ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(以下、BAT)が展開する加熱式タバコデバイス「グロー・ハイパー」専用のタバコスティックシリーズは、安価で喫味は強いが、ニオイが少々強めでメンテナンスも必須だった。
今回、そのフラッグシップライン「ネオ」シリーズがリニューアル。タバコ葉がこぼれることでニオイの原因になっていたスティックの先端をついにふさいのだ。はたしてメンテナンスはラクになるのか、味わいは変わるのか、旧製品と比較しながら試してみた。
BAT「グロー・ハイパー」専用タバコスティックのフラッグシップライン「ネオ」シリーズが8種に拡大。20本入り500円。全国の主要コンビニエンスストア、スーパーマーケット、たばこ販売店、「glo & VELO オフィシャルオンラインショップ」で展開されている
タバコスティックの先端をふさいでメンテナンスフリーをうたった、フィリップ モリス ジャパンの加熱式タバコ「アイコスイルマ」専用スティックが登場したのが2021年8月。そこから3年弱を経た2024年5月7日より順次、BATの「グロー・ハイパー」専用のタバコスティックのフラッグシップライン「ネオ」シリーズも、先端をふさぐことになった。
なぜ先端をふさぐとよいのかというと、スティック先端からタバコ葉がどうしてもこぼれてしまい、デバイスに残ってしまうから。新しいスティックを使っても、いぶされた古いタバコ葉が喫味を下げてしまうし、デバイス自体にもニオイが付いてしまうので、おいしく味わうためには、クリーニングブラシやクリーニング用綿棒を使ったメンテナンスが必要だったのだ。
BATの話に戻ろう。スティック先端を閉じるBATの新技術は「スティックシール(StickSeal)テクノロジー」と呼ばれ、タバコ葉を外に出さないように密封することで、タバコ葉をクリーニングするメンテナンスが不要となる。
ちなみに、「アイコス イルマ」も同様だが、気化した蒸気は内部にある程度付着するため、どちらも1箱につき1回程度、ウェットタイプのクリーニング用綿棒で内部を拭いたほうが実はおいしく楽しめる。
フィルムを剥がすと、旧製品と見分けが付かなくなるパッケージ
新製品には、内部にお知らせの紙が入っている
写真左が新たな「スティックシール テクノロジー」で先端を閉じたスティック。右はとにかくタバコ葉がこぼれやすい従来のスティック
「ネオ」シリーズは今回、全面刷新を行っている。
唯一のダブルカプセル搭載製品「ネオ・パイナップル・ベリー・ミックス」は、2024年4月29日より順次終売され、新ラインアップから外れ、新たに「ネオ・クラシック・タバコ」と「ネオ・スムーズ・タバコ」が追加、そして「ネオ」唯一のレギュラータイプだった「ネオ・テラコッタ・タバコ」も「ネオ・マイルド・タバコ」として生まれ変わった。
これらレギュラー製品に関しては、マスターブレンダーによる厳選たばこ葉を使用した新ブレンドを採用しているのもポイント。上質な甘みのある香りが特徴のバージニア種と、地中海沿岸由来の少しクセのあるオリエンタル種を配合しながら、タバコ葉の希少部位で、香りのよい葉肉部分「ラミナ」を100%使用し(「ラミナ」はJTも「プルーム・エックス」専用スティックで使用)、できるだけタバコ葉を加工しないことで高品質な味わい成分を維持するという本格的な方式を取っている。
レギュラー好きの筆者は、「ネオ」のレギュラーが1製品のみとなって、一時はレギュラーから撤退するのかと心配していたのだが、今回のレギュラー拡大でホッとした。
そのほかのメンソール、フレーバーメンソールに関しては、「スティックシール」導入以外は、大きな変化はない。
中を見てみると、写真下の新スティックは今回閉じたほうの先端にフィルターに似た素材が入っていた
味に関しては、スティック先端がフタをされたとしても、従来モデルと同じようにデバイスの底面から吸い口方向へ発生した蒸気を吸い込むので、さほど変化は出ないはずだ。ただ唯一この「スティックシール」で心配になるのは、エアフローが変わることにより、ドロー(吸い込む力)が重くなってしまわないかどうか。実際に吸いながら確認していきたい。
使用機種は加熱カーブを見直した誘導加熱技術「ヒートブースト(HEATBOOST) テクノロジー」を搭載した「グロー・ハイパー・プロ」。マスターブレンダーによる新ブレンドも同機種を前提に最適化されているので、可能なら「プロ」で味わうのがおすすめだ。
「ヒートブースト テクノロジー」を搭載した「グロー・ハイパー・プロ」で喫味は大きく変化した
レギュラー系の喫味のグレードが格段に上がった!
