在宅ワークやフリーアドレスのオフィス、カフェなど、家でも会社でも外出先でも便利に使えるモバイルディスプレイ。今回はこれまで試したモデルの中で最も高性能なPFUの「RICOH Light Monitor 150BW」をレビューしていきます。
「RICOH Light Monitor 150BW」は無線接続に対応した高性能なモバイルディスプレイ。有機ELらしい高コントラストかつ鮮やかな表示が目を引きます。本体が薄くて軽量なのもポイント!
モバイルディスプレイはノートパソコンへのUSB Type-C搭載が進むのと同時に、テレワークや在宅ワークの普及を背景に急速に目にする機会が増えた機器です。24型や27型の据え置きのディスプレイを置きにくい(置けない)、リビングルームのダイニングテーブルやカフェの狭いテーブルなどでも、簡単に作業スペースを広げられることから、ビジネスパーソンを中心に人気です。
今回紹介する「RICOH Light Monitor 150BW」は、画面サイズが15.6型のモバイルディスプレイです。タッチ対応の有機EL(OLED)パネルを採用しており、タッチ操作や別売のスタイラスペンを使っての手書き入力が可能。無線接続にも対応しているので、ノートパソコンだけでなく、スマートフォンなどとワイヤレスで接続することもできます。なお、「RICOH Light Monitor 150」(型番の末尾に「BW」がない)という有線モデルもラインアップされています。
画面サイズは15.6型ですが、ベゼルが細く14型前後のモバイルノートと組み合わせても違和感なく使えます
13.5型の「Surface Laptop 3」と組み合わせて使ってみましたが、画面サイズの違いをそれほど意識することなく使えました
フィラメントとNECパーソナルコンピュータが共同開発したモニタースタンド「WINF BINDER」を使って、縦に並べてみました。ノートパソコンの横にモバイルディスプレイを置くスペースがなくても、これがあれば縦2画面で作業ができます
「RICOH Monitor Stylus Pen Type1(RICOH Light Monitor専用)」(別売、PFUダイレクト価格税込9,570円)を使えば、手書き入力が可能
ちなみに、「RICOH Portable Monitor 150BW/150」という法人向けモデルが2022年に発売済みで、本モデルはその一般消費者向けモデルです。外観の違いはスタンドの色。法人向けがシルバーだったのに対して、一般消費者向けモデルは背面と同じ黒色に変更されています。機能面では、5台までの同時接続機能が省かれているのが主な違いで、それ以外に大きな変更点はありません。
主なスペックは以下のとおりです。
ディスプレイ:15.6型有機EL(OLED)
解像度:1920×1080
輝度:300ニット
コントラスト:1:100000
色域:DCP-IP 100%
視野角:左右170度/上下170度
応答速度:1ms
外部インターフェイス:USB Type-C×2(外部電源供給/DisplayPort信号入力機能対応)
無線通信・暗号化方式:Miracast・WPA2-PSK
無線LAN規格:IEEE802.11a/b/g/n/ac
オーディオ:1.5W×2
外部インターフェイスはUSB Type-C×2で、HDMI入力はありません。2基のUSB Type-Cポートを生かして、パススルー充電が可能。推奨15W以上(最大45W)のUSB Power Delivery(PD)対応の充電器を接続することで、本製品を経由してノートパソコンやスマートフォンなどを充電できます。ただし、出力は最大25Wなので、ノートパソコンを充電するのには時間がかかるかもしれません(作業状況によっては充電できない場合もありました)。スマートフォンやタブレットの充電に使うのが主な使い方になるでしょう。
映像入力はUSB Type-Cポートが2基。HDMI入力は備えません。1.5W×2のスピーカーも内蔵されています
無線接続はMiracastとWi-Fiに対応。対応のWindowsノートパソコンやAndroidスマートフォンなら、すぐに無線で接続できます。Macと「iPhone」「iPad」は専用アプリを使います。内蔵されるバッテリー容量は3740mAhで、約3時間連続駆動ができます。スマホと接続して、タブレット感覚で写真や動画、ゲームを楽しむといった使い方ができます。スペックや機能を見ると、日本メーカー製らしい、全部入りの高性能モデルであることがわかります。
「RICOH Light Monitor 150BW」を使って特にすぐれていると感じたのが、モバイルディスプレイの基本である携帯性と画質です。
本体サイズは356.0(幅)221.7(奥行)×4.8〜10.8(厚さ)mm、重量は約715g(有線モデルはバッテリーを内蔵しない分、約560gとさらに軽量!)。実測では709gとカタログスペックよりも軽かったです。もちろん、15.6型のモバイルディスプレイとしては軽い部類に入ります。スリーブケースが付属しており、持ち運びも楽々。棚やカバンにしまうときもスリーブケースに入れておけば、ケーブルをまとめておけて便利です。
キッチンスケールでの実測はカタログスペックよりも軽い709g(本体のみ)でした
最薄部4.8mmのスリムボディ。スリムなビジネスバッグにも、ノートパソコンと一緒に収まりそうです
スリーブケースはやわらかい素材で保護力は低め。持ち運び時はディスプレイ面にストレスがかからないように注意したいところです
スタンドは本体と一体化された構造です。ケースや保護カバーがスタンドになるものもありますが、一体化されているほうが、ガタつきがなく安定して使えます。画面設置角度は、横置き時が約75〜16度の間で、無段階で調整できます。縦置き時は約70度のみ。
スタンドの安定性が高く、タッチ操作やペン入力時にグラグラしません。スタンドと本体にゴム足があり滑りにくいのも見逃せません
