マネー連載
FP山崎俊輔のマネーリテラシー向上委員会

ビットコインやFXは投資でなく投機?

ファイナンシャルプランナーの山崎です。前回は「投資デビューで失敗したくない人は『つみたてNISA』でスタートしよう」をテーマに、資産形成の大切さや「つみたてNISA」のメリットを説明しました。早速、つみたてNISAで投資を始めた人も多いでしょう。今回は、少しずつ投資や資産運用に興味がわき始めた人や慣れ始めた人が、いま流行りのビットコイン(仮想通貨)やFXに挑戦してもよいのか、お伝えします。

まずFXを「投資」と考える誤解から解いてみよう

たぶん、テレビやネットのCMの印象が大きく影響しているのでしょうが、「初めての投資としてFX」という人が結構いるようです。フィデリティ退職・投資教育研究所のサラリーマン1万人アンケート(2016)では、12.5%の人が投資対象商品の1つとしてFXを挙げています。8人に1人という割合です。

サラリーマン1万人アンケート 2016(フィデリティ退職・投資教育研究所レポート)

FXとは外国為替証拠金取引のことです。円とドル、円とユーロのように、外国通貨を売買して利益を出そうとするものです。

ニュースを見ている人は「1ドルがXX円になった(円高になった、円安になった)」ということが経済ニュースでよく取り上げられることを知っていると思います。旅行に出かけるときは外貨に両替しますから、「前の旅行のときと比べて円高だからたくさん外貨がもらえた」とか「円安になっちゃったのであまり外貨に交換できなかった」と感じたこともあるでしょう。

外国為替相場の動きは単純でない

両替、という言葉が意味するように、外国為替相場そのものは「交換レート」です。円を使う人と外貨を使う人との間で、国際間の取引競争、2国の経済情勢、金利の差などを踏まえて交換レートは決まります。

基本的には「経済などで比べて強い国の通貨が高くなる」という構図がありますが、最近ではどちらかの国だけが一方的に強くなることはなく、単純な構図が成立しなくなっています。

たとえば、円とドルの交換レートは、ドルとユーロ、円と英ポンド、英ポンドとドル、ドルとブラジルレアルなど、さまざまな通貨の交換レートの変化が影響します。さらに、それぞれの通貨の交換レートには各国の経済や政治の動きなども反映されます。とても複雑なのです。

さて、ここまでの解説を読んで「それでは円とドル、どっちに賭ければ儲かるのか」わかるでしょうか。たぶん、わからないはずです。もしわかっていないなら、軽い気持ちで手を出すべきではありません。

ほかの人が儲かっていれば自分も儲かる?

ところがFXに手を出す人のほとんどは甘く考えています。なぜFXで儲かるのか、と質問すると、たいていの人が「ほかの人が儲かっているから」と答えます(ビットコインでも同じです)。これは実に危ない発言といえます。値動きの理由もそこから得られるお金の性格も、自分の言葉で説明できていないためです。

あるFX会社のホームページには一時期、口座開設した人の9割は残高をゼロにして戻ってこない、と書かれていました。値動きの理由もわからない人がよくわからず売買を繰り返した結末は、厳しいものなのです。

FXはなぜ投資でないのか

FXは、そもそも論でいって「投資」にならないという特徴があります。

ここでいう「投資」というのは実態としての経済活動や経済の成長にお金を投じることで、企業の発展や経済の成長から利益を得る、ということです。簡単にいえば、トヨタ自動車に投資したらプリウスを開発してさらに成長したので株が値上がりした、という感じです。

この場合、世の中が成長しますし(ハイブリッド車が出回りガソリンの消費も排気ガスも減った)、企業は成長しますし(トヨタ自動車の売り上げが伸びた)、あなたの懐も豊かになります(値上がりした株を売って儲けた)。三方一両損どころか、三方すべてがプラスになりえます。

しかしFXではこうはいきません。為替取引は、基本的に通貨という成長しないモノを交換するだけです。売り手と買い手は一対で、どちらかが得をし、どちらかが損をする関係です。もちろん双方の売買タイミングは異なるのでどちらもプラスになることはありえますが、為替そのものに企業のような成長の力がない以上、経済成長の果実がシェアされることはありません。

これはつまり「自分の見立て(いまが高いか安いか)をお互いが賭け合う」ことです。判断が甘かった人、資金の余力が少なかった人ほど負けることになります。資金余力の問題は個人にとっては大きく、「マイナス400万円になっても何の問題もない人」と「マイナス10万円で手を引かなければいけない人」のどっちが賭けに強いかは明らかです。

こういう取引は「投資」ではなく「投機」といいます。三方すべてプラス、ということはここには絶対にないのです。

FXの「投機性」を助長しているレバレッジ

また、FXをさらに危なくしているのは、レバレッジです。レバレッジは「てこ」の意味ですが、投資においては実際の資金以上の金額で売買できる取引条件を意味します。

一般的なFXでは25倍のレバレッジが設定できます。これは、100万円の入金で2500万円相当の外貨を購入できることを意味します。仮に1ドル110円のときに2500万円相当のドルを買ったとすれば、これは22万7272ドルを取得したことになります(手数料は除く)。ここでもし1ドルが112円に振れたとすれば同じドルの価値は円換算で2545万4545円ですから、100万円の元手が45万円増えたということになるわけです。

中には、外貨建て資産を保有する必要性から、外貨預金よりも取引コストが安いFXをレバレッジなし(1倍)など低レバレッジで利用している人もいるかもしれません。しかし、たいていは、やはりレバレッジを大きくして儲ける機会を狙っている、というのが実情ではないでしょうか。

