令和3年春、今年もまたバンダイの“変態的技術”を目の当たりにするアイテムをご紹介できる喜びに打ち震えております。プラモデルの常識を超えた技術で人気の「Figure-riseLABO(フィギュアライズラボ)」シリーズから、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」版の「式波・アスカ・ラングレー」が登場しました。劇中のあのプラグスーツ姿を超絶技法で再現しております!
「フィギュアライズラボ」シリーズ第4弾。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」から「式波・アスカ・ラングレー」です
「フィギュアライズラボ」は、バンダイの持つプラモデルの成形技術を独自に発展させ、従来のプラモデルやフィギュアにはできなかった表現を実現していくプラモデルシリーズ。筆者は全種類組み立ててきましたが、その技術がもはや“変態的”と言えるほどなのです。
第1弾は「ガンダムビルドファイターズトライ」のヒロイン、「ホシノ・フミナ」(レビュー記事はこちら)。表面の成形色の厚みを調整し、下層の色を透けさせることで肌の血色感を表現していました
第2弾はバーチャルアイドルキャラクターの「初音ミク」。髪のグラデーションを半透明素材で表現しています
第3弾は「ラブライブ!」から「南ことり」(レビュー記事はこちら)。細部にまでこだわった衣装を新素材で表現
その第4弾が、今回の「式波・アスカ・ラングレー」なのです。
今回のテーマが「肌と密着した透明スーツ表現」ということで、劇中でアスカが着用しているテスト用プラグスーツ姿をプラモデルで再現しています。そう、エヴァンゲリオン3号機起動実験のときに着ていた、あの印象深いスーツです。まずは完成品から見ていただきましょう。
組み立て後の姿です
ポーズのしなやかさ、スーツの質感など、プラモデルとは思えない表現力ですよね
念のためもう一度申し上げると、これはフィギュアではなくプラモデルです。なのでここからはパーツについてご紹介。ランナーは全部で8枚と、プラモデル的には少なく感じますが、細かいパーツが多く、今までの「フィギュアライズラボ」シリーズの中で一番作るのが大変でした。
髪パーツは1枚のランナーにまとめられています。結構とがっているので取り扱い注意
赤いスーツのパーツはツヤツヤの仕上がり
そして今回の目玉となる、密着スーツを再現したパーツです(写真下は裏側から見た図)。後ほど詳しくご紹介しますが、何色ものパーツが重なって構成されていることがわかります
顔は恒例のレイヤードインジェクション。ブルーの瞳は虹彩部分に工夫があり、「アイトラッキング」の技術を採用しています。こちらも詳しくは後述します
パーツを見ると、本当にプラモデルなんだな、とわかっていただけると思います。ボディのパーツは大きく、ガンプラのように可動軸などがないため、組み立てるのは簡単。しかし今回は細かいパーツとシールを多用するため、これらのゲート処理や取り扱いで時間がかかるといった感じでした。
スーツの一部にシールをガッツリ使います。それぞれに予備があり、一度失敗したり、劣化したりという場合には交換できるようになっているのがいいですね。胸に貼る「TEST」シールは今回使っておりません
ではここから、組み立ての様子をお届けしていきましょう。
顔は、肌色、白、ブラウン、黒の4色を1パーツで再現する「レイヤードインジェクション」技術が使われています
瞳パーツを後ろから差し込んで顔が完成。口はかなり小さめですが、内部に薄いピンクのシールを貼ることで口内の色を再現しています
髪の毛パーツを組み立てていきます。今回は髪をかき上げたポーズなので、髪に細かい動きが付けられていますね
脚は大きなパーツを組み合わせるだけで完成。かかと部分は台座に固定するため、パーツがむきだしになります
そしていよいよ今回の目玉、密着した透明スーツのパーツです。表面の薄く透明なスーツから、下の肌が透けて見える様子をプラモデルで再現しています。
