河合楽器製作所(以下、カワイ)が手がける電子ピアノの最エントリーモデルが、約2年ぶりにモデルチェンジする。新モデルの名称は「CN29」。オーディオ機器メーカー・オンキヨーの高音質技術を搭載し、サウンドがより豊かにパワーアップしているのが特徴だ。メーカー希望小売価格125,000円(税別)で、2019年7月1日の発売を予定している。以下より、詳細をご紹介しよう。
かねてよりカワイは、入門者向けの電子ピアノを多数展開している。その代表的モデルが「CN」シリーズで、特に最エントリー機の「CN20ライン」は、初めて買うピアノの有力候補として人気だ。販売価格10万円台というリーズナブルさで、しっかりと電子ピアノとしてのクオリティを担保する。
強みは、木製鍵盤に近いタッチを実現する「鍵盤ウェイト」を備えた88鍵の「レスポンシブハンマーアクションIII鍵盤」を搭載すること。ただリーズナブルなだけではなく、電子ピアノ選びで大事な「木製鍵盤のタッチ感」にこだわって開発されているのだ。もちろん今回発表されたCN29も、この鍵盤構造を継承している。
こちらが「CN29」。サイドに棚受柱があるデザイン設計で、より安定性を向上。重さや高さがグランドピアノの同等のダンパーペダルを装備する。
背面から見たところ。譜面台は3段階で調節可能。なお、カラーはローズウッド調、ライトオーク調、ホワイトメープル調、ダークウォルナット調の4種類をラインアップし、インテリアにあわせて選べる
従来モデルから好評を博す、象牙調の「RHIII鍵盤」を採用
鍵盤にはレットオフフィール(エスケープメント)機能も付いており、アコースティックピアノのタッチ感へ近づけている。最大同時発音数は192で、音色数は19
続いて、そのサウンドについて紹介しよう。CN29は、内部にカワイのコンサートグランドピアノ「SK-EX」「EX」を含む19音色を搭載している。ここまでは従来モデルと同様なのだが、進化したのは演奏時の再生クオリティを向上させていること。国内オーディオメーカーのオンキヨーと技術提携し、同社が長年のオーディオ機器開発で培ってきたサウンド技術を電子回路やスピーカー部に投入している。
スペック的に言うと、スピーカー部は12cm口径のフルレンジユニットを左右に1基ずつ搭載する1ウェイ2スピーカー構成で、20W×2の出力を確保。近年、カワイ製電子ピアノの上位モデルにはオンキヨーのサウンド技術が採用されてきていたが、今回ついにそれがエントリークラスにも降りてきた形となる。演奏時のノイズや歪みを抑え、エントリークラスの枠を超えた美しいサウンドの再生を図っている。
オンキヨーのオーディオ技術によって、再生クオリティを向上させているのがポイント
もうひとつ、操作パネル部が新しくなったのもポイント。1.5インチの有機ELディスプレイを搭載することで、従来の液晶ディスプレイよりも視認性を高めた。椅子に座ったままでも表示内容が見やすくなり、操作をスムーズに行えるようになっている。さらにデザイン自体も一新されており、ボタンの説明が従来の英語表記からアイコンでの表記に変更されたことで、シンプルでわかりやすく使えるようになった。
有機ELディスプレイに加え、ボタンの表記がアイコンになったことで誰でも感覚的にわかりやすくなった
そのほかにも、左手と右手で個別練習ができる「レッスン機能」や、指1本で演奏ができる「コンサートマジック機能」などの従来機能を装備。ちなみに前者の「レッスン機能」には、人気の高いショパン・ワルツ集を新たに内蔵している
カワイが開催した新製品発表会では、ピアニスト・木米真理恵さんによるCN29の演奏が披露された。木米さんは実際にCN29を演奏し、「タッチの違いによって、ちゃんとサウンドに変化をつけられる電子ピアノです。入門機として、タッチの表現力をしっかり学ぶことができると思います」とコメント。実際の演奏の様子は、ぜひ、以下の動画をご覧いただきたい。
CN29を前に、「有機ELディスプレイが見やすく使いやすいのもうれしい」と語る木米さん
カワイからはそのほかにも、CN29の上位機種としてBluetoothオーディオ再生機能に対応した「CN39」が同時発表された。こちらは2019年8月1日の発売を予定しており、メーカー希望小売価格は186,000円(税別)。
こちらが「CN39」。カラーはローズウッド調1色。基本デザインなどはCN29と共通している
CN29と同じ88鍵の「RHIII鍵盤」を採用するモデルで、こちらは355もの音色を搭載する。特にグランドピアノ音に関しては、従来のフルコンサートピアノ「SK-EX」と「EX」の音色に加え、“Shigeru Kawaiグランドピアノ”「SK-5」の音色が追加された。選択肢が増えたことで、より幅広いピアノ表現に対応する。
また、こちらもCN29と同じくオンキヨーのサウンド技術を投入している。こちらは上位機として、8×12cmのトップスピーカーと13cmのウーハーを左右に1基ずつ内蔵する2ウェイ構成を採用。より豊かなサウンドを実現しているのが特徴だ。
2ウェイスピーカー構成で、背面部のスピーカーボックスがより充実した設計に
上述の通り、Bluetoothオーディオ再生機能に対応するのもポイント。ワイヤレスでスマートフォンやタブレットと連携し、デバイス内にあるお気に入りの音楽をCN39の内蔵スピーカーで再生して楽しめる。いわば、Bluetoothスピーカーとして使うことができるのだ。Bluetooth再生している音楽にあわせて、CN39を演奏することももちろん可能。
2.4インチの有機ELディスプレイを搭載し、より視認性が高くて操作がしやすい。Bluetoothとトランスポーズ(移調)などのアイコンをホーム画面に表示し、接続状況や設定を確認できる
実際のサウンドについては、以下の動画で木米真理恵さんによる演奏をご覧いただきたい。動画では差がわかりにくいかもしれないが、生で演奏を体験すると、CN29と比べてCN39のほうがよりダイナミックで豊かな音質であることが感じられた。