前回はパンツタイプの大人用紙おむつを紹介しましたが、今回は、より介護レベルが高めになった際に使用する「テープ止めタイプの大人用紙おむつ」について解説しましょう。最新のトレンドや使い方のコツなど、「アテント」シリーズで知られる大王製紙に聞いた情報も合わせてお届けします。
大人用紙おむつには「パンツタイプ」と「テープ止めタイプ」があり、どちらのタイプも基本的に内側に尿とりパッドを装着し、「パッド+おむつ」で使用します。前回も紹介しましたが下の表のように、介護レベルに合わせて使い分けるのが一般的。比較的、症状が重くなるとテープ止めタイプの紙おむつを使うこととなります。
パンツタイプは普通の下着と同じような形をしているので、要介護者が自分で立つことができなくなると装着させるのは非常に困難。いっぽう、テープ止めタイプの紙おむつは1枚の状態に展開してから前後左右の生地を重ね、包み込むようにはかせる仕様なため、要介護者が横になったままでも装着させやすいのがメリットです。寝たきりになった時だけでなく、車いすを使用しなければならなくなった、介助があってもトイレまで行けない、立ち上がれない、おむつの中でほとんどの排尿や排便をしてしまうというような状態になったら、テープ止めタイプへの移行を考えたほうがいいでしょう。
パンツタイプの紙おむつは要介護者に腰を浮かせてもらわないときちんとはかせられないので、寝ている時間が長くなり、ベッド上でおむつ交換をしなければならないくらいになったら、はかせるのは大変です。交換するのもひと苦労なので、テープ止めタイプを使うほうがいいでしょう
テープ止めタイプの紙おむつは、このように開いて使用します
テープ止めもラクとは言えませんが、要介護者の腰を持ち上げて両サイドを引き上げなければならないパンツタイプよりは負担が少なくて済みます
パンツタイプ(左)とテープ止めタイプ(右)を装着すると、このような感じになります。テープ止めタイプは、前後左右の生地で包み込むようにしてテープで固定するので、要介護者が横になったままでも装着しやすいのがメリット
また、テープ止めタイプは、体型による問題がカバーしやすいのもポイントです。テープ止めタイプを使用する介護レベルは、1日ほぼ寝た状態の人、日中は車いすに座る人、麻痺がある人、介助があれば立ち上がれる人などさまざまで、それにより体型もそれぞれ。特に、下半身が痩せてきてお腹まわりと足まわりに差が出てくると、パンツタイプも伸縮性のある素材を使っているとはいえ、人によってはお腹まわりはピッタリでも足まわりにすき間ができ、尿もれしてしまうこともあります。その点、テープ止めタイプはテープを止める位置でフィット感を調節可能。パンツタイプよりも1人ひとりの体形に合わせやすいので、テープ止めタイプのほうが尿もれしにくいのです。
基本的に、左右に2つずつ、計4つのテープが装備されています。それぞれのテープを固定させる際に、体に合うように調整すれば尿もれがかなり軽減されるはず
ワンポイントアドバイスをここでひとつ。下のテープは上向きに、上のテープは下向きに止めるとズレにくいでしょう
テープ止めタイプも、パンツタイプ同様に排尿の吸収量とサイズ別に多くの商品がラインアップされています。一般的な目安として、排尿の吸収量2・3回分が昼用、4回分以上が長時間用・夜用となっているので、適するものを選ぶのは当然ですが、サイズが合っていることが大前提。テープで絞まり具合を調整すればいいように思われるかもしれませんが、尿もれを防ぐためには、とにかくすき間を作らないことが肝心です。サイズが大きいとすき間ができやすく、逆にサイズが小さいときちんと止められないことも。もちろん、要介護者の快適性もそこなわれるので、適切なサイズであることは大切です。なお、パンツタイプはウエストのサイズが基準でしたが、テープ止めタイプはヒップサイズを基準に選びます。
商品によって異なりますが、S/M/Lなどのサイズに合うヒップサイズの数値幅は広め。腰骨の位置またはおしりの頂点(もっとも高くなった位置)の周囲をはかり、適したサイズを選びましょう
大王製紙「アテント」のテープ止めタイプには、適切なサイズを選べているかを確認できる数字が印字されています。テープを止めた位置が「1」より内側になったらワンサイズ下、「3」より外側になったらワンサイズ上にしたほうがいいということなのだそう。けっこう便利でありがたい工夫です
