家電業界を長年見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第59回は、「Windows 10」のサポート終了が2025年10月に迫り、買い替え需要が高まってきたノートパソコンの市況や最新トレンドについて解説する。
【図1】価格.com「ノートパソコン」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
ノートパソコンは、日々のビジネスや教育、趣味などの場で幅広く使われており、もはや現代の必須アイテムと言っていい。当然ながら、その需要は多少の上下はあるものの、大きく下落することはない。特に、コロナ禍が始まった今から5年前の2020年には、リモートワークやリモート学習の世界的な広がりを受けて、パソコンの需要は大きく伸びた。そこをピークにこの5年間はやや右肩下がり傾向にあるものの、その流れも2025年でいったん終わりを迎えそうだ。
図1は、過去3年間における価格.com「ノートパソコン」カテゴリーの閲覧者数推移を示したものだ。これを見ると、2024年の秋くらいまでは、需要が下がっているように見えるが、その後はやや右肩上がりに需要が伸びている。特に直近の2025年3月のアクセスは、前年、前々年のピークを超える数字となっている。
【図2】価格.com「ノートパソコン」カテゴリーの閲覧者数推移(過去半年)
上記のアクセス推移を直近半年に限って細かく示したのが図2だ。これを見ると、2024年10月くらいの値を底に、年末やや下がった部分はあるものの、3月が最大のピークとなっている。これは例年の傾向で、企業の端末リプレースや、新入学などに合わせた新規購入需要がこの時期伸びるためだ。だが2025年は図1で見たように、前年や前々年のピークと比べても、その盛り上がり方は大きく、今期は久しぶりに需要が高まっていると言っていい。
この理由としては、2025年10月に予定されている基本OS「Windows 10」のサポート終了の影響が大きいと考えられる。「Windows 10」は2015年に登場したOSで、今年で10年を迎える。すでに今から4年前の2021年に後継OSとなる「Windows 11」がリリースされており、しかも「Windows 10」からは無償アップグレードが行えるため、多くのユーザーがこちらに移行しているものと思われていたが、さまざまな調査によれば、まだ半数近くのWindowsユーザーが「Windows 10」を使っているという結果も出ており、今後半年ほどで駆け込み的に新OSにアップグレードするユーザーが増えることも予想されている。
「Windows 11」は、OS自体を無償アップグレードできるので、端末自体を買い替え必要はなさそうだが、すでにその登場から10年を経たOSだけに、それを扱う端末のほうも処理性能やバッテリーなど、さまざまな面で力不足になっていると想像できる。そのため、しばらくパソコンを買い替えていなかった人の中にも、この秋までにパソコンを新調しようという人が増えてきている。特に、法人向けパソコンについては、すでに端末リプレースの需要が高まってきており、今後もその需要は増えていくものと思われる。
【図3】価格.com「ノートパソコン」カテゴリーの主要メーカー別閲覧者数推移(過去3年)
図3は、過去3年における、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーの主要メーカー別閲覧者数推移を示したものだ。これを見ると、3年前はトップを走っていたHPが2023年中に大きく数値を下げ、その代わりにレノボが大きくシェアを上げ、首位交代を成し遂げたことが見て取れる。このトレンド変化はさまざまな理由がありそうだが、少なくとも価格.com上で見る限り、HPは比較的低価格なモデルと軽量のモバイルノート「Pavilion」に強みがあるのに対して、レノボは「ThinkPad」シリーズの廉価モデル「Eシリーズ」を中心に、比較的高性能なモデルを展開しているという違いがある。もちろん、両社ともそれ以外の製品バリエーションも豊富に揃えており、全体として見ればそこまでの差異はないのだが、価格.comの「ノートパソコン」カテゴリーの人気モデルを見ていると、そのような傾向が見受けられ、これがある程度人気を分ける結果につながっているのではないかと想像される。
というのも、5年前のコロナ禍の初期は、突如降ってわいたようなリモートワークやリモート学習にとりあえず対応できるようにと、ノートパソコンの中でも比較的安価なモデルが人気となった経緯がある。ひとつの家庭でノートパソコンが2台、3台と必要になったというケースもあり、そうなるとどうしても1台あたりのコストは抑えざるを得ない。また、その当時は、会社と家の間をひんぱんに持ち運んで使うための軽量モバイルノートが比較的人気を得ていたこともある。こうした状況が、HPが得意とするラインアップにピタリと当てはまったために、HPはコロナ禍を通じて、安定した人気を持続し続けたと考えられる。
