「MacBook」と比較すると、Windows搭載ノートパソコンはどちらかというと「道具」としての使い勝手や、冷却性能などの効率を重視した、ある意味「無骨」なイメージの製品が多いですね。そのなかでもボディの品質に力を入れた製品が存在します。今回レビューするデルの「XPS 14(2026)」はその代表的な存在です。
「XPS 14(2026)」。狭ベゼルと薄型ボディが際立つ、洗練されたデザインが魅力です
「XPS」は「eXtreme Performance System」の略で、デルのコンシューマー向けプレミアムPCブランド。実は2025年に製品ポートフォリオを再編する際にいったん終了したのですが、2026年1月に同ブランドの復活が発表されました。
「舌の根も乾かないうちに」とはちょっと意地悪かもしれませんが、それだけ「XPS」ブランドに対してユーザーが信頼を置き、愛していたからこその復活劇と言えるでしょう。
復活を飾る2026年モデルとして発売されたのは、14インチ機「XPS 14(2026)」と16インチ機「XPS 16(2026)」の2ライン。従来の「XPS」ブランドでも同様に2つの画面サイズでラインアップが展開されてきましたが、より広い層に向いているのは携帯性にすぐれる14インチ版です。特に電車やバスで移動する機会が多い日本においては、14インチ機がメインストリームであることは間違いありません。
CNC削り出しアルミ製の天板。マット仕上げの質感には高級感があります
「XPS 14(2026)」購入の際には、下記の3種類の標準構成モデルと、カスタマイズオーダーから選択可能です。
・Core Ultra 5 325/16GBメモリー/512GB SSD/2K液晶(税込288,509円)
・Core Ultra X7 358H/32GBメモリー/512GB SSD/2K液晶(税込399,377円)
・Core Ultra X7 358H/32GBメモリー/512GB SSD/タッチ対応2.8K OLED(税込416,204円)
※価格は2026年6月4日時点の直販価格
カスタマイズオーダーではOS、プロセッサー、メモリー、ストレージ、ディスプレイ、キーボードを選択可能。標準構成モデルはすべてストレージ容量が512GBとなっていますが、個人的には1TBを搭載しておきたいところです。
ただ、デルはサポートサイトでストレージの交換方法を詳しく解説しているので、容量が足りなくなったときに自分で換装するという選択肢もあります。その場合、無償保証などが受けられなくなる可能性がある点にはご注意ください。
OS:
Windows 11 Home、Windows 11 Pro
プロセッサー:
Core Ultra 5 325、Core Ultra 7 355、Core Ultra X7 358H、Core Ultra X9 388H
メモリー:
16GB、32GB、64GB
ストレージ:
512GB、1TB、2TB、4TB
ディスプレイ:
14インチ2K液晶(1920×1200、500nit、1〜120Hz、タッチ非対応)、14インチ2.8K OLED(2880×1800、400nit、20〜120Hz、タッチ対応)
キーボード:
日本語、英語
プロセッサー選びで注意したいのが、CPUコアの構成です。「Core Ultra 5 325」と「Core Ultra 7 355」は、パフォーマンスコア(Pコア)×4、超省電力コア(LPEコア)×4の計8コア構成です。いっぽう、「Core Ultra X7 358H」と「Core Ultra X9 388H」は、パフォーマンスコア(Pコア)×4、効率コア(Eコア)×8、超省電力コア(LPEコア)×4の計16コア構成となっており、より高いCPU性能を備えています。
さらに大きな違いが内蔵GPU。「Core Ultra 5 325」と「Core Ultra 7 355」は最大40TOPSの「Intel Graphics」を搭載しているのに対し、「Core Ultra X7 358H」と「Core Ultra X9 388H」は最大122TOPSの「Intel Arc B390 GPU」を搭載しています。
3Dゲームをプレイする機会や、内蔵GPUのハードウェアアクセラレーション(GPU処理支援機能)を利用できるクリエイティブ系アプリを使う機会が多いのなら、「Core Ultra X7 358H」または「Core Ultra X9 388H」を選ぶべきでしょう。
いっぽう、「Core Ultra X7 358H」と「Core Ultra X9 388H」はCPUコアのクロック周波数以外に大きな差はないため、少しでも高い性能を求める人以外は、約6.5万円の差額を払ってまで「Core Ultra X9 388H」を選ぶ必要はないと言えます。
・Core Ultra 5 325
8コア(4P+4LPE)/8スレッド、最大4.5GHz、最大55W、最大40TOPSのIntel Graphics、最大47TOPSのNPU
・Core Ultra 7 355
8コア(4P+4LPE)/8スレッド、最大4.7GHz、最大55W、最大40TOPSのIntel Graphics、最大49TOPSのNPU
・Core Ultra X7 358H
16コア(4P+8E+4LPE)/16スレッド、最大4.8GHz、最大80W、最大122TOPSのIntel Arc B390 GPU、最大50TOPSのNPU
・Core Ultra X9 388H
16コア(4P+8E+4LPE)/16スレッド、最大5.1GHz、最大80W、最大122TOPSのIntel Arc B390 GPU、最大50TOPSのNPU
※TOPS:AIの処理性能を示す単位
※NPU(Neural Processing Unit):AI処理専用の演算回路
「XPS 14(2026)」購入時にもうひとつ悩ましいのがディスプレイの選択です。2種類のディスプレイが用意されており、両者には約17,000円の価格差があります。しかし筆者は可能な限り14インチ2.8K OLEDを購入することを推奨します。
14インチ 2K液晶にも消費電力が低いというメリットはあります。しかし14インチ 2.8K OLEDは色域が広く、コントラスト比が高い点で画質面において明らかにすぐれており、さらにタッチ操作に対応しているという大きなアドバンテージがあります。
