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タフモバイルに生まれ変わった「VAIO Pro 13 | mk2」はビジネスパーソンの心をつかめるか?

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VAIOがビジネス向けのノートパソコンを本気で使ったら? 同社が2015年5月25日に発表した「VAIO Pro 13 | mk2(マークツー)」は、従来モデルから堅ろう性を大幅に高めた、ビジネスユーザーをターゲットにしたモバイルノートPCだ。13.3型液晶ディスプレイを備えた薄型軽量ボディに、ビジネスの現場ではまだまだ需要のあるアナログRGB出力端子と有線LANコネクターを詰め込んだ。従来モデルのユーザーの要望に応えて、タッチパッドの使い勝手や無線LANのつながりやすさも改善した。

市場想定価格は109,800円(税別)から。カスタマイズモデル(VAIO OWNER MADEモデル)は6月3日より受注を開始し、6月11日に発売する予定だ。店頭販売モデルはブラックモデルを6月11日、シルバーモデルを7月2日に発売する。今回はカスタマイズモデルを使ってVAIO Pro 13 | mk2を細部までチェックしていきたい。

13.3型液晶ディスプレイを搭載するVAIO Pro 13 | mk2。市場想定価格は109,800円(税別)から。デザインは従来モデル「VAIO Pro 13」を継承しつつ、堅ろう性を強化。タフモバイルノートPCへ生まれ変わった

堅ろう性が大幅アップ。ライバルは「レッツノート」や「ThinkPad」

VAIO Pro 13 | mk2は、ソニー時代の2013年に初代モデルが発売された「VAIO Pro 13」の後継モデルだ。VAIO Pro 13は、東レが開発した「UDカーボン」を使った薄型軽量モデルで、VAIOが2014年7月にソニーからパソコン事業を引き継いだあとも、モデルチェンジを繰り返しながら継続販売されてきた。もともと個人だけではなく、法人向けとしても展開してきたモデルだが、新型のVAIO Pro 13 | mk2では堅ろう性と拡張性を強化して、よりビジネスユーザーを意識したモデルに生まれ変わった。

一番の進化点は堅ろう性だ。加圧振動試験や落下試験、本体ひねり試験、ペンはさみ試験など、数多くの品質試験をクリアしている(下写真)。ソニー時代も堅ろう性の高いモデルはあったが、品質試験の細かい数字まで公開して大々的にアピールしたケースはほとんどない。VAIO Pro 13 | mk2の堅ろう性に、よほどの自信があるのだろう。5月25日に開催された新製品発表会では、“人が乗っても壊れない”というタフモバイルノートPCのお約束ともいえるパフォーマンスを披露してみせた。実物は非常にスリムで、耐久性や剛性の高いモデルという雰囲気はない。同じく堅ろう性をウリにするパナソニックの「レッツノート」やレノボ・ジャパンの「ThinkPad」と比べると、スタイリッシュで垢ぬけた印象を受ける。

この高い堅ろう性を実現するために、ボディの素材や構造を見直している。天板にはマグネシウム合金を使い、負荷のかかるヒンジ部は削り出しによって剛性を高めている。底面には高剛性樹脂を使い、負荷のかかりやすい箇所に立壁状のリブを設けることで堅ろう性を高めた。このほか、強度を高めるためにビスの配置を最適化するなどの細かな改良も施している。もちろん、重いものを乗せたり、90cmの高さから落としたりしても絶対に壊れないというものではないが、モバイルノートPCを日常的に持ち歩くユーザーにとって、耐久性や剛性が高いにこしたことはない。

デザインテイストはVAIO Pro 13から変わっていない。ビジネス向けのモバイルノートPCといえば、どちらかという無骨なデザインのものが多く、それらに比べるとスマートな見た目だ

VAIO Pro 13 | mk2の品質試験

角落下試験
5cmの高さからの落下を5000回、4つの角すべてで行う。パソコンを無造作に机に置いたときなどを想定した試験だ。5000回という数字はインパクトがある

本体ひねり試験
四隅の3点を固定した状態で、残りの1点に強い力を加えて本体をひねる試験。通勤ラッシュ時の急停車など、パソコンが人や荷物で押しつけられた状態を想定した試験だ。かなりひねられており、見ているこちらがひやひやする

液晶ハウジング加圧試験
手、ヒジ、カバンなどで強く押しても液晶が壊れないかをみる試験。持ち運ぶ際に、液晶側を手で強く押す状況などを想定したものだ

ペンはさみ試験
液晶とキーボードの間にペンがはさまった状態を想定し、円筒状の棒を挟んで強い力で液晶を閉じる試験。液晶がかなり曲がっているが、割れたりすることはないという

