レビュー

ゲーム特化型から万能スマホに転生した「ROG Phone 8」レビュー

台湾のメーカーASUSの最新ゲーミングスマートフォン「ROG Phone 8」 。ゲーミング性能を重視しつつ、防水・防塵対応、FeliCaポート搭載など通常のハイエンドスマホにかなり接近している。その特徴に迫ろう。

レビューには最上位「ROG Phone 8 Pro Edition」を使用した。市場想定価格は219,800円(税込)

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2024/05/15 11:00

8世代目の「ROG Phone」

「ROG(アール・オー・ジー)」は、ASUSのゲーミング製品のブランドで、PC、キーボード、マウスから、ヘッドセットやチェアまでラインアップされている。そんな「ROG」のスマートフォンが「ROG Phone」シリーズだ。

その最新モデルは、「ROG Phone 8」、「ROG Phone 8 Pro」、「ROG Phone 8 Pro Edition(以下「Pro Edition」)の3機種で、2024年5月17日より発売中だ。これら3機種はSoCやディスプレイといった基本的なスペックは共通だが、メモリーやストレージ容量が異なる。また、「ROG Phone 8 Pro」と「Pro Edition」は、「ROG Phone 8」とは異なる背面デザインを採用。数量限定発売の「Pro Edition」は外付けのファン「AeroActive Cooler X」などオプションパーツを同梱したものだ。

上は「ROG Phone 8 Pro」でシャープなデザイン、下はゲーミングデバイスらしくロゴがカラフルに光る「ROG Phone 8」

上は「ROG Phone 8 Pro」でシャープなデザイン、下はゲーミングデバイスらしくロゴがカラフルに光る「ROG Phone 8」

手にした実機はゲーミング製品らしい特徴的なデザインがまず目を引く。検証機の「Pro Edition」はブラックのシャープなデザインで、メインカメラ周辺のデザインや背面に埋め込まれたLEDのドット「AniMe Vision」が特徴だ。「AniMe Vision」は非点灯時には見えないが、点灯すると存在がわかる。なお、LEDのオン/オフや、通知内容による点灯パターンなどのカスタマイズが可能だ。

特徴的な背面デザイン、斜めに入るラインもシャープなイメージだ。ROGのロゴマークが表示されているのがLEDドットの「AniMe Vision」

特徴的な背面デザイン、斜めに入るラインもシャープなイメージだ。ROGのロゴマークが表示されているのがLEDドットの「AniMe Vision」

操作画面も凝っており、標準アプリのアイコンはデザインが統一。好みは分かれそうだが、“普通のスマホとは違う”という意気込みは感じられる。なお、アイコンのデザインは「デフォルト」「テクノロジー」「クラシック」の3種類がプリセットされている。

ゲーミングらしいイメージの標準アプリのアイコン

ゲーミングらしいイメージの標準アプリのアイコン

ボディの機能面を見てもユニークな点が多い。2基のUSB Type-Cポートを備えているのもそのひとつだろう。USB Type-Cポートは長辺と短辺のそれぞれに配置されているので、縦画面でも横画面でも充電しながらのゲームがやりやすい。また、周辺機器を接続してももうひとつのポートが利用できる。

左側面にUSB Type-Cポートが配備されている

左側面にUSB Type-Cポートが配備されている

右側面にボリュームボタンと電源ボタンを配置。左右にあるイラストの部分が感圧ボタンだ

右側面にボリュームボタンと電源ボタンを配置。左右にあるイラストの部分が感圧ボタンだ

底面にもうひとつのUSB Type-Cポートを配置。中央ではなく片側に寄っているのも特徴的だ。ゲームでは必須のヘッドホン端子もこの面に配置されている

底面にもうひとつのUSB Type-Cポートを配置。中央ではなく片側に寄っているのも特徴的だ。ゲームでは必須のヘッドホン端子もこの面に配置されている

また、過去の「ROG Phone」が搭載していたショルダーボタン「AirTrigger」を受け継いでいる。機械式ではないセンサータイプのボタンだが、振動フィードバックが操作感を再現。センサー式であるため、タップや、スワイプなど最大で9種類の操作をカスタマイズできるのも利点だ。

