特集
漫画コンシェルジュ・小林琢磨が選ぶ

食欲の秋到来! よだれが止まらない“おいしい”グルメ漫画10選

食欲の秋はグルメ漫画を読みたくなる季節でもありますが、ひと口にグルメ漫画と言っても、高級料理を題材にしたものから、B級グルメ、ラーメン1本にテーマを絞った作品まで、その種類はさまざま。今回は、年間1,000冊以上の漫画を読むという漫画コンシェルジュ・小林琢磨が選ぶ、“おいしい”漫画10選をご紹介。魅力あふれる名作、名シーンの数々によだれが止まらない!

1、美味しんぼ/原作:雁屋哲、作画:花咲アキラ

言わずと知れた、グルメ漫画の代名詞的作品です。「美味しんぼ」が登場する前のグルメ漫画はエンタメ要素が強い作品がほとんどだったのですが、「美味しんぼ」はグルメ批評的な側面が強い。この作品の登場によって現在に続くグルメ漫画の“王道”が確立されたというか、そういう意味でも、「美味しんぼ」が果たした功績は本当に大きいと思います。個人的に1番衝撃を受けたのは、ご飯を炊く時に、お米1粒ひと粒を磨いていくシーンです。たかが米、されど米。そこまで手間暇かけて炊いたご飯は何もつけなくてもめちゃくちゃうまい! というシーンにすごく感動したのを覚えています。誰もが知っている漫画ですが、あらためて読んでも楽しめますし、何気ない食事にも、感謝の気持ちを持てるようになるはずです。

(C)雁屋哲/花咲アキラ/小学館

(C)雁屋哲/花咲アキラ/小学館

あらすじ
東西新聞文化部に配属された新入社員・栗田ゆう子は、希望あふれる出社初日から、憧れの新聞社にも山岡士郎のような無神経でぐうたらな先輩が居ることに驚かされる。だが文化部全員が受けた味覚テストに合格し、大原社主・肝入りの企画「究極のメニュー」の担当者に選ばれたのは、ゆう子と山岡の2人であった……。「食」ブームを巻き起こした大人気作!!(小学館作品ページより)/単行本は全111巻を刊行。

2、深夜食堂/安倍夜郎

ドラマ化もされた作品なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。たとえば、フレンチやイタリアンで食べる料理は間違いなくおいしい。でも、大衆食堂で頼む、赤いタコさんウインナーを無性に食べたくなる時もある。幼少期のお弁当に入っていた、あの安いタコさんウインナー。そういう素朴な味を思い出させてくれる漫画です。メニューは豚汁定食ただひとつで、それ以外は注文を受けて、あるものなら作るという大衆食堂を舞台にした話ですが、毎回、亭主が豚汁を仕込んでいるのを見て思うわけです。あ〜豚汁飲みて〜。ストーリーは人情味に溢れていて、これを読むと、本当にそのまま深夜に大衆食堂に行きたくなる。漫画で出てきたメニューを食べたくなる。贅沢ではないし、いつでもどこでも食べられるようなメニューだけど、そんな食事にこそ幸せが隠れていることに気づかせてくれます。

(C)安倍夜郎/小学館

(C)安倍夜郎/小学館

あらすじ
歓楽街の端にある小さな店「深夜食堂」。営業時間が夜の12時から朝の7時頃までだから、みんなが勝手にそう呼んでいる。そこは、メニューはわずか、あとは食べたいものを勝手に注文すれば、作れるものならなんでも作ってくれる変わった店だった……。(小学館作品ページより)/単行本は全20巻を刊行。

3、忘却のサチコ/阿部潤

「美味しんぼ」や「深夜食堂」とはまた違って、これはどちらかと言うとギャグ寄りの漫画です。サチコという主人公が結婚式で新郎に逃げられる。辛い体験を忘れるためにめちゃくちゃ食べる。我を忘れるように食べ続ける。そして最後に、ごちそうさまでした、と言って忘却していくストーリーです。やけ食いして辛い出来事を忘れたい、という心理は多くの人が共感できるはず。ですから、ちょっと元気をもらいたい時や、疲れた時などに読んでもらうといいと思います。ひと口にグルメ漫画と言っても、このようにテーマやテイストがまったく違って、さまざまなバリエーションがある。そこがグルメ漫画の奥深さなのではないでしょうか。

