スマホとおカネの気になるハナシ

第2次「ahamo」ショック襲来! 通信各社の中容量プランに値下げの予感!?

スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回の話題は、NTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo」のサービス見直しを取り上げる。通信容量を月間20GBから30GBへ10GBも増加しつつ、料金は据え置きで、競合サービスに強いインパクトを与えそうだ。その背景や今後の影響を考えよう。

※本記事中の価格は税込で統一している。

静かだが衝撃は強い「ahamo」のサービス改定、その中身は?

20GBの通信量を、月額3,000円を切る料金で利用できるとして発表当初から大きなインパクトを与えたNTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo」。その「ahamo」が2024年9月12日、記者発表会も実施することなく静かに発表した内容が、再び大きなインパクトをもたらしている。

それは2024年10月1日から、「ahamo」の通信量を20GBから30GBに増量するものだ。それでいて料金は月額2,970円から変更はない。料金が変わらずに10GBも通信量を増やすのだから、市場や業界に大きな驚きを与えたことは間違いないだろう。

NTTドコモの「ahamo」は2024年10月1日から、月額料金は2,970円に据え置いたまま、通信量を20GBから30GBへと大幅に増量している

NTTドコモの「ahamo」は2024年10月1日から、月額料金は2,970円に据え置いたまま、通信量を20GBから30GBへと大幅に増量している

もちろん30GBに増量された通信量はテザリングや海外でも利用できるほか、「ahamo大盛り」「ahamoポイ活」など各種オプションを適用した場合の通信量も、ベースの通信量が10GB増量され110GBとなる。それでいて料金は一切変わらないのだから、「ahamo」の魅力はいっそう高まった。

コロナ禍を挟む登場3年でデータ通信の需要が増加

しかしなぜ、NTTドコモは突然「ahamo」の通信量を増量したのか。考えられる要因のひとつに、スマートフォン利用者の通信量自体が増えていることがある。「ahamo」がサービスを開始したのはコロナ禍の真っ只中だった2021年3月だが、現在はコロナ禍から回復し、外でスマートフォンを利用する人が増えたことで必然的に通信量も増加傾向にある。

それに加えて、コロナ禍で通信量が大きい動画サービスなどの利用が増えて習慣化したことも、通信量増加を後押ししたと考えられる。「ahamo」もサービス開始から3年以上経過しているだけに、増大する通信量に対応するべく容量を増やす必要があったのだろう。実際、NTTドコモの代表取締役社長である前田義晃氏は、2024年9月30日の「NTT IR DAY 2024」で、「ahamo」の解約率が高い傾向にあると説明、20GBの通信量に不足感が生じ「ahamo」の競争力が落ちている様子をうかがわせている。

収益復活に手こずるドコモの懐事情も背景

「ahamo」が容量アップに踏み切った要因としてもうひとつ考えられるのがARPU(Average Revenue Per User、アープ)だ。ARPUとは1ユーザー当たりの平均的な売上を示す指標であり、携帯電話会社の場合、ARPUが高いほどユーザー1人当たりから得られる通信料収入が多くなることを示している。

そしてNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社のARPUは、菅義偉氏の政権下で国策によって進められた携帯電話料金の引き下げで大幅に下がっている。その後、先に触れた大容量通信のニーズが増え、料金の高いプランを契約する人が増えたことでKDDIとソフトバンクはARPUが回復傾向だが、NTTドコモだけは現在も下落基調が続いている。

NTTドコモの2023年度通期決算説明資料より。同社のARPUは政府主導の携帯料金引き下げ影響から回復しておらず、今なお下落が続いている状況だ

NTTドコモの2023年度通期決算説明資料より。同社のARPUは政府主導の携帯料金引き下げ影響から回復しておらず、今なお下落が続いている状況だ

その理由は「irumo」が非常に好調なためだ。「irumo」はNTTドコモの中でも通信量が少なく安価なプランだが、2023年のサービス開始以降、従来の料金プランより安い「irumo」が人気となり、そちらに乗り換える人が大幅に増えたことでARPUを引き下げてしまっているのだ。

携帯電話サービスの通信料収入は携帯電話会社の“要”でもあるだけに、ARPUの回復はNTTドコモにとって最重要課題となっている。そこで「irumo」より料金の高いプランの魅力を上げて乗り換えを進め、ARPUを高める策のひとつとして「ahamo」の通信量を大幅増量したと思われる。

NTTドコモは低価格料金プランの「irumo」を2023年より提供しているが、競合他社のサブブランドと比べ提供時期自体が遅かったこともあって、既存プランから「irumo」への乗り換えが多く発生していることがARPUを引き下げる要因となっている