レバレッジがメリットになるのはFXで勝てる人だけ

レバレッジをかけるとその分値動きが大きくなるため、少額の投資資金でも大きな利益を獲得するチャンスが得られます。そのためメリットのあるように語られがちですが、私たちは都合のよいほうだけ見てしまいます。つまり儲かったときだけです。

実際、外国為替相場は逆にも振れますから、先の例で取得したドルが1ドル106円まで円高に振れたとすれば、円換算で2409万円になります。2500万円が2409万円になったので、91万円のマイナスです。入金した100万円の軍資金は9万円に減ります。

実際には、元手が20万円くらいマイナスになったところで怖くて売ってしまうでしょう。もう少しガマンしていれば為替相場が回復したとしても(しないかもしれないが)、私たちは恐怖に勝てないからです。たった50銭くらいの「負け」を繰り返すことで、お金はどんどん減っていくことになります。

ネットスラングではFXで負けて資金がどんどん減っていく様子を「溶かす」と形容しますが、25倍のスピードでお金が減っていく様をよく表現していると思います。
(関連記事:始める前に知っておきたいFXの2大リスク

FX以上に投機的なビットコイン(仮想通貨)

FX以上に投機的といえるのが、急上昇・急落を繰り返しているのが話題になっているビットコインなどの仮想通貨です。ビットコイン相場は2017年11月下旬に1ビットコイン=100万円をつけたあたりから急ピッチで上昇し、12月中旬には220万円程度まで値上がりしました。1か月もしないで2倍になるというのは、かなりハイペースです。

ところが1週間もせずに40%も値下がりしたり、かといえばまた200万円まで急上昇したりと乱高下を繰り返しているうち、とうとうピーク時から半値ぐらいになってしまいました。とても不安定な値動きをしています。

ビットコインの値動き(TradingViewより引用)

TradingViewより引用

取引は簡単に始められるが・・・

ビットコインなど仮想通貨に手を出して大もうけした人が「億り人」と呼ばれて持ち上げられている記事が射幸心をあおっていましたから、もしかすると、興味がわいてアカウントを開設した人もいるかもしれません。口座開設して取引するのは、スマホアプリで簡単にできます。

一方、取引に大失敗して、とんでもない負債を抱えた人の阿鼻叫喚のまとめ記事を目にすると、怖さを感じている人もいるでしょう。

仮想通貨には仮想通貨ならではの「危うさ」がさらに潜んでいます。

ビットコイン(仮想通貨)は「信用」が定まっていない

あなたはビットコインの価値が何によって成立しているか考えたことがあるでしょうか。円やドルは、最終的には政府の信任によって「10,000円」「100ドル」の価値が保証されています。実際の紙切れには同じ価値はないのにもかかわらず、です。

貨幣ではない金や宝石は、その価値そのものが価格になっています。

それでは、仮想通貨の価値は何でしょう。あえていえば、国の信頼ではなく"暗号"への信頼でしょうか。しかし、これから先、どこまで保証されるかは定かではありません。暗号が破られ、仮想通貨の価値が紙くずになる可能性もあります。

現在起きている仮想通貨の消失騒ぎは、取引所のシステムがハッキングの被害を受けたことによるとされています。未成熟のシステムであるだけにこうしたリスクもゼロではありません。

仮想通貨が世の中の信認を得ていく可能性はありますが、それは単体で成立するかは未知数です。電子マネーのように、国の発行する貨幣との交換の約束がついて回るものとは異なるからです。

値上がりする理由がわからないなら取引するのはやめよう

いまのめちゃくちゃな値動きは、ビットコインなど仮想通貨の「価値」がまだ定まっていないことに起因します。あなたがもし「価値がどこにあるかなんて考えたこともなかった」というなら、ビットコインなど仮想通貨の取引をすべきではないと思います。値上がりした理由がわからない人は、値下がりする理由も可能性も頭の中で整理できないからです。

FXやビットコインをギャンブルとして楽しめるか

正直にいうと、まともな資産形成として考えたときに、レバレッジを大きくしてFXをしたり、ビットコインを売買したりするのははおすすめできるものではありません。むしろ「そんなギャンブルはやめておけ」、というのが正直なところです。

「競馬のシーズンはG1レースごとに2,000円だけ賭ける」というような人は「財産のX%にあたる50万円だけFXやビットコインで楽しむが、それ以上は手を出さない」というような付き合いができるでしょう。

しかし「FXで負けるたびに定期預金から20万円ずつ振り込んでしまう人」や「ビットコインのチャートが気になって、仕事中に数分おきにスマホをチェックしてしまう人」はまったく向いていません。また「仕事の合間に稼いで生活資金を確保しよう」と安易に考えている人も、失敗するのがオチでしょう。

繰り返しますが、FXや仮想通貨の売買は投資ではありません。自分が投機的な行動をしているという自覚がなかったり、自分が保有する通貨の価値を自分なりに説明できなかったりする人は、取引すべきではないでしょう。

……といっても、おそらく何人かの人はビットコイン相場に手を出して大やけどをするだろうと思います。あなたの火遊びは誰かの利益になっていくのです。

※本記事は、執筆者個人または執筆者が所属する団体等の見解です。

山崎俊輔

山崎俊輔

フィナンシャル・ウィズダム代表。FPとして、現役世代のお金と幸せのバランスについてユニークな視点でアドバイスする。連載多数。アニメもゲームも愛するオタクで、マンガの蔵書は約4,000冊。

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