(C)阿部潤/小学館

(C)阿部潤/小学館

あらすじ
佐々木幸子(ささき・さちこ)、29歳。職業、文芸誌編集者。仕事は順調、結婚も決まり、これまで完璧な人生を歩んできた。あの日までは…!! おいしいものを食べた時に得られる"忘却の瞬間"を求めて、ありとあらゆる美食を追いかける!! 絶品グルメ・コメディー、開幕!! (小学館作品ページより)/単行本は全10巻を刊行。

4、ラーメン大好き小泉さん/鳴見なる

こちらもドラマ化されたので、知名度は高い作品かと。ラーメン好きの女子高生、小泉さんが色々なラーメン屋に足を運んで、ラーメンを食べるというだけのシンプルなストーリーなのですが、やはり特徴的なのは、実在するお店が出てくることでしょう。たとえば「蒙古タンメン中本」だったり、「ラーメン二郎」だったり。これをまた小泉さんがおいしそうに食べるんですよ、本当に。ラーメン二郎の回を読んだら、きっとラーメン二郎を食べに行きたくなるはずです。実在の店舗が出てくるので、描写がとてもリアルで、行列店なら並び方や注文の仕方なども説明してくれます。とあるラーメン屋さんの行列に並んでいる時に、友達が横入りしてしまうシーンがあるのですが、そこで小泉さんの取った行動が素晴らしい。2人で最後尾に並び直して、2時間くらい並んでから食べるんです。小泉さんや作者の、ラーメンに対する真摯な姿勢が伝わってくる印象的なシーンです。

(C)鳴見なる/竹書房

(C)鳴見なる/竹書房

あらすじ
クールで無口、他人と馴れ合わないミステリアスな転校生・小泉さん。彼女は、日ごとおいしいラーメンを求めるラーメンのプロだった――!? ガツンと本格派ラーメングラフィティ、いよいよ着丼!(竹書房作品ページより)/単行本は全6巻を刊行。

5、ラーメン食いてぇ!/林明輝

もともとはWebで公開されていた漫画が話題を集めて、急遽単行本が発売され、そして映画化までされたという伝説の作品です。海外の奥地で遭難しそうになった著名な料理評論家が、死ぬ前に思うんです。「ラーメン食いてぇ!」って。最後の力を振り絞り帰国した料理評論家は、昔食べたとあるラーメン屋を再訪する。しかし、亭主の奥さんが亡くなり、昔の味を再現できなくなってしまっていていた。そこで愛娘が立ち上がり、昔の味を復活させていく……といったストーリーが展開され、最終的には、1杯のラーメンによって多くの人が救われていきます。「ラーメン食いてぇ!」の中にさまざまな人間模様が描かれていて、これがなかなか奥深い。グルメ漫画×ヒューマンドラマという、新たなジャンルを開拓した作品ですね。

(C)林明輝/講談社

(C)林明輝/講談社

あらすじ
妻を亡くし、店を畳む決意をしたラーメン店店主・紅。ウイグルでのテレビ取材中、事故に遭い、一人荒野をさまよう羽目になった料理研究家・赤星。心ない同級生の噂が元で、自殺を考える女子高生・茉莉絵。1杯のラーメンへの思いが彼らを変えていく。(講談社作品ページより)/単行本は全2巻を刊行。

