レビュー

折りたたみスマホのゲームチェンジャー! 最安39,800円「Libero Flip」を徹底チェック

「ワイモバイル」ブランドの折りたたみスマートフォン「Libero Flip」(ZTE製)が、定価63,000円(税別、以下同)で2024年2月29日より発売されている。折りたたみスマホとしては低価格を実現しており、一定条件をクリアすれば39,800円という驚きの価格で手に入れることも可能だ。折りたたみスマホらしい使い勝手ができるのかに注目したレビューをお届けしよう。

※本記事中の価格は税込で統一しています。

意欲的な価格を実現した「Libero Flip」。折りたたみスマートフォンの魅力を多くの人にもたらす注目製品だ

意欲的な価格を実現した「Libero Flip」。折りたたみスマートフォンの魅力を多くの人にもたらす注目製品だ

新規・MNP契約&指定料金プランの契約なら39,800円!

折り曲げられる画面を備えた折りたたみスマートフォンは、国内でも2023年に複数メーカーが製品を投入しており、徐々に市場での存在感が増している。ただし、便利な使い方ができる半面、通常のスマホと比べると高価なのがネック。メインスマホとして選択するにはハードルが高いところがあるのが現状だ。

今回取り上げる「Libero Flip」は、折りたたみスマートフォンに対する価格の概念を変える製品と言ってもおおげさではない。10万円を超えるのが当たり前の折りたたみスマートフォンにおいて、本機は63,000円という非常に安い端末価格を実現しているのだ。しかも、新規または乗り換え(MNP)契約で、特定の料金プランに加入する場合は、23,200円の割引が適用された39,800円で購入することができる。

ちなみに、ソフトバンクでは、本機と同じような折りたたみスマホ「motorola razr 40s」が97,200円で発売されている。こちらは端末購入サポートの「新トクするサポート」を使えば実質22,008円で購入できるので、一見すると本機よりも安いのだが、「新トクするサポート」を使う場合、2年後に下取りに出す必要がある点に注意してほしい。

防水やおサイフケータイ対応で十分な機能性、ただし少し重め

本機のボディはクラムシェルスタイルで、ガラケーのような縦折り構造を採用している。ボディを閉じた場合のサイズは、約76(幅)×88(高さ)×15.5(厚さ)mmで、開いた場合は約76(幅)×170(高さ)7.3(厚さ)mm。重量は約214gだ。

折りたたむと、厚みはおよそ倍になるが全長がざっと半分になるので握りやすい。それでいて、メインディスプレイは6.9インチの大画面なので、折りたたみスマホの魅力“コンパクトなのに大画面”は十分に発揮できている。

ただ、214gという重量は、同じ縦折りスタイルの「Galaxy Z Flip5」の187gや、モトローラ「motorola razr 40s」の188.6g比べると重い。軽量化はコスト増加につながりやすくなるので、ほどほどに抑えているようだ。

6.9型の大型ディスプレイ。持つとサイズ感がわかりやすいだろう。重量は重めだ

6.9型の大型ディスプレイ。持つとサイズ感がわかりやすいだろう。重量は重めだ

背面。中央にヒンジ部があり、円形のサブディスプレイが配置されている

背面。中央にヒンジ部があり、円形のサブディスプレイが配置されている

折りたためばこれだけ小さくなり、手のひらへの収まりがいい

折りたためばこれだけ小さくなり、手のひらへの収まりがいい

なお、背面にはFeliCaのマークがあり、おサイフケータイのクレジットカードやモバイルSuicaなどのタッチ決済が使える。もちろん、折りたたんだ状態でも利用できる。

日本市場で重視されるおサイフケータイに対応している点も魅力だ

日本市場で重視されるおサイフケータイに対応している点も魅力だ

USB Type-Cポートは下側面に配置。ヘッドホン端子は非搭載だ

USB Type-Cポートは下側面に配置。ヘッドホン端子は非搭載だ

折りたたんだ状態を横から撮影、電源とボリュームのボタンが見える。厚みはあるが、カメラ部の出っ張りも最小限なのでポケットやカバンの中でも収まりがいい

折りたたんだ状態を横から撮影、電源とボリュームのボタンが見える。厚みはあるが、カメラ部の出っ張りも最小限なのでポケットやカバンの中でも収まりがいい

こちらは開いた状態。ヒンジのある中央部分少し凹凸があるが、ボディ自体はきちんと平面に開く

こちらは開いた状態。ヒンジのある中央部分少し凹凸があるが、ボディ自体はきちんと平面に開く

60〜110度の範囲なら無段階で角度を保持できる。ノートPCのように途中まで折りたたんで動画を見る、といった使い方もできる

60〜110度の範囲なら無段階で角度を保持できる。ノートPCのように途中まで折りたたんで動画を見る、といった使い方もできる

6.9インチのメイン画面と、円形のサブ画面の2画面を搭載

次に、ディスプレイの詳細を見てみよう。本機は、6.9インチメインディスプレイのほか、背面に円形1.43インチのカラーサブディスプレイも搭載している。いずれも有機ELだ。

