イギリスに拠点を置く新興のテックメーカーNothing(ナッシング)が、「Phone (1)」の後継スマートフォン「Phone (2)」を2023年7月25日に発売する。前モデルのデザインを受け継いだマイナーチェンジと思いきや、79,800円(税込)からという低価格ながら、性能全般を強化した高コスパのハイエンドスマホに生まれ変わっている。
「Phone (2)」は、デザイン優先かと思いきや、その正体はコスパにすぐれたハイエンドスマホだった
前モデルの「Phone (1)」は、デザインと手堅く作られたハードウェアが特徴のミドルレンジスマートフォンとして高い評価を得ていた。8GBメモリーモデルの価格.comユーザーレビューを見ても、2023年7月21日時点での満足度は4.62(5点満点)と高い。
その後継モデル「Phone (2)」は、「Phone (1)」のコンセプトを基本的に受け継ぎつつ、ディスプレイの大型化、SoCのグレード向上、背面のLED通知機能「Glyph Interface」の改良など全面的な強化が施されている
外見は前モデルと変わらないように見えるが、ディスプレイが6.55インチから6.7インチ(2023年7月24日訂正:画面サイズは6.8インチではなく6.7インチです。以上訂正しお詫びいたします)に大画面化したことでボディは大きく重くなっている。そのサイズは76.4(幅)×162.1(高さ)×8.6(奥行)mmで、重量は201.2g。前モデルと比べると横幅は0.6mm、高さは2.9mm、厚さは0.3mmそれぞれ大きい。重量は7.7g増えている。
前モデルの特徴だった透明の背面は、ガラスが平面から曲面に変更されたことで手触りがよく、持ちやすさはむしろ向上している。背面にはデザインされた基盤と、LEDを並べた「Glyph Interface」が見えるが、これらのデザインも新旧モデルを見比べるとあちこちで変更されている。
左が「Phone (2)」で、右が「Phone (1)」。特徴となる背面のデザインは一見するとよく似ている
左が「Phone (2)」で、右が「Phone (1)」。ガラスが平面から曲面になったほか、透けて見える基盤のデザインも変更されている
同梱されるUSB Type-Cケーブルも凝ったデザインだ
ボディの機能性を見ると、防水性能がIP53からIP54へと強化されている。NFCは搭載されるが、FeliCaは前モデル同様に搭載が見送られた。
サウンド機能は前モデルから大きな変更はない。ステレオスピーカーを備えるが、ヘッドホン端子は非搭載で、変換アダプターは同梱されない。そのため、有線イヤホンを使いたい場合は、DAC内蔵型のUSB Type-C変換アダプターを別途用意する必要がある。
有線接続ポートはUSB Type-Cのみでヘッドホン端子は非搭載
ホーム画面はデザインが大きく変更された。プリインストールされるアプリのアイコンはモノクロでデザインされているほか、追加したアプリのアイコンについても、一部はモノクロデザインに変更される。また、プリインストールされる8種類のオリジナルのウィジェットも統一されたデザインが施されている。
左は初期状態のホーム画面の様子。モノクロの壁紙にモノクロで統一されたアプリアイコンや最小限のカラーリングにとどめられたウィジェットが並ぶ。右はアプリ一覧画面、ほとんどのアプリアイコンはモノクロに再デザインされている。プリインストールしたものについても、すべてではないがモノクロに再デザインされる
大きくなったディスプレイは、短辺は1080ピクセルのままだが、長辺は2400ピクセルから2412ピクセルに少しだけ長くなった。また、最大輝度が1200ニトから1600ニト(HDRモード時の値)に高められている。リフレッシュレートは60〜120Hzから1〜120Hzの可変になったことで、滑らかなスクロールと省電力を両立。タッチサンプリングレートは前モデルと同様の240Hz。HDR10+にも引き続き対応している。
本機なら、YouTubeなどでも見かけることが増えたHDRコンテンツの再生が可能だし、高いタッチサンプリングレートを生かしてアクション性の強いゲームも快適に楽しめる。ディスプレイの性能はハイエンドスマホとしても十分と言えるだろう。
大画面化とともに輝度が向上したディスプレイ。HDR10+や高いリフレッシュレートなど動画やゲームに適した性能を備えている
本機に搭載されるSoCは、「Snapdragon 8+ Gen1」だ。これによってアッパーミドルだった前モデルと比較して性能が80%アップしたとしている。メモリーとストレージの組み合わせによって、直販専用の8GBメモリー+128GBストレージのほかに、12GBメモリー+256GBストレージ、12GBメモリー+512GBストレージの合計3モデルが用意されている。搭載されるOSは、Android 13をベースに内部の最適化を進めたNothing OS 2.0が使われる。
電力効率にすぐれた最新の「Snapdragon 8 Gen2」を搭載しなかったことを疑問に思うかもしれない。この点Nothingでは、価格とのバランス、使用実績が豊富で信頼性があることなどを採用の理由としてあげている。
定番のベンチマークアプリAnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)の計測結果は1004758で、「Phone (1)」の656172と比べると大幅にスコアが向上。詳細は下の画面を参照していただきたいが、特に、グラフィック性能を示す「GPU」の値は156626から2倍以上高い349054へとアップしている点に注目してほしい。
AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)の結果、左が本機、右は前モデル「Phone (1)」のもの。特にグラフィック性能を示す「GPU」のスコアが顕著に伸びている
