レビュー

極上のXperia。SIMフリー版「Xperia 1 II XQ-AT42」レビュー

「Xperia 1 II」のSIMフリーモデルである「XQ-AT42」が、10月30日から発売された。通信キャリア版をベースに、メモリーが12GBに、ストレージが256GBに強化されたパワーアップ版となる。価格.comに寄せられるユーザーレビューの「満足度」も4.90(2020年11月18日現在)と高評価。そんな本製品の使い勝手などをレビューする。

SIMフリー版はメモリーとストレージが容量アップ。テレビチューナーは非搭載

5Gスマートフォン「Xperia 1 II」のSIMフリー版である「XQ-AT42」は、デュアルSIMカードスロットを備えたDSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)対応となったほか、メモリーが8GBから12GBへ、ストレージが128GBから256GBへ増強されている。キャリアモデル同様にIPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵対応、NFC・FeliCaのワイヤレス通信ポート、ワイヤレス充電に対応しているが、フルセグ/ワンセグのテレビチューナーは非搭載になっている。また、カラーバリエーションはホワイトとパープルに加えて、SIMフリー版専用のフロストブラックの計3色が用意される。

「XQ-AT42」独自のフロストブラック。磨りガラスのような質感で、指紋汚れが比較的目立ちにくい

「XQ-AT42」独自のフロストブラック。磨りガラスのような質感で、指紋汚れが比較的目立ちにくい

プリインストールされるアプリを見ると、当然ではあるが、通信キャリア系のアプリがなくなり、アップデートを実行する前の最初期状態では、GmailやYouTubeなどのGoogle Mobile Serviceの各種アプリと、ゲーム「Call of Duty Mobile」、「Facebook」と「LinkedIn」の各SNSアプリ、ソニー提供のアプリなどがインストールされているだけである。なお、検証機のストレージは初期状態で25.69GBの容量を使用しており、約230GBという膨大な空き容量があった。

アップデートを実行する前の最初期状態のインストールアプリ一覧。GmailやYouTubeなどのGoogle Mobile Serviceの各種アプリとソニー提供のアプリが主体で、キャリア版と比べると非常に少ない印象

アップデートを実行する前の最初期状態のインストールアプリ一覧。GmailやYouTubeなどのGoogle Mobile Serviceの各種アプリとソニー提供のアプリが主体で、キャリア版と比べると非常に少ない印象

検証機は初期状態で、25.69GBのストレージを使用。230GBという広大な空き容量があった

検証機は初期状態で、25.69GBのストレージを使用。230GBという広大な空き容量があった

ボディサイズは、キャリアモデルと同じで、約72(幅)×166(高さ)×7.9(厚さ)mm、重量約181g。ディスプレイも3,840×1,644の4K表示に対応する約6.51インチの超縦長有機ELディスプレイとなっている。4K表示に対応するスマートフォンは現在では国内では唯一のものだ。ただし、4K表示が行えるのは、写真アプリやYouTubeアプリといった一部のアプリに限られている。

なお、ディスプレイのリフレッシュレートは60Hz駆動のままだが、電圧制御で残像感を90Hz(1.5倍速)相当に低減する残像低減技術を搭載する。姉妹機ともいえる「Xperia 5 II」のような120Hzの倍速駆動や、タッチサンプリングレートの高速化には対応していない。WebブラウザーやGoogle Mapなどのスクロールは「Xperia 5 II」のほうが高速に感じる。また、ゲームにおける操作感も「Xperia 5 II」のほうがすぐれている。もちろん本機でもゲームプレイは十分に可能だが、本機のディスプレイはゲームプレイというよりも、動画や静止画などをより高精細に表示するニーズに向いたものと言えるだろう。

