「iPad」は複数のラインアップがあるため、初めて購入する場合や久しぶりに買い替える場合、どの機種を選択すべきか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。本記事では、iPadのラインアップを改めておさらいしつつ、各モデルの特徴や選び方のポイントについて解説します。
iPadのApple Store(オンライン)におけるラインアップは、2025年7月時点で以下の4シリーズ、計6モデルが展開されています。
・13インチiPad Pro(M4):2024年5月発売、M4チップ搭載
・11インチiPad Pro(M4):2024年5月発売、M4チップ搭載
・13インチiPad Air(M3):2025年3月発売、M3チップ搭載
・11インチiPad Air(M3):2025年3月発売、M3チップ搭載
・iPad(A16):2025年3月発売、A16チップ搭載
・iPad mini(A17 Pro):2024年10月発売、A17 Proチップ搭載
まずは搭載するチップセットの差をチェックしましょう。最上位モデルの「iPad Pro」と、上位モデルの「iPad Air」は、Macシリーズでもおなじみの「M」シリーズを搭載しており、PC顔負けの処理性能の高さを誇ります。
これにはさまざまなメリットがありますが、主な特徴としては、AI機能の「Apple Intelligence」のサポートや、AAAタイトルのゲームアプリをプレイできること、エンコードやデコードなどメディア処理のための専用回路である「メディアエンジン」の搭載による効率的な動画編集などがあります。
そのほかのモデルでは、iPhoneでも使われている「A」シリーズが採用されています。なかでも24年秋に発売された「iPad mini」の最新モデルでは「iPhone 15 Pro」シリーズと同じ「A17 Pro」を搭載しており、Mシリーズと同様に、「Apple Intelligence」とAAAタイトルのゲームに対応を果たしました。動画編集などの作業を目的にしなければ、Mシリーズ搭載の製品と比べてもさほど見劣りしません。
いっぽう、「iPad(A16)」では、2022年秋に発売された「iPhone 14」シリーズと同じ「A16」シリーズを搭載しています。iPadシリーズでは唯一「Apple Intelligence」やAAAタイトルのゲームなどをサポートしていないので、その点は理解しておきましょう。とはいえ、日常使いでの一般的な用途では、処理性能面で困ることはさほどないでしょう。
では、サイズ展開を交え、具体的な機種をチェックしていきます。
最上位モデルは「iPad Pro」の2機種です。「iPad Pro」には、13インチと11インチの2サイズが用意されています。
「iPad Pro」
「iPad Pro」よりも安価に入手できる選択肢としては「iPad Air」があります。こちらも13インチと11インチの2サイズを選べます。
「iPad Air」
最も安価な選択肢としては、無印の「iPad」があります。画面サイズは11インチへと微増し、上位モデルと揃いました。ただし、「iPad Pro」や「iPad Air」と比べると、仕様や使用できるアクセサリーが制限されている点には留意が必要です。
「iPad」
「iPad mini」は8.3インチで、人によっては片手でホールドできるほどコンパクトなモデルです。ほかのモデルとは少し異なった用途に特化しています。価格は無印の「iPad」よりも少し高めですが、その分性能もすぐれています。
「iPad mini」
次章からは、それぞれのモデルについて、主にどんな特徴があり、どのような用途に適しているか、解説していきましょう。
ラインアップのなかで最上位のモデルが、「13インチiPad Pro(M4)」です。「MacBook Air」の13.6インチモデルと比べると、ひと回り小さいくらい。つまり、モバイルノートPCと同等の表示領域が確保できます。
「13インチiPad Pro(M4)」
Apple Storeにおける端末価格は、最小構成で218,800円(税込。以下同)。もし、「13インチiPad Pro用Magic Keyboard」(59,800円)と、スタイラスペンの「Apple Pencil Pro」(21,800円)を揃えるならば、合計の予算として30万円以上見積もっておく必要があります。
「13インチiPad Pro(M4)」がおすすめの人は、職業や凝った趣味として、高いレベルでクリエイティブな作業を行う人です。たとえば、漫画やイラストを描く作業や、カメラで撮影した写真のディティールを確認するモニターとしての用途、動画編集作業、CAD系アプリなどでの図面確認などが該当するでしょう。
特に、最新世代モデルでは「Ultra RetinaXDRディスプレイ」が搭載され、1/2TBモデルを選択する場合には、写り込みを抑えつつ画質とコントラストを保つ「Nano-textureガラス」もオプションで選べるようになりました。プロフェッショナル向けモニターとしてのポテンシャルは高いと言えます。
「11インチiPad Pro(M4)」
いっぽう、イラスト制作や動画編集などに挑戦したいものの、「13インチモデルは高すぎて購入できない」という場合、「11インチiPad Pro(M4)」も候補にあがります。画面サイズはひと回りコンパクトになりますが、こちらは最小構成で168,800円から。「11インチiPad Pro用Magic Keyboard」(49,800円)と「Apple Pencil Pro」を揃えるならば、約24万円〜です。13インチモデルとの間にディスプレイの最大輝度の差もなく、サイズと価格の違いのみにフォーカスして検討できます。