しかし、3年にわたったコロナ禍を経て、人々のノートパソコンに求める条件も変化してきた。家庭でのリモートワークが日常化してくると、ビデオ会議などにもそこそこ高い処理性能が求められることがわかってきた。ノートパソコン自体の持ち運びも思ったほどせず、小型軽量であることよりも、高いスペックや、画面の大きさのほうがやはり重要という意見も増えてきた。こうした流れの中で、以前からその作りには定評のある「ThinkPad」シリーズを擁するレノボや、レノボ傘下となった今も国内組み立てを続けるNEC、さらには富士通といった、老舗ブランドやメーカーの価値が相対的に上がってきたように思われる。
【図4】価格.com「ノートパソコン」カテゴリーの主要メーカー別閲覧者数推移(過去半年)
このトレンドを直近半年で詳しく示したのが図4だ。これを見ると、首位のレノボが安定した人気でほかを寄せ付けていないことがわかる。さらにその下を見てみると、2位のHPに大きく差をつけられていたデルやNEC、富士通いったメーカーの需要が、2025年に入ったくらいからグンと伸びていることがわかる。HPとレノボの2強下で3位以下に甘んじていた老舗メーカーの魅力がここへ来て再評価されてきたと見てもいいだろう。
【図5】価格.com「ノートパソコン」カテゴリーにおける人気モデル別閲覧者数推移(過去半年)
では、今人気となっているノートパソコンはどんなものなのだろうか。図5は、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーにおける人気モデル5製品別の閲覧者数推移を示したもの。人気上位の製品は以下の通り。
1.レノボ「ThinkPad E14 Gen 6 AMD 価格.com限定・Ryzen 7 7735HS・32GBメモリー・1TB SSD・14型WUXGA液晶搭載 プレミアム 21M3CTO1WW」(以下、ThinkPad E14)
2.デル「Inspiron 15 Ryzen 5 7530U・16GBメモリ・512GB SSD搭載モデル」(以下、Inspiron 15)、NEC「LAVIE Direct N15 Slim Core i7・16GBメモリ・512GB SSD・Office Home&Business 2021搭載 価格.com限定モデル NSLKC2915SYH1B」(以下、LAVIE Direct N15 Slim)
3.HP「HP 14 Ryzen 5 7530U・16GBメモリ・512GB SSD・フルHD・IPSパネル搭載 価格.com限定モデル」(以下、HP 14)
レノボやデル、HPが上位を争っている状況だ。このグラフを見ても、HPのモデルの伸びが鈍化しているのに対して、レノボやNECといったメーカーの伸びが大きく、デルについても、アップダウンはあるものの、この3月期には大きく伸ばしている。
【図6】価格.com「ノートパソコン」カテゴリーにおける人気モデル別の最安価格推移(過去半年)
この上記5モデルの同時期における最安価格の推移を示したのが図6になる。これを見ると、価格分布は11万円を超える高価格帯と、6万〜7万円台の低価格帯とにはっきり二分化されている。高価格帯に属するのは、HPの「Pavilion Aero 13 Ryzen 5・16GBメモリ・512GB SSD・マウス付 価格.com限定モデル」(以下、Pavilion Aero 13)と、レノボ「ThinkPad E14」、NEC「LAVIE Direct N15 Slim」の3モデル。いっぽう低価格帯に属するのは、HP「HP 14」とデル「Inspiron 15」の2モデルだ。
売れ筋ランキングの上位モデルを見ただけでも、現在はどちらかと言えば高価格帯モデルが人気の中心となっており、この価格帯で売れているのは、レノボ、NEC、HP(モバイルノート)という状況だが、このうち軽量モバイルノートのHP「Pavilion Aero 13」を除く2モデルは、CPUに高性能な「Core i7」「Ryzen 7」を搭載する高性能モデルであり、日常のさまざまな用途でストレスなく使用できるだけのスペックを備えている。全体的なスペックが高いのは、レノボ「ThinkPad E14」だが、NEC「LAVIE Direct N15 Slim」は「Office Home & Business 2021」を搭載しているのが特徴。HP「Pavilion Aero 13」は、スペック的にはミドルクラスだが、1kgを切る軽量ボディで持ち運び用途に適しているというメリットがある。これら3モデルの販売価格はいずれも11万〜11.5万円程度に収れんしており、このあたりの価格帯が今の売れ筋相場と言ってよさそうだ。
