筆者はもともとインドア派であり、価格.comマガジンで毎月実施している格安SIMの速度調査や家族サービス以外で遠方に出かける機会があまりないためか、新型コロナウイルス感染症にともなう外出自粛や県境をまたぐ移動制限の下でも、個人的にはそれほど強いストレスを感じることなく過ごしてきました。
とはいえ、地元である長野県佐久市から一歩も出ない日々が6か月以上も続くというのは、記憶にある限り初めての経験です。「日本で海から一番遠い地点」がある佐久市を離れて海を見に行くのが夏恒例の家族行事でしたが、今年はそれもありません。さすがの筆者も「どこかに旅がしたい」と感じるようになりましたが、いつでも好きな時にどこでも行きたい場所へ旅行するのはまだ難しく、速度調査も佐久市のみで実施する状況が続いています。
そこで今回は、旅行に出かけたい欲求を少しでも満足させるべく、自宅から出ることなく別の土地へ旅した気分が味わえるスマートフォン向けのVRゴーグルを購入してみました。
今回購入したエレコムの「VRG-D02PBK」は、内部にスマートフォンをセットするタイプのVRゴーグルです。
本製品の構造そのものは従来のVRゴーグルと同様で、本体にスマートフォンをセットし、頭にヘッドバンドをかけて装着します。筆者の頭は市販の帽子やヘルメットがややきつい程度の大きさですが、ヘッドバンドのアジャスターには余裕があり、本製品を装着してもきつく感じることはありませんでした。
VRG-D02PBKの外観。スマートフォンをセットするタイプのVRゴーグルなので、本製品そのものは電源などを必要としません
対応するスマートフォンは画面サイズが4.0〜6.5インチ、本体サイズが59〜89(幅)×115〜165(高さ)×6〜12(厚み)mmです。筆者が所有するアップルの「iPhone SE」(第2世代、画面サイズは4.7インチ)とシャープの「AQUOS sense3」(画面サイズは5.5インチ)は、どちらも問題なく装着することができました。
フロントカバーを開けたところ。サイズが大きめのスマートフォンはゴーグルの左右方向(スマートフォンの上下方向)の中心を合わせるだけでセットできます
サイズ(特に横幅)が小さめのスマートフォンは、左右と上下がどちらもゴーグルの中心になるよう位置を合わせてからフロントカバーを閉じます
VRゴーグルのなかにはスマートフォンが完全に隠されてしまうものもありますが、本製品ではスマートフォンの上下端にあたるフロントカバーの左右が開放されているので、有線イヤホンや充電ケーブルをつないだ状態で利用することができます。スマートフォンの発熱が気になる場合は、熱がこもりにくくなるようにフロントカバーからフロントパネルを取り外すことも可能です。
フロントパネルを取り外したところ。放熱が気になる場合は外した状態で利用できます
本製品のレンズには歪みを抑えた非球面光学レンズが採用されていて、レンズ同士の間隔を広げたり狭めたりする目幅調整ダイヤルと、左右のピントを個別に調整できるピント調整ダイヤルが備わっています。
個人的にうれしかったのは目幅調整ダイヤルの存在です。前述のように筆者は頭のサイズが大きめであるせいか、左右の瞳の間隔(瞳孔間距離)も7cm近くあります。レンズが固定されているVRゴーグルでは瞳とレンズの中心が合わずに違和感を覚えることもあるのですが、本製品では目幅調整ダイヤルを使ってレンズの光学中心と瞳の中心を近づけることができるため、違和感なく映像を楽しむことができました。
また、左右のレンズのピントを個別に調整できることに加えて、本製品では眼鏡をかけたままの装着も可能です(眼鏡の幅はおよそ142mmまで対応、形状によっては使用不可)。右目と左目の視力に差がある人や、乱視が強くて本製品のレンズだけではピントが合わないような人でも、VRコンテンツを楽しみやすいと思われます。
本体上面にある3つのダイヤル(赤丸)のうち、中央は目幅調整ダイヤル、両端は左右レンズのピント調整ダイヤル
フェイスパッド部分が広く開口しているので、幅およそ142mm以下の眼鏡であればかけたまま利用できる場合も。正面から眼鏡をまっすぐ差し込むようにすると上手く装着できました(ゴーグルの着脱時や使用時に眼鏡が破損しないよう注意が必要です)
眼鏡ユーザーとして便利に感じる機能を備えたVRG-D02PBKですが、動画の視聴中は本製品にセットされているスマートフォンを操作することができないため、音量を調整するだけでもスマートフォンを取り出さなければならないのが面倒です。そこで今回はVRゴーグルに加えてエレコムのVR用リモコン「JC-VRR01BK」も購入してみました。
JC-VRR01BKはスマートフォンを操作するためのワイヤレスリモコンです。対応するスマートフォンはAndroid 5.0以降とiOS 6.0以降の機種となります。VR用を謳っていますが、VRゴーグルを使っていない状況でも利用することが可能です。なお、電源には単4電池2本を使用します。