NTTドコモは低価格料金プランの「irumo」を2023年より提供しているが、競合他社のサブブランドと比べ提供時期自体が遅かったこともあって、既存プランから「irumo」への乗り換えが多く発生していることがARPUを引き下げる要因となっている

「LINEMOベストプランV」は、わかりやすい「ahamo」対抗策

いずれにせよ、「ahamo」の通信量増量は消費者にとって大きなメリットだ。いっぽう、これは競合他社にとって、大きな脅威となり得る。それだけにこの発表以降、いくつかの競合サービスから「ahamo」対抗策が打ち出されている。

そのひとつがソフトバンクのオンライン専用ブランド「LINEMO」である。LINEMOは2024年7月30日に新しいプラン「LINEMOベストプラン」「LINEMOベストプランV」の提供を開始したばかりだ。しかし、「ahamo」の増量を受けてか2024年10月1日より「LINEMOベストプランV 30GBがおトクキャンペーン」を実施している。

これはその名前から察せられるように、「LINEMO」の中でも通信量が大きい「LINEMOベストプランV」を対象としたキャンペーン。「LINEMOベストプランV」は月額2,970円で通信量20GBまでの利用が可能で、それを超過して30GBまで利用した場合は、月額料金が3,960円にアップする段階制のプランだ。

だが、このキャンペーンが適用されると、最大6か月間は通信量が20GBを超えても、20GBまでと同じ月額2,970円で利用できる。キャンペーンの終了時期は未定とされていることから、新たに「LINEMOベストプランV」を契約した人は当面、キャンペーンの恩恵を受けられるようだ。

ソフトバンクの「LINEMO」は、「ahamo」が増量される2024年10月1日よりキャンペーン施策を実施。適用すると「LINEMOベストプランV」で通信量が20GBを超えた場合も、最大6か月間は月額料金が2,970円から変わらなくなる

ソフトバンクの「LINEMO」は、「ahamo」が増量される2024年10月1日よりキャンペーン施策を実施。適用すると「LINEMOベストプランV」で通信量が20GBを超えた場合も、最大6か月間は月額料金が2,970円から変わらなくなる

格安SIMの日本通信も複数プランで増量を実施

そしてもうひとつ、「ahamo」への対抗策を打ち出しているのがMVNOの日本通信だ。同社は2024年9月30日から、複数の料金プランで月額料金は据え置いたまま、通信量を大幅に増量している。

具体的には、従来通信量が10GBだった「合理的みんなのプラン」(月額1,390円)の通信量を20GBに増量。通信量30GBだった「合理的30GBプラン」(月額2,178円)は通信量を20GBも増量して50GBとし、新たに「合理的50GBプラン」に名称変更して提供する。「ahamo」以上の大幅増量で対抗する姿勢を見せていることがわかるだろう。

MVNOの日本通信は、2024年9月30日から「合理的みんなのプラン」「合理的30GBプラン」で月額料金を変えずに通信量を増量。後者は50GBの通信量を月額2,178円で利用できる

MVNOの日本通信は、2024年9月30日から「合理的みんなのプラン」「合理的30GBプラン」で月額料金を変えずに通信量を増量。後者は50GBの通信量を月額2,178円で利用できる

「ahamo」に追従できるライバルは限られる!?

ただ「ahamo」の増量に対抗する動きはこれだけにとどまらず、今後より多くのサービスやプランが追随する動きを見せるのではないかと考えられる。オンライン専用サービスにおいて“中容量”プランの多くが月間通信量を20GB前後に設定しているのは、「ahamo」の影響が非常に大きく、「ahamo」が“中容量”プランのトレンドリーダーとなっているからだ。

それだけに、「ahamo」を基準に通信量や料金を設定してきた競合の料金プランは何らかの対抗策を取らざるを得ない。ただ企業体力のある携帯大手はともかく、体力が弱いMVNOがこれに対抗するのは容易ではないだろう。

なぜなら、MVNOは携帯大手からネットワークの容量を借りてサービスを提供しているからだ。もし「ahamo」に追従して料金を据え置いたまま通信量を増やせば、通信量が増えた分ネットワーク容量をより多く借りる必要が出て支出が増える。そのいっぽうで、月額料金は変わらず売上も増えないので、必然的に利益が減ってしまうためだ。

今後各社が”中容量”プランの見直しに動く可能性が高い

それだけに、「ahamo」増量の動きにどれだけのMVNOが追従できるかは、今後の中〜低価格帯の競争を見据えるうえでも非常に重要になってくるだろう。その動きは2024年末から2025年3月の年度末に向けて起きてくると考えられる。それだけに、今後の各社の動きが大いに注目される。消費者も「ahamo」と競合するMVNOや携帯大手のオンラインプランの動きをしっかり見据えてよりお得なプランを選びたいところだ。

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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