。外部オーディオ機器からの入力に対応するオーディオ入力端子のほか、PCと接続するためのUSBホスト端子も備えている

電卓で培ったLSI技術を生かした“音の響き”

もうひとつ、CT-X5000の特徴として大きいのは、打鍵の強弱にあわせた響き方の再現性が高いことだ。

これは、同社従来機種の4倍の容量を持つ大容量メモリーと、新開発のLSIを搭載することによって実現したという。実際にCT-X5000を弾いてみるとわかるのだが、打鍵の強さによって異なる出音の強弱を、細かく再現してくれる。その様子は、以下の動画を参照されたい。

電子ピアノ・キーボードというのは、音の出る部分がデジタル回路で作られていて、ピアノの音色を再現する電子音が組み込まれている。鍵盤を押すとデジタル回路が作動し、本体内蔵のスピーカーから電子音が鳴らされる仕組みだ。

さまざまな音色を豊かに再現したり、打鍵の強弱を検知してリアルな響き方を実現するためには、電子回路の演算能力が大きく関係してくる。これがカシオにおいては「電子回路の演算能力=電卓で培った技術」なのである。

上述の新開発LSIには、カシオが電卓の開発で培った電子演算処理技術が応用されている。長年の電卓開発で蓄積した知見が、楽器分野でも強みになっているのだ。

電子ピアノ・キーボードにおける打鍵の強弱にあわせた響き方の再現性は、ハイエンドモデルとエントリーモデルで差が付けられる部分でもある

“楽器”というと、趣味性や芸術性に直結するイメージがあるため、電卓とは遠い製品に見えがち。しかし実は、サウンドのクオリティという楽器としての最重要部分において、電卓で培ったLSI技術が大いに役立っているのだ。

元々、同社のデジタル表示式電子腕時計も、水晶発振器のパルスをカウントするカウンターが加算器の仕組みであることから、電卓のLSI技術を生かして開発されたという歴史がある。電子辞書やデジカメはもちろん、カシオの電子ピアノ・キーボードも、そんな電卓技術の延長線上にある製品なのだ。カシオのモノづくりのDNAが引き継がれている。

ちなみに、最近はスマホやタブレットに楽譜やYouTubeを表示して演奏するニーズが増えているということで、スマホを譜面台に置いてもすべり落ちないように配慮されている

そして、上述の高機能性を持ちつつ、5万円台という実勢価格を実現しているのもCT-X5000の特徴。コンシューマー向けの電子キーボードとして見ると安くはないが、スペックとのバランスで考えると、コスパがよいと思う方も多いのではないだろうか。

これもやはり、新開発のLSIによるところが大きい。電卓開発で培った技術力が元々あったことで、コストを抑えながらスペックを高めることが可能となり、コンシューマーに手が届く価格帯で「本格派キーボード」が実現したというわけだ。

楽器専業ではないからこその思い切った企画と、電卓技術の延長線上にあるハイスペックさが魅力のCT-X5000。カシオでは、「趣味で音楽を極めたい大人層」に強くアピールしている。クオリティの高いサウンドで演奏を楽しむのはもちろん、さまざまな機能を使いこなして音楽制作にチャレンジしたり、単体でもそこそこ臨場感のある音を鳴らせるので、ちょっとした演奏会などで使用するのもよさそうだ。

出力6W+6Wの下位モデル「CT-X3000」も同時発表されている。出力W数が異なるほか、コントロールパネルの音色切り替えボタンが一部省略されているなどして低価格化した

杉浦 みな子(編集部)

杉浦 みな子(編集部)

オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。

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