レビュー

富士通「FMV-KB800T」の人気の理由は日本人のニーズを満たす作り?

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価格.comのキーボード人気売れ筋ランキングにおいて3位(2025年2月28日時点)と人気なのが、富士通のワイヤレスキーボード「FMV Comfort Keyboard KB800 FMV-KB800T」です。キーボードにこだわりを持つ富士通の製品ですが、10,000円前後という安くない価格でこの順位はかなり高評価といえます。そこで今回は実機を試してその人気の理由を探ってみます。

富士通「FMV Comfort Keyboard KB800 FMV-KB800T」、11,000円(税込/価格.com最安価格。以下ページ内の情報はすべて2025年2月28日時点のもの)

富士通「FMV Comfort Keyboard KB800 FMV-KB800T」、11,000円(税込/価格.com最安価格。以下ページ内の情報はすべて2025年2月28日時点のもの)

キーボードと言っても、多数の製品が販売されています。では、実際にはどのような外付けキーボードが売れているのでしょうか。価格.comのキーボード人気売れ筋ランキングには、コストパフォーマンスが高いエントリーモデルと、高性能なゲーミングキーボードが人気ですが、面白いと感じる商品が3位にランクインしていました。
それが富士通のワイヤレスキーボード「FMV Comfort Keyboard KB800 FMV-KB800T [ブラック] (以下KB800)」です。最安価格は11,000円でそれほど安価とは言えず、見た目もビジネスライクなデザイン。“安価”か(ある意味)“派手”か、2極のモデルに人気が集まるなかで、「KB800」は異彩を放っていました。

しかし、富士通は80年代から一貫して、日本語入力を重視したキーボードを作り続けてきており、キーボードファンにとってはおなじみのメーカーかつブランドで、高い信頼性もあります。「KB800」も富士通の肝いりの商品らしく、同社のキーボードマイスターとして知られる藤川英之氏が監修として関わっています。

一体どんな使い心地なのでしょうか。メーカーからお借りして、実際に使ってみると、高評価の理由が見えてきました。

薄さと打鍵感を両立、打ち漏らしも少なく快適

薄型の外付けキーボードは打鍵感がイマイチ……と感じることが多いのですが、「KB800」は薄型にもかかわらず、入力がとても快適です。やわらかではあるのですが、キートップとフレームの遊びが少ないのでしょうか。やや乱暴に入力してもキーがブレず、狙ったキーを確実に押せます。

キーストロークは約3.0mm。薄型キーボードにしては深みがあります

キーストロークは約3.0mm。薄型キーボードにしては深みがあります

アクチュエーションポイント(キー入力に反応する位置)が浅めに設定されているのも、技アリだと感じます。底突きの衝撃がやわらかく、かつ早めにキー入力が反応するため、慣れると撫でるようにスムーズなタイピングが可能になります。底突き時の衝撃およびタイプノイズは控えめで、長時間使っていても負担になりにくいですね。
押下圧は、主に親指で押すスペースバー周囲は重め、人さし指・中指で押す中央部やエンターキー、カーソルキー、テンキーはやや軽めに、薬指・小指で操作することが多いキーは軽めに設定されている点も見逃せません。
ブラインドタッチをある程度以上マスターしている人向けではありますが、これらのチューニングによって打っていて気持ちがよいと感じます。

あえてキートップの四隅を押してみましたが、しっかりと、かつスムーズに押下できます

あえてキートップの四隅を押してみましたが、しっかりと、かつスムーズに押下できます

同時にロープロファイルのため、元々のキートップの高さが低く、ノートパソコンのキーボードに慣れ親しんだ人でも、外付けキーボードを初体験するのにベストなモデルと言えますね。

コンパクトだがテンキーありのキーレイアウト

本体の横幅は約384.8mm。独立したテンキーやカーソルキーを備えたフルキーボードにしてはコンパクトです。筆者手持ちのキーボードと比べてみたら、テンキーレスの「REALFORCE R3」と同じくらいでした。
デスクのスペースを極力占有されたくない。けれども、テンキーは欲しいという、「KB800」の想定ユーザー層が見えてきました。このモデルはどこまでも純粋に、仕事でパソコンを使っている人に向けて開発されたモデルなのでしょう。使ってみるとメインのエンターキーとテンキーの距離が近くてデータ入力がとても楽です。また、エンターキーのサイズが大きく幅もあり、さまざまなポジションで改行しやすい点も、毎日「Excel」や「Word」といったオフィスアプリを使っているユーザーのためを思った気配りだと感じてきました。

またキートップ上面はわずかに球面形状になっており、指に自然となじむデザインです。こういった細かい配慮により、長時間の作業でも疲れにくいキーボードとして仕上がっていますね。

