「OPPO A79 5G」は、2024年2月15日に発売される、エントリー向けのスマートフォン。直販価格が29,800円(税込)と格安ながら「OPPO A」シリーズとして初めてのおサイフケータイや急速充電に対応するなど、充実した機能を持つ点に注目の製品だ。その特徴をレビューしよう。
おサイフケータイなどに対応した「OPPO A79 5G」。前モデル「OPPO A77」とは一転して機能性を高めた製品だ
オッポのスマートフォンは現在、ミドルクラスの「OPPO Reno」シリーズと、エントリー向けの「OPPO A」シリーズの2シリーズで構成されている。「OPPO A」シリーズでは、2022年秋に登場した「OPPP A77」が、世界的な部材高騰と円安の状況下ながら24,800円(税込)という低価格で注目を集めた。ただ、価格が安い分、基本性能が低く用途を選ぶ製品というのが大筋の評価だ。
しかし、今回紹介する新モデル「OPPO A79 5G」は、一転して、おサイフケータイに対応するうえ、防水・防塵、フルHD+ディスプレイ、ステレオスピーカー、急速充電といった上位モデル「OPPO Reno A」シリーズに迫る機能も備えている。
製品は、通信事業者としては楽天モバイルとワイモバイルが、格安SIM事業者としてはIIJmioが取り扱う。また、家電量販店などで端末のみで購入も可能だ。
本機のサイズは約76(幅)×166(高さ)×8.0(厚さ)mmで、重量は約193g。IPX4の生活防水とIP5Xの防塵をクリアしている。なお、IPX4は水がかぶることには耐えられるが、水没には耐えられないことは把握しておきたい。
背面は、大きくデザインされたカメラが特徴。前モデル「OPPO A77」や「OPPO Reno9 A」などで採用されていた表面加工「OPPO Glow(オッポ・グロウ)」は施されていない
ボディ下面にUSB Type-C(USB 2.0)ポートとヘッドホン端子を配置する
側面には指紋認証センサー内蔵の電源ボタンとボリュームボタンが配置されている
「OPPO A」シリーズとして初めて搭載するFeliCaポート。おサイフケータイの諸サービスを利用できる
外見を見ると、背面の大きなカメラ周りに昨今のスマホらしさがただよう。ただ、ボディとディスプレイの継ぎ目が目立つので、感触は少しごつごつしている。また、オッポの製品としては珍しく、カバーが同梱されていない。
パンチホールはやや大きめ。なお、今回使用した端末にはディスプレイに保護フィルムが貼られていた
ディスプレイは、約6.7インチのフルHD+(2400×1080)液晶。HDRには非対応で、フロントカメラを収めるパンチホールの口径が少し大きい点が価格相応な印象を与える。ただ、最大90Hzのリフレッシュレートと180Hzのタッチサンプリングレートに対応しているため体感速度は悪くない。
サウンド機能を見ると、ステレオスピーカーとヘッドホン端子を備えている。「Dolby Atoms」などバーチャルサラウンドには対応していない。
バッテリー周辺を見てみよう。内蔵のバッテリーは容量5000mAhで、連続通話時間が約1500分、連続待ち受け時間が約548時間。エントリーモデルとしては標準的なバッテリーライフと言えるだろう。
充電性能を見ると、出力33WのUSB PDと、オッポ独自の充電規格「SUPERVOOCフラッシュチャージ」に対応している。いずれもフル充電にかかる時間は約74分。30分あれば50%の充電は行える。
なお、充電器やケーブルは同梱されないが、汎用のUSB PD充電器が使えるのはありがたい。近ごろは、高性能なUSB PD充電器が入手しやすくなっている。
本機に搭載されるSoCは、エントリー向けの「MediaTek Dimensity 6020」。これに4GBのメモリーと128GBのストレージを組み合わせている。OSは、Android 13をベースにした「ColorOS 13」だ。
また、最大1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを搭載。仮想メモリー機能を使えば最大で4GBのメモリー増設が可能だ。
定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」を試してみたところ、総合スコアは383355(内訳、CPU:136026、GPU:59784、MEM:91483、UX:96062)となった。近ごろのエントリースマートフォンとしてはまずまずの結果だ。
なお、本機と価格帯や機能が似ているシャオミ「Redmi 12 5G」の総合スコアは412097(CPU:139386、GPU:49272、MEM:115131、UX:108308)。総合スコアは「Redmi 12 5G」のほうが少し高い結果だが、「GPU」は本機のほうがよく、グラフィック性能にこだわるなら本機のほうが有利と言える。ゲームをプレイして限り、90Hz駆動ディスプレイの影響もあって、本機の動作は比較的スムーズに感じられた。