新製品。とにかく濃い味が好みなら
マスターブレンダー厳選タバコ葉を使用したレギュラータイプの中でも、いわゆるダーク系の濃い味「ネオ・クラシック・タバコ」。とはいえ、従来の「濃厚さ=ロースト感」という常識とは異なり、年輪を重ねた樹木的な深みと落ち着きを持った風味で、クセは思ったよりも少ない。
使用している岐阜県で加工された蜂蜜の甘みも少なめで、苦味と辛味を主体とした“煙”が喉を通るような感覚から、紙巻きタバコに近い印象を受けた。タバコにキリッとした渋みを求める人のためのビターな深さ。バカバカ吸うよりも、1服1服を大切にして、じっくりと味わいたくなる完成度の高さに驚いた。
「スタンダード・モード」ではバージニアタバコの甘みがまろやかに広がり、「ブースト・モード」では苦味と辛味を引き金に、重厚な紙巻きタバコ感が楽しめた。
ただ吸い殻のニオイはちょっときつめ。
「テラコッタ」は「マイルド」に名称変更
ひと足先に、マスターブレンダー厳選タバコ葉を使用したブレンドに変更されていた「ネオ・テラコッタ・タバコ」がリニューアルして、「ネオ・マイルド・タバコ」として生まれ変わった。ベースは変わっていない。
岐阜県加工の国産蜂蜜の甘味と、コーヒーの焙煎豆のような香ばしさ、タバコ葉本来の香ばしさが合体して、ほどよい酸味とともにウマさを演出しているバランスの取れた王道マイルド系。マイルドとは言ってもライトな喫味ではなく、しっかりとしたキックを与えてくれて、吐き出す蒸気にもほどよい辛味が含まれているのがいい。
「スタンダード・モード」ではふんわりとしたバージニア種タバコ葉の芳醇な旨味が主体で、吸い方も蒸気を口の中にしっかり溜めたほうがウマい。
「ブースト・モード」ではエッジが際立ってくるので、紙巻きタバコ的な手軽なリラックスタイムに打ってつけ。しっかりとしたスロートキックで、満足度は高いはず。
従来モデル「ネオ・テラコッタ・タバコ」でも上品で紳士的なレギュラーテイストが十分にウマいと感じていたが、新「ネオ・マイルド・タバコ」はさらにジェントルな魅力が増して、上品なおいしさに仕上がっていた。おそらくデバイス内部が汚れにくい分、雑味が出にくくなったことも一因だと思う。
先端を閉じた新スティックのほうが、ドローが幾分重くなったが、蒸気が入ってくるタイムラグの分、旨味が増している印象だ。吸い殻のニオイも抑えられていた。
軽やかな魅力のレギュラー新製品
マスターブレンダー厳選タバコ葉を使用したレギュラータイプの中で、最も軽快なレギュラータイプの新製品「ネオ・スムース・タバコ」。「スムース」というと基本的に酸味が際立つ傾向があるが、この製品は寸止めによる調和を保っているところが持ち味だ。
「スタンダード・モード」では甘さと酸味がふわりと香り立つ上品な味わい。往年のライト系タバコのような、さっぱりとした後味がウマい。
「ブースト・モード」にすると、全体的に味が濃くなるが、それでもスペシャルティーコーヒーのような香ばしい焙煎感は崩さない。肩肘張らずに気軽に楽しむひとときに打ってつけの新製品だ。
カプセルメンソールタイプ「ネオ・マックス・メンソール」
メンソールタイプとフレーバーメンソールタイプにはブレンドの変更はなく、「スティックシール」により先端が閉じられた点のみの改良だ。
現在はブランド廃止となった「クール・エックス・ネオ・マックス・メンソール」が出自の「ネオ・マックス・メンソール」。北海道産ミントを使用したカプセルメンソールタイプで、パッケージを開けると、スティックからはナチュラルなスペアミント系の甘い香りがする。
ただ実際に吸うと、いきなりペパーミントな辛口。「スタンダード・モード」でも喉に突き刺さる刺激に驚く。カプセルを潰すと、スペアミントが合体してバランスはよくなるが、北海道産ミントならではのナチュラルな清涼感とはいえ、刺激はまさに“マックス”。「ブースト・モード」は喉が弱い人にとってはちょっとした罰ゲームのような趣に……。
続けて吸っても雑味が減った分、確実にメンソールの凶暴性が増している。