90cm落下試験
机からの落下や、身長170cmの人が脇に抱えた高さからの落下を想定した試験。天地、両側面、前後の6面でテストを実施している

加圧振動試験
満員電車を想定し、150kgfの圧力を加えたまま振動を与え続ける試験。レッツノートなどでも同様の試験を行っているが、レッツノートは100kgfの加圧振動試験なので、VAIO Pro 13 | mk2のほうが試験内容は厳しい

マグネシウム合金を使った天板。マグネシウムの塊を成形し、CNC加工で内部をくりぬいて仕上げている。LCD基板やタッチ基板、無線LANアンテナケーブルなどが配置されるヒンジ部分の強度を特に高めているという

左がUDカーボンを使ったVAIO Pro 13のボトムカバー、右が高剛性樹脂を使ったVAIO Pro 13 | mk2のボトムカバー。VAIO Pro 13 | mk2ではキーボードやタッチパッド、外部インターフェイスなど、負荷のかかりやすい箇所にリブを追加して堅ろう性を高めている。剛性が高まったことで、キーボードやタッチパッドの操作性の向上にもつながっているという。また、VAIO Pro 13では見た目を重視してビスが外から見えない構造だったが、見える構造に改めてメンテナンス性を高めた

スリムなボディにアナログRGB出力端子と有線LANコネクターを装備

本体サイズと重量は、タッチパネルなしのモデルが約322.0(幅)×216.5(奥行)×13.2〜17.9(高さ)mm、約1.03kg。タッチパネルを搭載したモデルが約322.0(幅)×217.1(奥行)×14.3〜18.9(高さ)mm、約1.16kgだ。VAIO Pro 13の最軽量モデルの重量が約0.94kgだったので、少しだけ重くなっている。それでも13.3型のモバイルノートPCとしてはスリムで軽い部類に入る。スリムなビジネスバッグにもすっきりと収まるので、日常的に持ち歩いても負担にはならないだろう。バッテリー駆動時間は約9.4〜10.4時間(JEITA 2.0、Windows 8.1 Pro Update 64ビットまたはWindows 8.1 Update 64ビット選択時)だ。モバイルノートPCとしては十分な駆動時間と言える。

タッチパネルを搭載したモデルでも厚さは14.3〜18.9mmと非常にスリムだ。天板の手前には無線LANのアンテナを配置しているため、切れ目が見える。アンテナの感度を高めるためで、見た目の美しさよりも実用性をとったデザインだ

外部インターフェイスには、ユーザーからの要望が多かったアナログRGB出力端子と有線LANコネクターを搭載。アナログRGBしか使えないプロジェクターはまだまだあるので、変換アダプターなしで使えるのは、ありがたい。もちろん、HDMI出力端子も備えるので、テレビに接続するときもアダプターは不要だ。内蔵モニターを含めて3画面同時出力もできる。セキュリティの関係で、無線LANにつなげないオフィスもまだまだあるので、有線LANコネクターがあるのも助かるだろう。また、USB3.0端子が2基から3基に増えているのもポイントだ。薄型ボディでありながら、外部インターフェイスはフル装備と言える。

右側面にアナログRGB出力端子、有線LANコネクター、HDMI出力端子、USB3.0端子、ヘッドホン出力、SDメモリーカードスロットを配置

左側面にUSB3.0端子を2基備える。前面と背面に外部インターフェイスはない

左側面にUSB3.0端子を2基備える。前面と背面に外部インターフェイスはない

ディスプレイを開くと、本体の奥側が少し浮いて、有線LANコネクターのツメを開くスペースができる仕組みだ。キーボード面が立ち上がるので、タイピングもしやすくなる

キーボードは、同社のフラッグシップモデルである「VAIO Z」と同じものを搭載する。静音タイプで、人間にとって耳障りな音域である2KHz以上の帯域を抑えることで、パシャパシャという耳障りなノイズを低減している。キーピッチは、デスクトップPC用のフルサイズキーボードと同じ19mm。打ち心地はVAIO Zと同じで、柔らかめだ。ストロークが約1.2mmと浅いのが気になったが、慣れれば問題はなそうだ。もちろんバックライトも備える。

タッチパッドは、1枚板のタイプから、左右ボタンを2ボタンに分割し、誤操作しにくいタイプに変更されている。変更というよりも昔に戻ったと言った方がいいだろう。1枚板タイプのほうが見た目はスッキリしているが、2ボタンの分割タイプのほうが使いやすいので、実用度はアップしている。ただし、タッチパッドの面積が狭くなっているため、ジャスチャー操作はしにくい。また、配置する場所も中央から、キーボードに合わせてホームポジションに配置されている。

キーボードはVAIO Zと同じものを搭載する。キーストロークが浅く、軽めの打ち心地だ。タッチパッドは左右ボタンが独立したクリックボタンを搭載。タッチパッド部分が狭くなったので、ジェスチャー操作はしにくくなったが、それほど頻繁に利用しない人であれば困ることはないだろう

