ノートパソコンで行う作業の生産性を向上させたいなら、PCモニターの増設がおすすめです。表示スペース=作業空間が増えれば同時に複数のウィンドウが開けて、情報量がアップしますからね。
今回は、そんなPCモニターのなかから、吊り下げが可能なASUSのポータブルモニター「ZenScreen OLED MQ16AHE」(以下、「MQ16AHE」)をレビューしていきます。
ASUS「ZenScreen OLED MQ16AHE [15.6インチ グレー]」、61,319円(税込、2025年4月17日時点の価格.com最安価格。以下同)
「MQ16AHE」の外観
「MQ16AHE」は、比較的シンプルに使えるポータブルモニターです。重量は約720gで、15.6インチのポータブルモニターとしては平均的な重さ。特に印象的なのは薄さで、最薄部は5mm、モニター下部の厚みがある部分でも9mmほどに収まっています。
この薄さであればバッグのパソコン収納部にノートパソコンと一緒に収納できます。持ち歩き性能は良好と言えます。
同梱物はモニター本体、USB Type-C to Cケーブル、Mini HDMI to HDMIケーブル、専用の収納ケース(実測重量は約107g)、30W出力のアダプターなど
ケースに収納した様子。14インチのノートパソコンと一緒に持ち歩いても苦にならない薄さ
本機の機能面での大きな特徴は、背面に取り付けられたキックスタンド。本体を自立させるためのものです。
このキックスタンドは360度回転し、モニターを横置きあるいは縦置きで支えます。キックスタンドとモニターはDリングネジで固定されており、スタンドを取り外すことも可能。ちなみに、ネジを強く締めすぎるとモニターに干渉するため、ほどほどに締めるのが吉。キックスタンドの回転によってモニター本体に傷跡が残ることがある点にも注意が必要です。
背面のキックスタンド。スタンド先端の丸い部分にはゴム加工が施されています
横置きしてみると以下のようなかたちに。キックスタンドのヒンジ部分は保持力が高く、自由な角度でモニターを支えることが可能です。
スタンド先端のゴム加工のおかげで滑りづらいです
縦置きもできますが、このときはDリングネジの締め具合を確認しましょう。上で「ほどほど」と言いましたが、縦置きの場合Dリングネジの締め付けが緩いとキックスタンドが倒れてしまいます。横置き時はネジが緩んでいても問題ありませんが、縦置きで使いたい場合は改めてネジを締め直しておいたほうが無難です。
縦置き時はネジの緩みがないか確認を
キックスタンドを外すと以下のようになります。ネジの規格はカメラの三脚などに用いられている1/4インチサイズなので、対応するスタンドなどを取り付けることも可能です。
付属のゴムパーツでモニター側のネジ穴を隠せます
外部インターフェイスは、USB Type-Cを2ポート、Mini HDMIを1ポート搭載。USB Type-CポートはDP Altモードに対応しているものと、電力供給専用のものに分かれています。PCにつないで利用する場合は、DP Altモードに対応した中央のType-Cポートに接続すればOKです。
端子類は本体左下にまとまっています。USB Type-Cポートの仕様の違いに注意
今回、付属のUSB Type-C to Cケーブルを使って、「MQ16AHE」をノートパソコンに接続してみました。発色はかなり美麗で、有機EL(OLED)ならではの高いコントラストが感じられます。解像度は1920×1080のフルHD、コントラスト比は標準で100000:1、HDR表示時で1000000:1(HDR 10対応)。色空間はDCI-P3カバー率100%で、色も非常に鮮やかです。
16インチのWindowsノートパソコンに接続した様子
モニターを縦置きすると以下のようなかたちに。モニターの設定を素早く調整するためのソフト「ASUS DisplayWidget Center」を使えば、モニターの自動回転にも対応します(Windows利用時のみ)。付属するUSB Type-C to CケーブルがL字型ではないため、縦置き字はケーブルが飛び出てしまうのが気になるところです。場合によってはL字型アダプターなどを購入するのもありかもしれません。
縦置き時はケーブルの出方が気になる
本機の特徴のひとつとして、有機ELながら高い輝度を実現していることがあげられます。スペック上の最大輝度は400cd/m2なのですが、実は最大輝度で表示するには電源接続が必須となります。400cd/m2で表示させたければ、ノートパソコンとの接続+電源供給で、合計2本のケーブル接続が必要となるわけです。