メインディスプレイは大画面のうえに、解像度も2790×1188(フルHD+)と高い。しかも、リフレッシュレートは120Hzまでカバーしているのでスクロールがスムーズだし、倍速表示対応のゲームでも役に立つだろう。気になる折り目だが、眺める角度によっては目立つこともあり、感触でもわかる。ただし、高価な製品と比べて気になるほどではない。

フロントカメラの収まるパンチホールを備えたメインディスプレイ。6.9インチの大画面だ

フロントカメラの収まるパンチホールを備えたメインディスプレイ。6.9インチの大画面だ

見る角度によっては折り目が見えるし、触れてもそれとわかるが、気になるほどではない

見る角度によっては折り目が見えるし、触れてもそれとわかるが、気になるほどではない

閉じた状態で通知を確認するため、折りたたみスマホは背面にサブディスプレイが必要になる。本機のサブディスプレイは、メインカメラと一体化されたデザインのため、一見すると大型レンズを搭載したカメラスマホにも見える。形状は円形で1.43インチ、解像度は466×466だ。このスペックはスマートウォッチでよく見かけるもので、実際の表示は明るくて屋外でも十分に見やすい。スマートウォッチ用の流用だとしたらこの視認性は納得できる。

また、タッチ操作にも対応しており、上から下にスワイプすると通知を確認できる。このほか時計や日時も表示可能。プリセットされた機能だけが使える仕様で、「motorola razr 40」のようにサブディスプレイで何でもできるわけではない。決済アプリのQRコードが表示できると便利そうだが、そうしたアプリの追加はできない。

タッチ操作に対応し、ダブルタップで画面オン。中央の部分がディスプレイだ

タッチ操作に対応し、ダブルタップで画面オン。中央の部分がディスプレイだ

サブディスプレイで表示できるものをピックアップした。天気予報やカメラの起動、歩数計が利用できる。このほかに、サウンド再生、ボイスレコーダー、タイマー機能を利用できる

サブディスプレイで表示できるものをピックアップした。天気予報やカメラの起動、歩数計が利用できる。このほかに、サウンド再生、ボイスレコーダー、タイマー機能を利用できる

ミドルクラス相当の「Snapdragon 7 Gen1」を搭載

本機が搭載する「Snapdragon 7 Gen 1」は、2022年登場のミドルハイ向けSoC。モトローラ「moto razr 40」でも採用されているSoCだ。メモリーは6GB、ストレージは128GBで、メモリーカードスロットは非搭載。プリインストールされるOSはAndroid 13だ。ZTEやソフトバンクは発売後のソフトウェアサポートに消極的な印象があるが、直近では「Libero 5G III」がAndroid 13へのバージョンアップを行っている。本機もOSバージョンアップに期待したい。

実際の処理性能をいくつかのベンチマークアプリを使って計測した。描画性能を測定するベンチマークアプリ「3Dmark」の一般的な検査項目「Wild Life」のスコアは3163。CPU性能を測定する「Geekbench 6」のスコアは、シングルコアが1038、マルチコアが2808だった。

「3Dmark」の「Wild Life」のスコアは3163

「3Dmark」の「Wild Life」のスコアは3163

「Geekbench 6」の結果は、シングルコアが1038、マルチコアは2808

「Geekbench 6」の結果は、シングルコアが1038、マルチコアは2808

性能的は、2022年に主流だったハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」よりも1段落ちるパフォーマンスで、ハイエンドスマートフォンの代替として期待するのは難しい。また、ハイエンドSoCに搭載されるAI処理に特化した「NPU」を搭載していないため、AIを使ったアプリや機能でも差があるだろう。ただ、ミドルレンジ機が想定するような一般的な用途なら十分な性能を発揮してくれるはずだ。

注意したいのは、メモリーカードスロットがなく、ストレージの容量が128GBという点。カメラの撮影データや電子書籍、大型アプリなどスマートフォンの扱うデータはますます増えているし、買い替えの期間も延びているので、使い方によってストレージの空き容量がひっ迫する事態も考えられる。