前モデルは、内部処理を最適化したNothing OSの影響もあってかなりスムーズに動作するスマートフォンだったが、本機は、グラフィック性能が強化されたことでゲーム向けの適性が高められたと言えるだろう。もちろん、リフレッシュレート120Hz、タッチサンプリングレート240Hzという高性能ディスプレイもゲームに適している。
なお、本機のAnTuTuベンチマーク(バージョン9.X)のスコアは796578。同じSoCを搭載する「Xiaomi 12T Pro」は1031535だったので、比べると本機はそれよりも値が低いが、これは発熱対策やバッテリー消費削減のための処理がかけられていることが影響していると考えられる。
同じSoCを搭載する「Xiaomi 12T Pro」との比較。なお、AnTuTuベンチマークのバージョンは9.Xで揃えている。2割ほど本機のほうが低い
外部のツールを使った限りでは50度近いCPU温度になるが 、SNSやストリーミング動画を視聴する程度の負荷なら、ボディ表面の熱はさほど気にならない。「Snapdragon 8+ Gen1」を搭載するスマートフォンとしては扱いやすいほうだ。体感速度もハイエンド機として十分と言える。
ただ、大きな負荷のかかるゲームアプリ「原神」では、デフォルトのグラフィック設定である30FPSなら問題ないものの、60FPSにするとコマ落ちが目立ってくる。逆に、違いを感じるのはそのくらいであり、そこまで負荷のかからないほとんどのゲームであれば十分快適に動作する。
本機は、背面のLED通知機能「Glyph Interface」も強化されている。おおまかな形状は前モデルと変わらないが、LEDの組み合わせが従来の5分割から11分割に増えている。また、LEDの一部は光が徐々に短くなる仕様を採用し、ベータ版かつ海外向けの機能ではあるが、画面を開かずに「Uber」の到着時間を確認できる。また、特定の通知と発光パターンを連動させることも可能だ
左が「Phone (1)」で、右が「Phone (2)」。LEDの配置は同じだが、5分割を11分割に細分化して発光パターンの幅を広げた(いずれもLEDフラッシュを含まない数)
発光パターンを自由に作ることのできる「Glyph Composer(コンポーザー)」が追加された
LEDの一部を、宅配サービスやタイマーの進捗と連動したトラッカーとして利用可能
メインカメラは広角カメラと超広角カメラという組み合わせのデュアルカメラで、いずれも5000万画素だ。一見前モデルと変わりがないようだが、広角カメラはイメージセンサーがソニー製のIMX766から最新世代のIMX890に変更されている。なお、超広角カメラは「JN1」イメージセンサーを引き続き採用。両カメラともに新機能としてAIを使ったシーン認識が追加されている。
以下にメインカメラの静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のままシャッターを押すだけのカメラ任せで撮影を行っている。
広角カメラと超広角カメラを組み合わせたメインカメラ。いずれも約5000万画素という高画素だ
広角カメラを使い、明暗差の大きい構図で撮影を行った。露出の違いが目立つが、誇張をしない落ち着いた画作りや適度な解像感といった方向性は変わっていない。等倍に拡大するとハイライトの飽和の少なさと暗部のノイズの少なさで「Phone (2)」に優位性がある
撮影写真(Phone (2):4096×3072、3.88B Phone (1):4096×3072、3.44MB)
上と同じ構図のまま超広角カメラに切り替えた。やはり「Phone (2)」のほうが明るくなるが、ハイライトの飽和は増える。いっぽう「Phone (1)」は暗部のノイズが目立つ。両機とも光学系は共通なので、シーン認識の違いが露出設定や画像処理に現れているものと思われる
撮影写真(Phone (2):4096×3072、2.93MB Phone (1):4096×3072、2.37MB)
ヤマユリを撮影。構図が少しずれてしまったことも影響したのか「Phone (1)」のほうがやや寒色気味のホワイトバランスになっている。ただ、花粉の解像感や発色など基本的な方向性は変わっていないようだ
撮影写真(Phone (2):4096×3072、3.3MB Phone (1):4096×3072、3.65MB)
明るめの夜景を広角カメラで撮影。「Phone (1)」のほうが明るく鮮明に見えるが、等倍に拡大すると暗部のノイズや樹木の解像感では「Phone (2)」のほうがすぐれている
撮影写真(Phone (2):4096×3072、3.3MB Phone (1):4096×3072、3.3MB)
デザイン優先のスマートフォンということで、見栄え重視の写真になりそうな印象だったが、実際の画像は、肉眼の印象に近い落ち着いたものだった。前モデルと比較すると「Phone (2)」はAIシーン認識の影響か、全般により明るめに写る傾向がある。SoCの性能が上がったことでレスポンスが向上しているのも美点と言える。
半導体の高騰や円安のためスマートフォン全体が値上がりしている。今や、大きく値上がりした高性能モデルか、値上がりはほどほどだが性能は変わらない改良モデルを選ぶしかない状況だ。
そんな中で登場した「Phone (2)」は、「Snapdragon 8+ Gen1」を搭載するなど着実な性能アップを果たしながら、8GBメモリー+128GBストレージモデルは79,800円(税込)という良心的な価格に設定されている。同じSoCを搭載するものとしては、ここ半年ほど最安の地位を保っていた「Xiaomi 12T Pro」よりも安価というのはなかなかインパクトがあると言えるだろう。
デザインに魅かれて購入しても、コスパに注目してもその両方で満足できるだろう。