今回は衝撃のプラモデルをご紹介いたします。ガンプラでおなじみのバンダイより、プラモデルの常識をはるかに(斜め上方向に)超えたシリーズ「Figure-riseLABO(フィギュアライズラボ)」の最新作。褒め言葉としての“変態”を多用させていただくことをご了承ください。
「ラブライブ!」から、μ’sの「南ことり」です
「Figure-riseLABO」シリーズとは、2018年に始まったバンダイのプラモデルシリーズ。プラモデルと言っても、組み立てるのはロボットではなく、人型のキャラクターです。
第1弾「ホシノフミナ」のこだわりは“肌感”でした。最新技術の「レイヤードインジェクション」や「透過技術」を駆使して、フィギュアを超える質感を持ったプラモデルとなっています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
第2弾「初音ミク」のこだわりは“髪の毛のグラデーション”。こちらも透過技術により、半透明の素材と通常素材を巧みに組み合わせることで、透明感のあるグラデーションに仕上がっていました。
そして満を持しての第3弾が、「南ことり」。今回は“衣装”にこだわられています。
「Figure-riseLABO」シリーズで使われている透過技術とは、表面の成形色の厚みを調整することで、その下にある成形色を透けさせて自然な陰影を再現する技術。バンダイの“変態技術”のひとつです。
具体的には、表面の肌色の厚みを調整し、下層のピンク色を自然に表出させる、といった感じです。これをひとつのパーツでやってのけるのがすごいところ。
このように上の層の厚みを調整し、下の色を透けさせます
透過技術により、肌の血色を自然に再現した第1弾「ホシノフミナ」のヒップ部分
半透明素材と不透明素材を使った透過技術で、美しいグラデーションを表現した第2弾「初音ミク」の髪
第3弾の南ことりは、顔部分にこの技術が使われています。
ではいよいよ組み立てていきましょう。今回選ばれた「ラブライブ!」の「南ことり」は、多くのフィギュアが発売される人気キャラですが、プラモデル化はこれが初。しかも、2019年の第59回全日本模型ホビーショーにて、イメージガールに就任された際に描き下ろされたイラストが初の立体化ということで、ファン心をくすぐる選定になっています。
およそプラモデルとは思えない、ケーキのような色合いのランナーたち
もちろんプラモデルなので、ガンプラ同様、ランナーからパーツを切り出し、はめ込んで作っていきます。さすがバンダイ、パーツ自体の色合いやピッタリとハマる気持ちよさは健在。普段ガンプラでは見ないようなパーツ構成になっているのがおもしろいですね。まず注目すべきは、「レイヤードインジェクション」を使用したフェイスパーツです。
キャラの命とも言うべきフェイスパーツ。すでに何層ものレイヤーにより成形されています
「レイヤードインジェクション」とは、ひとつのパーツに何色ものレイヤーを重ねてインサート成形する技術。今回は4色のレイヤーでひとつのフェイスパーツが成形されています。肌色、頬の赤みを再現するピンク、まつげなどの目回りの黒、そして眉毛などの淡いブラウンです。頬にはさきほど紹介した透過技術が使われており、浮き出るような自然な血色が表現されています。
ハイライトにまでこだわられているアイパーツ
また、今回は過去シリーズよりも目のディテールにこだわられているのが特徴。アニメ「ラブライブ!」の瞳を忠実に再現するべく、ハイライトの光彩部分をぼんやりとぼかして表現するなど、力が入っています。もちろんそれも塗装ではなく、成形時にエッジに丸みを持たせることで再現。ほかにも、レイヤーを何段かに分け、重ねるクリアパーツの厚みの違いによって色の濃淡を調節するなどの工夫が施されています。これは原型協力したフィギュアメーカー、ALTERのこだわりが強いようですね。
こちらは第2弾の初音ミクのフェイス&アイパーツ。ことりに比べてアイパーツは割とあっさりとしたディテールですよね
それでは、ことりのフェイスパーツを組み立てましょう。
顔部分、アイパーツ、そして口内を再現するパーツをはめ込みます
瞳のハイライト部分が際立ちますね
頬のふくらみ部分が、ほかの肌色部分と比べてうっすらと赤みがかっているのがわかりますでしょうか。それに加えて、頬にアニメチックなピンクの線が入っているのも見えると思いますが、これも塗装ではなく、下層のピンクのレイヤーを表出させることで表現しています。