11インチモデルの重量はWi-Fiモデルで444gと、13インチWi-Fiモデルの579gと比べて100g以上軽いこともメリット。MacBookなどとの2台持ちを検討する人ならば、携行時の負担を軽減できます。また、コンパクトゆえに背面カメラが扱いやすいことも重要です。
特に「iPad Pro」シリーズの背面カメラには「LiDARスキャナ」というセンサーが搭載されており、AR系のアプリでの空間認識精度が高くなっています。また、「アダプティブTrue Toneフラッシュ」が搭載されており、書類スキャンの精度も向上しています。
イラスト制作や動画作成などクリエイティブな作業をまれに行うものの、「iPad Pro」はどうしても予算的に厳しい場合や、ノートPCライクの運用がメインになる場合には、「13インチiPad Air(M3)」が狙い目です。
その価格は最小構成で128,800円〜。「13インチiPad Air(M3)用Magic Keyboard」(49,800円)と「Apple Pencil Pro」を合わせて購入したとしても、約20万円〜です。
また、携行性を重視して11インチモデルを選択する場合は、価格は98,800円〜とさらに安価になります。「11インチiPad Air(M3)用Magic Keyboard」(46,800円)と「Apple Pencil Pro」を合わせても167,400円で収まるので、手を伸ばす際のハードルも少し下がります。
「iPad Air(M3)」
なお、先述の「iPad Pro」シリーズではカラーバリエーションが2種類しかなかったのに対し、こちらの「iPad Air(M3)」では「ブルー」「パープル」「スターライト」「スペースグレイ」の4色が選べます。
性能面では、同世代に搭載される「M3」チップが、メモリーの最適化を図る「Dynamic Caching」や、3D空間の精巧な描写を可能にする「ハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディング」、3D空間の光のリッチな表現を可能にする「レイトレーシング」などをサポートしており、ゲーミングアプリをプレイするような用途でも期待できることがポイントです。
ただし、上位の「iPad Pro(M4)」と比べて、仕様や体験に差がないわけではありません。たとえば、「iPad Air(M3)」以下のモデルはディスプレイのリフレッシュレートが120Hz駆動に対応していないので、ゲーム画面や、ブラウザを素早くスクロールさせた際の滑らかさには差があります。
また、「Apple Pencil」シリーズを画面上で素早く走らせたときの線の描画にも若干の遅れが生じます。
オーディオに関しても、「iPad Pro(M4)」シリーズでは「4つのスピーカーオーディオ」と「4つのスタジオ品質のマイク」を備えますが、「iPad Air(M3)」では「ステレオスピーカー(横向き)」と「2つのマイク」に下がります。
つまり、どうしても最上位の「iPad Pro(M4)」シリーズと比べると画面表示やサウンドの体験が少し劣るのです。
こうした特徴を踏まえると、やはり「iPad Air(M2)」は、基本的にはiPadをノートPC代わりにしたい人に適している端末だと言えます。たとえば、メインのPCとしてデスクトップを使っていて、モバイル用のサブマシンとしてiPadを考えている人、あるいはiPhoneの操作に慣れているけれど新たにMacの操作を覚えるのは嫌なので、iPadをPC代わりに活用したいと考えている人などにおすすめです。
iPad Air(M3)用Magic Keyboardは、新たにファンクションキー列も追加
いっぽう、決してクリエイティブな用途に使えないわけでもありません。たとえば、M3が内蔵するメディアエンジンはH.264やHEVC、AV1に対応していますし、ストレージのオプションには大容量の1TBモデルも選べます。動画投稿用の映像を編集する用途でも、頼れる相棒になるでしょう。
とにかく予算を抑えてiPadを購入したい、といった場合には、「iPad(A16)」をチェックしましょう。最安の選択肢ながら、外部インターフェイスにUSB Type-Cポートを搭載し、ホームボタンを備えない新世代型のデザインが採用されています。
なお、本世代からは画面サイズが前世台の10.9インチから11インチへと微増し、上位モデルの11インチ型に並びました。カラーバリエーションは「ブルー」「ピンク」「イエロー」「シルバー」の4色を選べます。
「iPad(A16)」
同機の魅力はやはり価格。本体のみなら58,800円〜です。トラックパッドも備えた純正キーボードの「Magic Keyboard Folio」(42,800円)や、「Apple Pencil(USB-C)」(13,800円)といった周辺機器を合わせた場合でも11,5400円〜です。
しかも、本世代ではストレージの最小構成が従来の64GBから128GBへとアップしています。長期使用を踏まえても、OSアップデートなどの処理が行いやすくなり、いっそうコストパフォーマンスの高い選択肢になりました。
