人間は、大きく「指サック平気」と「指サック苦手」の2つに分けられます。そして、人間のおよそ9割は、「指サック苦手」派です(筆者調べ)。
ザッと思いつくだけでも、あの指が締め付けられる感じが気持ち悪いし、中が蒸れて不愉快だし、着け外しも面倒くさいし……と、指サックには好印象を得られる要素がありません。
それでも、書類をめくるのにないと困るから、という消極的理由により使わざるを得ないわけで、何とも困った話です。コロナ禍の昨今、指をなめるなんてのは、衛生的に絶対NGですし。
大量に紙をめくる際に、指サックは必須なんだけど、それでもやっぱり快適じゃない……
もちろん、指全体をカバーしないリング型指サックのように、不快感を少しでも減らす製品は出ているんですが、それでもやはり締め付け感は否めないし、少ないながらも装着の手間はかかります。「締め付けなし」「蒸れなし」「秒で着脱できる」指サックというのは、世の中にないの? 無理なの?
カツマタデザインの「フィンガースリッパ」は、先にあげた問題点をすべてクリアできる新しい指サックです。
どういう理屈でそういう無理を通したのかというと、それはもう、現物を見ていただければご理解いただけるでしょう。
見たまんま、シリコンゴム製のスリッパ「フィンガースリッパ」(カツマタデザイン)
そう、答えはスリッパ型にありました。
たとえば、靴は締め付けがあるし、蒸れるし、すぐには脱ぎ履きできないけど、スリッパなら問題ありませんよね。であれば、指サックもスリッパにしちゃえばいいんじゃないか、という発想です。おお、なるほど!
指にスポッとつっかけるだけ。おそらく史上最速で装着できる指サックでしょう
摩擦力はさほど高くないけど、ちょっと使うだけならこれで十分
指に装着した姿は、あからさまに冗談っぽいですが、実際に使ってみると、見た目よりはかなり実用的。
もちろん、従来の指に密着させる指サックよりは違和感もあるし、紙への摩擦もやや弱め。ですが、カサカサに乾いた指よりは確実にスムーズにめくれると感じました。
ソールの内外には、それぞれデコボコのモールドが付いており、インソール側は指先から抜け落ちない滑り止めに。アウトソール側は、つかむものへグリップを効かせる役目を担っています。
内側のデコボコモールドは、指の腹にフィットするため、かなり脱げにくくなります
何より、「あ、今、指サックあると助かるな」と思った瞬間にサッと指に履けるのがすばらしい。
履き口を大きめにとった形状で、指をズボッと突っ込むだけで装着完了。使い終わったらすぐに脱げばいいので、正直、指が蒸れるヒマがないという感じ。
“作業中は常時装着しっぱなし”という指サックの概念を大きく覆した、“必要な時だけちょっとつっかける”ための指サックです。
何なら片手だけで着脱可能。両手を使わず装着できる指サックは、今までなかったと思います
ちなみに、製品のコンセプトとしては、事務用品というよりは、どちらかと言うと家庭用雑貨寄り。
パッケージにも、「指の保護・滑り止め・熱い物をつかめる」と列記されているとおり、シリコンゴムの耐熱性を生かして、アツアツのお皿を指先でつまんだりもできるように作られています。
たとえば、冷凍食品の鍋焼きうどんをコンロから持ち上げる際など、いちいち鍋つかみミトンを手に装着するのは面倒ですが、指にスリッパを履くだけなら簡単でしょう。
パッケージには、グラタン皿をスリッパで持ち上げている写真も。実は、紙めくり用途よりもこっちがメイン?
シリコンの耐熱温度は、200℃以上なので、グツグツに煮立った鍋焼きうどんのアルミ鍋も平気でつかめました
ともあれ、キッチンで使うにしても事務仕事に使うにしても、必要な時だけサッと履けるスリッパ型はナイスアイデア!という印象でした。
指サックの着脱が面倒くさくないだけで、作業効率はちょっと上がるんじゃないかと思います。
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。