4K表示は一部のアプリに限られるもの、静止画や動画の再生、YouTubeなど、よく使うアプリが対応している

4K表示は一部のアプリに限られるもの、静止画や動画の再生、YouTubeなど、よく使うアプリが対応している

電子書籍を表示させてみたところ。フルHD+相当に表示されるが、ルビはつぶれておらず特に粗さは感じない

電子書籍を表示させてみたところ。フルHD+相当に表示されるが、ルビはつぶれておらず特に粗さは感じない

搭載されるSoCは、ハイエンド向けの「Snapdragon 865 5G」。冒頭で触れたように12GBのメモリーと256GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSはAndroid 10だ。定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」のトータルスコアは554,254(内訳、CPU:182,005、GPU:208,658、MEM:90058、UX:73,533)で、 価格.comマガジンで計測したau版「SOG01」のスコア、534,780(内訳、CPU:180,265、GPU:203,882、MEM:79,315、UX:71,818)と比較すると、メモリーの性能を示す「MEM」の値が10,000ポイントほど伸びている。なお、CPUの処理性能を示す「GeekBench」の結果は、シングルコア:908、マルチコア:3,387だった。こちらも「SOG01」のシングルコア:894、マルチコア:3,255よりもスコアが向上していた。

体感速度についても、12GBの大容量メモリーのおかげで、タスクの切り替えが速い。特に大容量のゲームアプリを中断した場合、アプリが再起動になってしまうケースがキャリア版よりも明らかに少なく、動作自体はキャリア版に比べてもかなりスムーズに感じた。

AnTuTuベンチマークの計測結果。左が本機、右がau版「SOG01」のもの。メモリーの性能を表わす「MEM」のスコアが本機のほうが1万ポイントほど高い。増量されたメモリーの効果だろう

AnTuTuベンチマークの計測結果。左が本機、右がau版「SOG01」のもの。メモリーの性能を表わす「MEM」のスコアが本機のほうが1万ポイントほど高い。増量されたメモリーの効果だろう

CPU性能の計測に特化したベンチマークアプリ「GeekBench 5」の計測結果。左が本機、右がau版「SOG01」のもの。こちらもわずかだがスコアが伸びている

CPU性能の計測に特化したベンチマークアプリ「GeekBench 5」の計測結果。左が本機、右がau版「SOG01」のもの。こちらもわずかだがスコアが伸びている

美麗な映像が魅力だが、推奨スペックが「Snapdragon 845」以上という、超重量級オープンワールドRPG「原神」(miHoYo製)も、最高画質設定でスムーズに動作した

美麗な映像が魅力だが、推奨スペックが「Snapdragon 845」以上という、超重量級オープンワールドRPG「原神」(miHoYo製)も、最高画質設定でスムーズに動作した

4GのSIMとのマッチングも問題なし。5GのSIMは基本的にドコモ系とau系とソフトバンク系に対応

次にモバイルネットワークへの対応を見てみよう。本機は、SIMフリー版であるが、冒頭で触れたように2基のnanoSIMカードスロットを備えるDSDV対応となっている(1基はmicroSDXCメモリーカードスロットと排他利用)。注目の5G通信機能だが、対応バンドはn77/78/79のSub-6の3バンドとなり、ミリ波には対応していない。なお、5Gに関しては、4Gを併用するNSAモードのみの対応となり、5Gのフル機能に対応するSAモードには非対応だ。

nanoSIMカードスロットを2基搭載。そのうち1基はmicroSDXCメモリーカードとの排他仕様となっている

nanoSIMカードスロットを2基搭載。そのうち1基はmicroSDXCメモリーカードとの排他仕様となっている

本機で利用できる、通信キャリア4社のSub-6の周波数帯の対応状況だが、NTTドコモが利用するn78とn79には後日対応(スペック表では対応しているがNTTドコモのn78もアップデートで対応)、au、ソフトバンク、楽天モバイルの3キャリアが使うn77については「通信事業者によっては、端末が対応していても、通信できない場合がある」という注意がなされているが、実際は楽天モバイルのn77には接続できない。なお、auとソフトバンクについては接続確認が取れている。海外における5Gの動作は保証していない。(2020年11月19日内容訂正:5G対応キャリアについてメーカーの確認が取れた点を反映。)