「XPS 14」はどのプロセッサーを選択しても最大47〜50TOPSのNPUが内蔵されており、AI PC「Copilot+ PC」の要件(NPUが40TOPS以上)を満たしています。「Copilot+ PC」ではマイクロソフト製のAI機能が利用可能で、たとえば「コクリエイター」というデッサンからイラストを生成する機能を使う際、タッチ対応ディスプレイがあれば、マウスで描くよりも圧倒的に手軽かつ自然にデッサンが描けます。
個人的には、プロセッサーのグレードを落としてでもタッチ対応ディスプレイを選択すべきだと考えています。
OLEDモデルはタッチ対応。「Copilot+ PC」の「コクリエイター」機能をタッチで使えばデッサンも直感的に描けます
ここまでは「XPS 14(2026)」のスペック面について解説してきました。ここからは実際に使った感想をお伝えします。
まず本製品のボディは非常に高品質です。ボディにはCNC削り出しのアルミ素材が採用されており、パームレスト部は「Corning Gorilla Glass 3」でカバーされています。本体カラーの「グラファイト」はマット調の落ち着いた色合いです。加工精度も高く、ディスプレイのベゼルも狭く仕上げられており、モバイルノートPCとして最先端のデザインと言えます。
OLEDモデルの厚さは14.62mm。ディスプレイを開くと、その薄さが際立ちます
パームレストは「Corning Gorilla Glass 3」で覆われており、傷に強く滑らかな触り心地を実現しています
好みが分かれると感じたのはタッチパッドです。物理的に沈み込むダイビングボード構造ではなく、振動でクリック感を再現するハプティック方式(振動で触覚フィードバックを与える技術)のタッチパッドが採用されています。
タッチパッドの境界は細い凸ラインで示されます。慣れるまで多少の時間が必要かもしれません
この方式自体は個人的には好みなのですが、タッチパッドの領域を示すのが、わずかに凸が設けられた細い線だけという点が少し気になりました。触れれば範囲はわかりますが、特にブラインド操作時にそのサイズ感に慣れるまで少し時間がかかります。複数のノートパソコンを使い分けている人は、ほかの機種から「XPS 14」に切り替えた際にしばらくとまどうかもしれません。
タッチパッドの輪郭を示す凸ラインは視認性より、デザイン性が重視されています
もうひとつの注意点が外部インターフェイスの構成です。Thunderbolt 4(Power Delivery、DisplayPort 2.1対応)×3、3.5mmコンボジャック×1と割り切った構成となっています。筆者自身はほぼUSB Type-A端子を使わなくなりましたが、たまにHDMI端子を使う場面はあります。コンパクトなハブを携帯すれば解決できますが、念のため注意しておきたいポイントです。
端子はThunderbolt 4×3と3.5mmコンボジャックのみ
端子が少ないぶん、コンパクトなハブがひとつあると安心です
今回は14インチ 2.8K OLEDモデルを借用していますが、画質は非常にすぐれています。DCI-P3カバー率100%、コントラスト比1,000,000:1のOLEDパネルの映像は、映画やミュージックビデオの鑑賞に最適です。
DCI-P3カバー率100%のOLEDパネル。色の深みとコントラストは液晶とは一線を画します
サウンド面も充実しており、3Wメインスピーカー×2+2Wツイーター×2という合計10Wの「Dolby Atmos」対応クワッドスピーカーを搭載しています。最大ボリュームでも音割れや不快な振動は発生しないため、住環境が許せば迫力のサウンドを楽しめます。
クワッドスピーカー(4基構成)のグリル部。合計10Wで「Dolby Atmos」に対応しています
今回の貸出機にはCore Ultra X7 358H/32GBメモリー/512GB SSDが搭載されています。定番ベンチマークのスコアは以下のとおりです。
・CPUベンチマーク「CINEBENCH 2026」
CPU(Multi Threads):3353pts、CPU(Single Thread):511pts
・3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK」
標準品質、1920×1080ドット、フルスクリーン: 6986(快適)
・ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 9.0.1」
シーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1):7055.96MB/s
シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1):5725.86MB/s
「CINEBENCH 2026」のCPU(Multi Threads)は3353pts、CPU(Single Thread)は511pts
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK」(標準品質、1920×1080ドット、フルスクリーン)は6986(快適)
「CrystalDiskMark 9.0.1」のシーケンシャルリード(SEQ1M Q8T1)は7055.96MB/s、シーケンシャルライト(SEQ1M Q8T1)は5725.86MB/s
これらのスコアは、最新モバイルノートPCとして上位クラスに位置します。一般的なWebブラウジングやビジネスアプリの利用であればオーバースペックなほどで、4K動画編集、書き出しなどのクリエイティブ用途でも快適に作業できます。最新のAAAゲームはさすがに画質設定の調整が必要な場面もありますが、多くの3Dゲームを実用的なフレームレートでプレイ可能です。処理性能の面では、幅広い用途に対応できるマシンであると言えます。
「XPS 14(2026)」は、復活した「XPS」ブランドの名にふさわしい完成度を備えた1台です。
特に最上位グレードでは、最大16コアの「Core Ultra X7/X9」プロセッサーによる高い処理性能や、映像美とタッチ操作を両立するOLEDディスプレイを高品質なボディに凝縮しており、プレミアム感があります。
外部インターフェイスがThunderbolt 4中心に絞られている点や、タッチパッドの境界がわかりにくい点など、評価が分かれそうなところもありますが、それらは薄型・軽量化、そしてデザイン性の向上とのトレードオフと納得できる範囲です。
デザイン性とパフォーマンスの両方を重視し、AI機能も存分に活用したいユーザーにとって、「XPS 14(2026)」は有力な選択肢のひとつと言えます。