電源供給をしない、つまりケーブル1本でノートパソコンと接続している場合は、明るさは最大で80までしか設定できません。電源を供給することで明るさは100まで調整が可能です。明るさ80と100を見比べてみるといくらか違いはあるものの、かといって80の状態が暗いとは感じませんでした。厳密なHDR表示を求めたいときや、写真のレタッチ時などは、電源を供給して明るさを100にするとリッチな体験が得られるでしょう。
左は画面の明るさが80で、右は画面の明るさが100
また、本機は本体右下に近接センサーを内蔵しており、ユーザーが画面から離れると自動的に画面を消灯させ、省エネや画面の焼き付き防止に貢献します。有機ELパネルの寿命的にもありがたい機能ではあるのですが、モニターの置き方によってはセンサーがうまく反応せず、離席から戻ったのに画面がオフになったまま、ということも……。画面が復帰しない場合は、手をセンサー前にかざすと復帰しました。センサーをオンにしておくと、離席後30秒ほどで画面が省エネ状態に入ります。
近接センサーのオン/オフは設定から切り替えが可能
「MQ16AHE」のキックスタンドは、先述したように360度回転します。ということは、以下の写真のように上方向へキックスタンドを動かすことも可能。この仕組みを利用したユニークなディスプレイスタイルがあるんです。
360度回転するから、このような上下が反転したスタイルもとれる
それが、以下の「吊り掛けスタイル」。なんとも個性的な見た目ですが、ASUSが2024年5月に発売した「ZenScreen MB166CR」もこのスタイルが可能でした。意外と需要があるのでしょうか?
キックスタンドの穴にフックなどを通せば、簡単に吊り下げられる
この吊り掛けスタイル、メーカー的にはパーティションなどに取り付けることでデスクスペースを節約できる、などとして紹介されています。壁で仕切られたオフィススペースであれば、マグネットのフックや押しピンなどを利用して吊ることができそうですね。
壁にモニターを埋め込んだかのような不思議な見応えに。情報量も多い!
ユーザーが自宅で吊り掛けを実践する場合、間取りやデスク環境などに左右されることになるでしょう。筆者のデスクでは、上の写真のようにノートパソコンの近くに吊ることができましたが、「これはこれで使えるな」と感じました。
参考資料や暇つぶし動画のような、「思い出したときにたまに確認したい情報」をこれくらいの位置に表示させておくのは、確かにデスクの省スペース化に有効。それこそ従来であれば縦置き/横置きしたポータブルモニターに表示させるような情報ですが、フットプリントを使わずに情報を表示できるのは画期的です。
たとえば、奥行きの狭い机のように、普通のディスプレイを物理的に設置できないような場合でも、壁掛けが可能な本機であれば問題なく設置可能。モニターアームでも解決できそうですが、それより手軽モニターアームでも解決できそうですが、それより手軽。そう考えるとさらに実用性が高そうだし、ちょっとした空間で作業している人にとってすごく便利なんじゃないでしょうか。
6万円を超える本機の価格は、同サイズ(15.6インチ)のポータブルモニター市場では高価な部類になります。しかし、収納ケース込みで実測値約827gの軽量性、ノートパソコンと一緒に持ち歩きやすい薄型さ、そして有機ELであることを含むディスプレイの品質などを考えると、値段相応の満足度はあると感じました。
本機の個性である吊り掛けができるなら、その価値はさらにアップするはず。ですが、そもそも吊り掛け利用に絞るのであれば、先述した吊り掛けモニター「ZenScreen MB166CR」が約19,000円で販売されているので、そちらを選ぶという選択肢もあります。こちらは液晶画面かつノングレアなので、表示のリッチさという面ではかなり変わってくるでしょう。あくまで、吊り掛けというニッチな世界での比較です。
高品質な表示で、自宅使いでも屋外使いでも高い満足感がある
まとめると、手軽なポータブルモニターとして持ち歩きつつ、機会があれば吊り掛けという第3のディスプレイスタイルもとれる。そして狭いスペースでも活躍。そんなフレキシブルなモニターとして活用するのがよいのでは、と感じます。やろうと思えば新幹線や車などのフックに「MQ16AHE」を吊す、なんてウルトラC的なこともできなくはないですし、これはこれで面白い気がしますね。
「ノートパソコンだけじゃ画面が足りない、でもモニターを置けるスペースはあまっていない!」とお困りの人には、吊り掛けという選択肢を選べる「MQ16AHE」は、意外な救世主になるかもしれません。