Googleが2018年4月26日に発売した無線LANルーター(Wi-Fiルーター)「Google Wifi」。インターネット検索大手のGoogleがなぜWi-Fiルーターを販売したのかは、発表会のレポートをご覧いただきたいが、アップルが「AirMac」の販売を終了したタイミングでGoogleがWi-Fiルーターを販売するというのは興味深い。早速試す機会を得たので、GW中に使ってみた。
おしゃれな化粧箱に入っているGoogle Wifi
Google WifiはIEEE802.11acに対応し、5GHz帯では最大876Mbps、2.4GHz帯では最大300Mbpsの無線通信が可能な家庭用のWi-Fiルーターだ。有線はWAN、LANともにギガビットに対応している。価格.com最安価格は16,200円(2018年5月7日時点)。他メーカーであれば、1万円以下で同等スペックのWi-Fiルーターを購入できるので、価格だけを見ると割高だ。
ホワイトの丸いボディは、同社のスマートスピーカー「Google Home」風
本体のほかに、電源アダプター(15W)、2mのLANケーブル、クイックスタートガイド、保証書、安全カードが同梱されている
底面。電源はUSB Type-Cポート
そんなGoogle Wifiの特徴は、メッシュネットワークへの対応、設定アプリの使いやすさ、スマートスピーカー風の円筒形の外観の3つ。
メッシュネットワークは、1台のルーターではカバーしきれない場合に、複数のルーターが相互接続し、広いエリアをカバーするというもの。そのため、Google Wifiには単品のほかに、3台パックも用意されている。なお、メッシュネットワークにはIEEE 802.11sという標準規格があるが、Google Wifiは独自仕様となっており、他社の対応ルーターとの連携はできないという。メッシュネットワークを構築したいという人は、Google Wifiの3台パックを購入するといいだろう。
このメッシュネットワークは、広い庭のある家や壁の多い家などでの利用を想定した機能だが、日本の住環境を考えると、必要な人は限られるのではないだろうか。一般的な家庭であれば、設置する場所を工夫すれば、1台のGoogle Wifiでカバーできるはずだし、Wi-Fi中継器を使ったほうが安く済みそうだ。
このほかネットワーク関連では、2.4GHz帯と5GHz帯のそれぞれで定期的に全チャネルの混雑状況をスキャンし、より空いているチャネルに切り替える機能や、端末との通信に2.4GHz帯と5GHz帯の両方が利用可能な場合に、より通信速度が速いほうで接続する機能などを備える。ネットワークを効率的に利用するためのこれらの機能は、他社の最新ルーターにも搭載されている。
Google Wifiを使ってみて、一番すぐれていると感じたのが、設定を含むネットワーク管理機能だ。「Google Wifi」というアプリをダウンロードし、アプリの指示に従って操作すれば、簡単に接続設定ができる。基本は「次へ」をタップするだけで、作業と言えるのは、Google Wifiの底部にあるQRコードを読み取ることと、ネットワーク名およびパスワードを設定すること。IPアドレスが何だ、パスワードが何だと迷わずに済む。ただし、WPSという簡単接続設定には対応していないので、その点は注意してもらいたい。
Google Wifiのセットアップは、同名のアプリを利用するため、セットアップにはAndroid 4.0以上およびiOS 8以上を搭載したモバイル端末が必要となる。アプリをダウンロードしたら、Googleアカウントを利用してログインする
ログインすると「Google Wifiを設定しましょう」という画面が表示され、右下に表示される指示に従って設定作業を進める。Bluetooth Smart対応なので、設定時はBluetoothを有効にしておこう
QRコードをスキャンするように指示されるので、本体底面のQRコードをスキャン。Google Wifiを設置する場所を選択するのは、試せていないので推測となるが、メッシュネットワークを構築する際にどこに設置しているかわかりやすくするためだと思われる
Wi-Fiネットワーク名(SSID)とパスワードを決める。SSIDには絵文字が使える
設定したSSID(miura_wifi)に接続し、Google Wifiを再起動すればセットアップは完了
アプリではネットワークの状況や速度などをチェックできる
「ネットワークの詳細設定」もアプリから確認し、設定できる。ルーターとして使うNAT(標準)モードのほか、ブリッジモードでも利用可能
家庭での利用を想定した「ファミリーWi-Fi」という機能も便利そうだ。主な使い方は、子どものスマートフォンやタブレットの利用を制限するというもの。「子ども」「息子」「娘」など、わかりやすいラベルを作成し、使用時間をコントロールしたり、アダルトコンテンツへのアクセスを制限したりできる。ネットワークの使用状況も確認できるので、何らかの抜け道で子どもがネットに接続している場合も確認ができる。
このほか、動画配信用に優先端末を設定したり、お客さん用のゲストネットワークを設定したりすることもアプリ上でできる。
ファミリーWi-Fiのセットアップ画面。まずは、ラベルを作成し、子どもが使っている端末をラベルに追加する
アダルトコンテンツへのアクセスに制限をかけたり、利用できない時間を設定したりできる。同等の機能は他社のWi-Fiルーターにもあるが、アプリが直感的に使えるのでわかりやすいのが魅力だ
円筒形のボディは、見た目のよさとアンテナの性能を最大限発揮するための形状だ。Wi-Fiルーターは障害物のない場所に置くのが理想的だが、黒くていかにもなデザインだと、どうしてもテレビの裏や電話機の横、棚の中などに置きがちになる。筆者もレコーダーや電話機のある部屋の端っこに設置している。スマートスピーカー風のシンプルな見た目のGoogle Wifiなら部屋の目につく場所に設置しても違和感がない。
また、ボディの上半分には、電波をより強力で広範囲に広げる増幅器と長距離アンテナを等間隔に配置し、360°全方位に安定した電波を届けられるように、内部のハードウェア設計にもこだわっているという。
本体サイズは直径106.12mm、高さが68.75mm
黒い箱型のWi-Fiルーターと比べるとスタイリッシュで、部屋の目につく場所に設置しても違和感はなさそうだ。切れ目部分のLEDの光量もカスタマイズできる
数日間試しただけで、まだGoogle Wifiのすべてをチェックできたわけではないが、使い始めは本当に簡単だった。価格は高いものの、家族用のルーターとしては必要十分な機能がそろっており、アプリで直感的に設定や管理ができるのも素晴らしい。子どもがYouTubeばかり見ていて困っているという家庭にはピッタリなのではないだろうか。メッシュネットワークは、筆者のような狭い家では不要だが、どのような使い勝手なのか機会があれば試してみたいところだ。
Wi-Fiルーターの大手国内メーカーにインタビューしたときに、サポートの苦労話を聞いたことがある。どんなに設定や管理が簡単といっても、プロバイダー、モデム、端末など、ネットがうまく繋がらないのには、いろいろな問題があるものだ。Googleのサポートも、その点は苦労するかもしれない。ちなみに、Google Wifiのテクニカルサポートは、アプリから直接電話およびチャットにて受けられる。時間は午前9時から午後6時まで。