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話題のゲーミングTWS ソニー「INZONE Buds」とSIE「PULSE Explore」を徹底比較

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話題のゲーミングTWS ソニー「INZONE Buds」とSIE「PULSE Explore」を徹底比較

“低遅延”が最も重要な機能として求められるゲーミングデバイスの世界にも、完全ワイヤレスイヤホンの波が来ている。2023年10月27日にはソニーの「INZONE Buds WF-G700N」(以下、INZONE Buds)、同年12月6日にはソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から「PULSE Explore ワイヤレスイヤホン」(以下、PULSE Explore)が発売された。偶然にも(?)ソニーグループから同時期に登場したこの2製品の実機レビューをお届けする。

今回はソニー「INZONE Bud」とSIE「PULSE Explore」を徹底比較

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2023/10/11 10:08

ソニーとSIE、別系統で開発されたゲーミング完全ワイヤレスイヤホン

「INZONE Buds」と「PULSE Explore」の比較で最初に語るべきことは、この2製品は兄弟モデルでもなんでもないということ。もちろん、イヤホン本体のデザインやサイズもまったく異なる。

「INZONE Buds」は、ホワイトのカラーというところを除くと(ホワイトはINZONE製品に共通するカラー)、外見はソニーの完全ワイヤレスイヤホンにルーツを感じる面長のデザイン。実績あるソニーらしく耳へのフィット感も優秀だ。

2023年10月27日に発売された「INZONE Buds」。市場想定価格は29,700円前後

2023年10月27日に発売された「INZONE Buds」。市場想定価格は29,700円前後

「INZONE Buds」のイヤホン本体はやや大きめで、耳に装着した際に横長に伸びるようなデザインだ

「INZONE Buds」のイヤホン本体はやや大きめで、耳に装着した際に横長に伸びるようなデザインだ

「INZONE Buds」はノイズキャンセリング機能と外音取り込み機能を搭載。ノイズキャンセリング機能は違和感なく室内のPCファン音などを抑えてくれるバランス型だ。ただ、ノイズキャンセリング性能はほどほどのようで、「WF-1000X」シリーズの技術を継承といっても最強というわけではなさそうだ。なお、バッテリー駆動時間はイヤホン単体で最大12時間、ケース込みで最大24時間。

いっぽう、「PULSE Explore」のデザインは、家庭用ゲーム機「PlayStation 5」の周辺機器らしさを強調する独特なカーブを描くデザイン。イヤホン本体にはPSロゴがあしらわれており、PlayStationファミリーらしい個性派だ。

装着感は耳への密着部分が平らになっており、標準搭載のイヤーピースも小さめで、「INZONE Buds」と共通部分はない。イヤーピースのフィット具合が快適さに影響するタイプなので、全4サイズの付属イヤーピースから自分の耳にあったものに交換するのがよさそうだ。なお、バッテリー駆動時間はイヤホン単体で最大5時間、ケース込みで最大15時間。

2023年12月6日に発売された「PULSE Explore」。市場想定価格は29,980円前後。ゲーム機「PlayStation 5」の周辺機器とひと目でわかる個性的なデザインだ

2023年12月6日に発売された「PULSE Explore」。市場想定価格は29,980円前後。ゲーム機「PlayStation 5」の周辺機器とひと目でわかる個性的なデザインだ

耳元にもPS5ロゴ。装着感としては密着度がやや低め

耳元にもPS5ロゴ。装着感としては密着度がやや低め

2製品ともゲーミングらしく2.4GHzの低遅延ワイヤレス接続に対応。「INZONE Buds」のBluetooth仕様には注意

「INZONE Buds」と「PULSE Explore」は、どちらもゲーミングイヤホンに求められる低遅延を実現するため、接続には2.4GHzワイヤレス接続のUSBドングル(トランシーバー)を活用する形になっている。

「INZONE Buds」はドングルがUSB-C仕様なので、PCやスマートフォンはもちろんのこと、「PlayStation 5」にも接続可能。充電ケース内にUSB-Cドングルを収納できるところも機能的だ。