横置き時は約75〜16度の間で、無段階で画面設置角度を調整できます
有機ELなので高画質なのもいいところ。液晶と比べると鮮やかで、メインで利用しているノートパソコンの画質の悪さを際立たせてくれます(涙)。解像度は1920×1080のフルHDで、バランスのいい解像感です。コントラスト比は10万:1と有機ELらしい高コントラストを実現。モバイルディスプレイはさまざまな角度で使われるため、視野角が左右170度/上下170度と広いのもいいところです。日常的な業務だけでなく、クリエイティブな作業や動画やゲームなどエンタメ用にも十分使える表示クオリティです。
有機ELらしい高コントラスかつ鮮やかな表示品質。視野角も広く、縦向きでも見やすい。使う場所によっては蛍光灯が反射しますが、反射しないように向きや角度をすぐに変えられるのもモバイルディスプレイのいいところなので、それほど気になりません
OSDで「輝度」「コントラスト」「色温度」が手動で変更できます。なお、輝度の自動調整には対応していないため、環境光に応じて、いちいち調整しなければならないのがちょっとだけ不便でした。
OSDはシンプルなメニュー
右側面に電源ボタン、ボリュームボタン、入力切り替えボタンが備わっています。ボタンの右下にあるのが1.5Wのスピーカー
無線接続について見ていきましょう。
USB Type-Cポートのないノートパソコンや、充電などでUSB Type-Cポートがふさがっていても、「RICOH Light Monitor 150BW」なら無線で映像を入力できます。有線接続時に比べれば、遅延はありますが、「Teams」や「Slack」「Twitter」などを閲覧メインで使うのであれば問題はないでしょう。操作性にこだわりたいなら、有線接続をおすすめしたいですが、ケーブルのない気軽さも捨てきれません。環境や使い方に応じて使い分けるといいでしょう。
Windowsパソコンの場合はWindowsキー+Kでワイヤレスディスプレイの接続メニューを素早く呼び出せます
無線接続時には画面の上に各種メニューが表示されます。画面の回転もここから行えます。
無線接続時にアクセスできる設定画面。Wi-Fi設定もここから行います
Androidスマホもアプリ不要で、無線接続できます。ただし、AndroidスマホすべてがMiracastに対応しているわけではないので注意しましょう。動作確認リストがリコーのホームページ上に公開されているので、手持ちのデバイスが動作するか確認するといいでしょう。
今回はOPPOの「A54 5G」で試してみました。数ステップで設定は完了して、スムーズに画面を映せました。「RICOH Light Monitor 150BW」上でのタッチ操作もできますが、遅延が大きく、正直実用的ではありません。操作はスマホのほうで行うのがよさそうです。動画については、「YouTube」は問題なく再生できましたが、「Amazonプライムビデオ」は再生できませんでした。著作権のHDCP機能への非対応が原因だと思われます。
無線接続時にHDCPに対応するAndroidスマホは、前述のリコーのホームページで公開されていますが、その数は少ないようです。なお、USB Type-Cケーブルを直接接続したところ、映像は出力されましたが、やはり、「Amazon Primeビデオ」は再生できませんでした。
「YouTube」などの動画は、スマホの画面で見るよりも大きくて見やすいです。ときどき、カクカクしますが十分楽しめるレベルです。スピーカーも内蔵しているので、タブレット感覚で動画を楽しめるでしょう
アップルの「iPhone」や「iPad」の画面を表示する場合は、専用アプリ「RICOH Monitor Mirroring」(無料)を「iPhone」「iPad」にインストールします。入力切り替えで「無線接続」を選んでから、アプリを起動すると、すぐに「RICOH Light Monitor 150BW」が検出されるので、数タップで「iPhone」「iPad」の画面をミラーリング表示できます。画面の切り替えや操作の遅延はないとは言えませんが、「A54 5G」よりもスムーズに動きます。
こちらも「YouTube」は再生できますが、「Amazonプライムビデオ」は再生できませんでした(HDCPの条件を満たしていませんという注意書きが出ます)。「RICOH Light Monitor 150BW」上でのタッチ操作もできず、ゲームを大画面でタッチ操作することはきません。
専用アプリ「RICOH Monitor Mirroring」(無料)。「RICOH Light Monitor 150BW」の入力を無線接続にし、本アプリを起動し、「ブロードキャストを開始」をタップすればミラーリングがスタートします
大きな画面で「iPhone」の画面を見られます。プレゼンや会議でiPhoneの画面を相手に共有する場合に重宝しそうです。縦向きにすれば、周囲の黒い枠は気になりません
2022年に富士通グループからリコーグループ傘下となったPFU。「RICOH Light Monitor 150BW」は、PFUからリコー製品を販売する第1弾製品です。リコーの製品ですが、PFUらしいこだわりを感じるモバイルディスプレイでした(だから、PFUから販売したんだと思われます)。
モバイルディスプレイは安いものなら1万円台から購入できます。それに比べて、本モデルはPFUダイレクト価格79,200円(税込)と非常に高価です(有線モデルは同63,600円)。有機ELや無線機能、それにペン入力など全部入りの高性能モデルなので、その価格に見合った分の価値はあるでしょう。メーカー保証期間が2年間なのも心強いところです。高画質かつ高性能なモバイルディスプレイを探している、目の肥えたユーザーは「RICOH Light Monitor 150BW」をぜひチェックしてみてください。