6、孤独のグルメ/原作:久住昌之、作画:谷口ジロー

何と言ってもテレビドラマが有名ですよね。球場でひとり熱々のカレーを食べるとか、コンビニでたくさん買い込んで食べるとか、まさに孤独のグルメ。たとえば、コンビニで買ってきたものをひとりでつまみながら、家で飲む。そういうことって誰しも経験があるじゃないですか。ちょっと買いすぎて、お腹いっぱいになってしまうとか。そういう日常の中にあるグルメや、日常の中にある小さなよろこびを本当にしっかりと描いている作品だと思います。漫画版には漫画版のよさがあって、ドラマ版とはストーリー展開も異なっています。漫画版のほうがよりディープな印象はありますね。余談ですが、僕も今年ひとりで甲子園に行って、カレーを食べてみました(笑)。なんてことはない、ただのレトルトカレーですが、最高においしかったですよ。

(C)久住昌之/谷口ジロー/扶桑社

(C)久住昌之/谷口ジロー/扶桑社

あらすじ
男が1人で食事するシチュエーションをハードボイルドに描く異色のグルメマンガ。ジワジワ売れ続ける話題の書に新作と久住昌之×谷口ジロー×川上弘美による鼎談も収録!(扶桑社作品ページより)/単行本は全2巻を刊行。

7、山と食欲と私/信濃川日出雄

主人公がご飯を食べるために山に登って、頂上で毎回料理をして、食べて、「おいしかった」と下山する漫画です。僕も趣味で山登りをしていますが、山頂で食べる料理のなんとおいしいことか。だから主人公の気持ちはよくわかります。というかむしろ、僕が山登りを始めるきっかけとなったのがこの漫画です。甲子園で食べるカレーと同じで、山頂で食べる料理は手の込んだものじゃなくていい。インスタントラーメンでいいんです。でもそれが本当においしそうに描かれていて、実際に真似してみると、確かにおいしい。世の中にこれほどおいしいものはないのではないか、と思えるくらいにおいしい。家でインスタントラーメンを食べても感動はないのに、不思議ですよね? 誰もが真似したくなる、山でご飯が食べたくなる、そんな漫画だと思います。

(C)信濃川日出雄/新潮社

(C)信濃川日出雄/新潮社

あらすじ
27歳、会社員の日々野鮎美は、「山ガール」と呼ばれるのを嫌う自称単独登山女子。おいしい食材をリュックに詰めて今日も1人山を登るのでした。欲張りウィンナー麺、雲上の楽園コーヒー、魅惑のブルスケッタ、炊きたてご飯のオイルサーディン丼等々。読むとお腹が空く&山に登りたくなる! WEBマンガサイト「くらげバンチ」で最速で100万アクセスを突破したアウトドア漫画の決定版誕生!(新潮社作品ページより)/単行本は全8巻を刊行。

8、めしばな刑事タチバナ/原作:坂戸佐兵衛、作画:旅井とり

「ラーメン大好き小泉さん」と同様、実在するB級グルメが紹介されています。缶詰だったら鯖の味噌煮だとか、いやいや秋刀魚だろとか、インスタントラーメンではこれがおいしいとか、富士そばではこれを食べろとか。どこにでもあるB級グルメをとにかく語りまくる。そこがすごくおもしろくて。「美味しんぼ」は高級な料理を題材にすることが多いですが、それとはまた違った奥深さがあります。

(C)坂戸佐兵衛/旅井とり/徳間書店

(C)坂戸佐兵衛/旅井とり/徳間書店

あらすじ
警視庁城西署刑事課に転属してきた立花刑事。風采のあがらないオヤジだが、実は本庁に籍を置いたこともあるエリートで、食についての知識は群を抜く。通称「めしばな」と呼ばれる変わりダネだ。捜査や取調べに得意の知識と情報を生かして事件の真相に迫る。第1巻では、カレーカツ丼、牛丼、袋入りラーメン、コロッケカレー、フライドチキン、立ち食いそば、餃子に関するウンチクが全面展開されます! 痛快リアルめしマンガ!(他サービス作品ページより)/単行本は既刊31巻。

