Googleから最新Androidスマートフォン「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」が2022年10月13日に発売されました。すでに各メディアにレビューが掲載され、価格.comでも多くのクチコミやレビューが投稿されています。
しかし、どちらを買うか悩んでいる方も多いのではないでしょうか? というわけで本記事では、主に両機種の違いにスポットを当てつつ、実際にカメラで撮影した写真や、ベンチマークテストの結果なども交えて、どのような人が、どちらの機種を買ったほうが高い満足感を得られるのかをお伝えいたします。
左が「Pixel 7」で公式サイトの販売価格は82,500円(税込。以下同)〜、右が「Pixel 7 Pro」で124,300円〜。2モデルには41,800円の価格差が設けられています
「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」のスペック上の主な違いは下記のとおりです。
@価格は「Pixel 7 Pro」のほうが41,800円高い
A「Pixel 7 Pro」は光学5倍の望遠カメラを搭載
B「Pixel 7 Pro」の超広角カメラはオートフォーカス対応
Cディスプレイは「Pixel 7」が6.3インチ、「Pixel 7 Pro」が6.7インチ
Dリフレッシュレートは「Pixel 7」が最大90Hz、「Pixel 7 Pro」が最大120Hz
Eサイズ/重量は、「Pixel 7」が73.2(幅)×155.6(高さ)×8.7mm(厚さ)/197g。「Pixel 7 Pro」が76.6(幅)×162.9(高さ)×8.9mm(厚さ)/212g
Fメモリー容量は「Pixel 7」が8GB、「Pixel 7 Pro」が12GB
G「Pixel 7 Pro」はストレージ容量512GBモデルが存在(ただし日本発売は未定)
Hバッテリー容量は「Pixel 7」が4355mAh、「Pixel 7 Pro」が5000mAh
I「Pixel 7 Pro」はミリ波対応
J「Pixel 7 Pro」は超広帯域無線チップ搭載
両モデルの最大の違いは価格です。「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」には公式サイトの販売価格で41,800円の価格差が設けられています。しかし、「iPhone 14 Pro」と「iPhone 14 Pro Max」とは異なり、画面やボディのサイズだけではなく、カメラを筆頭に多くのスペックが差別化されています。これだけ機能に違いがあれば、価格差も納得です。
「Pixel 7 Pro」は124,300円から、「Pixel 7」は82,500円から。価格差は大きいです
掲載時、「Pixel 7 Pro」の価格を123,300円と記載していましたが、正しくは124,300円になるため、訂正いたしました
両機種の違いの中でも、使い勝手を大きく左右するのはカメラです。メインの広角カメラは同様のスペックですが、「Pixel 7 Pro」は光学ズーム最大5倍対応の望遠カメラを搭載し、超広角カメラでオートフォーカスに対応したマクロ撮影機能「マクロフォーカス」を利用できます。つまり遠くを撮影するとき、超至近距離を撮影するときの画質、使い勝手が「Pixel 7 Pro」のほうがすぐれているわけです。
「Pixel 7」は5000万画素の広角カメラ、1200万画素の超広角カメラ、1080万画素のインカメラという構成
「Pixel 7 Pro」は5000万画素の広角カメラ、オートフォーカス機能付きで1200万画素の超広角カメラ、4800万画素の望遠カメラ、1080万画素のインカメラという構成です
ディスプレイのサイズが違うのは当たり前として、リフレッシュレートが「Pixel 7」は最大90Hz、「Pixel 7 Pro」は最大120Hzと異なるのもポイントです。Webブラウジング時のスクロールがスムーズでも“実用上”の違いはそこまでないですが、120fps対応ゲームをプレイするときなどは「Pixel 7 Pro」のほうが滑らかなグラフィックで楽しめます。
「Pixel 7」は「スムーズディスプレイ」を有効にすると、リフレッシュレートが自動的に60Hzから90Hzに変更されます
いっぽうの「Pixel 7 Pro」は60Hzから120Hzに変更可能です
