ある調査によると、コロナ禍の前と後(=テレワークを始める前後)で「ノートに手書きする頻度」は大きく変わっていなかった、とのこと。つまり、オフィスにいるかどうかは特に関係なく、仕事をしている限り、手書きの重要性は変わらない……とも解釈できるわけで。
言われてみれば確かに、リモート会議中には手書きでメモを取っているし、企画のアイデアスケッチだって相変わらずノートにダーッと殴り書きしています。ノートやメモ帳の消費量は、そんなに変わってないかも。
ところで今、「ノートにダーッと殴り書き」って言いましたけど、この“殴り書き”をするのに最適な紙と筆記具の組み合わせって、考えたことありますか?
たとえばボールペンにも、ボール径の太/細に加え、スルスルの低粘度油性やサラサラのゲルなど、いろいろな書き味があるのはご存じでしょう。殴り書きにはシャーペン派、という人もいるかも。さらに、紙にだって表面がツルツルかザラザラか、さらには厚さや硬さ、コシ、インクの吸水性といったパラメータが無数にあります。紙と筆記具にそれぞれパラメータがあるなら、つまり、組み合わせによる相性の良し悪しがあるというのも、当然じゃないですか?
文房具メーカーのコクヨが、この「紙とペンの組み合わせ、どうする問題」に真っ向から取り組んだすえに生み出されたのが、2021年4月21日(※)に全国発売される新ブランド「PERPANEP」(以下、ペルパネプ)です。
※2021年3月17日から一部店舗で先行販売あり
紙とペンの相性を考えた、コクヨの新ブランド「PERPANEP(ペルパネプ)」。PAPERとPENのアナグラムが名前の元に
「ペルパネプ」は、まったく性質の異なる3タイプの紙(ノート)と、3タイプの筆記具からなる組み合わせが楽しめるとのことですが、う〜ん、さすがに実際に使ってみないと、どういう感じなのかわかりません。話を聞いただけじゃなぁ……。
そこで今回は、2021年2月にリニューアルオープンしたばかりの「コクヨ品川ライブオフィス」へおジャマして、紙と筆記具、どう組み合わせるのが面白そうかを確認してきました。
紙は、A5サイズのノートで展開。左から「TSURU TSURU」、「SARA SARA」、「ZARA ZARA」
3タイプの原紙に、それぞれ5種類の罫線がラインアップ。中央分割の「ステノ罫」が割と珍しいかも
3タイプの原紙に、それぞれ5種類の罫線がラインアップ。中央分割の「ステノ罫」が割と珍しいかも
紙のラインアップは、「TSURU TSURU」「SARA SARA」「ZARA ZARA」の3つ。特徴はもう言うまでもなく、名前のとおりに表面がツルツル、サラサラ、ザラザラってことですね。これらに加え、5タイプの罫線がそれぞれ選べる仕様です。
紙の表面の質感は、筆記具との組み合わせにおいて最重要ポイント。今回は、それぞれの紙をロールでド〜ンと用意してもらっているので、思う存分に相性を確認させてもらいましょう。
「紙はたっぷりありますので、好きなだけ試してください!」とコクヨの広報さん
言われるまでもなく、好き放題に試し書きさせてもらいました
まず、「TSURU TSURU」ですが、う〜ん、これは確かにツルツルとしか表現できないかも。表面を手でなでても抵抗感がなく、とにかくツルツルスベスベ。あと、コシもかなり強めな印象です。
これに組み合わせる一例としてコクヨが推奨するのが、水性の極細サインペン「ファインライター」ということで、書いてみると……、おおお、どこまでもペン先が滑る! やばい、超ツルーン!