「AirTriggers」はこうして持ったときにちょうど人差し指が当たる位置にある

「AirTriggers」はこうして持ったときにちょうど人差し指が当たる位置にある

小型軽量化しつつFeliCaポートも搭載

ゲーミングスマートフォンは性能を優先しがちで、携帯性は重視されない傾向にある。初代の「ROG Phone(ZS600KL)」は約200gだったが、「ROG Phone 7(スタンダードモデル)」は239gまで増加していた。しかし、「ROG Phone 8」は一転して225gまで軽量化された。

ボディサイズも約76.8(幅)×163.8(高さ)×8.9(厚さ)mmで、「ROG Phone 7」から高さ約10mm、厚さも1.4mm薄い。小さくはないが、普通のハイエンドスマートフォンくらいのサイズには収まっている。また、前モデルよりも強化されたIP65/IP68の防水防塵に対応している。さらに、「ROG Phone 8」では、FeliCaポートを搭載しており、「おサイフケータイ」のサービスが利用できるようになった。

225gの重量は近年のAndroidスマートフォンとしては一般的な水準。厚さも9mm以下に抑えられており特別に大きいという印象はない

225gの重量は近年のAndroidスマートフォンとしては一般的な水準。厚さも9mm以下に抑えられており特別に大きいという印象はない

ディスプレイは、フルHD+(2400×1080)表示に対応する6.78インチのLTPO 有機EL。リフレッシュレートは60Hz・120Hz・165Hzの3段階、または1〜120Hzの可変リフレッシュレート(LTPO)を選ぶことができる。なお、タッチサンプリングレートは最大720Hzに対応している。加えて、最大輝度も2500nitsを確保しており、直射日光の下でも視認性は高い。色差を示す”デルタ・イー”が1未満という色再現性の高さも魅力だ。

そのいっぽうで、ゲーミングスマートフォンとしては珍しく、インカメラを収めるパンチホールが設けられている。視界を妨げるパンチホールはゲームではあまり歓迎されないので、評価の分かれる点になるだろう。ただ、パンチホールに表示エリアがかぶらないように制限することは可能だ。

6.78インチの大型ディスプレイ。写真ではわかりにくいがパンチホールを備えている。ディスプレイの保護ガラスも「Corning Gorilla Glass Victus 2」というハイエンド向けの製品だ

6.78インチの大型ディスプレイ。写真ではわかりにくいがパンチホールを備えている。ディスプレイの保護ガラスも「Corning Gorilla Glass Victus 2」というハイエンド向けの製品だ

かゆいところに手の届くゲーム向けの機能

ゲーミングスマートフォンとしての本機の特徴に迫ろう。ゲーミング用のアプリとして、「Armoury Crate」では、CPUやGPUの動作クロックなど端末の状態を表示できる」がインストールされている。このアプリは、ゲーミングPCでも採用されており、キーマッピングの設定やおすすめゲームの紹介といった機能を備える。「ROG Phone 8」の場合、ゲームごとにパフォーマンス重視や電力消費節約などの最適化が行える。

「Armoury Crate」では、CPUやGPUの動作クロックなど端末の状態を表示できる

「Armoury Crate」では、CPUやGPUの動作クロックなど端末の状態を表示できる

ゲームごとにパフォーマンスの設定やボタン設定、マクロ、キーマッピングも可能だ

ゲームごとにパフォーマンスの設定やボタン設定、マクロ、キーマッピングも可能だ

ゲーム起動中に常駐する「GAME GENIE」は、画面左上から内側にスワイプすると表示され、ゲーム起動中のパフォーマンスや各種設定などをひとつのボタンで切り替えられる

ゲーム起動中に常駐する「GAME GENIE」は、画面左上から内側にスワイプすると表示され、ゲーム起動中のパフォーマンスや各種設定などをひとつのボタンで切り替えられる

ゲーム向けの機能としては「X Sense」も面白い。 これは、ゲーム中の行動を自動化してくれるものだ。宝箱や敵を倒したあとのアイテム収集を自動化する「自動ピックアップ」や、画面上のカーソル操作で移動するタイプのゲームで、カーソルを押し続けなくても移動を続けてくれる「自動実行」、会話を自動で進めてくれる「会話スキップ」といった機能が便利だ。

アイテムの収集に便利な自動ピックアップの機能

アイテムの収集に便利な自動ピックアップの機能

ゲームの用意する会話スキップ機能だと、読む時間を考慮して多少時間をおいてスキップするが、こちらの機能はサクサクとスキップしてくれる

ゲームの用意する会話スキップ機能だと、読む時間を考慮して多少時間をおいてスキップするが、こちらの機能はサクサクとスキップしてくれる

「AI Grabber」という機能も用意されており、これはゲーム画面上の指定範囲のテキストを抽出してコピーしてWeb検索できる。ゲームの攻略情報をWeb検索するような使い方もできるだろう。