ボディサイズ、重量についても当然異なりますが、こればかりは人それぞれで判断基準が違うでしょう。携帯性、操作性が重要なのであれば、家電量販店に展示されている実機を実際に握って、操作してみることをオススメします。ちなみに手の平が約20cmある筆者でも、「Pixel 7」は意外と大きいな……と感じました。
「Pixel 7」のサイズは73.2(幅)×155.6(高さ)×8.7(厚さ)mmで、重量は197g
「Pixel 7」はマット仕上げのアルミニウム製フレーム
右側面に電源ボタンと音量ボタンを、左側面にSIMカードスロットを配置
「Pixel 7 Pro」のサイズは76.6(幅)×162.9(高さ)×8.9(厚さ)mmで、重量は212g
「Pixel 7 Pro」はポリッシュ仕上げのアルミニウム製フレーム。上部にあるのはミリ波のためのアンテナの窓です
右側面に電源ボタンと音量ボタン、左側面にSIMカードトレイという配置は「Pixel 7」と変わりません
左が「Pixel 7」、右が「Pixel 7 Pro」。携帯性を優先するか、画面サイズを重視するか悩ましい選択です
メモリー容量も差別化されていますが、個人的には8GBメモリーを搭載するAndroidスマートフォンを使っていてメモリー不足を感じたことはありません。大容量メモリーを必要とするゲームを複数動作させれば違いが出る可能性はあります。
しかし、ゲーミングスマホの「ゲームモード」がほかのアプリを終了させるのと同じことを手動でやれば済む話です。少なくとも現時点では、メモリー容量は「Pixel 7」の8GBでも十分だと判断しています。
なお、「Pixel 7 Pro」にのみストレージ512GBモデルが「技術仕様」に記載されていますが、現時点で日本では発売されていません。
「Pixel 7」のメモリー容量は8GB(アプリ「Geekbench 5.4.4」のデバイス情報で表示)
「Pixel 7 Pro」のメモリー容量は12GB
バッテリー容量は「Pixel 7」が4355mAh、「Pixel 7 Pro」が5000mAhですが、バッテリー駆動時間についてはどちらもスペック表に「バッテリーは24時間以上持続可能、最大72時間使用可能」と記載されています。バッテリー駆動時間に差がないのであれば、「Pixel 7 Pro」が大容量バッテリーを搭載していることはアドバンテージではないことになります。
また、「Pixel 7 Pro」は高速通信が可能な「ミリ波」に対応し、正確な距離測定と空間定位に使用する「超広帯域無線チップ」を搭載していますが、前者は利用できるエリアが限られており、後者はアップルの「AirTag」のような対応製品が発売されていません。このふたつについての優先順位は低めでよいと思います。
ディスプレイやカメラなどの詳細なスペックについては、下記の表に掲載しているので気になる人は、ご覧ください。
「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」のスペック比較
「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」のカメラ比較
「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」のその他機能比較
前述のとおり、「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」はメインの広角カメラは同じですが、「Pixel 7 Pro」は光学5倍の望遠カメラを搭載し、超広角カメラはオートフォーカスに対応しています。今回、両機種で倍率を変えて撮影してみましたが、「Pixel 7 Pro」はまず望遠性能が圧倒的です。20倍の「超解像ズーム」で撮影した写真でも、24インチ前後のディスプレイであれば実用上十分な解像感が得られます。8倍なら43インチの4Kテレビでも鑑賞に堪えますね。
また超広角が「Pixel 7」は0.7倍、「Pixel 7 Pro」は0.5倍スタートですが、数値以上に大きな差を感じます。「Pixel 7 Pro」は下がることのできない室内集合写真で強い武器となるでしょう。
0.7倍(超広角カメラ)
1倍(広角カメラ)
2倍(広角カメラ)
4倍(広角カメラ)
5倍(広角カメラ)
8倍(広角カメラ)
0.5倍(超広角カメラ)
0.7倍(超広角カメラ)
1倍(広角カメラ)
2倍(広角カメラ)
4倍(広角カメラ)
5倍(望遠カメラ)
8倍(望遠カメラ)
20倍(望遠カメラ)
30倍(望遠カメラ)