いっぽう、低価格帯で売れているHP「HP 14」とデル「Inspiron 15」は、CPUに「Ryzen 5」を搭載し、16GBメモリーと512GBのSSDを搭載するミドルクラスのスペックを持つ点で共通している。販売価格もいずれも6万円台で、コスパは非常に高い。ただ、いずれも2023年の発売で、やや設計が古くなってきている点は注意が必要だ。コロナ禍では、このあたりのスペックを持った製品が人気の中心だったが、最近は、上記の高性能モデルにその座を奪われつつあるといったところだ。
このように、人気モデルの構成や価格帯を見ても、最近のノートパソコンの人気トレンドが、ミドルクラスからハイエンドにシフトしつつあるのは間違いない。コロナ禍で購入したパソコンのスペックが物足りなかった人がより高めのスペックの製品に買い替えていることもあるだろうし、昨今話題のAI機能を今後活用するためにもやや高めのスペックを持った製品を購入するということもあるだろう。
なお、ノートパソコンの販売価格については、今の世界情勢を考えると、今後値上がりすることも十分に考えられる。今のところ、比較的落ち着いた値動きを見せているが、「Windows 10」のサポート終了が近づく夏あたりになると、ノートパソコンの販売価格も為替や関税の影響で高騰する可能性がある。ノートパソコンの新規購入を考えているなら、今から初夏くらいまでの時期がひとつの買い時と言っていいだろう。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2025年4月2日 時点のものです
価格.com最安価格:109,890円
発売日:2024年4月12日
ユーザー満足度・評価:★4.71(12人)
現在、価格.com「ノートパソコン」カテゴリーで売れ筋No.1を獲得し続けている人気モデル。CPUにAMDの「Ryzen 7 7735HS」を搭載するほか、32GBメモリー+1TB SSDと、全体的なスペックはライバルモデルに比べて充実の内容だ。ディスプレイは14インチとやや小型だが、フルHDを超えるWUXGA (1920×1200)に対応しており、情報を多く映し出すことができる。堅牢で知られる「ThinkPad」シリーズらしく、ボディは米国国防総省の「MIL-STD 810H」に準拠するタフネスぶり。USBポートもType-A×2、Type-C×2と十分で、実用において困る点が見当たらない。
なお、基本スペックがほぼ同じで画面サイズが16インチと大きな「ThinkPad E16 Gen 2 AMD 価格.com限定・Ryzen 7 7735HS・32GBメモリー・1TB SSD・16型WUXGA液晶搭載 プレミアム 21M5CTO1WW [ブラック]」も同様におすすめだ。
価格.com最安価格:114,800円
発売日:2024年12月16日
ユーザー満足度・評価:★5.00(1人)
老舗の国内PCブランド、NECがWeb限定で販売する「LAVIE Direct」の主力モデル。使いやすい15.6型のフルHD液晶を搭載し、CPUにはインテルの「Core i7 1355U」を搭載する。メモリー16GB、SSD 512GBという点は標準的だが、むしろ、多くの人が使用する「Microsoft Office Home & Business 2021」がバンドルされて、11万円台という価格に注目だ。USB Type-Cポートは1基のみ。現在も国内生産を貫く製造体制や充実したサポート体制も人気の理由で、安心のNECブランドを指名買いする人は多い。
価格.com最安価格:108,900円
発売日:2024年5月31日発売
ユーザー満足度・評価:★5.00(4人)
13.3型WUXGA(1920×1200)ディスプレイを備えたモバイルノート。重量は990gと軽量なので、家と会社・学校などの持ち歩きが多い人に向いている。搭載されるCPUは、 AMDの「Ryzen 5 8640U」で、ミドルクラスではあるが省電力性にすぐれており、バッテリーは最大11時間30分駆動する。そのほか、メモリーは16GB、SSDは512GBと、必要十分なスペック。USBポートもType-A×2、Type-C×2と十分な内容で拡張性も高い。最安価格11万円以下で買えるのは今だけかも。
価格.com最安価格:94,974円
発売日:2025年3月7日発売
ユーザー満足度・評価:★--(0人)
デルの主力モバイルノート「Inspiron 14」の最新モデル。CPUにAMDの「Ryzen 7 8840HS」を採用するほか、16GBメモリー、1TB SSDと、十分以上のハイスペックでありつつも、現時点では10万円以下で購入できる高コスパモデルだ。14型のディスプレイはフルHDを超えるWUXGA (1920×1200)に対応しており、実用性も十分。ボディは米国防総省の「MIL-STD-810H」に準拠するタフネスボディだが、重量は1.61kgとやや重い。そのほか、USB Type-Cポートが1基のみなのはやや気になるが、それ以外の点で気になることはないバランスのいいモデルだ。
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