画質はほどほどだが、折りたたみのメリットを生かせるカメラ

最後に、カメラの性能をチェックしよう。本機のメインカメラは約5000万画素の広角カメラと約200万画素の深度センサーの組み合わせだ(※深度センサーは映像の記録用ではないので実際のカメラはひとつ)。カメラアプリの画面上には「26mm」とデジタルズームの「50mm」という2つの焦点距離が表示され、切り替えて使用できる。なお、フロントカメラは約1600万画素だ。
カメラのハードウェアは簡素だが、サブディスプレイを使って、メインカメラで自撮りが行えるのが特徴。縦折りスマホでは同様の機能をよく目にするが、自撮りの機会が多いならメリットは大きそうだ。

据え置きして撮影できるのも折りたたみスマホの利点

据え置きして撮影できるのも折りたたみスマホの利点

静止画の作例をいくつか掲載しよう。

光量のある昼間に撮影した作例。ハイエンドモデルに比べると樹木など細部の描写はやや緩いが、価格を考慮すると描写は十分なレベルだ

光量のある昼間に撮影した作例。ハイエンドモデルに比べると樹木など細部の描写はやや緩いが、価格を考慮すると描写は十分なレベルだ
撮影写真(4080×3072、4.54MB)

手持ちで夜景を撮影。手ブレは抑えられており十分な画質だ

手持ちで夜景を撮影。手ブレは抑えられており十分な画質だ
撮影写真(4080×3072、4.73MB)

HDRによって明暗差のバランスが保たれている。露出を補正して明るくしたほうが、映えたかもしれない撮影写真(3072×4080、3.62MB)

HDRによって明暗差のバランスが保たれている。露出を補正して明るくしたほうが、映えたかもしれない
撮影写真(3072×4080、3.62MB)

上と同じ構図を50mmのデジタルズームで撮影した。ノイズで細部が乱れているが拡大しなければ描写はまずまず

上と同じ構図を50mmのデジタルズームで撮影した。ノイズで細部が乱れているが拡大しなければ描写はまずまず
撮影写真(3072×4080、3.23MB)

50mmにしてポートレートモードで撮影。ボケ量をF1相当に調整している。200万画素の深度カメラを使っているため、それなりにきれいに被写体と背景が分離できた

50mmにしてポートレートモードで撮影。ボケ量をF1相当に調整している。200万画素の深度カメラを使っているため、それなりにきれいに被写体と背景が分離できた
撮影写真(4080×3072、1.24MB)

本機は、超広角カメラがないなど、定価63,000円の製品としては割り切ったところがある。だが、カメラを増やせばそれだけコストは上がるし、高画質化・高機能化もコスト上昇につながる。シンプルなカメラは価格を実現するための判断だろう。

肝心の写りは、可もなく不可もないといったところ。レスポンスは、通常の撮影で困るレベルではないが、カメラの起動や撮影でワンテンポの待ちが必要で、サクサク撮影が楽しめるタイプではない。

ただ、本体を折り曲げれば三脚のように自立した撮影ができ、自由度の高い撮影ができるのは高ポイント。これは、折りたたみスマートフォン共通のメリットだが、本機もその恩恵がある。

折り曲げることで三脚のように自立した撮影が行える。地面に設置できるなど自由度も高く、折りたたみスマホならではのカメラの使い方ができる

折り曲げることで三脚のように自立した撮影が行える。地面に設置できるなど自由度も高く、折りたたみスマホならではのカメラの使い方ができる

折りたたみスマホの魅力を多くの人に

「Libero Flip」の魅力は、現実的な価格の折りたたみスマートフォンであることだ。外見から安っぽさは感じられないうえ、コンパクトで持ち運びやすく、おサイフケータイに対応するなど欲しい機能もしっかり備わっている。

いっぽうで、やや重いボディや、シングル仕様のメインカメラからもわかるように、コストダウンの影響はゼロではない。これまでの折りたたみスマホの贅沢なイメージからはいったん離れたほうがよいだろう。

もうひとつ注意する点があるなら、それはバックアップ回線を考えた際の通信性能だ。4Gの対応する周波数帯にNTTドコモのB19や、KDDIや楽天モバイルが使用するB18といったプラチナバンドに対応しておらず、他社のネットワークを使うことは考えていないようだ。平常時ならよいが、近ごろ注目される災害への備えという点で、少し注意が必要かもしれない。

ともあれ、欲しい機能を備えながらお手ごろ価格を実現したことは大いに評価できる。憧れの折りたたみスマホの普及を進めるゲームチェンジャーとなる製品と言えそうだ。

小山安博
Writer
小山安博
編集者からライターに転身。PC、デジカメ、スマホ、セキュリティ、決済などのジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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