完成したフェイスパーツに髪の毛パーツを付けていきます
髪の毛パーツがかなり多く、合計17のパーツで構成されています。髪を束ねる白いリボン部分はシールです
上半身は、肌色パーツに衣装パーツを付ければ完成。腰の大きなリボンが特徴的
上半身完成の後は下半身製作に移ります。過去の「Figure-riseLABO」シリーズは衣装がシンプルだったので、今回のようなボリューム感たっぷりの衣装は初めて。そしてここに変態技術の進化ともいうべきこだわりが隠されておりました。
その衣装に進む前に、脚周りを組み立てていくのですが……おそらくプラモ好きな方でも組み立てたことがないと思われるパーツを作ります。
それがここ。合計6つのパーツで組み立てるおへそ周りの部分
完成です
何ということでしょう。組み立てていたのは、おそらくプラモ史上初となるガーターベルト! 本来ここは、完成時にはほぼ見えない部分なのですが……こだわりがすごいです。ここに脚を付けていきます。
なんだかすごく背徳感を覚える完成形となりました
右足のガーターベルトのストラップ部分も別パーツになっています。靴下にかかるピンクのリボンはシール。いったい自分が何をしているのかわからなくなってきました。
ではここから衣装を組み立てていきます。布部分はマットに、手に持つ風船はツヤツヤにと、それぞれの素材に合った質感が表現されています。もちろん無塗装で、金型加工による表現です。
ボリュームのあるスカートには、合計24個の装飾パーツを付けます
スカート背部のオーガンジー生地部分は、偏光パール素材で再現
手に持つ風船はツヤツヤのパーツ。スカートのマット感とは対照的です
上半身と下半身を合体させ、風船パーツを手に持ったら完成!
ガンプラに比べればパーツ数が少なくあっさりと組み上がるのですが、作っているときのドキドキ感と、各パーツの造形の美しさが印象に残りました。完成するとまるでフィギュアで、本当に自分でこれを組み立てたんだろうか? という不思議な気分に。顔の造形、頬の血色、そして多彩な質感の表現など、「Figure-riseLABO」シリーズの集大成とも言うべき作品になっていると思います。完成品の全体像を見ていきましょう。
横、後ろから見た全体像はこんな感じ。360°どこから見ても美しいです
このシリーズは代々、サイズが結構大きめ。初代ホシノフミナが全長約26cmで、この南ことりも同じくらいです。ガンプラで言う1/100のMGサイズよりちょっと大きい感じ。お部屋に飾るときはしっかりと場所を確保しましょう。
HG1/144のガンダムと並べるとこれくらい
第1弾ホシノフミナ、第2弾初音ミクと並べて。初音ミクはちょっと小さめですが、髪のボリュームがすごいのです
続いて、細かいところを見ていきましょう。ディテールのこだわりが各所に詰め込まれていて、見ているだけでため息が出そうです。
髪の複雑さや流れも忠実に再現。髪らしいマットな質感で、色合いもとてもきれいです
偏光パール素材のスカートは、光を当てていない状態だとクリアに見えますが(写真左)、光が当たるとうっすらと紫色に反射します(写真右)。見る角度や光によって色合いが異なり、とても美しいです
スカートは、中にパニエが入った3段仕様。フリルの細かな形状に感心します。クリア素材のパニエはほぼ外から見えないのに、ラメが配されていて華やかです
指先まで細かく作られています。右手は風船を支えるためのパーツにもなっています
王冠を模した髪飾りも別パーツ。こちらもかなり細かいです。そしてやはり瞳がすごい。ハイライトも劇中そのものですね
ツヤツヤのハート型風船。質感やふくらみ加減など、プラモとは思えない完成度です
腕飾りもラメが散りばめられたクリアパーツ。トップスの刺繍の造形もすばらしいです
作り込みのすごさが伝わっているでしょうか? 繰り返しになりますが、とてもプラモデルとは思えません……。
南ことりは個人的にも好きなキャラクターなので、予約開始時に即ポチって、発売日を楽しみにしていました。そして実際に作ってみると、完成度の高さとキャラ愛にあふれた造形、色合い、こだわり、すべてに驚き! いまだかつてこんなにかわいいプラモデルがあったでしょうか?
第1弾のホシノフミナと比べて、お値段がやや高くなってしまった感はありますが、同スケールのフィギュアと比べればかなり安いと思います。プラモデルでここまでできるんだ、という変態技術の極みを体験したいなら、ぜひ組み立ててみてほしいです。
バンダイの技術のすごさを体感する!という建前で購入するのもアリ