ビジネスモバイルとしては必要十分な基本性能

最後に基本スペックを整理しておこう。

今回試したカスタマイズモデルは、CPUに「Core i7-5500U」(2.40GHz-最大3.0GHz)を採用し、メモリーは8GB、ストレージは128GBのSSD(SATA接続)だ。ベンチマークテス「PCMark 8」のスコアは、「Home accelerated」が2758、「Work accelerated」が3767とかなり高かった。中堅クラスのデスクトップPCと比べてもそん色ないスコアだ。

カスタマイズモデルでは、OSやCPU、メモリー、ストレージなどをカスタマイズできる。OSは「Windows 7 Professional 64ビット」「同 32ビット」「Windows 8.1 Pro Update 64ビット」「Windows 8.1 Update 64ビット」から選択可能。CPUは「Broadwell」と呼ばれるアーキテクチャをベースにした第5世代Coreプロセッサーで、Core i7-5500Uのほか、「Core i5-5200U」(2.20GHz-最大2.70GHz)と「Core i3-5005U」(2GHz)の3種類から選べる。メモリーは4GBか8GBの2種類から選択可能で、どちらもオンボードとなる。ストレージはSATA接続が512GB/256GB/128GB、PCI Express接続が512GB/256GB/128GBの6種類を用意する。PCI Express接続のほうが高速だが、その分、価格は高い。そのほか、セキュリティチップの有無、ワープロ・表計算ソフト(Officeの種類)が選べる。カラーはブラックとシルバーの2色だ。

店頭販売される個人向け標準仕様モデルは、ブラックモデルとシルバーモデルの2機種を用意。ブラックモデルは、Core i5-5200U、4GBメモリー、128GB SSD(SATA)、Office Home and Business Premiumを搭載する。市場想定価格は144,800円(税別)。ホワイトモデルは、Core i3-5005U、4GBメモリー、128GB SSD(SATA)を搭載し、市場想定価格は109,800円(税別)。

液晶ディスプレイは、解像度が1920×1080のフルHDパネルだ。IPS方式の液晶で、上下左右どこからでも見やすい。ノングレアタイプで映り込みが少なく、屋内でも屋外でも見やすかった。VAIO Zにも使われている集光バックライトを使っており、バックライトの光の向きを制御することで、少ない電力で明るいディスプレイを実現している。今回はタッチパネルを搭載しないモデルを試用したが、カスタマイズモデルではタッチパネルを搭載したモデルも選択可能だ。その場合はグレアタイプになるので、映り込みが気になるかもしれない。

くわしいスペックは公開されていないが、VAIO史上最高輝度を実現しているという。ノングレアタイプで映り込みが少なく、屋内、屋外でも見やすかった。表示品質も高く、仕事の合間に動画を楽しむのにも向いている

スピーカーの配置は、VAIO Pro 13から変わっていないが、ボックス構造の見直しにより音圧が6dB上がり、人の声が聞きとりやすくなっているという

ACアダプターはコンパクトで、本体といっしょに持ち運んでもじゃまにならない。USB端子付きで、スマートフォンなどを充電できる

バランスのとれたタフモバイルノートPC

モバイルノートPCを選ぶときに考慮すべき点は多い。重量、薄さ、バッテリー駆動時間、基本性能、使い勝手、画面サイズ、堅ろう性、拡張性、価格……。どれに重きを置くかは人それぞれだと思うが、重要なのはバランスだ。その点、VAIO Pro 13 | mk2は非常にバランスのとれたモバイルノートPCに仕上げられている。VAIO Zのような派手さはないが、仕事で使うモバイルノートPCとしては不満なく使えるだろう。

ただ、VAIO Pro 13 | mk2の特徴である堅ろう性は、ユーザーにとって、ありがたみがわかりにくいセールスポイントだ。あるPCメーカーの人からは、「一般のユーザーに堅ろう性はなかなか響かない」という話を聞いたこともある。しかし、モバイルノートPCを机の上にラフに置いてしまうこともあるし、電車で移動するビジネスパーソンであれば、知らず知らずにパソコンにストレスがかかってしまうこともある。そういうときに、VAIO Pro 13 | mk2の堅ろう性が効いてくるはずだ。

VAIO Pro 13 | mk2は、ソニー時代は重点的に取り組んでこなかった法人市場向けのモデルでもあり、収益の安定化を下支えする重要なモデルである。ビジネスユーザーをターゲットにしたモバイルノートPCといえば、レッツノートやThinkPadが有名だ。どちらも長い歴史があり、ひとめでわかるシンボリックなデザインを持つ。VAIO Pro 13 | mk2も同じように長くビジネスシーンで使われるようになるのか注目だ。

三浦善弘(編集部)
Writer / Editor
三浦善弘(編集部)
出版社で月刊誌やWebメディアの編集・記者を経験し、2013年にカカクコム入社。「価格.comマガジン」にて、PCやスマートフォン分野を担当。取材歴は20年以上。現在は「価格.comマガジン」全体を統括する。
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