最近人気を集めている「ARグラス」は、PCやスマートフォン、携帯ゲーム機などと接続することで、現実世界にデジタルコンテンツを重ねて表示できるというもの。動画やゲームなどを超巨大な仮想ディスプレイで見られ、自宅だけではなく外出先にも持ち出せる大画面ディスプレイ(実際にはメガネ型ですが)として活用できるガジェットです。
現在、さまざまなメーカーから「ARグラス」が発売されていますが、そのなかでも知名度の高いのが「XREAL」です。筆者は「Nreal Air」(現「XREAL Air」)を発売日に購入し、PCやゲーム機の外部ディスプレイとして便利に使っています。
さまざまなデバイスに接続し、仮想の大画面でコンテンツを楽しめる「XREAL Air 2 Pro」をレビュー。公式サイトでの販売価格61,980円(税込、以下同)
今回は、新型にして上位モデルに当たる「XREAL Air 2 Pro」を試用したので、主にどのような点が進化したのかにスポットを当てた実機レビューをお届けします。
「XREAL」は下記3つのARグラスをコンシューマー向けの現行製品として販売しています。「XREAL Air」は初代、「XREAL Air 2」は2世代目のスタンダードモデル、「XREAL Air 2 Pro」は2世代目の上位モデルです。最上位の「XREAL Air 2 Pro」と「XREAL Air」の価格差は12,000円。即断できない価格差ですね。
「XREAL Air 2 Pro」直販価格61,980円
「XREAL Air 2」直販価格54,980円
「XREAL Air」直販価格49,980円
「XREAL Air 2 Pro」は0.55インチのマイクロ有機ELディスプレイ(1920×1080)を左右の両眼に当たる部分に採用。明るさは500nit、リフレッシュレートは120Hzです。「XREAL Air」には明るさが400nit、0.68インチのマイクロ有機ELディスプレイが採用されていたので、最新モデルでは明るさが向上したわけです。
現行の3モデルの違いはマイクロ有機ELディスプレイのサイズと輝度。視野角やリフレッシュレートは変わりありません
「XREAL Air 2 Pro」の最大の特徴は、電気を使って透過率を制御する「エレクトロクロミック調光」機能が搭載されていること。ARグラスを使ったことがない人には「何だそれ?」という機能でしょう。
ARグラスは、VRデバイスとは異なり、着用した状態でも周囲の様子が見えるのが特徴です。大きな大画面が現実世界の空中に浮かんでいると考えてください。ただし、現実世界が明るいと、仮想ディスプレイの映像が見えにくくなります。
そのため、「XREAL Air」シリーズは、メガネの前面に取り付けるライトシールドというものが同梱されており、これを前面に取り付けることで視界を暗くして仮想ディスプレイの映像が見やすくなります。しかし、ライトシールドの取り付けや取り外しは、ユーザビリティー的に高いものではありません。
それを解決するのが「エレクトロクロミック調光」なんですね。ディスプレイの透過率を0%、35%、100%の3段階で変更することで、周囲の明るさに応じて見え方を変えられます。
映像に集中したいときは透過率0%、周囲の様子も把握したいときは透過率100%のように使い分けられるわけですね。ちなみに「XREAL Air 2 Pro」と「XREAL Air 2」の違いは、この「エレクトロクロミック調光」の有無だけです。
デバイスの前面に取り付けるライトシールド。なお、透過率0%でも完全に周囲の光を遮断できるわけではないので、従来製品と同様に「Xreal Air 2 Pro」にも「ライトシールド」が同梱されています
第2世代に当たる「XREAL Air 2 Pro」と「XREAL Air 2」のもうひとつの進化点がサウンド面。音響システムが第1世代から第2世代へと進化して、「豊かで没入感のある音響体験」を実現していると謳われています。また指向性を持たせることで音漏れも減少しているとのことです。
さらに、鼻に感じる重量感を軽減する新型「ゼロプレッシャーノーズパッド」、柔軟性に富む先セル、改良された重量配分(1:1)により装着性も向上しているとのこと。この点については後半の実体験レビューで解説しましょう。
パッケージには、本体のほか、ケース、ライトシールド、視力補正フレーム、ノーズパッド、ケーブル(USB Type-C)、説明書、クリーニングクロスが同梱
レンズ部にはプリズムが装着されており、下向きに配置されているマイクロ有機ELディスプレイの映像が見えるという仕組みです。顔側中央に配置されているのはセンサー。ユーザーの装着非装着を感知して、画面を自動でオン・オフします
ライトシールドはわずかに光を通すので、日中の屋外であれば外の様子を確認できます。ただし、装着状態で歩くのは非常に危険。映像を映していなくても厳禁です!
バッテリーは内蔵されていませんが、ツルは太め。右のツルの下には「多機能ボタン」、「輝度+」、「輝度−」ボタンを備えます
実測重量はライトシールド装着時で88.6g、非装着時で78.5g
「XREAL Air 2 Pro」で最も気に入ったのは、やはり何と言っても「エレクトロクロミック調光」です。現在使用している「XREAL Air」でいちばん不便に感じていたのがライトシールドの脱着です。「XREAL Air 2 Pro」では「エレクトロクロミック調光」で透過率を変更させれば、基本的にライトシールドは不要。環境光や、表示させるコンテンツに合わせて透過率を変更させられるのは非常に便利です。
ただし、「XREAL Air」からマイクロ有機ELディスプレイの明るさが向上したとはいっても、画質面での違いは感じられません。しかし、「エレクトロクロミック調光」の使い勝手の差だけでも買い替えるだけの価値がありますね。
左から、透過率100%、35%、0%。写真では35%と0%にあまり違いは感じませんが、装着していると外界の見え方はまったく異なります
もうひとつ「XREAL Air」からの進化を強く感じたのがサウンド。スピーカー部が第1世代から第2世代に進化したことで、明らかに低音が強くなり、臨場感も増しています。映画やミュージックビデオもより迫力あるサウンドで楽しめますね。
ただ、「指向性音響により音漏れが減少」と謳われていますが、カフェや電車車内では周囲が気になるぐらいの音漏れは発生します。個人的にはワイヤレスヘッドホンなどを使ったほうが、安心してコンテンツに浸れると思います。
装着感の向上については正直私にはあまり実感できませんでした。そもそも普段使いしている「XREAL Air」の装着感に不満はなく、どちらかといえば「XREAL Air」のほうが好みです。
ただし、「XREAL Air 2 Pro」には視力補正フレーム、ノーズパッドが引き続き同梱されており、さまざまな顔の形、鼻の高さ、視力などに対応可能です。そのような個人差に柔軟に対応できることは大きなメリットと言えます。
「XREAL Air 2 Pro」を装着したところ。筆者の顔の形、鼻の高さでは「XREAL Air」のほうが深く装着できました
先述したとおり、筆者は主に「XREAL Air」を自宅で使用しています。ライトシールドを装着しっぱなしで利用しているので、「XREAL Air 2 Pro」へ早急に買い替える必要性を感じていません。これから購入する場合でも、ほとんど自宅で利用するなら安価な「XREAL Air」をオススメします。
しかし、外出時の利用を想定している人には、絶対的に「XREAL Air 2 Pro」を推します。ライトシールドをひんぱんに取り外すのは大きなストレスです。「XREAL Air」との価格差が12,000円と大きいのは確かですが、それを覆すだけの使い勝手を享受できることは間違いないです。