個人的に非常に気に入ったのが、オートフォーカス対応超広角カメラを利用した「マクロフォーカス」。オートフォーカス非対応のマクロカメラでは、ピントが合う位置を探して何枚も撮影しなければなりません。しかし、「Pixel 7 Pro」であれば被写体の至近距離に近づけば「マクロフォーカス」が有効になり、ピントをぴたりと合わせてくれます。シャッターチャンスを逃さずに近接撮影を楽しめますよ。
「Pixel 7 Pro」の「マクロフォーカス」で撮影
「Pixel 7 Pro」の「マクロフォーカス」で撮影
いっぽう、メインの広角カメラについては「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」で特に違いはないようです。「夜景モード」でかなり暗めの景色を撮影してみましたが、両機種で違いは見受けられません。メインカメラのみで撮影するのであれば、「Pixel 7」で十分満足できるはずです。
「Pixel 7」の「夜景モード」で撮影
「Pixel 7 Pro」の「夜景モード」で撮影
なお、動画撮影時に背景をぼかす「シネマティックぼかし」や、色彩や階調をより情報量豊かに記録できる「10ビットHDR動画」などは、「Pixel 7」でも利用可能です。「シネマティックぼかし」は43インチクラスの4Kテレビで見ると輪郭に不自然さを感じますが、「10ビットHDR動画」はかなり効果的。以下から両機能をオン/オフで撮影した動画をご覧ください。
「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」には、Google第2世代のSoC「Google Tensor 2」が採用されています。ここでは前世代「Google Tensor」搭載の「Pixel 6 Pro」を加えたベンチマーク結果を見てみましょう。今回実施したベンチマークは「Geekbench 5.4.4」、「3DMark Wild Life」、「AI Benchmark」の3本。3回計測を実施して、それぞれの結果と、平均値を下記に掲載しています。比較は基本的に平均値で行います。
「Geekbench 5.4.4」
「3DMark Wild Life」と「AI Benchmark」
まず、「Geekbench 5.4.4」の「Multi-Core Score」に注目してみると、「Pixel 6 Pro」に対して、「Pixel 7」は約108%、「Pixel 7 Pro」は約110%のスコアを記録しています。
いっぽう、ちょっと不可解なのが「Geekbench 5.4.4」の「Compute」と、「3DMark Wild Life」の結果。「Geekbench 5.4.4」の「Compute」では「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」が「Pixel 6 Pro」の約60〜61%のスコアに留まり、「3DMark Wild Life」ではほぼ横並びです。リリースされたばかりの「Google Tensor 2」とベンチマークソフトで、なんらかの相性問題が発生している可能性があります。
大きく躍進しているのがAI性能。「AI Benchmark」で、「Pixel 6 Pro」に対して「Pixel 7」は約157%、「Pixel 7 Pro」は約161%のスコアを叩き出しました。「Google Tensor 2」の機械学習能力は大幅に向上しているようです。
ベンチマークテストではSoCのCPU性能、GPU性能、AI性能を計測できますが、スマートフォン上で動作するアプリケーションはそれらが複雑に絡み合って実行されています。ベンチマークを実施しておいてなんですが、スマートフォン本来の総合的な能力は、個別の処理にかかる時間、生成された画像の品質、音声認識などの正確性などを厳密に比較しないとわかりません。今回の結果はあくまでも参考に留めてください。
「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」には41,800円の価格差がありますが、それに見合うだけのスペックの差があります。iPhoneで言えば「iPhone 14」と「iPhone 14 Pro Max」を兄弟機としてラインアップしているようなものです。
ただし、両機種の使い勝手における決定的な違いはカメラ機能です。望遠カメラと、オートフォーカスに対応したマクロ撮影機能が欲しいのであれば「Pixel 7 Pro」、それらが不要でよりコンパクトな端末が欲しいのであれば「Pixel 7」をオススメいたします。
レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。