「INZONE Buds」に付属するUSBドングル。接続するデバイスに合わせ、スイッチで動作モードを切り替える形だ

「INZONE Buds」に付属するUSBドングル。接続するデバイスに合わせ、スイッチで動作モードを切り替える形だ

USBドングルは充電ケース内に収納が可能。充電ケースごと持ち出し、さまざまなデバイスに手軽に接続できるのがうれしいポイント

USBドングルは充電ケース内に収納が可能。充電ケースごと持ち出し、さまざまなデバイスに手軽に接続できるのがうれしいポイント

「PULSE Explore」については、超低遅延ロスレスオーディオの「PlayStation Link(PS Link)」が利用可能なUSB-Aドングルが付属する。「PlayStation 5」のほか、PC/Macなどに接続することができる。ドングルがUSB-A仕様なので、基本的にはスマートフォンとの直接接続は想定しておらず、あくまでも「PlayStation 5」との接続がメイン。そのほかのデバイスとの接続は副次的なものと考えておいたほうがよさそうだ。

「PULSE Explore」には独自の「PlayStation Link(PS Link)」に対応したUSB-A仕様のドングルが付属。こちらは「PlayStation Link USBアダプター」という名称で単体でも販売されている

「PULSE Explore」には独自の「PlayStation Link(PS Link)」に対応したUSB-A仕様のドングルが付属。こちらは「PlayStation Link USBアダプター」いう名称で単体でも販売されている

なお、「INZONE Buds」と「PULSE Explore」はドングルを使わないBluetoothによるワイヤレス接続にも対応している。ただ、この部分はそれぞれの製品で方向性がはっきり分かれている。

特に「INZONE Buds」はかなり個性的。Bluetoothでも一般的なオーディオ製品で使われているClassic Bluetoothではなく、次世代BluetoothのLE Audioのみのサポートとなっているのだ。LE Audioは低遅延でのオーディオ伝送が可能なのでゲーミングイヤホンには有効であることはわかるが、現時点で利用できるのはAndroidスマートフォンのごく一部のモデルのみ。LE AudioをサポートしていないiPhoneなど大部分のスマートフォンとは接続ができないわけで、これは相当割り切った仕様だと言える。なお、LE Audio対応の「Xperia 1 IV」と組み合わせでは、きちんと動作したことは報告しておこう。

「INZONE Buds」とBluetooth LE Audio対応の「Xperia 1 IV」

「INZONE Buds」とBluetooth LE Audio対応の「Xperia 1 IV」

いっぽうの「PULSE Explore」に関しては、オーディオ製品で使われているClassic Bluetoothをサポートしており、対応コーデックはSBC/AACとかなり一般的な仕様だ。音声も通話マイクもすべて同時動作が前提になっているので、ゲームプレイをしながら通話をするような使い方も可能となっている。ただ、対応コーデックのSBC/AACは低遅延ではないので、ゲーミングに求められる低遅延はUSBドングルを使った2.4GHz接続でカバーし、Bluetooth接続は手軽に使えるコネクティビティを重視した現実路線を狙っているのだろう。

「PULSE Explore」はiPhoneを含めたBluetooth対応のスマートフォン全般で利用できるのが利点

「PULSE Explore」はiPhoneを含めたBluetooth対応のスマートフォン全般で利用できるのが利点

「PlayStation 5」に接続して実際のゲームを使って検証。低遅延はどちらも実力合格レベル

ここからは、「INZONE Buds」と「PULSE Explore」の実力を実際のゲームプレイで確かめてみた。今回は環境を統一する目的で、家庭用ゲーム機「PlayStation 5」と組み合わせ、『Apex Legends』や『Call of Duty:Modern Warfare III』などの実際のゲームタイトルで評価を行っている。

接続は付属のUSBドングルを「PlayStation 5」に接続する形で、「INZONE Buds」はUSB-C端子、「PULSE Explore」はUSB-A端子を利用した。2製品とも出荷時点でUSBドングルとペアリングが済んでいるので、USBドングルを挿すだけですぐにヘッドセットとして認識、サウンドが流れてくれた。

「INZONE Buds」はUSB-C端子に接続

「INZONE Buds」はUSB-C端子に接続

「PULSE Explore」はUSB-A端子に接続

「PULSE Explore」はUSB-A端子に接続

2製品ともUSB端子に接続するだけでサウンドの出力機器に現れる

2製品ともUSB端子に接続するだけでサウンドの出力機器に現れる

『Apex Legends』や『Call of Duty:Modern Warfare III』をプレイしてみたが、遅延はほとんどなくどちらも快適にプレイできた。銃声の遅れなどはまったく感じられない。はやり2.4GHzワイヤレス接続は遅延をはっきり知覚することができないレベルにまで低遅延化が進んでいるようで、どちらも甲乙つけられないくらい優秀だ。