「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」の結果。左が本機、右は価格帯の近いシャオミ「Redmi 12 5G」。グラフィック性能を示す「GPU」は本機のほうが高い
通信機能を見てみよう。本機は、「OPPO A77」では非対応の5Gに対応している。2個のnanoSIMカードスロットを備えるほか、eSIMにも対応しており、これらのうち2個を同時に使うDSDVに対応している。
5Gの対応周波数帯はn77とn78の専用周波数帯2波で、これに加えて4Gからの転用周波数帯としてn1、n3、n28、n42の4波にも対応している。ただし、NTTドコモの使用するn79が含まれていない点には注意。いっぽう、4Gについては、国内4キャリアが運用しているプラチナバンドなどの主要周波数帯に対応しているので、圏外ばかり、ということはない。
5Gの商用利用が始まって久しいが、4Gからの転用エリアが多く通信速度は4Gと変わらない状況が長く続いていた。ただ、課題だった5G専用周波数帯と衛星通信との干渉が改善されつつあり、今年は通信環境が向上する可能性がある。エントリーモデルであっても、長く使い続けるつもりなら本機のような5G対応機を選ぶほうがよいだろう。
SIMカードスロットはnanoSIMカードを2枚利用できる。なお、microSDカードはnanoSIMカードと共用
メインカメラは、約5000万画素・広角カメラのシングル仕様。外観を見ると2個のカメラがあるように見えるが、片方は、構図の計測に使う約200万画素の深度センサーだ。静止画撮影ではオートHDRやAIシーン認識を利用できる。動画撮影は1080pと720pに対応している。
本機のようなエントリーモデルでも超広角カメラを採用していのは、ソニー「Xperia Ace III」や、シャープ「AQUOS wish3」くらいで、あまり数は多くない。超広角カメラをよく使う人は注意が必要だろう。
メインカメラは広角カメラと深度センサーの組み合わせ。深度センサーはオートフォーカスの補助や背景ぼかしなどで使用する。実質的にはシングルカメラだ
以下に、静止画の作例を掲載する。
ほぼ正午の日中の風景。コントラストが低めであっさりとした印象。解像感もほどほど
(撮影写真:4080×3072、7.44MB)
明暗の差が大きな構図で、HDRの性能を試した。総じて肉眼に近い印象で不自然な感じはない
(撮影写真:4080×3072、3.49MB)
雪の降る夜景を撮影。ハイライトの部分の飽和が目立つが、ノイズの除去を徹底しており暗部はクッキリしている。手ブレが見られたのは10枚中1枚程度なので、失敗を気にせずに撮影できるだろう
(撮影写真:4080×3072、3.87MB)
背景のボケ具合をチェックするため、ポートレートモードで梅を撮影してみた。背景の枝はボケがうるさくなりやすいが、この構図では比較的自然に写っている。ただ、こちらも日中としてはややコントラストが低い
(撮影写真:4080×3072、2.48MB)
明るい店内で撮影。誇張を抑えたおとなしい画質。写真としてはまっとうだが、SNS映えする写真が手軽に撮れるタイプではないようだ
(撮影写真:4080×3072、3.3MB)
本機のカメラは控えめなスペックだが、画質やレスポンスはエントリーとしては無理をせずにまとめている。コントラストが低めで、見栄えのする写真が手軽に撮れるタイプではない。だが、暗い構図でもノイズまみれにはならないし、ある程度の手ブレ耐性もある。カメラを目的に選ぶ製品ではないが、実用的な性能で大きく失望することはないだろう。
「OPPO A79 5G」のような、低価格なエントリー向けスマートフォンは近ごろ注目を集めており、ライバルは多い。そのなかで、本機は、おサイフケータイに対応するだけでなく、90Hz駆動対応のフルHD+ディスプレイやステレオスピーカー、急速充電といったミドルクラスに肉薄する機能性を持つのが特徴だ。
ワイモバイルのラインアップではZTE「Libero 5G IV」がライバルになるが、本機は急速充電対応という優位性がある。楽天モバイルのラインアップではシャープ「AQUOS wish3」やサムスン「Galaxy A23 5G」の価格が近いが、本機はそれよりもボディが大きく、ディスプレイもより高性能だ。
SIMフリー版の2024年2月中旬時点での価格.com最安価格は26,820円(税込)で、この価格で入手できるのはかなりお得感がある。安く手に入れられる実用的なスマートフォンを探している人にピッタリの製品と言えそうだ。