なお、ゲーム以外のアプリを「Armoury Crate」に登録すれば、こうした機能の一部は利用できる。「AirTriggers」も画面を横向きにすればさまざまなアプリで使えるし、「AI Grabber」の検索をゲーム以外で使っても便利だろう。

ゲームアプリとして登録すれば「Chrome」でも「AI Grabber」が使えた

ゲームアプリとして登録すれば「Chrome」でも「AI Grabber」が使えた

「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載。ベンチマークテストの結果も上々

搭載されるSoC「Snapdragon 8 Gen 3」は、従来型「Snapdragon 8 Gen 2」よりもCPUが30%、GPUも25%高速化され、Androidで使われるSoCではトップレベルの性能を備える。なお、同SoCは、「Galaxy S24」シリーズや、「Xperia 1 VI」でも採用されている。

各モデルのメモリーとストレージの容量は以下のとおりだ。

・「ROG Phone 8」:メモリー16GB+ストレージ256GB
・「ROG Phone 8 Pro」:メモリー16GB+ストレージ512GB
・「Pro Edition」:メモリー24GB+ストレージ1TB

ベーシックモデルの「ROG Phone 8」でも十分だが、「Pro Edition」はかなりのハイスペックだ。ゲームアプリはファイルサイズが10GBを超えることも多く、いくつものゲームをインストールするゲームファンなら大容量のストレージは歓迎できる点だろう。

ベンチマークテストを行ったところ、描画性能を測定するアプリ「3DMark」では、「Wild Life Extreme」テストが5167、「Solar Bay」テストが8914。主にCPU性能を示すアプリ「GeekBench 6」はSingle-Coreが2265、Multi-Coreが7225となった。

「3Dmark」の結果は「Snapdragon 8 Gen 3」としてはフル性能が発揮できているようだ。「GeekBench 6」のスコアを見ても制約がかけられているようには感じられない。

左は「3DMark」の「Wild Life Extreme」の結果。5000を軽く超えており非常に高いスコアだ。右は「GeekBench 6」の結果。こちらも極めて高い結果だった

左は「3DMark」の「Wild Life Extreme」の結果。5000を軽く超えており非常に高いスコアだ。右は「GeekBench 6」の結果。こちらも極めて高い結果だった

このほかにもいくつかベンチマークテストを試したので以下の表に結果をまとめた。

いずれの結果も、「Snapdragon 8 Gen 3」搭載機として順当なもので、処理性能を渇望するゲーマーの期待を裏切ることはないだろう。

ゲームは高い負荷が長時間かかる傾向がある。そのため、冷却を効率的に行い、熱だれを抑えることが重視される。この課題に対して、「ROG Phone 8」は独自の冷却システム「GameCool 8」を内蔵。従来の「GameCool 7」よりも20%の冷却効率向上を実現している。

これに加えて、「Pro Edition」には同梱されているオプションの外付けクーラー「AeroActive Cooler X」も用意されている。これはペルチェ素子に空冷ファンを組み合わせたもので、装着した背面部分の表面温度を最大で36度も引き下げる効果がうたわれている。

「AeroActive Cooler X」を装着したところ。本体を挟み込むことで背面から冷やしてくれる

「AeroActive Cooler X」を装着したところ。本体を挟み込むことで背面から冷やしてくれる

「Zenfone」譲りのジンバル付きカメラを搭載する

カメラも十分な機能を備えているのが「ROG Phone 8」の特徴だ。もともとASUSはハイエンドスマートフォンとして「Zenfone」シリーズを提供しているが、「ROG Phone 8」のカメラ性能はこちらを踏襲・発展させたものとなっている。

メインカメラは、広角カメラ(標準カメラ)+超広角カメラ+望遠カメラのトリプルカメラ構成だ。「ROG Phone 7」で搭載されていたマクロカメラが、近ごろのハイエンドスマートフォンで注力されている望遠カメラに変更された。