ボディのパーツ。いくつかに分割されているので、組み合わせます。透明オレンジのパーツ下にうっすらと肌色が透けて見えていますよね
実際に肌の上にスーツを着ているかのように、肌部分とスーツ部分を重ねて一体成型する「オーバーレイドインジェクション」という技術が使われています。一体成型に当たって、素材が互いに侵食しないように、融解温度の異なる素材が選ばれているのだとか。実際に触ってみるとわかるのですが、肌色部分はいつものプラモデル素材の手触りであるのに対し、スーツ部分はちょっとやわらかい軟質素材が使われています。
そして、一体成型することによってスーツに厚みの差を出すことが可能になっています。たとえばおへそ部分のスーツ素材を厚くすることによって、その部分のスーツの色が濃くなり、肌の凹凸を表現できるというわけです。
スーツ部分の厚さは約0.3〜3mm。非常に薄い階層の中でさらに陰影が付けられています
そのほか、スーツパーツにのみシワがあったり、下層の肋骨部分にハイライトが仕込まれていたりと、表層を塗装しただけでは表現できないリアルな質感に仕上がっています。
胴体に赤いスーツのパーツを加えて、脚を付け、左手、頭部、右手の順番で組み立てると完成です
では細かい部分を見ていきましょう。改めて透明スーツ部分を見てみると、うっすらと見える肌色と陰影表現で、まさに人間といった質感で驚きます。
見る角度や光の加減によっても見え方が異なります
やや上から見ると、おへそのハイライトはかなりくっきり見えますし、胸や肋骨の部分などもとてもリアルです。正面から見ると、下層の肌色がはっきり見える感じになりますね。下から見上げると、下半身のハイライトが強調されてボディラインの美しさが際立ちます。
劇中でアスカが言っていた「これ見えすぎじゃない?」というセリフが浮かぶヒップ部分。腰回りのスーツのシワ表現とハイライトの強弱で、プラモデルとは思えないやわらかなラインが表現されています
髪をかき上げるようなポーズで、髪の表現や指先の入り具合なども見事
そして今回のもうひとつの目玉技術が、瞳。虹彩部分に工夫が施されており、どの角度から見ても瞳が追従しているような「アイトラッキングインジェクション」という技術が使われています。
正面から見ても、横から見ても、瞳の中の黒い瞳孔はこちらを見つめてくれるのです。何で?と不思議に思っちゃいますよ
光彩部分をくぼませて、物理的に瞳に陰影を持たせることで可能になっているのですが、これをプラモデルでやってしまうバンダイの変態技術には驚愕しかありません。
回を重ねるごとに進化する「フィギュアライズラボ」シリーズ。何度見ても、本当にプラモデル?と疑ってしまうレベルなんですよね。なお、今回のアスカの原型製作には、第3弾の南ことり同様、フィギュアで人気のメーカー「ALTER」が参加しています。プラモデルとフィギュアの垣根を超えた、唯一無二のシリーズになってきていると感じますね。
スケール詳細はないのですが、今回のアスカは、第一弾のフミナと同じくらいの大きさ。ことり、ミクよりは大きいです
コロナ禍で延期されていた、「エヴァ」シリーズ最新にして最後の映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が公開され、タイミング的に本製品の発売に重なりました。TVシリーズから25年間“エヴァの呪縛”を楽しんできた筆者にとっても、いろいろな意味で感慨深い製品でした。
完成度、表現力の高さは言うまでもなく、アスカ・ラングレーらしさを再現しているプラモデルだと言えるでしょう。ただ、現在大人気で品薄状態となっているので、願わくば、店頭で手軽に購入できるような品揃えにしていただきたい次第ですね。
式波でも惣流でもアスカはアスカ。アスカ推しなら絶対見てほしいプラモデルです!
趣味も仕事もゲーム漬けだった人生から脱却を図り模索中。ホビーや生活雑貨記事などを書かせていただきます。