「ファインライター」は、水性インクをプラペンチップから染み出させて書くものなので、まず筆圧を必要としません。それを、超高平滑なツルツル紙の上で走らせるわけですから、感覚的にはほとんどアイスバーンです。
滑らかを超えて、ツルツルとしか表現できない組み合わせ! 殴り書きするにはめちゃくちゃ楽しいかも
しかも、「TSURU TSURU」は3タイプの中で最も密度が高いので、ペン先が紙表面に沈むことがありません。つまり引っかかりがないので、止まらない。これはちょっと、ほかでは味わったことのない感覚だと思います。
さらに、「ファインライター」はペン先チップが尖るように削られているので、書き続けて筆記角度がかなり寝てしまっても、まだ書ける!(従来の細字サインペンは、チップ先端にカドがあるので、寝かせると書けなくなる)
ツルツルーッと滑らせるように書くことに特化した極スパルタンな筆記感は、お好きな人には最強の組み合わせになり得るはず。逆に、苦手な人には絶対無理かも……。
左が一般的な細字サインペンで、右が「ファインライター」。先端チップの尖り具合が、明らかに違います
次に「SARA SARA」ですが、こちらは一転、ベーシックな感触です。ザ・普通にいい紙、って感じ。
触れるとサラッと滑らかで、密度もさほど詰まった感じじゃない。めっちゃピーキーなツルツル感を味わった後だと、思わずホッとする安心感というか。
一応、「サラサクリップ」がオススメとなっていますが、実は万年筆でも鉛筆でもマーカーでも、何でも問題なし。受け入れ幅の広さが、「SARA SARA」の魅力かも
これに組み合わせるオススメペンは、ゲルインクボールペンの「サラサクリップ」。ちなみに、「サラサ」はご存じのとおりゼブラの製品ですが、「ペルパネプ」ブランドのアイテムとして、特別な白軸仕様でラインアップされています。
おなじみのサラサラした書き味の「サラサ」と、サラサラ紙の組み合わせですから、これはもうまったく不満の出しようがないレベルの気持ちよさ。あー、書きやすーい。
特別な印象はありませんが、だからこそ万人が受け入れられる紙と言えるでしょう。
ザラザラだけど、つんのめるような引っかかりはなし。あくまでも、書きやすいレベルでのザラザラ感です
最後の「ZARA ZARA」は、表面をなでるとはっきりと凹凸がわかるザラザラ感触。
とは言っても、「マーメイド」や「サーブル」(どちらも凹凸感で知られるデザインペーパー)ほどではなく、あくまでも筆記用紙として実用範囲に収まったレベルでしょう。
密度も3タイプの中で最も低く、硬めのペンで筆圧をかけると沈み込みが感じられるほど。
3種の紙を顕微鏡で拡大してみると、繊維の密度がまったく異なる! これが書き味の大きな差に
オススメの組み合わせは、万年筆の「プレピー」。プラチナ万年筆の低価格万年筆として人気の製品ですが、こちらも「サラサ」と同様に、「ペルパネプ」ブランドの白軸仕様で用意されています。
筆圧をかけずにニブを走らせると、指先に細かな凹凸を乗り越えるザリザリという振動が伝わってきて、これがとても気持ちいい! 感覚としては、裸足で芝生を歩くのと似ているかも。
ペン先が走りにくいので、落ち着いて書けるのもポイント。悪筆の人でも、これなら整った字が書きやすいと思います。
……と、まずはコクヨオススメの組み合わせで試してみましたが、自分でまったく別の可能性を探してみるのも、当然アリでしょう。
あくまでも個人的な好みですが、「ZARA ZARA」+「0.5mmシャープペンシルの2B芯」は、凹凸に合わせて芯が削れていく感触が非常に快感。しかも、クッキリと筆跡が残るので、「あー、書いたなー!」という充実感もたっぷりです。その代わり、芯の減るスピードもシャレになりませんが。
恐ろしい勢いで芯が減っていく「ZARA ZARA」×2Bのシャーペン。万人にオススメできませんが、個人的には大好きな組み合わせです
店頭販売時には、相性を確認できる試筆用紙付きの什器も用意されるそうです
もちろん、相性悪すぎ!という組み合わせも見つけました。たとえば、「TSURU TSURU」は平滑度が高過ぎて、油性ボールペンではボールが空回りして書けないこともあったり。とは言え、自分でそういうマッチングをひとつひとつ試してみるのも、「ペルパネプ」の楽しみと言えます。
殴り書きにせよ、ゆったり落ち着いて文字を埋めるにせよ、自分の筆記スタイルに合わせて、紙と筆記具を選べば、確実に快適性はアップします。なお、価格は、ノート(A5サイズ/60枚)が各990円(税込)、「ファインライター」が220円(税込)、「サラサクリップ」が143円(税込)、「プレピー」が440円(税込)。
店頭で見つけたら、まずは試し書きを!
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。