いっぽう、4Gの対応バンドはB1/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/21/26/28/38/39/40/41/42で、国内4キャリアのコアバンド・プラチナバンドすべてに対応している。VoLTEも国内4キャリアすべてに対応しているので、国内で流通するSIMカードであれば、どれも問題なく使うことができる。

Xperia 1 IIの対応する5Gの3バンドと通信キャリアの対応関係

カメラについては、誰でもキレイに失敗しない写真が撮影できる懐の深さが魅力

本機のメインカメラは、約1,220万画素の超広角カメラ(焦点距離16mm)、約1,220万画素の標準カメラ(焦点距離24mm)、約1,220万画素の望遠カメラ(焦点距離70mm)、空間認識を行う3D iToFセンサーという組み合わせのクアッドカメラだ。また、超広角、標準、望遠の各カメラについては、「T*(ティスター)コーティング」が施されたZEISS監修のレンズを採用しているほか、標準、望遠カメラについては、光学式手ぶれ補正機構を備えている。フロントカメラは約800万画素だ。なお、瞳AFや毎秒20コマの連続撮影機能を備えたカメラアプリ「PhotographyPro」がプリインストールされている。

搭載されるカメラは、超広角、標準、望遠のトリプルカメラに、3D iToFセンサーを組み合わせたクアッドカメラだ

搭載されるカメラは、超広角、標準、望遠のトリプルカメラに、3D iToFセンサーを組み合わせたクアッドカメラだ

以下に、PhotographyProを使って撮影したメインカメラの作例を掲載する。断り書きのない場合、オートモードを使用している。また、3D iToFセンサーを搭載しない「Xperia 5 II」の作例比較も合わせて行った。

瞳AFや、毎秒20コマの連写などカメラ専用機並みの高度な機能を備える写真アプリ「PhotographyPro」がプリインストールされる

瞳AFや、毎秒20コマの連写などカメラ専用機並みの高度な機能を備える写真アプリ「PhotographyPro」がプリインストールされる

超広角カメラで撮影

背景のゆがみはあるものの、荒れやすい周辺部分まで画質が保たれている。全体的なトーンは落ち着いており、肉眼以上に空の色を強調したり、コントラストを高めるといったクセはない

背景のゆがみはあるものの、荒れやすい周辺部分まで画質が保たれている。全体的なトーンは落ち着いており、肉眼以上に空の色を強調したり、コントラストを高めるといったクセはない

標準カメラで撮影

上と同じシーンを標準カメラに切り替えて撮影した。色調の変化が少なく、解像感も十分だ

上と同じシーンを標準カメラに切り替えて撮影した。色調の変化が少なく、解像感も十分だ

望遠カメラで撮影

同じシーンを望遠カメラに切り替えて撮影した。超広角カメラを起点とすると約4.37倍のズームとなり、構図中央の植栽の葉までしっかり描写できる

同じシーンを望遠カメラに切り替えて撮影した。超広角カメラを起点とすると約4.37倍のズームとなり、構図中央の植栽の葉までしっかり描写できる

T*コーティングの逆光耐性をチェック

標準カメラで逆光の構図を撮影。ゴーストは現われているものの、コントラストの低下は少ない

標準カメラで逆光の構図を撮影。ゴーストは現われているものの、コントラストの低下は少ない

「Xperia 1 II」と「Xperia 5 II」の画質を比較

標準カメラを使い「Xperia 1 II」(左写真)と「Xperia 5 II」(右写真)で撮影した作例を比較。露出の微妙な違いはあるものの、いずれも肉眼の印象に近いトーンや解像感、ノイズなどで、両者の間に有意な差は見られない。ある程度明るいシーンで動かない被写体を撮影する限り、オートフォーカスの性能差は感じにくい

標準カメラを使い「Xperia 1 II」(左写真)と「Xperia 5 II」(右写真)で撮影した作例を比較。露出の微妙な違いはあるものの、いずれも肉眼の印象に近いトーンや解像感、ノイズなどで、両者の間に有意な差は見られない。ある程度明るいシーンで動かない被写体を撮影する限り、オートフォーカスの性能差は感じにくい