ただし、搭載するチップセットはA16チップで、「Apple Intelligence」やAAAタイトルのゲームなどには非対応です。対応する周辺機器や、そのほかのスペックも「iPad Pro」や「iPad Air」と比べると見劣りします。
たとえば、キーボードは、キーボード側に充電ケーブルを接続してのパススルー充電が行えませんし、「Apple Pencil Pro」には非対応です。仕様に関してもディスプレイの色域がP3ではなくsRGBであったり、画面輝度が最大500nitsしかなかったり、動画編集のためのメディアエンジンを備えていなかったりといったポイントは理解しておきましょう。
いっぽう、想定用途がメールチェックやWebブラウジングなど軽めの用途に集中するならば、「iPad(A16)」でも困ることはほとんどありません。また、電子書籍ビューワーとして使ったり、子どもに持たせたりする端末として用意するうえでも、コストを抑えやすい端末だと言えます。
最後に紹介する「iPad mini(A17 Pro)」は、画面サイズが8.3インチで、製品名のとおり、ほかの機種と比べるとひと回りコンパクトです。いっぽう、価格は78,800円〜と、先述の「iPad(A16)」と比べてやや高めに設定されています。
「iPad mini(A17 Pro)」
比較検討時のポイントとしては、小型のポーチやバッグに入れての携行しやすさを重視する場合には、「iPad mini(A17 Pro)」のサイズ感がメリットになります。周辺機器として「Apple Pencil Pro」にも対応しており、端末側面に固定してのワイヤレス充電が可能。手書き中心のビジネス手帳として運用するのはアリでしょう。将来的に、「Apple Intelligence」関連の機能が使える点にもポテンシャルを感じます。
また、重量が293 g(Wi-Fiモデル)と軽く、両手で長くホールドしていやすいため、電子コミックやストリーミング動画用のビューワーとして、あるいは「Apple Arcade」を遊ぶためのゲーミング機としても、適していると言えます。
特に「A17 Pro」チップを搭載したことで、AAAタイトルのゲームプレイにも対応しました。App Store上に公開されているAAAタイトルの数はまだ限られているものの、対応のコントローラーを駆使すれば、ポータブルゲーム機のように遊べることは見逃せません。
いっぽう、「iPad mini(A17 Pro)」は、現行のラインアップの中で唯一、Smart Connector(スマートコネクタ)端子を備えていないモデルであることは理解しておきましょう。Smart Connectorはキーボードなどアクセサリーの接続に用いられる端子であり、これに対応した周辺機器はペアリング操作や充電管理などが不要になるメリットがあります。
つまり、「iPad mini(A17 Pro)」は画面が小さく、さらにSmart Connector対応のキーボードアクセサリを利用できないので、ノートPCのような運用には比較的不向きです。ちなみに、ワイヤレスキーボードや有線キーボードなどは対応しているので、物理キーボードを活用できないわけではありません。
最後に、本体の仕様以外に、購入時に選択することになる仕様について補足しておきます。
まず、「容量(ストレージ)」は、その端末にどのくらいの量のデータを保存できるのかを示す値です。容量が大きくなるほど高価になるので、想定用途に適したバランスのいい容量を選びましょう。
たとえば、「iPad Pro」シリーズの2モデルは256GB、512GB、1TB(=1000GB)、2TB(=2000GB)の4種類を選択できますが、もし積極的に映像制作などを行う想定ならば1TB以上のモデルを選ぶのがおすすめです。ただし、その場合の価格は11インチモデルでも272,800円〜となり、最小構成の168,800円と比べてかなり高額になります。
いっぽう、「iPad」と「iPad mini」については、ストレージの最小構成が128GBと少なめです。価格を抑えられるメリットはありますが、OSのメジャーアップデートなどの際には容量を整理する必要に迫られるので、外付けのSSDやクラウドストレージなど、外部ストレージをうまく活用する前提でいるのがよいでしょう。データ整理の頻度を下げたい場合には、256GBモデルも検討することをおすすめします。
続いて、「Wi-Fiモデル」と「Wi-Fi + Cellularモデル」の違いについてです。これは別途通信プランを契約することで、iPad単体でモバイル通信ができるかどうかの違いを意味しています。
たとえば、「11インチiPad Air(M3)」の場合、「Wi-Fiモデル」は98,800円〜ですが、「Wi-Fi + Cellularモデル」にすると124,800円〜で、26,000円ほど価格が高くなります。
ただし、想定用途によっては追加しておいたほうがメリットは増えます。たとえば、「iPad Proで編集した動画を、そのまま現場で動画投稿サービスにアップロードしたい」「iPad AirをノートPCのように使って、さまざまな場所でメールチェックをするつもり」「旅をしながらiPad miniを持ち歩いて地図表示や情報検索などをしたい」といった想定ならば、単体でモバイル通信を利用できたほうが圧倒的に便利です。
こうした「容量」や「Wi-Fi + Cellular」といった特徴は、一度購入したあとに増設で対応することはできません。どうしても初期費用はかかりますが、後悔しないように、少し背伸びするくらいの構成にして注文することも考えておきましょう。