ゲームプレイでは音の遅延は一切感じられず快適だった

ゲームプレイでは音の遅延は一切感じられず快適だった

いっぽう、「INZONE Buds」と「PULSE Explore」を両方試してみると、サウンド面での方向性の違いを感じることができた。「INZONE Buds」は銃声や爆音にもボリューム感がある、よくできたドンシャリ。対して「PULSE Explore」は予想外に低音をカットして高域を重視。音の定位感がくっきりとしているからか、エンタメ感は若干控えめだ。ジャンル問わず楽しむなら「INZONE Buds」、競技性あるゲームをプレイするなら「PULSE Explore」のほうが向いていそうだ。

なお、「INZONE Buds」は、Windows PCと接続すれば専用ソフト「INZONE Hub」を経由してイコライザーを自分好みにカスタマイズすることも可能だ。

PCゲームで利用するなら、専用ソフト「INZONE Hub」でさまざまなカスタマイズが可能な「INZONE Buds」のほうが便利かもしれない

PCゲームで利用するなら、専用ソフト「INZONE Hub」でさまざまなカスタマイズが可能な「INZONE Buds」のほうが便利かもしれない

音楽リスニングなら、臨場感あるサウンドが特徴的な「INZONE Buds」に軍配。「PULSE Explore」は若干クセあり

完全ワイヤレスイヤホンスタイルの製品ということもあり、利用シーンがゲーム以外の場合も多そうな2製品。最後に、スマートフォンでの音楽リスニング用途を想定した音質チェックを行ってみた。

まずは「INZONE Buds」から。USBドングル接続でいろいろな楽曲を試してみたが、YOASOBI『アイドル』を聴いてみると、ライブ感ある臨場感指向のサウンド。音の広がりと満たされるパワーがあるし、音場の見通しも優秀。なお、「Xperia 1 IV」でBluetooth LE Audio接続でもサウンドをチェックしてみたが、サウンドバランスや傾向はほぼ同じではあるが、音の情報量、解像度はUSBドングル接続のほうがよかった。

「INZONE Buds」はUSB-C対応のiPhoneにUSBドングルを接続するだけで音楽再生も楽しめる

「INZONE Buds」はUSB-C対応のiPhoneにUSBドングルを接続するだけで音楽再生も楽しめる

「PULSE Explore」をスマートフォンと接続する場合はBluetooth接続がメインとなる。さっそくBluetoothで接続してYOASOBI『アイドル』を聴いてみたが、ゲームプレイの時以上に高域側にクセのある聴こえ方だった。低音はある程度の量感はあるが、そこに引き締まりが加わる。Bluetoothで手軽に接続できる点はうれしいが、音楽リスニング用途も視野に入るなら、「PULSE Explore」よりも「INZONE Buds」のほうがよいかもしれない。

「PULSE Explore」はBluetooth接続で簡単に音楽リスニングできる点がメリット

「PULSE Explore」はBluetooth接続で簡単に音楽リスニングできる点がメリット

まとめ

同じソニーグループから登場したゲーミング完全ワイヤレスイヤホンの「INZONE Buds」と「PULSE Explore」。実際に2製品を使ってみると、USBドングルの2.4GHzワイヤレスで利用する想定なら、「INZONE Buds」のほうが扱いやすく、音質も好印象だった。ただBluetoothワイヤレスがLE Audioのみというのが問題で、これをどうとらえるか次第だろう。

いっぽう、「PULSE Explore」は「PlayStation 5」とのマッチングのよさや、プレイ中にBluetoothで通話もできるというゲーマーの利用シーンに即した使い方ができるところがおもしろい。思った以上にキャラクターの異なる2製品だけに、用途に応じて選んでみるのがよさそうだ。

折原一也
Writer
折原一也
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家。「オリチャンネル」主催。IT系出版の編集者出身で、2004年に独立後はモノ雑誌やオーディオ・ビジュアル専門誌で活動。2009年より音元出版主催のVGP審査員。画質・音質にこだわるAV評論家ではあるが、ライフスタイルになじむ製品、コスパにすぐれた製品を評価する庶民派。2022年に立ち上げたYouTubeチャンネル「オリチャンネル」では、取材メディアの人間として一次情報の発信、検証と測定データに基づくレビューなど独自の発信も行っている。最近のマイブームはAI全般。
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遠山俊介(編集部)
Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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