データ入力が多いユーザーなら歓迎するテンキーを搭載しています

データ入力が多いユーザーなら歓迎するテンキーを搭載しています

スペースバーは短め。英字レイアウトのキーボードを使っている人だと、慣れにくいかもしれません

スペースバーは短め。英字レイアウトのキーボードを使っている人だと、慣れにくいかもしれません

ロープロファイルゆえの、収納のしやすさにも触れておきましょう。届いたメールのチェックや、短文の返信など、普段はノートパソコンのキーボードでも仕事が回せる人でも、月末のデータ入力が必要なときは外付けキーボードが欲しくなるかと思います。そんなときでも「KB800」ならさっと引き出しや本棚から取り出して、BluetoothもしくはUSB Type-Aレシーバー経由でパソコンとつないで、すぐに作業できます。

マクロを記録できるメモリーキーや最大4台までのマルチペアリング機能が仕事に効く

フルキーボードと比べると、page up/downやhome/endといったキーがない代わりに、3つのメモリーキーがファンクションキーの横に並びます。
このメモリーキーですが、人によっては渇望すると言ってよいほど活用できる存在です。1つのキーに50までのキー入力を記録できるため、多用している「Excel」関数や、HTMLのタグ、メール冒頭の挨拶文などを入れておくことで、日々の作業を楽にすることができますから。

F12キーの横に備わる3つのメモリーキー。1つのキーに、50までのキー入力を記録できます

F12キーの横に備わる3つのメモリーキー。1つのキーに、50までのキー入力を記録できます

「KB800」の長所のひとつに、最大4台のマルチOS・マルチペアリング対応機能があります

「KB800」の長所のひとつに、最大4台のマルチOS・マルチペアリング対応機能があります

Bluetooth接続の場合、最大3台までのマルチペアリングが可能で、Windows 10以降(64ビット版)、macOS 11以降(Big Sur)、iOS 15・iPadOS 15以降、Android 11以降、ChromeOSに対応しています。いっぽう、付属のUSBレシーバー(Type-A)を使用する場合は、1台限定の接続となりますが、Windows 10以降(64ビット版)、macOS 11以降(Big Sur)、ChromeOSに対応しています。さらに、キーボード上に専用キーが配置されており、簡単に接続先の切り替えが可能です。これが背面ではなく表面に配置されている点は、「ユーザーの利便性をしっかり考慮している」と言えるでしょう。

Wi-Fi接続にはUSBレシーバーを使用します

Wi-Fi接続にはUSBレシーバーを使用します

もちろん、この機能がすべてのユーザーにとって必要不可欠というわけではありません。1台のパソコン専用として使用する場合、マルチペアリングキーのスペースを、より多くのメモリーキーに割り当ててほしいと感じるかもしれません。
しかし、日本人向けのノートパソコンを長年手掛け、そのノウハウを蓄積してきた富士通が設計したこのキーボードですから、外付けキーボードを選ぶ日本人ユーザーのニーズを最大限に満たすレイアウトと機能を採用したと言えるのではないでしょうか。

【まとめ】正直言ってよいでしょうか。テンキーレスのさらなる小型化モデルも欲しいです!

「KB800」を2週間ほど使ってみて、もうちょっとこうだったらな、と思うポイントが1つありました。それは専用の設定変更アプリが用意されていないことです。
Windowsの場合は、マイクロソフトの「Microsoft PowerToys」の「Keyboard Manager」を使ってキーアサインのカスタマイズが可能ですが、企業の垣根を超えるのって難しいと思うんです。富士通として、他社のツールを使ったセッティング方法を公開することに、高いハードルがあると思うんですよ。

だからこそ、独自のセッティングツールがあれば、よりユーザーの使用環境に寄り添ったキーボードになるのではないでしょうか。

その1点以外は、ビジネスユースのスペシャルなキーボードとして。また、デスクワーカーの仕事を支えてくれるキーボードとしてすばらしい出来ですね。フレームの剛性も高く、長時間、データや文章を入力し続けても疲れにくいのですから。

と、ここまで書いて、もう1つ要望がありました。というか、今、生まれました。あくまで文字入力中心である、ライターという職業においての願いなのですが、テンキーレスで、横幅縮めたバリエーションモデルがあったらよいな、と感じまして……。

軽さと薄さと打鍵感のバランスが取れているからこそ、持ち歩きたいんですね。スマホやタブレットのキーボードとして使いたい。そのために、テンキーを省いた小型機もあったらよいな……と願います。

武者良太
Writer
武者良太
1971年生まれのガジェットライター。出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。PCやスマートフォンのハードウェアレビューから、ガジェット市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。
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柴田崇志(編集部)
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柴田崇志(編集部)
モノ雑誌で10年弱編集を経験した後、カカクコムに入社。前職ではAV家電やカメラを中心に幅広い製品を担当。スペックからわかりづらい製品の違いをわかりやすく説明したいです。
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