カプセルメンソールタイプ「ネオ・フリーズ・メンソール」
辛味よりも冷感を中心とした、重めのメンソール感が楽しめる「ネオ・フリーズ・メンソール」。「スタンダード・モード」ではライトなメンソールタバコ感だが少々物足りない。「ブースト・モード」にするとタバコの旨味が際立ってウマいが、タバコ味が強めかも。カプセルを始めから潰すほうがバランスよく感じる味わい深いメンソールだ。
メンソールそのものがウマいだけに、デバイスの汚れによる雑味が減ったのは大歓迎。若干唇にも清涼感が移る気もするが、メンソール主体のメンソールタバコとしての完成度は高くなった。
メンソールタイプ「ネオ・フレッシュ・メンソール」
カプセル非搭載なので、潰すタイミングを迷わなくていいところが筆者お気に入りの「ネオ・フレッシュ・メンソール」。北海道産ミントならではのやさしい清涼感はあくまで脇役に徹していて、タバコ味を引き立てている。
「スタンダード・モード」ではふんわり味わうのに適しているが、それなりのキック感も味わいたいなら「ブースト・モード」。タバコ味主体のメンソールタバコの完成形だと個人的に思う。
キャラクターはほとんど変わらないのだが、吸い殻があまり臭いにくいようだった。
カプセルフレーバーメンソールタイプ「ネオ・ブリリアント・ベリー・スティック」
人気のベリー系カプセルメンソール。パッケージを開けた瞬間、ブルーベリーのアロマが飛び出してくる。単独ではなく、そこに福岡産のいちごのフレーバーも加えられているのが特徴。蒸気を吸い込むと、フレッシュなフルーティーさが感じられてウマい。
「スタンダード・モード」では爽やかなフルーティーさが主体。「ブースト・モード」で味わうと、フルーティーさは少々飛び気味だったが、カプセルを潰すと、ジューシーないちご感がドバッと加わった。
基本は変わらないのだが、雑味が出にくくなった分、かえってフルーツ系の香料が際立ちすぎて、タバコとしてのバランスが崩れているように感じた。
カプセルフレーバーメンソールタイプ「ネオ・トロピカル・スワール・スティック」
夏にぴったりな「ネオ・トロピカル・スワール・スティック」は、とかくエスニックすぎて吸いにくくなりがちなタイプのトロピカル味ではない。「スタンダード・モード」ではほのかすぎて、南国感は感じにくく、「ブースト・モード」にしてもその路線は変わらない。
ただ、カプセルを潰した後は、南国フレッシュな爽やかな清涼系フルーティーさが前面に出てウマい。日本人になじみ深いタイプのやさしいトロピカル味だ。
明らかに吸いやすくなった。それだけ雑味に敏感なフレーバーだったのかもしれない。一部タバコ味と合体して奇妙に感じていた風味が整理されて、素直においしいスティックになったと思う。これなら普段はカプセルを潰さずにメンソールタバコとして、気分を変えたいときにカプセルを炸裂させてリフレッシュするという使い方もしやすいだろう。
新製品2種を含んだレギュラー3種の味わいは、「グロー」の歴史を変えるほどのインパクトだった。スティックのブレンドの妙味と「グロー・ハイパー・プロ」の新加熱機構の組み合わせにより、紙巻きタバコのおいしさにより近づいたことで、改めてレギュラータバコのおいしさというものを感じられた。
タバコ葉は「スティックシール」導入を前提にブレンドされていると思うが、加熱式タバコ特有のえぐみに対し、ここまで効果的なアプローチができるとは……。喫味は強いが、ニオイがキツくてクセがあるという従来の「グロー」から印象は結構変わるはずだ。
メンテナンスの必要性は、およそ1/3以下にまで下がったと思う。もちろん蒸気の汚れ自体はウェット系クリーニング綿棒で拭ったほうがおいしいが、ニオイの元がいぶったタバコ葉ではないのでそこまで気にならないだろう。
最大の変化はやはりドローの重さか。従来「グロー」に慣れてしまっていると、最初は戸惑うかもしれない。しかしすぐに慣れると思うし、気になる人はデバイス底部にある吸気口のフタを少しズラして調整するとよいだろう。
好みのエアフローでもっと吸いやすく!