広角カメラには有効画素数5000万画素のソニー製「MIX890」イメージセンサーを採用しており、通常はピクセルビニングによって1250万画素で記録される。レンズは35mm判換算23.8mm相当で、F値はF1.9。注目のジンバル機能は「Zenfone 10」よりも1世代アップデートされた「6軸ジンバルスタビライザー3.0」を搭載。これは、光学式手ブレ補正と電子式手ブレ補正を併用して、安定した映像を撮影できるというものだ。

中央の円形がジンバルの表示。中央のドットがブレに応じて動いてジャイロの働きを示している。円形内に収まっていれば手ブレが補正されていることを示す

中央の円形がジンバルの表示。中央のドットがブレに応じて動いてジャイロの働きを示している。円形内に収まっていれば手ブレが補正されていることを示す

超広角カメラは約1300万画素のイメージセンサーを採用。組み合わせるレンズは標準カメラに対して0.7倍の焦点距離になる。望遠カメラは約3200万画素で標準カメラに対して3倍の光学ズーム撮影が行える。

望遠カメラは約3200万画素と高画素だが、ピクセルビニングによって約800万画素で撮影しているようだ。スマートフォンの望遠カメラは、レンズ性能とセンサーサイズの両面で標準カメラに比べて光学的に不利な条件になるため、ピクセルビニングで高画質化を図るのは悪くない選択だろう。

広角カメラ、超広角カメラに加えて、望遠カメラを搭載しているのが特徴

広角カメラ、超広角カメラに加えて、望遠カメラを搭載しているのが特徴

以下に、静止画の作例を掲載する。設定は初期設定のままシャッターを押すだけの撮影だ。

標準カメラ

ハイエンドスマートフォンのカメラとしては順当な画質。基本的に露出は抑えめで派手にならず、好感が持てる

ハイエンドスマートフォンのカメラとしては順当な画質。基本的に露出は抑えめで派手にならず、好感が持てる

超広角カメラ

駅舎の屋根やレンガなどディテールがほとんど残っていない。細部の描写に多少難があるようだ

駅舎の屋根やレンガなどディテールがほとんど残っていない。細部の描写に多少難があるようだ

標準カメラ

露出は見た目どおりで質感もよく、超広角カメラでは残っていなかったディテールも生きており描写は十分

露出は見た目どおりで質感もよく、超広角カメラでは残っていなかったディテールも生きており描写は十分

標準カメラ(デジタル2倍ズーム)

基本となるセンサーが高性能なので2倍程度のデジタルズームなら十分実用的な画質だ

基本となるセンサーが高性能なので2倍程度のデジタルズームなら十分実用的な画質だ

望遠カメラ

注目の望遠カメラ。スマートフォンの望遠カメラとして描写は悪くない。十分実用できるレベル

注目の望遠カメラ。スマートフォンの望遠カメラとして描写は悪くない。十分実用できるレベル

「トラフィック」エフェクト

車のヘッドライトとテールランプが流れて幻想的に写るエフェクト「トラフィック」。これは真横からなので、またちょっと印象が変わる

車のヘッドライトとテールランプが流れて幻想的に写るエフェクト「トラフィック」。これは真横からなので、またちょっと印象が変わる

「人の往来」エフェクト

これもジンバルを使った効果のひとつで、手持ちでの長時間露光撮影を実現する。プリセットされるエフェクト「人の往来」を使うと、歩く人がブレた印象的な写真になる

これもジンバルを使った効果のひとつで、手持ちでの長時間露光撮影を実現する。プリセットされるエフェクト「人の往来」を使うと、歩く人がブレた印象的な写真になる

用途を問わない今までになかったゲーミングスマートフォン

これまでゲーミングスマートフォンは、ゲーマーのためのものだった。しかし、「ROG Phone 8」は、ゲーム向けの機能に加えて、落ち着きのあるデザインと軽く小さくなったボディ、FeliCaポート搭載、防水・防塵、ハイエンドにふさわしいカメラを備えた高機能なスマートフォンへと生まれ変わった。ゲーミングとハイエンドの垣根を取り払ったスマートフォンと言えるだろう。

価格もスタンダードモデルの「ROG Phone 8」なら159,800円で、「Snapdragon 8 Gen 3」搭載のFeliCa付きSIMフリースマトフォンとしてはかなり安価。「ゲーミングだから…」と選択肢から外すのはもったいない存在だ。

小山安博
Writer
小山安博
編集者からライターに転身。PC、デジカメ、スマホ、セキュリティ、決済などのジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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