9、異世界居酒屋「のぶ」/漫画:ヴァージニア二等兵、原作:蝉川 夏哉、キャラクター原案:転

今回紹介した10作品の中では、これがもっとも異色です。異世界と実際の居酒屋が融合した、言わばファンタジーですね。異世界の住人たちが居酒屋「のぶ」に行くという設定で、彼らが唐揚げを食べ、ビールを飲む。その時の感動がなんとも痛快なんです。隣の客が、「とりあえず生で」。「“生”とはなんだ!?」「なんだこの冷たいキンキンの飲み物は!」「う、うまい!いつも飲んでいるエールとは違う!」。店員が、「じゃあこれもどうぞ」。「なんだこの茶色い食べ物は!?」「う、うまい!唐揚げなるものとビールが合う!」。笑えますよね。あらためて大衆居酒屋に行きたくなりますよ。

(C)蝉川夏哉/ヴァージニア二等兵/宝島社

(C)蝉川夏哉/ヴァージニア二等兵/宝島社

あらすじ
異世界につながった居酒屋「のぶ」を訪れるのは、衛兵、聖職者、水運ギルド長など個性的な面々ばかり。彼らは、寡黙な店主、ノブ・タイショーが振る舞う驚くほどおいしい酒や、未体験の料理に驚き、舌鼓を打ちながら、つかの間、日々のわずらわしさを忘れるのだ。この居酒屋の噂は客から客へと広がり、連日様々なお客がやってくる。さて今夜、居酒屋「のぶ」にはどんなお客が訪れ、どんな物語が紡がれるのか……。暖簾をくぐれば異世界が広がる……なろうコン大賞・受賞の異色作登場!(宝島社作品ページより)/単行本は全5巻を刊行。

10、ゴールデンカムイ/野田サトル

グルメ漫画というわけではなく、北海道が舞台の冒険アクション漫画です。主人公とヒロインが一緒に旅をしていく中で、アイヌ料理やジビエ料理が出てくるのですが、これが本当においしそうなんですよね。狩猟をして、命をいただいて、「ヒンナヒンナ」。食事への感謝を表すアイヌ語です。キャッチコピーは、「和製闇鍋ウエスタン」。グルメ、ギャグ、恋愛、アクション、冒険などをすべて鍋に放り込んで、混ぜて、グツグツ煮込んだような物語です。ずっと料理を作っている回もあれば、ずっと銃撃戦をしている回もある。ギャグの回もあれば、泣ける話もある。それがうまい具合に混ざり合い、独特の“クセ”になっています。

(C)野田サトル/集英社

(C)野田サトル/集英社

あらすじ
『不死身の杉元』日露戦争での鬼神の如き武功から、そう謳われた兵士は、ある目的の為に大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道へ足を踏み入れる。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金への手掛かりが!? 立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ狼との出逢い。『黄金を巡る生存競争』開幕ッ!!!! (集英社作品ページより)/単行本は既刊15巻。

「食べたくなる」のがグルメ漫画の魅力

ファンタジーを読んでワクワクすることはあっても、実際に冒険に出ることはできません。でもグルメ漫画は、作品を読んで、「これ食べたい!」と思ったらそのまま食べに行けてしまう。これがグルメ漫画の最大の魅力だと思いますし、「食」というのはすべての人が経験していることですから、頭の中でイメージしやすいんですよね。共感性が高い。ひと言で言えばそういうジャンルになると思います。そして、その共感性を幹としながら、設定や切り口、テーマによって各作品の個性が生まれていく。今回は10作品を紹介するにとどめましたが、もちろんこれ以外にも素敵なグルメ漫画はたくさんありますので、ぜひ自分なりの「ベスト・グルメ漫画」を探してみてください。なんて話をしていたら、なんだか僕もお腹が空いてきちゃいました(笑)。

取材・記事/雪か企画

小林琢磨

小林琢磨

(株)ナンバーナイン代表取締役社長。大切な事は全て漫画から教わりました! 情熱こそ全てであり最優先。魂が震える作品が好きです。マンガサロン「トリガー」のオーナーと(株)人狼の代表も兼任。サーチフィールド創業者。アイコンはうめ先生制作。

関連記事
本・CD・DVDのその他のカテゴリー
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る