サイズが合う紙おむつを選んでも、テープでしっかりホールドできていないと尿もれする可能性があります。最新の紙おむつは尿の逆戻りを防ぎ、素早く吸収できるようになっており、かつ、足まわりや背中などからのもれを防ぐ工夫も万全。日本の紙おむつ製品は品質が高いので、尿がもれ出てしまう原因は吸収量の選定ミスではなく、装着がきちんとできていないことがほとんどなのだそう。
大王製紙「アテント 消臭効果付きテープ式 背モレ・横モレも防ぐ」の場合、寝ている時に背中から尿もれしないように「背モレ防止ポケット」が付いています
矢印の部分が「背モレ防止ポケット」。もちろん、足まわりのすき間を低減するためのギャザーも装備されています
はかせるだけのパンツタイプに比べ、テープ止めタイプは作業が多いので難易度が高そうに感じるかもしれませんが、コツをつかめばそれほど難しくありません。装着させた時にお腹まわり、足まわりにフィットさせられるだけでなく、要介護者が動いてもズレにくいように各メーカーが工夫を凝らしているので、使いやすそうと思ったものを試してみるといいでしょう。たとえば、大王製紙「アテント 背モレ・横モレも防ぐ うす型スーパーフィットテープ式」の場合、テープを2つに分けることができ、しかも、伸び縮みするので体の向きや姿勢が変わってもしっかりとフィットさせられます。
大王製紙「アテント 背モレ・横モレも防ぐ うす型スーパーフィットテープ式」。S〜Mサイズ(20枚入り)とLサイズ(17枚入り)がラインアップされています
テープの部分を一般的なテープ止めタイプと比べてみると、「アテント 背モレ・横モレも防ぐ うす型スーパーフィットテープ式」のほうが大きいくらいで、それほど違いはないように見えますが……
テープの部分を、写真のように2つに切り裂くことができます
しかも、テープには伸縮性が備えられています
分かれたテープがそれぞれ伸びるので、体にフィットさせやすい印象
下のテープを上向き、上のテープを下向きに止めると、しっかりと重ねてクロス止めできます。トルソーに装着した印象ですが、テープのサイズが大きく伸びるので、体を動かしてもズレにくいでしょう
実は、横になっている状態と、上半身を起こしたり、車いすに座っている状態とではテープを止めるベストな位置が異なります。その差は、8cmにもなるのだそう。紙おむつを使った経験がなくても、寝転んだ状態から上体を起こすとお尻のほうにズボンの生地が引っ張られ、お腹にズボンがくい込んで苦しくなったという経験はないでしょうか。そんなことが、紙おむつでも起こるのです。ヘルパーさんなどプロの方は、最初に装着する際(横になった状態)はお腹にあたる上側のテープをきつくしないように気をつけて止めしているのだそう。そんな事態を軽減してくれるのが「アテント 背モレ・横モレも防ぐ うす型スーパーフィットテープ式」。大きく分かれた伸縮性のあるテープのあるおかげで、座った状態でも寝た状態でもゆるみやきゅうくつさが起こりにくいのが特徴です。
・ユニ・チャーム「ライフリー のび〜るフィット うす型軽快テープ止め」
同社の従来品よりも2倍伸びるテープを採用。軽い力で伸び縮みするので、ぴったりフィットさせてもきゅうくつさは感じません。また、薄型の吸収体は体の動きに合わせて変形するため、股間のごわつきも軽減。本商品は尿の吸収量約2回分ですが、同じ構造で吸収量が約4回分の「ライフリー のび〜るフィット うす型安心テープ止め」もラインアップされています。
・王子ネピア「ネピアテンダー うららか日和 幅広テープ」
細いテープの場合、きつい部分とゆるめの部分ができ、足まわりにすき間ができることで尿もれが発生していたといいます。そこで、テープの幅を広くすることでおむつを面で引っ張れるようになり、締め付けの差も軽減。全体をしっかりとフィットさせられるので、すき間もれが大幅に防げるそうです。吸収量5回分のS〜Mサイズと6回分のLサイズがラインアップ。
・光洋「オンリーワン立っても座ってもかんたん装着」
ここまでで紹介した商品とは少し特性が異なり、寝たきりを防ぐリハビリにも役立つテープ止めタイプがこちら。ベルトを腰にまわして固定する仕様となっており、立った状態、座った状態で装着できます。
吸収量5回分のMサイズ、6回分のLサイズが用意されています
ウエストにベルトの付いた仕様となっています
ベルトで固定するので、ズボンを完全に脱がなくてもおむつの装着や尿とりパッドの交換が可能。たしかに、装着や交換を自分でできるようにリハビリする際にもよさそうです