JC-VRR01BKの外観。再生/一時停止や音量調整といった動画関連のボタンに加えて、マウスカーソルを移動させるためのアナログスティックやクリックボタン(Androidのみ)、ホームボタンなどが備わっています
本製品とスマートフォンはBluetooth経由で接続されるため、事前にペアリング操作が必要です。利用したいスマートフォンにあわせて本製品の電源ボタンをオンに切り替え、ペアリングボタンを3秒間長押しすると、スマートフォンから本製品を検索できるようになります。スマートフォンの画面に表示された「ELECOM VR Controller」をタップし、ペアリングボタンの脇にあるLEDが消灯すれば、ペアリング操作は完了です。
ただし、iOSではマウスカーソルの操作などが利用できず、コンテンツの再生/停止、早送り/巻戻し、音量調整が主な機能となります。コンテンツの一時停止ができるだけでも利便性が大幅に増しますが、本製品の機能をフル活用するにはAndroidスマートフォンが必要となります。
リモコンの初期設定が終わったところで、さっそくVRゴーグルとリモコンを組み合わせて使ってみました。スマートフォン向けのVRコンテンツにはいろいろなものがありますが、ここではYouTubeにアップロードされているVR動画を再生してみました。
すでにご存じの方も多いかと思いますが、YouTubeにはVRゴーグルで楽しめる360°動画や3D動画が数多くアップロードされています。任意のキーワードで動画を検索してから検索フィルタを開き、「特徴」の項目から「360°」「VR180」「3D」などを選択することで、検索結果をVRゴーグル向けの動画で絞り込むことが可能です。
YouTubeでは検索フィルタの「特徴」から360°動画や3D動画を絞り込むことができます(複数選択可能)
動画をVRゴーグル向けのCardboardモードで再生するには、一旦通常のモードで再生してから画面内のCardboardアイコンをタップします。スマートフォンをゴーグルにセットする間も動画は進んでしまうので、画面をタップするか接続したリモコンで操作するなどして再生を一時停止しておくといいでしょう(リモコンがあれば装着後に巻き戻すこともできます)。
なお、対応動画を連続視聴する場合はCardboardモードが維持されますが、検索結果から別の動画を選び直すような場合には通常のモードに戻ってしまいます。動画の再生時間は数分〜十数分程度と短めのものが多く、その都度Cardboardモードに切り替えるのが面倒に感じられるかもしれません。再生リストに登録されたものであれば連続再生できるので、自分でリストを作成して見たい動画を登録するか、公開されている再生リストを利用するのがおすすめです。
見たい動画を再生してからCardboardのアイコン(赤丸)をタップします(画像は「東京2020オリンピック聖火到着式ブルーインパルスコクピット映像」より、次も同様)
表示がCardboardモードに切り替わったら、スマートフォンをゴーグルにセットします
また、Androidの場合はリモコンの左クリックボタンを押すことで、画面内に動画のコントロールボタンを表示することもできます。一時停止や再生などはリモコンのボタンだけで操作できますが、画面内ではシークバーから動画の再生位置を選ぶことも可能です。必要に応じて使い分けるといいでしょう。
左クリックボタンを押すことで画面内にコントロールボタンを表示させることが可能です
VRゴーグルを体験したことがある人にとっては今さらかと思いますが、立体視に対応していない360°動画であっても、海外の観光地、はるか雲の上、陽の光が届かない深海といった場所まで実際に行ってみたかのような没入感を楽しむことができます。
操作の一例としてスクリーンショットの撮影に使わせていただいた「東京2020オリンピック聖火到着式ブルーインパルスコクピット映像」では、T-4練習機のコクピットで撮影された飛行中の映像を楽しめます。また、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が公開している「深海VR - 海底に降り立つ(特別版)」では、実際に深海で撮影された貴重な映像を目にすることができます。一般の人間には旅客機以外のジェット機や深海調査船に搭乗する機会はほぼありませんが、手持ちのスマートフォンとVRゴーグルがあれば、非日常な世界の景色をいつでもすぐに体験することが可能です。
今回はBluetooth経由で接続できるリモコンも購入してみましたが、VRゴーグルを装着したまま再生操作や音量調整ができるのは当初想像していた以上に快適でした。新型コロナウイルスの感染拡大にともない、以前のようには外出を楽しむこともままならない日々が続いています。自宅にいながら楽しめるVRゴーグルと視聴がはかどるワイヤレスリモコン、ストレス発散のために検討してみてはいかがでしょうか。
信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。