標準カメラを使い「Xperia 1 II」(左写真)と「Xperia 5 II」(右写真)の夜景撮影を比較。夕暮れのグラデーションを見ても両機種に有意な違いは見られない。ただし、ピントが合うまでの時間は「Xperia 1 II」のほうが高速だった

標準カメラを使い「Xperia 1 II」(左写真)と「Xperia 5 II」(右写真)の夜景撮影を比較。夕暮れのグラデーションを見ても両機種に有意な違いは見られない。ただし、ピントが合うまでの時間は「Xperia 1 II」のほうが高速だった

標準カメラを使い「Xperia 1 II」(左写真)と「Xperia 5 II」(右写真)のオートフォーカスの性能を比較。風に揺れる木の枝にピントを合わせた。「Xperia 5 II」ではたまにオートフォーカスに迷いが見られるが、「Xperia 1 II」では迷いが少なく、とっさに撮った写真でもピントの合っているものが多かった

標準カメラを使い「Xperia 1 II」(左写真)と「Xperia 5 II」(右写真)のオートフォーカスの性能を比較。風に揺れる木の枝にピントを合わせた。「Xperia 5 II」ではたまにオートフォーカスに迷いが見られるが、「Xperia 1 II」では迷いが少なく、とっさに撮った写真でもピントの合っているものが多かった

本機のカメラと「PhotographyPro」を組み合わせて撮影した写真は、誇張を抑えた自然な仕上がりとなっており、カメラとしては王道と言える。ただ、最近多い、SNS映えする鮮やかな写真を手軽に撮りたいというニーズにはあまり適していない。ただ、これとは別にXperia標準のカメラアプリを使えば、各種のエフェクトを使った楽しい撮影も可能だ。また、手ぶれ補正もかなり強力なので、カメラに苦手意識のある人や子どもに持たせても失敗しにくい。

3D iToFセンサーを省略した「Xperia 5 II」との違いは、オートフォーカスの迷いの少なさと暗い構図での合焦スピード、動く被写体への追従性といった面で現れる。ペットや子どもなど、動く被写体の撮影が多いなら「Xperia 1 II」のほうが適するのは言うまでもないが、「Xperia I II」のほうがやはり全体的な撮影の失敗が少なく済むため、より撮影が簡単なカメラとも言える。

価格は横並びだが、独自の保証を用意するソニー直販に注目

最後に、本製品の販路や価格などについて見てみよう。136,400円(税込)という本機の販売価格は確かに高価だ。販路は家電量販店またはソニー直販サイト「ソニーストア」のみで、MVNO各社での取り扱いは、2020年11月初旬時点ではない(いずれも2020年11月18日現在の情報)。

なお、販路によって保証内容には違いがある。なかでも「ソニーストア」限定の「Xperia ケアプラン」(年間一括5000円、または月額500円+(いずれも税別))は注目だ。同プランは、故障、水濡れ、全損といった端末のトラブルが起こった場合に、1回10,000円(年2回まで)で端末交換が行え、修理費用のユーザー負担額を抑えることができる。保証を考えると「ソニーストア」で購入するのがいちばんよさそうだ。

このタイミングでXperia 1 IIを買うなら、SIMフリー版を積極的に検討したい

キャリア版からメモリーとストレージが増量されたうえに、5G対応のDSDV仕様という本機は、今購入できる中では最高級のXperiaだ。すでにキャリア版を持っている人が本機に買い換えることも十分納得できる。販売価格は136,400円(税込)と高めだが、NTTドコモ版「SO-51A」の118,052円(税込み、5G WELCOME割適用時の価格)、au版「SOG01」の122,500円(税込み)と比較しても、スペックアップ分を考慮すればさほど割高とは言えない。これから新たに「Xperia 1 II」を購入するなら、総合的に見てSIMフリー版の本機のほうが満足度は高くなるだろう。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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